<さん>

 

(婀陀那、サヤ、ギルドへの帰りの途上にて)

 

婀:うん?! サヤ殿、何か考え事がおありかの?                                 サ:あ、いや・・・何でも。 ただ、ちょいと気になる事があってな。

婀:気になる・・・・事とは?                            サ:まぁ、そんなにたいした事じゃあないんだが、一人だけ 匂い の違ったヤツがいてな・・・。

婀:匂い??                                                                   サ:まぁ、単なるオレの気のせい・・・・なんだけどな・・・。

 

(しかし、このときの気のせいは、決して気のせいではなく。 これから起こってしまう事件の発端となってしまうのです・・・)

 

 

 

(ギルドの終業時間。 方向が一緒ということもあってか、家路の途中まで一緒に帰る、Jokaとサヤ。)

 

J:だからさぁ・・・・きゃはははは!                          サ:あぁ・・・そうだな・・・・。   うん? おや?? お前、確か昼間の・・・。

男:へっ、お礼参りに来たぜ・・・。                                             サ:ほぅ・・・・。

 

J:あの人さぁ、なんだか似合わないボーシ被ってるよねぇ。                       サ:あぁ〜、あいつのあの下な、実は・・・ カッパ なんだ。

J:カッパぁ??                                                               サ:そ、頭のてっぺんだけ毛がないんでやんの。

J:うっそぉ〜〜。                                                             サ:ホントだよ、だってこのオレが剃ってやったもんな。 なぁ?!

男:ちっ! ンのヤロウが!! おぃ、おめーら、出てきていいぞ。

 

(すると、手になにやら持っているのがぞろぞろと・・・・)

 

サ:オィオィ、女一人に、男十数人がかりか? こいつはちとはずくねぇか? ん?

男:っるせぇ! 女だてらにボントウ持ってるヤツに言われたかねぇ!! おい、ヤロウども、加減なんてしねぇでいいからな・・・。 やっちまえぃ!

(その号令とともに一斉に襲いかかる男達)

 

サ:おぃ、Joka。 あんたはお家に帰ってな。

J:え? う、うん。(でも、こいつらなんかへン・・・・ 人 にしては・・・) わぅ! あっ・・・あっぶないなぁ・・・ひ、ひゃあ!!

 

(なんと・・・男の仲間の一人がJokaをも襲いだしたのです)

 

サ:お、おぃ! なにぐずぐずしてんだ!! 早く逃げろっつったろ?!

ちょい、おめーら、一般人に手ェ出すなんて、やけにセコイまねしてくれるじゃねーか。

 

J:う、うぇっ・・・囲まれちまっただよ・・・。(うわ・・・・ちょっとまずったなぁ、どーしよ? ちょっち手加減するくらいならいいかな?)

  しようがないなぁ、ホントに・・・。         おおっと、えェイッ!

 

(Joka、正面の敵の攻撃を軽やかなステップでかわすとともに、流れるような動きで相手を弾き飛ばす。

なんと、それは中国拳法の『太極拳』のそれだったのです)

 

サ:ほう・・・太極拳か。 成る程、自分の身を守る術ぐらいは心得ているようだな。

J:へへ〜ン!Jokaちゃんナメるんじゃあないよーッ!!           えいっ! やぁーっ! と〜〜――ぅッ!!

 

サ:ふふン・・・トんだ誤算だったようだな。 どうする、尻尾巻いて逃げるか??

男:フへへ・・・トんだ誤算はそっちなんだよぉ! おぃ、おめーら・・・芝居はもういいぞ・・・。

 

(すると・・・今まで 人 だった者達の姿が見る見るうちに変わっていったのです)

 

J:うげっ! な・・・なんなんだよう・・・こいつら。(とうとう本性現したみたいね)

サ:お前・・・・その姿、 レブナント か!!

 

    )レブナント・・・・いろいろな解釈あるでしょうが、この世界では不死者のうちの一種、最下級層に属します。 『ゾンビー』と、そうなんら変わりはなし、別名『心を失いし者』。

 

レ:あぁ〜、そうさ、だが、このオレの姿を見ておどろかねぇ・・・・とはどういう了見だ?!

 

サ:この・・・・オレの名をしらねぇ・・・・ってのは、おめぇモグリだな?         レ:な、なんだと?

