重厚な響きを立て・・・重々しい扉が開かれました。

そしてその先にいたのは、権威と栄光の頂点に立ちたる人物が・・・

その人物こそ―――サライ国女王・・・

 

しかしよく見れば、その時は何かの会議の最中だったらしく、他の国吏達もいたのです。

けれども女傭兵・アルディナは、そんなことはお構いなし―――と、云ったように・・・

 

 

 

ア:よっ―――元気してた〜?♪

 

王:・・・あなた―――ですか。

  それで、なんのご用件なのです。

ア:ああ―――ちょっとね、旅の路銀が尽きちゃったんで・・・お金ちょ〜だい♪

 

市:アルディナさん―――失礼ですよ! 一国の女王様にそんな・・・

王:・・・あなたは―――

 

市:あ・・・っ、あ―――も、申し遅れました・・・私は・・・

 

 

 

確かに―――最初のやり取りで、この不躾な女傭兵とサライ国女王との間柄が、親しいと云うことはよく判りました。

・・・に、しても、これでは本当に―――少しどころの話ではなく、不躾過ぎるのではないか・・・と、市子は内心冷や冷やしながらアルディナを注意したものだったのです。

 

すると女王陛下の目は、そんな市子に注がれ、市子は緊張のあまり自己紹介がしどろもどろになってしまっていたのです。

 

それにしても・・・アルディナの、場を(わきま)えない発言を前に、さぞかし女王陛下は怒り心頭になっているものと思いきや・・・

 

 

 

王:それにしても・・・久方ぶりに会ったと云いますのに、最初に交わした言葉が「お金」―――とは・・・哀しい限りですね。

  元は、あれだけお金と云うモノを忌み嫌っていたあなたが・・・どう云った心境の変化からなのですか。

ア:ええ〜? あんたまで私のことを、そんな目で見るわけ??

  けど、仕方がないじゃない―――こいつにさぁ、付いてる飾りを売っ払っても足りなくなってきちゃったんだもん。

 

王:(!)なんと云うことを・・・あなたが携えているその剣は、そこらの兵士が下げているモノとはわけが違います。

  そればかりか、付いている飾りでさえ、普通に流通している宝飾具よりも高価だと云いますのに・・・

ア:そうは云うけどさぁ―――・・・今回ラスネールが換金した、ここに付いてた最後のやつを換金したら・・・これっぽっちにしかならなかったんだぞう?

 

王:嗚呼・・・なんと嘆かわしい―――ついに堕ちるところまで堕ちたと云うのですか・・・

  今のあなたを、あなたの亡きお父上が見たらなんと云いなさるでしょうか・・・

ア:親父と私とは違う! それに、人には「個性」があるから人なんだろう!

  私こそ失望したよ・・・昔からあんたは()な奴だと思ってきたけれど、そこんところは私と同じだと思っていた・・・なのに―――

  あんたも、周囲(まわ)りの官に感化され、型に嵌ったようなことしか云わなくなってしまった・・・私の親父と同じになってしまったのか―――!

 

王:お黙りなさい―――! あなたの今の発言、ただ一介の剣客にしては云うに余ります!

 

 

 

「嗚呼・・・なんと云うことだ―――まさに、最悪を画で描いたような展開だ・・・」

市子は、長年会いたかった人物に引き合わせてくれたことには感謝していましたが、そのすぐのちに展開された言葉の応酬を見て愕然としてしまいました。

 

この二人は―――女傭兵自身がそう云っていたように・・・仲が悪い。

 

会話の最中(さなか)でも交わることのない論点に、その癖ますますヒートアップしてくる声の抑揚感などに、

このままでは、最終的には二人とも掴みあいの喧嘩になりかねないモノ―――と、そう心配していたところに・・・

 

 

 

ギ:―――お邪魔いたします・・・陛下、そろそろお時間ですので・・・

王:そう・・・判ったわ―――

  ・・・ギル、あの分からず屋を私の部屋に―――

 

ギ:御意―――・・・

 

 

 

なんと、タイミングよく入室してきたのは、「鉄腕宰相」との呼び声名高いギルバートでした。

この国の忠臣も、さすがに今回の事態の展開を見かねてのことなのか・・・と、思いきや、どうやらそうではなく―――

女王もギルバートに何かを耳打ちすると、来賓をその部屋から別の部屋―――女王の私室へ・・・

 

そしてアルディナ達は、ギルバートの導きにより、女王の私室と思われる部屋へと移されたところで―――

 

 

 

王:先程は御免なさいね。

  あそこには、あなたのことを良しとは思っていない官もいたものだから・・・

ア:いや・・・いいよ、別に―――

  それに、今となっては、私と面と向かって云いたいことを云えるのは、あんたとギルバートくらいしかいなくなっちゃったことだしね・・・。

  それより―――女王就任おめでとう、お祝いの(ことば)が遅くなっちゃって・・・ゴメンね、ソフィア=エル=ホメロス女王陛下・・・。

 

ソ:止めてよ―――あなたからそんなこと云われると、なんだか背中がこそばゆくなってくるわ。

  それで・・・目的の方はどうなの―――

ア:うぅ〜〜ん・・・あれから五年も経つのにね―――まるで雲を掴むような感覚・・・

 

ソ:そう・・・だったら、参考になるかどうかは判らないけど―――・・・

ア:えっ・・・何か判ったの??!

