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(そして、決行の夜・・・夜襲を待ち構えるかの如く、城砦内は しん としづまりかえり・・・・
いや、しかし、黄翼率いる、別働隊も、この夜陰に紛れ、密かに、この城砦を後にしていたのです。
その、途上にて・・・・)
ア:なぁ・・・爺さん・・・。
翼:なんじゃ。
ア:さっきなぁ・・・あの二将・・・って、言っていたヤツがいたけど・・・誰なんだ?その二人・・・って。
翼:・・・・張犠益徳と、関信雲長・・・・じゃ。
あの二人は、いづれも一騎当千でな、我が呉興も、あの城砦ではなく、平野での戦を余儀なくされたら、ひとたまりもなかろうて・・・
ア:成る程・・・つまりは、そのおっかない二人が、目の上のコブ・・・ってワケか。
翼:いや・・・違う・・・。 あの二人だけ、ではない。
確かに、あの二人は、飛びぬけてはいるが・・・他の者も・・・恐らく、今回の戦にも、参加しておる事じゃろう。
ア:・・・・誰の事なんだい・・・。
翼:うむ・・・、董惇元譲に、除邦公明、そして、典紹文概・・・・この、三羽ガラスの事じゃよ。
ア:ふぅん・・・。
翼:おそらく・・・張・関の二人は、夜襲組だろう・・・そして、敵本営には、かの三羽ガラスか・・・・
フフフ、久々に腕が鳴りおるワイ・・・。
ア:・・・・・なあ、爺さん。
翼:なんじゃ。
ア:私ら・・・ここで別れよう。
翼:・・・・どうして?
ア:(フフ―――ッ)何も・・・奇襲をかけるのに、バカ正直に、一塊ですることはないだろ?
幸いこっちは、人数少ないんだし・・・バラけて行動を起こして、味方に裏切りが出た・・・と、思わせたほうが、得策だ・・・
そうは思わないかい?
翼:・・・・・・。(こ、この女・・・・)
ア:フ・・・どうやら賛成なようだね。
さぁ、そうと分かったなら、皆バラけるんだ! たったこんだけで、襲ってこようなんて、向こうさんも、努々思うまいよ!
そこが、これの狙い目なのさ・・・。
翼:アダナ・・・・と、やら・・・そなた、一体・・・・
ア:おおっ――――と、その前に・・・・(ごそごそ・・・)
いいかい・・・皆・・・この笛、この笛が鳴ったら・・・・たとえ、どんな状況下にあっても、城に戻るんだ・・・分かったね!?
それじゃあ―――――行くよ!! はっ――――!
(そう――――もうすでに、サイは投げられたのです。
この・・・アダナのとった策は、果たしてどうなっていくのでありましようか・・・・・。)
―――了―――