<肆>

 

婀:さて、妾の準備のほうはよろしいですぞ。 かかってきなされ。

 

バ:(な、なんだ・・・?この女・・・かなり鍛えられていやがる。 なるほど・・あいつらがああいうのも一理ある・・・ということか。)

 

ス・・・・ッ

 

婀:ほぅ・・・。(これがこの者の・・・確かに、臂掛拳じゃが・・・構えに隙がない。 しかも、かなり洗練されておるようじゃしな・・・。)

  (フッ・・・)なれば・・・

 

ス・・・

 

バ:(ナニ?!こ・・・こいつ、相手である、この私の目の前で、目を瞑りやがった・・・?)

    ・・・・・。(ギリィ・・・)

 

ヒュ・・・           ブン・・・           シュッ・・・

サッ!               サッ!               サッッ!

 

 

(婀陀那、なんと目を瞑ったまま、バーディの繰り出す拳を、確実にかわしていく・・・)

 

 

バ:(な!なんだ・・・こいつは!? わ、私の拳が、全てにおいて、尽(ことごと)くにかわされていくとは・・・!)

 

  (はっ!)ま・・・まさか・・・気を? そうか・・・そういうことだったか・・・。 ならば・・・!!

 

 

婀:(うん?!あちら側からの気が失せた・・・どうやら勘付いたようじゃの・・・)

ス・・・

 

 

バ:ようやく・・・目を開けてくれたようだねぇ。 ズイ分となめたマネをするじゃないか、あんた・・・・。

 

 

臾:いやっはぁ〜、それにしても、婀陀那はんもさっすがやで、あん人の攻撃、目を瞑ったままでも、全部かわしはりましたからなぁ?

J:で・・・も、かえってそれは向こうさんを、本気にさせたみたいだね・・・。

 

臾:な、なんやてぇ?

ナ:ほ・・・ホントか?そりゃあ・・・。

J:うん・・・・目を見れば分かるよ。

 

 

婀:これはこれは、済まぬ事をいたしたな。 別段に、からかったわけではないのじゃが・・・。

  に、しても・・・お噂通り・・・でしたな、臂掛拳のほうは・・・。

 

バ:なぁる・・・そういう事か、だから、拳筋も読めた・・・と、こういうわけだな?

婀:いかにも。

 

バ:ふふふ・・・こいつは・・・・。 それは、こちらが失礼したな。 では、改めて・・・

ス・・・・・・ッ

 

 

婀:・・・・。(ふむぅ、こちらのほうの構え・・・今までとは、毛色が違う。 つまるところ、こちらがかの『蛇咬』ということか・・・)

ス・・・・ッ

 

 

ス:(婀陀那っちが始めて構えた・・・成る程、あれは『自在真蔭流』の・・・)

 

 

バ:(ぐ・・・っ!な、なんなんだ!こいつは!! た・・・ただ、突っ立っているだけなのに・・・

それに、なんだか妙に、こいつがでかく見える・・・だなんて!!)

 

 

臾:あれ?どないしたんでっか? あのお二人、全く動かへン・・・

サ:動 か ない・・・じゃあなくて、動 け ないんだよ、互いにな。

ナ:どういう意味なんだ?

 

サ:ま・・・見てな。

 

 

婀:ほほぅ・・・バルディア殿とやら、この妾の構えを見て動かれぬとは・・・これはちと、度が過ぎましたかな?  なれば・・・・

 

    ・・・・これでいかがかな?

 

バ:(こ・・・今度のは・・・これは、明らかにこっちを誘っていやがる、さっきとうって変わって・・・今はスキだらけじゃあないか・・・!!)

  ぅ・・・・おのれえぇ〜い!

シュ   パアァ・・・・・・ン

 

 

(鋭く振り下ろされたバーディの手刀。 しかし・・・素早くスゥェーにてかわす婀陀那。 そして、その刹那・・・)

 

キュ・・・トンッ!

バ・バ・・・・ッ!

 

 

バ:うおっ??!(な、何?!間をつめるのが、異様にはや・・・) ぐ・・・っ!

お:はい、それまで。

 

婀:(ス・・・・) 成る程・・・かなり、よい動きでしたよ、バルディア殿。(ポン!)

 

バ:うぅ・・・っく・・・。

(い、今の・・・左の上段の突きはかわせていたが・・・同時に出されていた、右のヒザは、対処しきれなかった・・・)

 

  ふ・・・・う、参ったよ、強いな、あんたは・・・。

 

 

婀:強い?この・・・妾が?  フフ、だとしたなら、見当違いもはなはだしい。 ここには、妾を一撃で倒せる者など、いくらでもおる・・・。

 

バ:おいおい・・・冗談なんだろう?

