第一話  出 会

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(それは・・・・・、とある、東欧風の片田舎の町・・・・・、というよりはすでに廃村に近い村である。

そこに、黒装束・黒いフードを、目深に被った、性別不詳の者が現れる・・・。よく見てみると、肩口に、深い切り傷のようなものが見受けられる・・。)
?:廃村・・・・・か、人が居なくなってから、まだ間もないな・・・・。
  ・・・・・・ぅん?!

(そこは・・・・人が居なくなったわけではなく・・・、見るからに、異様な者が来た・・・・というので、皆、息を潜めているようなのである・・・。)
?:(・・・・、こんな姿だけで・・・・とは、随分と忌み嫌われたものだな・・・・・)
?:『おい・・・・これからどうする・・・・・?』
?:どうもしやしない・・・・、この傷の手当てもしなければならないからな・・・・、
  どこか休めるところを探そう・・・。
?:『ふぅむ・・・・ならば、あの大樹の陰ではいかがかね?』
?:ふふ・・・、どうした、最近は、随分と、まともな意見を出してくれるようになったじゃないか・・・。
?:『なぁに、ワシも、お前の体を借りている身だからな、せめてものお礼・・・・・といいたいところだが、
  実は、先程からお前の頭の中がうるさくてかなわんのだよ・・・・』
?:(ふぅ・・・・・)

そいつは済まなかったな・・・・・。じゃあお喋りは、もうお終いだ、これ以上周りから変な目で見られたくはないからな・・・・。

(そして、大樹の根元で・・・・)
?:ふぅ〜〜・・・・、
  (ここで・・・・・・、こうしていればしばらくは大丈夫だろう・・・・・、今は、傷口を塞ぐ事に集中しよう・・・・)

(そして、彼の者が瞑黙(めいもく)して、小一時間が過ぎた丁度その頃、隣の集落へ使いに出ていた少女がそこへ通りかかる・・・・・・・・)
少女:(トコトコ・・・・)

  ・・・、あ、(あんなところに人が・・・・?)

  ・・・・・、あぁ!(なんてひどいケガ・・・・そうだわ・・・・)

 

(少女、買出しに行った荷をそのままに、近くにあった清水の涌き出る場所まで行き、持っていた手ぬぐいと、コップに水を浸す・・・・)

少女:あの・・・・もし・・・もし?(そうだわ、このフードを・・・)

   あ・・・!!お・・・女の・・・人?

 

(そう、一見して、男に見えた者の正体は、実は女性だったのである。)

?:(・・・・、うん・・・・?誰だ・・・私の体に触れているのは・・・・・・)

  んん・・・・。

 

(ここで、彼の者、うっすらと目を開ける・・・・)

?:だ・・・誰だ・・・君は・・・・

少女:あ・・・・、気が付いた・・・(なんて・・、綺麗な、(あお)い目・・・)あ、あの・・・、大丈夫ですか?

   ひ、ひどいおケガをなさって・・・・、あの・・、これ・・・・お水・・・・・。

?:うッ・・・うう・・・(フー、フー、)

  よ・・・、余計なお世話だ・・・、それに、私に関わっているとロクな事がない・・・・(フー、フー、)

  わ、悪いことは言わない・・・・、早くここを立ち去りなさい・・・・。

少女:・・・・・!!

   も、申し訳・・・・・ありませんでした・・・。すみません!!

 

(少女、小走りでそこを立ち去る・・・・)

?:(いいんだ・・・・これで、いいんだ・・・・・これで・・・・。)

?:『後悔しているんじゃあないのかね?“アルディナ”、他人からあんなに優しくしてもらえたのは、初めてなんだろう?』

ア:ふ・・・、余計なお世話だ“ソロン”・・・、もうこれ以上厄介事に首を突っ込むのは、いい加減うんざりなんだろう?

ソ:『死ぬな・・・・、あの小娘・・・』

ア:ナニ・・・・?

ソ:『感じるのだよ・・・、これも、我が魔族独特の性質のお陰かもしれんがね、近しい将来、あの娘は死ぬ!確実にな・・・』

ア:“近しい”・・・・“将来”だと・・・?一体いつの事だ・・・・?

ソ:『この2・3時間後・・・か、或いは、明日・明後日までには・・・・。』

ア:そ・・・・そんな近くなのか?(ま・まさか・・・!?)

  ヤツが?“ブエル”があの村を??おい!ソロン!返事をしろ!(く・・・っ!なんて事だ・・・)

  い、いや・・・、これでいいんだ・・・、正式に“依頼”のない村を守る義務は、私には・・・ない・・・・。

 

(“だが、確実にターゲットに止めを刺さなかった、お前はどうなのだ!!”そう、ソロンが言っていたような気がした・・・。)

ア:ふ・・・、なんとも、非道、冷酷な女だな・・・私は・・・。

  うんっ?!あの子は・・・?

