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―――フレンス・ブルグより北東 ペトロ・グラードの古城にてー――

 

カ:フフフフ・・・・、ようやく来たか、“我が古き友”よ・・・。

  私は忘れてはおらぬぞ!   この私を・・・かように醜く、か弱き存在にしたお前を!!

  

分かっておるな? 我が僕よ・・・・。

 

(カミイラに呼ばれ、彼女の玉座で跪くものあり・・・。  その者こそ、誰あろうエルミナールだったのです)

 

ヱ:お任せください、カミイラ様・・・。  あのような憎き存在、必ずやこの私の手で!!(ハアア・・・・)

 

カ:フフフ・・・よくできた。 さぁ、行って皆殺しにしてくるがいい、エルミナールよ・・・・。            ヱ:ははっ!(シュ・・・・ン)

 

カ:さぁて・・・かつての友が敵として出て来た時、この女はどんな表情をするんだろうねぇ・・・(クククク・・・・)

  非常に愉しみだよ・・・。

 

 

アーッハッハッハッハ!

 

 

(さて、一方その頃・・・アダナ達はというと。 この古城の大広間で群がる者達を駆逐していたのです)

 

ア:はぁーっ! そらそらそら!  へんっ! なんだよ! こんな手ごたえのないのは久しぶりだねぇ!!

 

ジ:これ! あまり調子に乗るではない! こやつらは所詮雑魚、もう少し力の配分というものを考えぬか!

ア:だっ・・・・だけどよぅ・・・。 ヱルムのヤツは、この先にいるんだろ? ちんたらやってたらそれこそ・・・・

 

(するとその時、どこかで聞いたような笑い声が・・・)

 

ヱ:あっはっはっは!   力の配分も知らないなんて・・・・バカか、お前は・・・。

ア:んな! なんだ・・・・・・・・。  ああっ! ヱ、ヱルム・・・!  ヱルムじゃないか!!

 

ヱ:人の名を気安く呼ぶんじゃないわよ!  全く不愉快にさせてくれる・・・・。

 

(そして、ここでジョカリーヌが、彼女の身に降りかかった哀しむべきある災難に、いち早く気付いたのです・・・)

 

ジ:(うんっ?! あ・・・あれは・・・・) く・・・・っ! もはや手遅れのようじゃ・・・・。

エ:どうなさったのです? ジョカリーヌ様・・・。

ジ:エリア殿か・・・・。 ようくエルミナール殿の首筋を見てみなされ・・・。

 

タ:何だ?! 何かに・・・・噛まれた跡のような・・・・。

ジ:然様・・・。 あれが、ヴァンパイアに噛まれた跡なのじゃ・・・。

 

ア:な・・・・なんだって・・・そ、それじゃあ・・・・。(わなわな・・・)

 

ジ:・・・・残念ながら、もう エルミナール という者は存在せぬ・・・。

あすこにおるのは、ヴァンパイアに血を吸われて、身も心も それ に成り果てた者の姿なのじゃ。

 

エ:ええっ?! そ・・・それじゃあ、ヱルムさん・・・・死んじゃったの??

 

ヱ:ふふ・・・そうさ、私は死して新しい力を手に入れたんだよ・・・・。 喰らいなっ!

『フレイム・ヴァナー』!

(別名『炎の吐息』。 行使者の口から炎を吹き出す 術 というより 技)

 

ゴウッ・・・!

 

ジ:なんと・・・! あれは、エルミナール殿の本来の力では・・・・・

タ:く・・・・っ! ヱルムっ!!                                         エ:わうっ!! ほ・・・炎・・・

 

ア:そ・・・そんな・・・。 な、何かの間違いだろ?

  わ、私だよ・・・、ほら・・・・一緒に仲良くケンカしたり・・・・飯 食ったりしたさぁ・・・・アダナだよ・・・

  思い出してくれよ・・・・ヱルム・・・・。

 

ヱ:(な・・・っ! こ、こいつ本物のバカか? 私の繰り出す炎をよけもせずに・・・・それに、なんだと? アダナ? アダ・・・)

ズキッ!

  うっ・・・!   な、なんだ・・・今のは・・・。  (一瞬あいつのことを想っただけで頭痛がするなんて・・・?)

  く・・・・そっ! 今のは単なる気の迷いだ!!  死ねっ! 『フレイム・ヴァナー』!!

 

ゴオオォォッ!!

 

ア:ううっ・・・!

コト・・・

(アダナ、懐より何かを落とす・・・それは・・・?)

 

エ:ああっ! アダナ様・・・あの小箱、今回も持っていらしたの・・・?

ジ:いかがした? エリア殿。 今アルディナが落とした小箱が何か・・・?

 

エ:あの箱・・・。 本当は、一ヶ月前に、ヱルムさんに直接手渡すはずだったんです・・・・。

  それが・・・急にヱルムさんいなくなられて・・・・。

ジ:何? 一ヶ月前・・・じゃと??

 

エ:はい、実はその時がヱルムさんの 誕生日 だったのです・・・。

 

ヱ:な・・・・何? 私に・・・誕生日・・・だと?  ば・・・バカな・・・私に誕生日など・・・あるはずが・・・ 

ズキッ!

