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(しかし、結果としては、その優しさは、とある者に、こんな思いを抱かせてしまう事になったのです。

その、とある者とは誰か・・・・それは・・・

 

エギドナにて・・・・

いつもは騒がしく飲んでいるアダナが、珍しく、物思いに耽った様な面持ちで、静かに酒をあおっています。)

 

 

ア:・・・・・・・。(グビッ!) (カララン・・・)     ぷふぅっ!

  (へヘ・・・ッ、なんてザマだい・・・張り切った挙句に、

あいつの・・・・ヱルムのヤツの、足を引っ張っちまう羽目になるなんて・・・情けねぇ・・・。)

 

何が・・・・何が『死せる賢者』様・・・だ、愚者の方が、よっぽど、お似合いじゃあねぇか・・・!!

(グイッ!)       ぷぷぅっ!(カララ・・・ン)

 

 

  ・・・・かといって、ここでグチっても始まんねぇや・・・

ヱルムのヤツは、着実に力つけてる・・・っていうのに・・・な。

 

このままじゃ、私が足を引っ張りかねない・・・・一体どうすりゃ・・・・・

 

 

マ:お客さん・・・・どうすんです?

ア:え?あ・・・あぁ・・・・もう一杯・・・・。

 

マ:・・・・・・はいよ。

ア:・・・・どうも。(グイッ!) (カラァ〜ンー☆)

 

 

 

ア:(旅に・・・・出るか・・・・、自分の力を身に付けに・・・・。

  でも、どこにしよう・・・この近辺じゃあ、あらかた踏破してるしな・・・・

  

  どこか・・・・遠い・・・・誰もまだ行った事のない処・・・・。

  ぅん?待てよ・・・そういえば東の方面は、あの深い森より先には、誰も行った事がない、って言ってたな・・・・。)

 

  行ってみるか・・・・あそこより先に・・・!!

 

 

マ:へぇ?何か言いましたかい?

ア:いや、なんでも・・・おやっさん、お代ここに置いとくよ。

 

マ:あぁ、毎度・・・。

 

 

(一人反省会も終わり、アダナ自分の家に・・・・・。

でも、帰ったのはいいのですが、お酒も入っているせいか、早々に寝付いてしまったのです。)

 

エ:あっ、アダナ様、お帰りなさい。

ア:はいよ、ただいま。  あ、早速で悪いんだけど、寝るよ私ぁ。

 

エ:えっ?!そうですか?で、でも・・・お食事や、お風呂は?

ア:ああ、今日はさ、疲れてそれどこじゃあないんだ・・・・お休み。

バタンー☆

 

エ:はい・・・・お休みなさい・・・。

 

 

 

(その・・・夜半過ぎ、エリアも寝息を立てて寝静まった頃・・・・。

 

なにやら、家の中でゴソゴソと動く影が、確認されるようです・・・・。)

 

ガサ・・・・・・                             ゴソ・・・・・

カタ・・・・ンッー☆

?:・・・・!!!                ・・・・・・・。(――;;)

 

エ:むにゃ、むにゃ・・・・・・(すぅ・・・・すぅ・・・・)

?:・・・・・・。(ホッっ・・・・)

 

サァァァ・・・・・・・・・・

 

 

(月を隠していた雲が一気に晴れ上がり、その影を煌々と照らし出して行きます。

 

すると、それは・・・・

疲れたからと言って、エリアよりも先に、床についたはずの、アダナなのでした。

 

そう・・・彼女は、この機会を狙っていたのです。

エリアが起きている内に出たのでは、きっと彼女は、自分の後をついてくる・・・・

だから、エリアが深く寝静まった、今のこの機会を逃しては、それは永遠に巡ってこない。

 

そのことを確信しながら・・・・。)

 

 

ア:・・・・。

(この子には・・・・エリアには悪いけど・・・これは、私自身の問題・・・!!

  一緒についてこさせるなんて、出来やしない・・・。)

 

  でも・・・明日の朝・・・この私がいない事を知ったら・・・・この子は・・・・!!