少女:あ・・・、あの・・・、すみません、ごめんなさい・・・、ああは言われたものの、やはり放っておけなくて・・・。

ア:・・・・、(この子・・・)

  ふん、好きにするがいい、その代わり、私の為にトラブルに巻き込まれても、私は知らないからな・・・。

少女:あ・・・、は、はい、それでよろしければ。

ア:ならば、契約成立だな・・・、すまないが、(うまや)はあるかい?

少女:あ・・・、は、はい、小さいですが、それでよろしければ・・・

ア:私は、そこに身を潜ませてもらう、すまないが、君のご両親には内緒にしておいてくれないか?

少女:は、はい・・・、分かりました。

  では、すぐにでも・・・・。

ア:いや、今すぐはやめておこう、村の人たちの目もあるだろうからな・・・・・、夜半にでも、潜りこませてもらうとするよ。

少女:あの、それでは、せめて目印でも・・・、

そうだ、紅いゼラニュームの花を窓辺に飾っている家がそうです・・・。

それでは・・・。

 

(そして、夜半過ぎ・・・・)

ア:さて、そろそろ行くとするか・・・・。

ソ:『気をつけろ・・・・・。』

ア:な・・・、おぃ!ソロン!!クッ・・・、また一方的に忠告だけ残して・・・。

・・・・・、ここだな?

ふぅ〜、しかし、こうして雨露(あまつゆ)だけでも(しの)げるだけでも拾い物だな・・・。

(さて、ブエルの方だが・・・、あいつも、あの深手だ、まず、ここ二・三日は回復に努めるだろう・・・・。

それより、不気味なのはソロンの忠告の方だ・・・、一体何に気をつけろと・・・・?)

 

(アルディナ、静かな休息に入ってから、二・三時間経った頃、にわかに、異様な物音、気配に目覚める)

ア:ハッ!!な・・・、なんだ?!これは・・・、ブエルか?!く・・・ッ!

 

  幻影透視<ビジョン・アイ>!

 

  (どこだ・・・?どこにいる・・・?あっ!!あれか!・・・、なんだ、あれは・・・、この近くで家畜を、喰らっているのか・・・・?)

  はあっ!はあっ!

  (な、何てことだ・・・、もう既に、この村に闇の住人共が巣食っていたとは・・・!

ま、まさか!ソロンが言ってた“気をつけろ”とはこの事か・・・?)

ソ:『ご明察、この村に入った時から、ワシと同じニオイがしていたからな、よもや・・・とは思っていたが・・・。

まァ、とるに足らぬ・・・・、ただのチンピラよ・・・。』

ア:な、なら、今すぐにでも『封殺』を!!

ソ:『止めておけ・・・!今はまずい・・・、それよりも、正体をバラしてから、始末するというのも、一興なんだがね・・・・。』

ア:なに?!どういう意味だ、それは・・・。

ソ:『何、すぐにでも分かるさ・・・』

ア:・・・・・・・・・・・・。

ソ:『・・・・・・・・・・・・。』

ア:そうか、分かった、無理には聞くまい。

ソ:『それが、悧巧(りこう)というものだ』

 

(そして、夜が明け・・・・・)

少女:あの・・・、昨晩はよく眠れましたか?

ア:あぁ、お蔭様でね、それより、表の方が騒がしいようだが?

少女:えぇ、どうも、昨晩、隣の家の(うまや)に、狼が出たらしくて、大事にしていた馬が食べられたようなんです・・・。

ア:そうか・・・、すまなかったな、変な話をさせて・・・。

少女:いえ・・・いいんです、それよりも、どうしてそのフードとらないんですか?

ア:私の・・・・・顔は醜いからな・・・・。

少女:え・・・っ?そんなことはないですよ、綺麗な顔立ち、それに、まるでエメラルドのような目をして・・・・・

ア:すまないが、今、一人にしてくれないか・・・・・

少女:あ・・・、す、すみません、私、何かお気に(さわ)る事でも・・・?

ア:いや、そうじゃあない、ただ、今は一人になりたいんだ。

それに、君の親にでも知られるとまずいだろうからね・・・、さ、早く帰りなさい。

 

(ここで、少女、バツが悪そうに(うまや)を後にする・・・・・。)

ソ:『ふふふ、なかなかにいい娘じゃあないか、お前のことを誉めておったようだが?』

ア:からかうのはよしてくれ!!

ソ:『だが、彼女の言っている事にウソはない、ワシでもしゃぶりつきたくなるようないい女だからな?!お前は・・・・、ただ・・・・・』

ア:ただ、私が『ハンター』でさえなければ・・・・、と言う事だろう?いい加減、その笑えない冗談は止めてもらえないか?

ソ:『ふふ・・・・、そいつは失敬・・・・』

ア:・・・・・・(ふぅ、全く・・・)・・・・・・。



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