≪捌;“六文”・・・その意味≫
〔―――と・・・その前に??〕
左:では、その前に――― 一つ預かり物などをしてはくれまいか?
し:は?? 預かり物―――ですか??
あたしは一向に構いませんが・・・一体ナニを預かるので―――・・・
左:(フフ・・・)これ―――ですよ・・・
☆〜〜チャリ・チャリン〜〜☆
し:(あらっ?!)コレは―――・・・“六文銭”??
あ、あの〜〜―――・・・これは??
左:これを―――蝉之介に渡して下さらんか・・・
し:(え・・・?)これを蝉之介に―――・・・って、
ひょっとして、左近様があいつに用のあるの・・・って、借りてたお金を返すためだったのですか??
左:――――いや・・・違う!!
これを、あやつに渡してくれさえすけば良いのだ・・・。
それで―――何の事かは、あやつには分かる・・・
し:は―――はあ〜〜・・・。
(この・・・“六文”に、一体何の意味が―――)
左:それに―――
し:はい?
左:・・・・いや、なんでもない。
〔さても―――左近の言いたかったこととは、一体なんだったのでしょうか、
しのには知る由も、術もなかったわけなのですが―――・・・
敢えて、語り手から言わさせていただきますと―――
“しの・・・これは、そなたがあやつに渡す事、それ自体に意味があるのだ”
―――と、いうことだったのであります。
この、意味深な言葉から暫らくして・・・・〕
蝉:あぁ〜〜―――あ、ヤレヤレ・・・まァた坊主だよ。
おいらって、釣りの才能ないのかねぇ。
ただいま〜〜―――戻りましたよ・・・・ッと。
―――――お゛っ?!!
左:(にまぁ〜)
みぃ〜〜つぅ〜〜けぇ〜〜たぁ〜〜ぞぉおお――――!!##
蝉:あっあっ―――ああ・・・て、定華! お、おめぇ〜〜なんだってこんなトコにィ――――
――――ほぅわ゛っ!!
し:よぉ〜くぅ〜もぉお〜〜!! あたしまで謀(たばか)ってくれましたよねぇぇ・・・###
お蔭で、左近様の前で恥ィかいちゃったぢゃないの゛っ―――!!
蝉:(ガタガタブルブル)し・・・・しゅ、しゅ、修羅が―――二人・・・
し:ほっ!ほっ!ほっ!! こぉ〜んなうつくすぃ〜修羅がいて溜まるもんですかッ!!ぇえ゛っ?!!#
左:フッ―――フフフ・・・怖いぞぉぉ〜?しのどのは―――・・・
このワシの怒りが、ちんけなものに思えてくるほどに・・・・なぁ?
し:フフン――――・・・(ひょいっ)
チャリ チャリ チャリ〜ン☆
蝉:(ん??)これは―――・・・“六文”?
し:確か―――『六文銭』といえば、ヨモツヒラサカを流れる河を、舟で渡るときに必要な最低限の『渡銭』。
これで―――・・・あんたもナニ気兼ねすることなく、涅槃に旅立てるということですよねぇ〜〜?
蝉:(これを―――どうしてしのが・・・)
(はっ!!)さ、左近―――?!!
左:――――・・・。(ぷいっ)
蝉:(・・・・そうかい―――そういうことかい、すまねぇのな。)
し:ナニそこで、感傷にひたっとンのぢゃあ〜〜!おんのれはぁ―――!##
天 罰 覿 面 !!
〔今まで、どこをほっつき歩いていたのかと思ったら、なんと釣れもしない釣りに興じていたご様子の素浪人。
しかも、今回の釣果も“坊主”とは・・・いい加減あきらめたほうが、いいんではないでしようかねぇ。
剰(あまつさ)え、戻ってみれば修羅二人―――
おまけに、大家の綺麗なお姉さんに“六文”を投げつけられたりして・・・
でも―――前(さき)にも申し述べましたように、何の事かは瞬時にして分かる蝉之介・・・
それゆえに、その場にいた左近に説明を求めようとしたのですが―――連れないもので、
彼はすぐそっぽを向いて、無視してしまったのであります。
しかし―――その彼の意図さえも、瞬時にして分かったようでございます。
でぇも?? この人の怒りは収まるところを知らず―――と、いいましょうか、
一通りの憂さを晴らしましたようで・・・その後の三者三様としては、実に対照的だったと言えます。
では、最後のお件を、御覧になっていただきませう――――〕
し:(ンフ―――!!)あ〜〜すっきりしたぁ―――!
蝉:――――・・・。(ボロ)
左:(ふふ・・・これで、ワシの溜飲も、少しは下がったというものじゃ―――
礼を申すぞ・・・しの―――)
蝉:左近―――てめェ〜〜このヤロウ・・・日和見やがったな#
左:は―――さぁて、何の事やら・・・♪
あ、おあとがよろしいようでぇぇ〜〜――――
――つづく――