 

 

エ:う・・・・うぅ〜〜ん・・・アダナ・・・・様ぁ・・・。(すぅ・・・)

 

 

ア:(・・・・・ゴメン!ゴメンよ・・・・エリア・・・・!!!)

 

 

(寝言にまで、慕ってくれている自分の名を言い、静かに・・・深く眠る少女・・・・。

その少女の寝顔を見、揺らぐ決心と、涙を飲み込み・・・・・

 

こうして、彼女は、誰彼知られる事なく、この地からいなくなってしまったのです・・・。

そう・・・・一つの書置きをそこに残して・・・・。

 

 

 

その、あくる朝。)

 

 

ヱ:はぁぁ?!なんですってぇ??!  ま・・・まだアダナさんは、来てないって言うのですか!!?

 

オ:はっ・・・・はい・・・。

 

コ:ヱルム、そろそろ時間よ・・・。

 

ヱ:まぁぁったく、あのアホは!!緊張の糸ぷっつり切れると、すぐフラフラするんですからねぇぇ!##

 

 

(そう、この日は、ジョカリーヌの洞窟の攻略に、参加した者40名が、

晴れて正ハンターに昇格したという、壮行式の日、なのですが・・・

こんな大事な日に、アダナが顔すら見せていないというのです。)

 

 

ギ:ま・・・まあまあ・・・・あれ一人のせいで、式を取りやめにする・・・というのもなんですから・・・。

 

ヱ:(はぁ・・・・)分かりました。 では、式終了と共に、私が直に問い質(ただ)しますから。

  いいですね・・・・それで・・・・。(^ブ^#)

 

 

コ:(ぅわぁ・・・・サイアク。(―フ―;;)

レ:(我々も、余りこの人を怒らせないよう努力せねば・・・・(―w―;;)

 

 

(そして、壮行式・・・・)

 

 

ヱ:え〜〜皆さん、皆さんも、これより正式な、ギルドのハンターになれた事ですから、

今まで以上に、命の危険にさらされる事になるでしょう。

 

ですが、そこで恐れてはなりません、挫けてはなりません、

かつて先人達が、歩み続けたように、我々も同じ道を歩むのですから・・・。

 

それでは・・・

我らに栄光と、祝福を!!

 

解散!!

 

 

コ:うふふ、中々素晴らしい演説でしたよ?ヱルム。

ヱ:・・・・・。(▼w▼#)

 

コ:あ・・・ッ、あの〜〜ヱルム???(^フ^;;)

 

ヱ:・・・・私は、これから大事な用がありますので・・・後後の事はよろしく頼みましたよ?

 

コ:(あ・・・・わぁ・・・・すっごい無理しちゃって・・・・)

  あ、あの、それでしたら、不肖私もついていきますので・・・

 

ヱ:いいえ!ついてこなくても結構ですっ!!#

コ:いえ!ついて行かさせて頂きますッ!(犯罪未然に防ぐ為に(^^;;)

 

ヱ:もぅ・・・(イラ・・・・) 勝手にしなさいッ!#(プリプリ)

 

オ・ギ・レ・ヴ:(がんばれ・・・・コーディ・・・・。)

 

 

 

(そして、アダナの家にて・・・・)

コンコンコンー☆

 

 

ヱ:ちょっと!お邪魔させていただきますよっ!!

 

エ:・・・・・どうぞ・・・・中にお入り下さい・・・・・・。

カチャ・・・・

コ:失礼しまぁ・・・・す。

 

ヱ:(あら?)エリアちゃん・・・どうしたの?まだこんなところにいるなんて・・・・

  今日、エギドナのバイト、お休み??

 

エ:・・・・・・・いいえ・・・・・・・。

 

ヱ:・・・・そう。

(どうしたのかしら・・・・いつも、太陽のように明るいこの子が・・・・まるで元気がないなんて・・・)

 

ところで、アダナさんはどこなのです?あの人・・・ったら、大事な式、すっぽかしちゃって・・・・

 

 

エ:・・・・・いません・・・・・・。

 

コ:(えっ??!)