  ううっ!(な・・・・ど、どうしてまた・・・)

ズキ・・ズキッ!

  ううぅっ!!(ガク・・・)

 

ア:ヱルムーっ!

ガバッ!

(アダナ、エルムに駆け寄り強く抱擁・・・)

 

ア:お、遅くなっちまってごめんよ・・・。 一ヶ月遅れだけど・・・・誕生日過ぎちまったけど・・・

ハッピー・バースデイ・トゥ・マイフレンド・・・

 

 

ヱ:な・・・・に? フレン・・・ド?!  トモ・・・ダチ・・・??!

 

 

バチ・・・ッ!

―――お前を・・・待っていたのさ・・・―――

 

ジィ・・・・バチ・バチッ!

―――私に委ねて・・・・堕ちなさい・・・―――

 

バチ・・・・イッ!

―――我が僕と成り果てるがよい!!―――

 

 

バチ・・・・ィ・・・・ィ・・・・ン!!

 

ヱ:う・・・うわあぁぁっ! よ、寄るなぁっ! わ、私を・・・・妨げる者共めぇっ!!(バ・バ・・・バッ!!)

 

ジ:ぬうッ! まずいっ!  あの状態で放つ気じゃ・・・・あれを!!

 

ヱ:もう遅いッ! 消えてなくなるがいい!   『六魂封滅陣』!

 

ア:ヱッ・・・ヱル・・・・・・・・(シュイィ・・・ン!)

ソ:(クワッ!) ヌウゥゥン!!

ジャキン!        ドシュィッ!

(ソロン、アダナから強制転換するなり『覇蝕の剣』を創造、そしてその兇剣をヱルムに向かって振り下ろす)

 

ヱ:ぐぅ・・・ッ! な、何者!!?

ボト・・・・・        ・・・ブシュウゥゥ・・・

(そしてヱルムの体から離れた左腕はすぐさま灰に・・・・が、しかし・・・?)

 

うじゅるるる・・・・       ・・シュウゥゥゥ・・・・

(すぐに再生してしまう・・・)

 

エ:ああっ・・・!! ヱ、ヱルムさんの腕が・・・                               ジ:(なんと・・・もう既にあれだけの能力を・・・・)

 

ソ:危ういところであったわ・・・。 瞬時に変わっておらなんだら・・・・。

  娘よ、こやつはお前の術をあえて受けようとしたのだぞ!! それでもまだ思い出さぬか!!

 

ヱ:(はぁ・・・はぁ・・・) ふ・・・ふふ・・。 そ、そんなやつ・・・いなくなってしまえばいぃ・・・。(ズキ・ズキ・・・・)

  その方が・・・・この私の・・・・不快な気持ちを・・・・(ズキ・ズキッ・・・・)

  少しでも・・・・抑えられる・・・・・ッ!(ズキ・ズキッ・・・・!)

 

ソ:そうか・・・・まだ思い出せぬか・・・。  不憫だが仕方あるまい・・・。

ジャキン!

 

ソ:今、楽にしてやろう・・・娘。                                                    ヱ:うっ・・・うぅ・・・。

ソ:ぬうんっ!

ブオッ!                                            パシッ!

(正眼より振り下ろされた魔皇の兇剣は、ヱルムの馘を落としたか・・・と思われたのですが・・・)

 

ソ:な、なにっ?!

タ:(な、なんだ・・・? あの少女は・・・。  いきなり現れたかと思うと、オッさんの剣を片手で受け止めちまうとは・・・)

 

 

カ:(フン・・) おぃ、私の可愛いオモチャになんてことをしてくれるんだ?                   エ:(な、なんですって? オ・・・オモチャ?)

ヱ:ああっ! 申し訳ございません! カミイラ様!!  私の力及ばず・・・・しくじりまして!!

 

カ:・・・・まぁいい・・・。 予想外の戦力が出てきたんだ、ここは一端退くとしよう。

  ありがたく思うんだね! ジョカリーヌ。     アーッハッハッハッハッハ!

シュイィ・・・・・ン

 

ヱ:覚えているがいい!

シュイィ・・・・ン

 

 

ソ:(あれが今回の首謀者か・・・) 返すぞ・・・アダナ・・・(シュイィ・・・・)

ア:うっ・・・・うぅ・・・・ヱ、ヱルム・・・・(ガク・・・)

ジ:そう・・・・嘆くではない、アルディナよ・・・。 まだ終わってはおらぬ・・・まだな・・・・。

 

(そして、ここでジョカリーヌ、先程から様子が変わったエリアの表情を改めて見る事に・・・すると・・・?)

 

 

エ:許せない・・・・人の 友情 を・・・・ 命 を・・・・ここまで弄ぶなんて・・・・(ギリ・・・)

ジ:(エ、エリア殿・・・?  こ、この者は一体・・・??!)

 

 

そう・・・そこにはもう、いつもあどけない笑顔でみんなの心を和ませていた少女はおらず・・・・

いうなれば、 龍がその逆鱗に触れられたときの様 に似通っていたという・・・・。

 

 

 

 

―――了―――

 

 

 

 

まえ                                                 あと