<六>
〔その翌日―――〕
部:ナニ?辞表―――
ジ:はい。
部:ナゼ―――君が・・・
ジ:私は―――昨夜、大失態を犯してしまいました・・・ですから、その償いです。
部:(ぅぅむ―――) なぁ―――ジィルガ君、君は、実に優秀な社員だ、それをたった一度の失敗で―――とは・・・
考え直す気は―――
ジ:残念ですが―――これは、私自身のケジメでございます。
それに、たった一度―――とは申しても、私がしてしまった失態は、実に重要な事でございます。
私一人犠牲になる――――それで、良しとしなければ・・・・では、失礼いたします。
〔今回の、一連の・・・・セキュリティ・プログラム強奪事件により、退社を決意するジィルガ・・・・
でも、その上司は、彼女を辞めさせたくはない意向ですが・・・・殊の外、彼女の意志の方は固いようです。
そして―――この部長の部屋を出て―――その廊下にて・・・・〕
ぺ:・・・・・。
ジ:・・・・実に、申し訳ありません、局長―――。
私も、遊びが少し過ぎてしまいました―――あと少しのところで、侵入者全員と―――その首謀者を一網打尽に出来ましたものを・・・
総ての責任は、この私めに存するところであります―――
ぺ:フ・・・・ッ、うまく・・・・この状況を、利用したもの・・・・だな。
ジ:はっ??!これは異な事を・・・・一体なんの事を、言っておられるのやら・・・
ぺ:今回の―――だよ。 あれしきの相手・・・お前が本気を出したのなら、ものの一分程度で、済んでいたろうに・・・
ジ:―――局長・・・・。
ぺ:まぁ・・・・いい。 それより、指令だ。
ジ:はい。
ぺ:お前・・・・シホ=マクドガルを知っているか。
ジ:ええ―――ここより、極東の島国=ヤポン=で、我々と同じく“人に非(あら)ざる者”を狩っている・・・と、耳にしていますが・・・
ぺ:うん―――実はな・・・数年前から、極東においての業績が、上がっていないらしい・・・
そこで、幹部会で決定した事なのだが・・・・そこへ、監査・監察の任に、就いてもらいたいんだ。
ジ:成る程――――かしこまりました。
ぺ:まぁ・・・・表立っては、左遷・・・と、いう象(かたち)になってしまうが・・・
今の、お前のその表情(かお)を見てる上では、とてもそうとはいえないな・・・。
ジ:えっ――――そうでしょうか?
ぺ:あぁ・・・まるで、十年来、逢っていない恋人に、逢いたくて・・・逢いたくて、ようやく念願かなったり・・・と、いう時の それ だよ。
今のお前のは・・・な。
ジ:そうですか――――分かってしまいますか。(フフ・・・)
それは、仕方のないことですね・・・・。
ぺ:(ヤレヤレ―――) ・・・・で、その男は、それほどまでに・・・・お前が惚れ込むまでに、すごい男なのかね?
でも、まあ・・・・なんにせよ、今回のところは、お前の一人勝ち―――と、言ったところだな。
ジ:恐縮にございます――――。
〔そう――――今回のこの一件で、一番の得をしたのは、どうも彼女・・・・の、ようで。
それもそのはず、アシュクロフトも言ったように―――表向きは“左遷”なのに、その表情には、どこかしら、笑みをたたえていたからなのです。
こうして―――一人の男の策略と―――それを大いに利用せんとした、一人の女史が―――『ぎるど』―――に、やってくるようなのですが・・・
果たして!一体!ど――――なっていくのでありましょうかッ!!?〕
―――了―――