ヱ:ええっ?!なんて・・・言ったの?今・・・・。

 

エ:いない・・・って言ったんです・・・・。(じわ・・・っ)

 

ヱ:(いない??)いない・・・って、どういう事なの?一体・・・。

 

 

(涙を流しながら、首を横に振るうエリア・・・・・)

 

 

エ:分かりませんっ・・・!  朝・・・・私が起きてみると、あの方もういなくて・・・・。

  それで、珍しく、早くに起きられて散歩でもなさっているのかなぁ・・・・と、思ってたら・・・・

  この・・・・手紙が・・・・・テーブルの上に・・・・。

 

ヱ:(なんっ・・・ですって?)て、手紙??(ハッッ!) こ、これね・・・?

 

 

(そこには・・・・紛れもなく、彼女自身が筆を取り、書いた手紙があったのです・・・。

 

いつも、見慣れた書体・・・・でも、なぜかその手紙は、

そのところどころが、字体が崩れたり、また何かで滲んでいたり・・・・

書いた者自身も、涙ながらに書いたものである事が、そこからは、すぐに読み取る事が出来たのです。

 

それでは・・・・その手紙には、なんと書かれてあったのか・・・・

それは・・・・)

 

 

 

私は・・・・これから旅に出ようと思います。

誰の為でもなく・・・・自分の為に・・・・

 

いきなり消えてしまう、こんな自分勝手な私を

許して欲しいとは思いません。

 

でも・・・きっと必ず・・・

今より大きくなって戻ってきます。

 

だから・・・泣かないで

待っていて下さい。

 

 

アルディナ=フォン=ガラティーナ

 

 

追伸

エリアへ・・・・

突然に、こんな事を思い立ってしまって、済まないな。

だけど、今のままの私じゃ、あいつの重しになりかねない。

賢いお前なら、きっと分かってくれると思う。

だから・・・・行ってきますは、言わないでおくよ・・・。

 

 

ヱルムへ・・・・

壮行式、出れなくて、正直済まないと思っている。

けれど、結果がどうであれ、あの時は、お前の足を引っ張っちまったのは事実だ。

こんな不出来な友を許しておくれ・・・・

何年かかるかは分かんないけど、今度会う時には、

お前をサポートできるくらいには、なって見せるよ。

それまで・・・・待っていておくれ、

我が親愛なる友よ・・・。

 

 

 

ヱ:そ・・・・そ・・・んな・・・。(ガク) (わ、私ったら・・・なんて恥ずかしい・・・・)

  この人は・・・自分を磨くために旅立った・・・・というのに・・・・

  私は・・・・この人を疑う事しかしなかった!!        バカよ・・・・私ったら・・・・バカよ!!(ツッ・・・・)

 

コ:ヱ・・・ヱルム・・・・。

 

 

エ:(ヱルムさん・・・・アダナ様・・・!!)(グイッ!)

  だ・・・・大丈夫です・・・私なら・・・・。

  それに、その手紙に書かれてあったでしょう?泣かないで・・・待つように・・・って・・・・。(グスッ・・・)

 

ヱ:(エ、エリアちゃん・・・!!)

 

エ:だから・・・私、もう泣くのをやめます・・・。(グズ・・・)

  だって・・・・アダナ様が帰ってきた時に、泣いていたのが知られますと、

あの方、ひどく怒りますから・・・・ね?(ニコ・・・)

 

 

ヱ:そうよね・・・・きっと・・・・・きっとそうよ・・・!!

 

 

 

愛する者を・・・・・信頼する者を捨て、

たった一人で旅立ったアダナ・・・・。

 

彼女が、再び、この地に足を踏み入れる事になるのは、

まだまだ、長い長い年月が必要となってくるのです・・・・。

 

 

 

 

 

 

――――了――――

 

 

 

 

あと