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(その一方、空港の免税店にて、友人に贈る物を買い求めた婀陀那、彼女がショップから一歩出たところで、先程、杜下家の者と会っていた独の武官とすれ違う)
婀:・・・・・・。(スン・・・おや?このコロンの匂いは・・・・? あのいかつい顔にしては似合わぬものをつけておるな、あの者・・・・・)
まぁ、世間は広いからの・・・、こういう事もままある。
(一見するとなんでもないやり取り、しかしそれが後々の出来事に大きく作用する事も多くないのです。 杜下驍とアィゼナハという武官の会話、
免税店前ですれ違った婀陀那とその武官・・・。 これがどう結びついていくのかは、また後の講釈にて・・・・)
<一方その頃、ギルドでは・・・・?>
ジリリリ・・・・・・ジリリリリリリ・・・・・・・!!
お:(カチャ)はい、もしもしギルドでございますが、はい・・・・・、はい・・・・、承知しました。
それでは、二・三時間後にそちらに伺わせていただきますので、それでは失礼いたします。(チンッ!)
はぁ〜あ、いまだにステラさんは顔を見せず・・・・か、何をやってんでしょうね! 全く・・・・!! これでは留守も出来ませんわッ!!
(・・・と、そこへ一台のタクシーが止まる・・・・)
ブルルルル・・・・・・・キィ・・・・・・
お:あら? 車・・・、タクシーかしら? はぁ〜〜、こういう時に限ってくるのよね〜〜お客・・・・。
コンコンコン!!
お:はい! 今出ます・・・・。 (カチャ・・・)はぃ、お待たせいたしました、どちら様で・・・・・あ・・・! あなたは!!
婀:お久しぶりにございます、姐上・・・・。 お:あ・・・・婀陀那さん・・・。
婀:実に、四年ぶりにございますな。
お:えぇ・・・、そうですわね・・。 あっ! そうだ!! こんなところで立ち話もなんですから、中にお入りください。
婀:ふふ・・・、もとよりそのつもりですよ・・・・、こちらとて、積もる話が山とありますれば・・・・。
(そして、部屋の奥へと通される婀陀那)
お:どうぞ・・・・粗茶ではございますが・・・。
婀:いや・・・、これはかたじけない、それでは遠慮のう・・・・・。(ズ・・ズズズ・・・)
ふぅ・・・、いやはや・・・しかし姐上ほどのお方が、このような小会社でくすぶっておられるとは・・・・意外でしたな。
お:そう・・・? でも・・・、とあるお方のご紹介で、きたものですから・・・。
婀:とある方・・・・・と申しますと・・・?(ズズ・・・・)
お:えぇ・・・・杜下驍様・・・からです。
婀:成る程・・・、あのお方の紹介で・・・、それでやってみよう・・・・という気になったのですな?
お:そうです・・・・。
婀:ふむ・・・、成る程、姐上らしい。 それで・・・、ここでは何を主に?
お:大した事はやってませんのよ? 町内のお掃除や、迷い猫の探索から、痴話喧嘩の仲裁まで・・・。 まぁ、いわゆる『何でも屋』ね?
婀:ほほう・・・、それはちと、お辛うございますなぁ・・・。
お:そうね・・・、わたくしも最初はそう思いましたけれど・・・、ここの代表の者にこういわれたんです。
“所詮あなた方は今まで楽をして生きてきたに過ぎない・・・”
と・・・・・・。
婀:な・・・、なんですと!? そ、そう言われたのですか!!
お:えぇ、言われました、はっきりと・・・・。 婀:悔しくないのですか!!?
お:悔しい・・・、ですからここにいて、わたくしがどれだけやれるか(自分で)試しているの・・・・・。
婀:(な・・・なんと・・・)そうか・・・・そうだった・・・・のですか・・・、いや失礼、そこまでお考えでしたとは・・・・、相も変わらず姐上はお強い・・・。
妾なんぞが、考えているより遥かに・・・。
お:いえ・・・、そんな事ございません・・・・。 ただ、今までのわたくしは、ここの代表の者が言った通り、甘えていたに過ぎないのだから・・・。
婀:そう・・・です・・・か・・・・・。
お:あの、そういえば婀陀那さんはこちらに帰って、何をされるおつもりなの?
婀:妾・・・ですか?(ここで婀陀那、はにかんだように微笑む) お:えぇ・・・・・。
婀:正直・・・、迷っていたのです。 確かに、留学中においても、複数の企業より誘いがあり、
そしてこちらの音大でも講師をやってみないか・・・との誘いを受けた事もあったのです・・・。
お:そう・・・・、それは素晴らしい事じゃない。
婀:ですが・・・、もう一つの選択の道があったのです・・・・。
お:え・・・・? それは・・・何??
婀:それは・・・・、姐上、あなたの下で働く事です!!
お:えっ・・・・!! で・・・でも、それは・・・・
婀:それに・・・・・これは、姐上の今のお話で、たった今、決めた事なのです。
この先なんの辛い事がありましょうとも、妾はあなた様を助けとうございます!!
お:でも・・・・・でも・・・・、正直・・・辛いわよ? ここ・・・・・・。
婀:もとより覚悟の上です。 それに、姐上に出来て妾に出来ぬ道理もありますまい。
お:そ、そうね・・・・・そうよね、有り難う婀陀那さん・・・。
婀:いいえ・・・、なんのなんの、お安い事ですよ。 それで? 件のここの代表の方はいづこへ?
お:(はぁ・・・)それがねぇ・・・・・まだ来てないのよ・・・・あのバカ!!
婀:バカ??! お:そうですわよ!! 創業以来まともに時間内に来た、試しがないんだもの・・・・アイツ・・・・。
婀:んな・・・・、それは怪しからんやつですなぁ・・・。 姐上にあんなひどい事を言っておきながら・・・・、自分が一番楽をしておるではないですか!
お:(ハ・・・ッ!)い、言われてみると・・・そうねぇ・・・。 婀:姐上・・・気付かなすぎ・・・・
(と、そこへ誰やら階段を上ってくる音・・・・、間の悪い男のご登場のようである・・・・。)
カンカンカン!・・・・・・・・・・・・ガチャ・・・
ス:オッはよ〜〜(ふぁ・・・〜〜あ) アレ? 誰か・・・客なん?
婀:あの者は・・・・? お:アレが・・・ここの馬鹿・・・もとい、代表者“ステラバスター”さんですよ。
婀:(こやつが・・・・?) (婀陀那、ステラに近づいて一言)そなたがここの代表か?
ス:うん?? そだけど? 何か?
婀:妾は“森野婀陀那”と申す者で、姐上・・・・いや、柾木殿の知り合いじゃ。 ゆえにここで働かせてもらう! よろしいな? それで・・・・。
ス:あ、、、〜〜あの坊ちゃん、嬢ちゃんの・・・・、ま、せいぜい頑張ってねぃ??! はい、採用!!
婀:ふ・・・、その言葉、いずれ必ず・・・・(スン・・・うんっ?! こっ・・・この香りは・・・??!
あの時、(空港の免税店出た時)すれ違ったときの男の者と同じ・・・・??! これは一体どういう事じゃ??)
(そう・・・、それは、果たして偶然か? 婀陀那がステラとすれ違った際に、彼から漂ってきた香りは、その日の午前中、空港の免税店の前にて、
すれ違った、独の武官のものと同じ香りがしてきたのだから・・・・ 多くの謎を残しつつ、ここで幕であります。)