【其の二;訪問者】
≪壱;朝帰り≫
〔昨晩―――とあるところで一晩過ごしてしまった素浪人。
その“とあるところ”も、強ち『好きな女性』のトコロ・・・とも、思えなくもないのではございますが
果たして―――??
と、まあ、そんなこんなで、朝帰りをしてしまいまして、
大家である、美し怖いお姉さんに、こっぴどくヤられでもするものか―――と、思いきや、
なんと、何のお咎めもなく、仲良く二人して朝餉をつついているようでございます。
―――と、そういいたいところなんではございますが、どうも、その雰囲気・・・ちょっと―――〕
素:(ぱく―――もぐ・もぐ・もぐ・・・)(ちら)
し:(もぐもぐもぐ・・・)
素:(ぱく―――もぐ・もぐ・もぐ・・・)(ちら)
し:(もぐもぐ・・・もぐ・・・)
なんなんですか―――人の顔、ジロジロと・・・
素:えっ―――あっ・・・いや、そのぅ―――
―――すんません・・・。
し:・・・あんた、聞いたところによると、立ちx便したところを、現行犯で捕まったんですってね―――
素:う゛・・・いや、そのぅ――――
し:まあ・・・生理現象な、もんで? もよおすのは仕方がないとしても―――
やってるところを見られちゃ〜あねぇ〜??
これでは、生まれ育った―――っていうか、躾の方も知れたもんよねぇ??
素:・・・・そだよね―――(へらへら)
し:(ムカッ#)あたしはねえ!皮肉を言ってんのよっ!!
それを・・・全く―――なにへらへらしてるんですかッ!!#
反省の色がないぢゃあないのよ゛ッ!!##
素:は・・・はぁぁ〜〜い・・・(こ、こえぇ〜よなぁ〜ホントに・・・)
〔ホレホレ、いわんこっちゃない―――
―――と、まあ、あのように皮肉たっぷりで言いましても、落ち込んで堪(こた)えるどころか、
逆にへらへらしてしまう辺り―――どういう神経していたら、こんな風になるのか、
お気楽なのは、その顔だけにしてもらいたい限りのようでございます。
それでも―――この人の胸のうちは、どうなんでございましょうや―――?〕
し:(でも・・・あの時―――足を挫いて動けなかったあたしは、こいつの機転のお蔭で助かった、
それを―――・・・あたしは・・・・)
〔そ〜〜う、とどのつまりはそういうことなのです。
この“しの”なる女性は、今、巷に噂になりつつある、義賊の=紫電=なわけなのですが、
珍しくその日はドジを踏んで、足を挫いてしまい、その場を動けなくなってしまったところを、
なぜか酔っ払っていたこの素浪人のお蔭で助かった―――と・・・
でも、感謝するより先に、皮肉たっぷりの言葉に、怒鳴り声―――だ、なんて・・・
どうやら、素直にはなれないお年頃のようでございます―――〕
し:(うるさいわねぇ・・・語り手がぁ―――
でも・・・それにしても、立ちx便だけ――なのに、一晩の逗留・・・だ、なんて、
少し、何でもきつくないかしら??)
〔そうなんです―――確かに“立ちx便”は、現代においても『軽犯罪法』の適用に引っかかること―――
でも、見つからなければ〜〜〜―――なので、そうそう重い罪にはならないはずなのですが・・・
あ、それでも、“注意”くらいは受けるんですよ?一応は―――ね。
―――と、いうことは・・・どうやら今回の出来事の奇怪性は、そんなところにもあるようでございます。〕