 

婀:ハハハ!冗談ではないよ。  いかがです?姐上も一手・・・。

お:ふぅ〜〜、どうしようかしらねぇ・・・。

 

 

臾:ひぃさん、やったってーな!

J:そーだにョ〜〜ン! いっケ〜〜やっレ〜〜!!

コ:おひぃしゃん、ガンバーーみゅ!

 

サ:ま・・・見るとやるとじゃあ大違いだからな。

 

 

お:ぅんっ!もう・・・。   皆さんたら、お上手なんだから。 それじゃあ少しだけよ?

 

バ:・・・。(この・・・お嬢風なのが、皆に推されて・・・?それに、あのサヤまでもが??)

 

 

サ:おい、バーディ。 そいつとやりあう前に、一つだけ忠告をしといてやる。 あまり・・・おひぃの見かけに騙されん事だな・・・。

 

お:んまあっ!サヤさんたら、人聞きの悪い。

バ:・・・・・では、始めようか・・・。

 

お:よろしく、どうかお手柔らかにお願いいたしますね?

バ:あぁ・・・。(まずは・・・・小手調べだッ!!)

 

ビュ・・・ッ!

パシッ!                    ガ・・・ッ    グィ

 

ガ・・・シッ!

 

(おひぃさんの頚動脈近くに手刀を放つバーディ。 しかし・・・逆に、左手一つで払われた上に、その腕を掴まれ、引き寄せられる・・・

そして、足を払われてしまうバーディ。(しかも、腕は掴まれたまま・・・)

 

そう・・・それはまさしく、柾木流体術の一つ『叢雲』である。)

 

すっ・・・たあぁぁ・・・・ん!

 

 

バ:うあっ!(え・・・?) こ・・・この私が・・・難なく投げられ・・・た??

 

サ:あっちゃ〜〜、あいつ、アレだけ言っといたのに、不用意な攻めをして投げられてやんの。

  ま、しかたねぇか・・・。

 

お:あぁっ!ど、どうも申し訳ありません・・・あの・・・大丈夫ですか?

 

バ:あぁ・・・どうも。

  なぁ・・・シホ、こいつはどういう事だ?こんな二人がいるのだったなら、別に私なんかが帰ってこなくても・・・。

 

マ:ふぅむ・・・だが、そのお二人は、部外者だからなぁ。

 

バ:私だったら、スカウトしてでも欲しいくらいだがねぇ・・・。 ま、そっちのほうも、イロイロと事情があるんだろ。

 

 

マ:ま、そういうことだ・・・。

サ:それに・・・まだ、お互いの 奥の手 ッてーのは、見せちゃいないし・・・な。

 

 

お:(なんですって?)

ス:(ふぅん・・・)

婀:・・・・奥の手・・・とは?

 

 

サ:あぁ、こいつはな、今ヤり合って分かったと思うが・・・素手でのタイマンの格闘もかなりできるほうだ。

  だ・・・が・・・、こいつ本来の味・・・ってーのは、サシの勝負じゃあなく、多対一、つまり、集団戦において・・・なんだ。

  何しろ、こいつのもう一つの呼び名が・・・   ウォー・・・

 

バ:サーヤー! 余計なことは言うもんじゃあない!

サ:へへっ、そいつはスマねぇな。

 

バ:まぁったく・・・悪い癖だよ、頼みもしないのに、次から次へとベラベラと・・・

 

マ:さて、こいつの手癖の悪いことが分かったところで、今日はいったんお開きだ。

  明日から、本格的な特訓に入るから、ゆっくり休んでおけ。

 

 

臾:え゛え゛〜〜早速明日からでっかぁ?

 

ナ:ま、そういうなよ臾魅。 あたしらも、早くこの人達に追いつかなきゃならないからな?

臾:ま、それもそうやんなぁ。

 

 

 

(さて・・・ひょんな事から、シホに呼び戻された レイテル=バルディア 。

『スレイヤー』と呼ばれた彼女の実力は、まだまだ未知数なところがあるようです。

(それに、サヤの言いかけた、彼女の影の実力というのも気にはなりますが・・・)

 

それでは、今回はこの辺で・・・)

 

 

 

 

 

 

――――了――――

 

 

 

 

 

あと