 

ソ:ええ―――ここ最近、私が得た情報によると・・・

 

 

 

「違和」・・・違和と云うには、甚だしい違和がそこにはありました。

 

先程は、サライの国吏達が居並ぶ会議室にて―――あれだけ喧々諤々とやりあった当事者たちが、

女王個人の部屋では、旧友を温めるかのよう―――・・・

 

それに・・・市子が今一番不思議に思っていたこととは、あのアルディナからのお祝いの(ことば)―――・・・

あの部分がどうにも気になるのは、間違いはないのです。

 

そして市子の一番気になることは、次の女王陛下からの一言により、一気に解消されてしまうのです。

 

第八話;女傭兵の更なる真実

 

ア:―――そんなところに?!

ソ:ええ・・・私が掴んでいる情報では、それだけしか・・・

 

ア:そうか・・・そこに行けばあいつが―――!!

ソ:そうよ―――だから、あなたが目的を遂げた暁には、あなたも私と同じように・・・

  あなたのお父上が亡くなられて、現在空位になっているあなた自身の国の王位を継いでください・・・

  オデッセイア王国・第一王位継承者―――リリア=デイジィ=ナグゾスサール姫。

 

 

 

確かに・・・今―――サライ国王ソフィアは、目の前にいる女性のことを「リリア」と呼びました・・・。

いや、しかし―――この女性は、以前から自分のことを「アルディナ」と名乗ってきたはず・・・

 

いや・・・そんなことよりも―――

 

 

 

市:あ・・・っ、あ、あの―――・・・今、オデッセイアと??

  この国・・・サライ国と比肩する大国の―――・・・

  いえ、その前に、女王様―――今あなた様が仰られた「リリア」と云う名前・・・

  確か数年前、某国より失踪した姫君の―――・・・

リ:いやぁ〜っはっは―――w とうとうバレちゃったみたいだね。

  ま・・・ここに来ると決めた時から、こうなることは覚悟してたんだけどな・・・。

 

  そ―――私の本当の名前はリリア・・・リリア=デイジィ=ナグゾスサール―――

  市子・・・あんたまで騙そうなんて、そんな気は髪の毛先ほどもなかったんだけど・・・でも、結果そうなっちゃって・・・ゴメンね。

 

市:では・・・どうして自らを騙らなければいけない必要性が―――

ソ:市子さん・・・あなたもこの方と接し、一緒に旅をしてきたなら気付いたはずです。

  この方は、上辺を飾るのが何よりもお嫌いな方・・・殊の外、富・権力・財の象徴とも云える「お金」のことは、幼少の(みぎり)より嫌ってきたものなのです。

  そう云うことでいいのよね―――リリア・・・。

 

リ:上出来ッ―――!☆ それよりなにより、貴重な情報を有難うな・・・やっぱここに来て正解だったよ〜。

 

 

 

「巧いことを云って・・・。」

そう、最後に女王が漏らした言葉の前後に、昔の彼女達が垣間見れた気がしました。

 

(なが)らの友誼(ゆうぎ)ではあるけれども、一線を引いて()(わきま)えていたのは、実はリリアの方でした。

 

昔から、必要以上・以下のモノとして捉え、ないのならばないでも構わないとしたモノでも、いざ(しせい)に出て生活をするとなると必要―――頼らざるを得なくなってくるモノ・・・

それを得る為に「傭兵」と云う職に就き、剣に付いている装飾品などを売るなどして、今まで何とか食い繋いでいましたが・・・

本当に食うに困った時、頼るべきはどこなのか―――・・・またそうした時に、幼馴染は思い違いを起こしてしまうのではないかとしましたが、

それは逆に、幼馴染には失礼であるとリリアは思ったものだったのです。

 

そうでなくても、幼馴染からは思ってもいなかった贈り物―――リリアがここ5年かけて探していた、彼女が求める本来の目的の場所・・・

そのことを聞き出せたのですから―――・・・

 

そのことに、幼馴染に感謝すると同時に、サライ国・首都城・ユーニスを後にした一向は、

リリア姫の最終目的であるかの地へと、歩を進めたのです。

 

 

 

 

=続く=

 

 

 

 

あと