サ:しらねぇンなら、教えてやってもいいんだぜ? このオレの名は・・・・サヤ。

この町に巣食う闇を滅してきた者・・・と言やあ少しは分かるんじゃあないかな。

レ:な・・・っ?! じ、じゃあ・・・・お前・・・『狩りし者』?!!              サ:(ニヤ・・・)

レ:そうか・・・じゃあお前が・・・裏切り者ってやつかよっ!!

 

J:ち・・・ちょっと? サヤちゃん・・・これどういう・・・??

サ:へっ、こいつぁ年貢の納め時ってヤツかな。 すまねぇな、あんた、こんな事に巻き込んじまって。       ふんっ!

ドスッ!−☆

 

J:あ・・・・うっ。(ドサ)

レ:どうした、お前・・・。 気でもふれたか、唯一の味方を。

 

サ:フフフ・・・・ククク・・・・こっから先は一般人には見せれェからな・・・おネンネしてもらった・・・ってワケさ。

レ:な・・・・ナニ?

サ:安心しろ・・・・もう、お前はこのオレのフィールド内にいる。

 

(そう、そこにいたのは一人の女ではなく、かつて 同胞 を数千、数万と手にかけてきた『命を奪い去りし者』、“ヴァンパイア”の姿があったのです。

やがて、彼女の魔力は開放され、周囲を闇の中へと暗転させてしまったのです。)

 

レ:う・・・うげ!! こ、こいつは・・・

サ:てめぇだけにさびしい思いはさせねぇ・・・残りもきっちりあっちに送ってやるよ。                      レ:く、クソーッ!!

サ:いけねぇな、破れかぶれは・・・。

斬ッ!

 

サ:ふぅ・・・とりあえずは片付い・・・

ド・・・ク・・・ン!

サ:くっ! こんなときに・・・仕方ねぇ。(ガブッ!  ジュルル・・・)

 

(一通りレブナントを滅し終えた後、以外にも自分の手に噛みつき、滴る血を啜るサヤ。

一見おぞましいその光景だが、そうでもしないと自分の理性を保てないようである。

しかし・・・その誰にも見てはならない光景を“見た”者がいた・・・そう、先刻サヤの当身により、気を失っていた(はずの)Jokaである)

J:(なんて事・・・彼女、ヴァンパイアだったなんて・・・)

 

 

 

 

 

 

 

(しばらくして、サヤにおぶわれながら、気が付くJoka)

J:あ・・・・うん・・・                                                       サ:おっ、ようやく気が付いたか。

J:あっ、あれ?? あの人達・・・                                             サ:あぁ〜、あいつらな。 あいつらならオレがとっちめてやったぜ。

J:へぇ・・・そうなんだ、つおいんだね、サヤちゃん。                           サ:へへ、よせよう。

 

J:ねぇ・・・サヤちゃん。 ちょっと一つ聞いていいかな。                       サ:うん? なんだ・・・。

J:サヤちゃん・・・腕の血、吸っていたね。                                     サ:見ちまってたのか・・・・

J:うん、ゴメンね?

サ:何もおめーが謝るこたぁないよ。 見られちまったんなら仕方ねぇ。 短い間だったが楽しかったよ。

 

J:言わないよ・・・                                                           サ:えっ??!

J:言ったりしないよ。 このことは二人だけの秘密にしてあげるね?               サ:そっか、ありがとな。

J:それから、約束! 絶対他の人吸血しちゃダメだよ?                           サ:あぁ・・・分かった。

 

J:そっ! じゃあ・・・ここでいいよ、家の近くだし、ありがと。    いい? 約束だよ? 忘れないでね?

サ:分かってるよ、じゃあな。   しかし・・・不思議なヤツだな、大抵のヤツは、オレが『ヴァンパイア』と知ると腰が引けるってのによ。

 

 

 

(そう、サヤ自身は『ヴァンパイア』。 なのに、それすらも受け入れて、仲間のままでいようとするJoka。

度量が広いのか、それとも、単なるお人好しなのか。 彼女を識るにはまだまだ時間がかかりそうですね・・・・。)

 

 

 

 

 

―――了―――

 

 

 

 

 
まえ                           あと