リリア・市子・プリンの3人は、リリアから(いざな)われるがまま“ある場所”・・・モスクワ・サーバー・エリアに居を構える、あの人物の下を訪れていました。

 

 

 

ミ:どうかしたかね?

 

リ:―――・・・。

 

 

 

その人物こそ、モスクワ・サーバー・エリアのマスターである、ミリティア・・・その人でした。

それにしてもどうしてリリアはこの人物を?

 

 

 

リ:ミリティアさん―――少し聞きたい事がある。

 

 

 

そして次の瞬間、市子は我が耳を疑う―――

 

 

 

ミ:(・・・)フム、その様子では、彼岸(あちら)の事情を(くま)なく見てきたようだな、よかろう―――

  それで? 何が聞きたい。

 

リ:(・・・)あの人の―――“孤独な王”の最期を・・・教えてください、【南の魔女】ミリティア=ミスティ=ミザントロープ。

 

 

 

目の前の、モスクワのエリア・マスターの名は、市子でも知っていました。

ミリティア=セルゲイビッチ=ラスプーチン・・・それが? なぜ・・・

それに、南の魔女―――とは??

 

けれどミリティアは、そうした市子の疑問など知らぬが如くに・・・

 

 

 

ミ:そこの(くだり)、このワレより実際その眼で見きた者の方が詳しかろう・・・

 

―――なあ? 【北の魔女】・・・イセリア=プリンシパティウス=ジェノーヴァ

 

市:(!)プリン? “ブリン”シパティウス??

 

プ:後から私も知った事だが、王はアレを毒杯だと判って煽った・・・そこで宰相はようやく自分の間違いを覚り、寸前で止めようとしたようだが―――・・・

 

ミ:―――と、言う事だそうだが・・・納得がいったかね?

 

リ:まあ・・・ね―――と言うより、納得するしかないでしょ。

  それで、どうしたらいい?

 

市:ちょ―――ちょっと待って下さい? 私・・・何が何やらさっぱり―――

 

リ:落ち着いて、市子。

  今私達が話してるのは、本当の話しなんだ・・・。

  ゲームを進行する上での創られたシナリオじゃない・・・この私が実際に体感し、見てきた事なんだ。

 

 

 

彼岸(あちら)の世界で10年かそこら・・・けれど、此岸(こちら)世界時間換算すると10時間。

昨日の21:00にログ・インして今朝の7:00に目覚めるまで―――私は此岸(こちら)の世界のどこにもいなかった・・・

そう、現実内でも仮想内でもない、また別の世界にいたんだ。

 

そこで出会った様々な人達―――孤独な王、王の身辺を警護する近衛長、魔族でありながら王の事をよく支えてくれた宮廷魔術師・・・

そしてあわよくば王の命を―――と、狙っていた宰相等々ね・・・

そして王の“これから”―――と言う時に、一時的に王の魂に“別な象をした魂”として宿った私は、深い眠りと共に王の身体から離れて行った・・・

だから私は、王の本当の最期を知らないんだ。

けど・・・今の説明を聞いて安心したよ、あいつは孤独(ひとりぽっち)じゃなかったん―――ってね。

 

 

まさに“現実離れ”・・・しかも昨日の今日の内に信友がいた場所とは、この世界のどこにも・・・現実内にも、()してや仮想内ですらなかった―――

その事にも驚かされはするのですが、まだもう一つに・・・赤裸々に語られてくる出来事が、どうにも創り話に聞こえてこなかった・・・

だから市子は思わず―――

 

 

 

市:仮想が・・・仮想ではなくなっている―――?

 

リ:その通りだよ。

  これはもう現実なんだ、だからこそ決めなくちゃならない・・・一緒に、付いてきてくれるよね、市子。

 

 

 

仮装が仮想ではなくなってしまった・・・この事は、いまだ市子の中では整理がつきませんでしたが、

なにより信友が求めてきた・・・だからこそ市子は、強くうなずくだけだったのです。

 

それはそれでいいのですが―――・・・

 

 

 

リ:それより当面の問題は、これからどうするか―――なんだけど・・・

 

ミ:(ナレ)どうしたいのだ。

 

リ:(・・・)やはり、あいつを―――王を死に追いやった宰相を・・・宰相ゼンウを処罰するべきだと思う。

 

市:ゼンウ―――?! あの者がまた・・・

 

リ:違うよ、市子―――まあ私も、そいつの事を知ってからは、心中穏やかじゃなかったけどね・・・

  彼岸(あちら)ゼンウは、此岸(こちら)の単于とはまた違った存在だ・・・そう位置づけていいと思う。

 

ミ:ククク―――元より(ナレ)そのつもりからな。

  似合いもせぬ、王とは色違いの装備を纏うなど・・・

 

リ:柄にもないけどねw けれど、ちょっとしたサプライズさ・・・色違いじゃあるけど、自分の目の前で逝ってしまった者の面影を宿したものが、

  また自分の前に現れたとしたら・・・

 

 

 

この後―――実際にミリティアの術により彼岸(あちら)へと転送されたリリア・市子プリンは、そのゼンウリリアによってたれた

その首を王の墓前へと供え、そして再びプリンの術によって此岸(こちら)へと戻ってきた時に・・・

 

 

 

市:しかし・・・知りませんでした、プリンさんがまさか―――

 

プ:その前に一つ、今の私の状態は非常に複雑化している。

  君達も知っているように、仮想内に於いてのクラン・ナユタ教―――その内の大司教イセリア=ジェノーヴァは、もう一人の私・・・

  そして、この度実装された『四凶』の一柱・・・『サトゥルヌス』も私なのだ。

 

リ:ミリティアさんが、プリンさんの事を北の魔女―――って言ってた時から、実はそうなんじゃないかと思ったけど・・・

  なんかまたやり難いなあ・・・

 

プ:そこは心配する必要はないよ。

  頑張って、その本気を私にぶつけて。

  それに女媧―――ジョカリーヌの時とは違うけれど、私もそのレイド戦には参加するからね。

 

 

 

またしても、辛い戦いになりそうだ―――と、リリアは予感するのでしたが、彼らには彼らなりの歴とした目的がある・・・

自分達がいた世界で生き残っていくには、生半可な覚悟では通用しない・・・だからこそ、両者ともに心を鬼にしなければならないのです。

 

 

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#103;混沌の顕在化

 

 

 

それはそれとして―――“ある一族”が所有しているという「お宝」を盗る為に、この国を訪れていたドロボウは・・・

驚愕の事実を目の当たりとしていたのです。

 

なぜならば・・・そう―――財閥のご令嬢ともあろうお方が、何と自らの肚を掻っ捌き・・・

 

 

 

K:おっ―――おい・・・

 

小:へっ・・・なにハトマメな面ぁしてんだ。

  とっくに私の正体なんざ判ってるんだろ。

  ああそうさ・・・私は正真正銘の吸血鬼さ・・・嗤えてきちまうだろ。

  お伽話、創り話のような存在が、実在したってことをなあ!

 

 

 

そう・・・まさしくの“それ”―――

吸血鬼や竜などは、所詮がファンタジー・・・創作話のモノでしかない―――はず・・・なのに??

この現実世界に堂々と“実在”している・・・その事に。

 

しかもこのご令嬢よろしく、大きく割かれたはずの腹部の大傷は、血も流されないままに塞がっていく・・・

そしてドロボウが求めた「お宝」は、子爵なる者の手元に・・・

 

 

 

K:あんた・・・“本物”なのか―――?

 

小:嗚呼本物さ・・・ただ、「此岸(こちら)の世界か」・・・と訊かれたら、間違いなくこう答えてやる―――「NO」とな。

 

K:―――!!!

 

小:企業秘密ついでだ・・・聞かせてやるよ。

  「こいつ」は、まさに私らに関わる・・・そしていつかはあんたらも関わって来る―――そういった“代物”さ。

 

 

 

『次元転移』―――て術を知ってるか・・・?

まあこの術自体特殊で、行使できるのは限られるくらいにしかいない。

この私ですら、聞かされているのは『古の四魔女』くらいだとね・・・。

 

『古の四魔女』―――?

 

東西南北に拠点を構える“魔女”―――だそうだ。

それで、この『次元転移』を使えるのが、たったのこの四人―――

 

っっ―――まさか・・・!

 

察しが好くて何よりだw

そうさ、「こいつ」はそれを汎用化させるために、魔族の内でも一等危なっかしい奴に開発させてたみたいだ。

名前までは知らないが・・・私のじじぃはこう呼んでいた―――『インベクター』とな。

 

インベクター(発明王)?! まさか・・・あいつが!!?

 

ん〜〜で・・・そのマッド・サイエンティストは、「このプログラムが必要とされるその時まで、厳重な保管」を吸血鬼(私達)依頼してきた。

そしてその任に当たったのが私―――って訳さ・・・。

その後そいつは何を企んだものか、吸血鬼(こちら)とは連絡プツってしまってねえ。

そしてお前が、かの大悪魔―――ジィルガからの依頼によって、私の目の前に立っている(この場に参上している)・・・。

受け取りな・・・そしてこう伝えろ―――「さっさと決着(ケリ)をつけようってな。

 

 

KAINがサヤがいる橋川邸を訪れたのも、サヤが保有する「お宝」―――・・・

それが、此岸(こちら)彼岸(あちら)往きできる施設データ・ファイル・・・通称ゲート・システム・・・

それを、ジィルガになりかわり、KAINが代理で受け取りに来た・・・はずでしたが、

KAINも思わぬモノを見せられ、また聞かされもした・・・。

 

今までは、自分達が遊興(あそび)だといたこのゲームが、ゲームではなくなった瞬間・・・

ならば、堅実で一体何が起ころうとしているのか―――

 

 

それも―――これも―――なにもかもが・・・

これからの『四凶』の一戦で明らかにされようとしていたのです。

 

 

 

つづく