#104−2−1;エニグマ序盤戦

 

 

 

パーソナル・レイドボス、2体の同時実装・・・

一つは欧州―――いまだ完成されぬ大聖堂とされる、『サグラダファミリア』・・・でしたが、

その態が変じ、今や『穢れた大聖堂』となり、そこで行われる『レイド・サトゥルヌス戦』―――

その戦端が開かれようとしていました。

 

その一方のこちら―――米国『MSG(マディソン・スクウェア・ガーデン)・・・こちらもその態をじ、やとある巣食巣窟・・

それこそが『リヴァイアサン』―――なのですが・・・

 

壁や床はまるで臓腑の様に蠢き、所々に配置されている毒性植物から噴出される、バット・ステータスの塊のような“ガス”・・・

 

それらをどうにか回避して、やっと辿り着いた先に君臨せし者・・・

 

地にまで着くような黒に近い紫の長髪―――

凍てつくようなアイス・ブルーの眸―――

その眼から迸っている様な・・・まるで血の涙を思わせるかのような“(しるし)・・・

顔や肌は紙の様に白く―――一際その“徴”を浮き立たせる・・・

唇もまた不気味なまでに紅く―――その残虐性を際立たせる・・・

 

その者の名こそ―――『エニグマ(悪意を持つ誰でもない者)・・・

 

 

 

エ:よく・・・来られました―――あなた方は、さぞや・・・このわたくしの可愛い子達の養分となってくれることでしょう・・・。

 

 

 

その者が紡げるのは、誰が為でない―――総ては己の為・・・

他がどうなろうが、知った事ではない―――だからこその“悪意”・・・

 

だからとて、従う訳にも―――況してや屈してしまう訳にもいかない・・・

 

 

 

バー:第2PT・第3PTは散開―――距離を取って攻撃。

   第1PTは近接にて相手のタゲを取れ!

 

 

 

今回の、DIVA達の構成は以下の通り―――

第1PTリーダードゥルガー・カリギュラ・クルセイダー・バンディッド

第2PTリーダーレヴェッカ・バーディ(司令官)・バジリスク・ワスプ

第3PTリーダー蓮也・秋定・ヒイラギ・クリューチ

 

そう・・・そこには第4PTの存在だけはなかった・・・

12人構成での強敵との対峙を迫られていたのです。

 

しかしながら―――心配は別にしていませんでした。

なぜなら、クランDIVAの一構成員から、『最終調整に時間を要する為、遅れて参じる事を詫びる』旨の事前通達があったから・・・

それにしても―――

 

 

 

ヒ:あぐっ―――!

 

蓮:大丈夫か! ヒイラギ・・・

 

秋:うむう・・・タゲを取られない様にしているつもりなのだがな。

 

レ:油断は禁物じゃ―――『癒活孔』

 

クリュ:ここまでのレイドボスの攻撃行動の集計―――これを見ても、全くのランダムですねぇ・・・

   どうもヘイト操作が効いてない感じだなあ・・・。

   ここからはこちらも手を変えていきましょう。

 

バジ:そんなこと―――有り得るのか?

 

ワ:有り得なくはありませんが・・・ならば、相手は植物の属性―――その弱点を突いてみては?

  例えば・・・『火炎放射』

 

クル:なるほどねえ―――考えたもんだ。

   なら・・・植物系なら根っこが弱点―――『チャクラム』

 

エ:ククク・・・お前達のその攻撃―――後悔と成る事を知れ≪レイゾーム・スピア≫≪シード・サクセション≫≪フォトン・インセシス≫

 

 

 

通常の攻撃行動にしても、こちらのヘイト操作が効いている感じでもなく、大技を駆使するなど一定のザコ敵ではヘイトを貯め易い行動をしても、

全く関係のないメンバー(ここでは第3PTに所属するヒイラギ)に攻撃をしてくるなど、レイドボスの行動を分析していたメンバーから、

早々に行動パターンを変えてみては・・・との提案があり、一見して“植物系のモンスター”であるレイドボスの弱点・・・

植物は火に弱く、幹・葉・根を傷付けられると弱体化をしてしまう・・・その倣い通りに攻撃の仕方を見直してみたのでしたが。

 

恐るべき敵―――『四凶』の一柱エニグマ・・・この敵の三連続してのスキル使用・・・

しかもそのうちの一つは、自己の回復・再生させるスキル・・・

植物を育成する為に大切な要素―――“水”“土”そして“光”・・・

そう、『光合成(フォトン・シンセシス)太陽光利用して回復してくる手段・・・

 

 

 

バー:(くう・・・)これではイタチごっこだ―――

 

クリュ:そうとばかりも言っていられませんよ―――

 

バー:何だと?

 

クリュ:判ってるんでしょうけど、奴さんの方が防御も長けているし、体力も多い―――

   加えて、折角減らしたHPも全回復されちゃ、打つ手ナシ・・・に、近いですわ。

 

バー:ならどうしろと・・・

 

 

 

彼らの戦法とは、敵の攻撃によって自分達のHPが尽きる前に“攻撃過多(オーバー・キル)によって―――それでした。

けれどこの戦法が通用していたのは、この「パーソナル・レイド戦」まで・・・

 

いつかはこんな日が来るものとは思っていた―――

このクランは“タンク”や“ヒーラー”不在(がいない)・・・だからこそ、超回復スキルっているエネミーに対しては手上だったのです。

 

ですが―――

 

 

 

ドゥ:何諦めてるんですか! そんなことは判っていたんでしょう。

   あの巫女が―――私達を襲撃した時に・・・

   だからこそ私達はお互いを高め合い、更なる上を目指したんじゃないんですか!

 

バー:ドゥルガー・・・お前―――

   フフ・・・そうだな、いや―――()()()()()

   あいつは、こうなる事を予測して襲ってくれたんだったな。

   すまなかった―――すっかりと忘れていたよ!

 

 

 

ふむ―――司令官の気が急激に上がって来たな・・・

それにしても、フフフフ・・・中々面白い事をしていた様ではないか。

少々―――見直したぞ・・・

 

 

クランメンバーのエールにより、失いかけていたモノを取り戻す司令官。

それを傍目に見ながら、今あった事に関わりを持った、“ある者”を評価するような言葉―――

 

その後も一進一退は続くものの、中々活路を見い出せない者達に、四凶は・・・

 

 

 

エ:ウフフフフ・・・思ったよりも消耗が激しいようね―――ならば、これはどうかしら!?

 

 

 

彼の者は『四凶』・・・世界に、(わざわい)りまく厄災・・・

 

これまでは、このフィールドの特徴宜しく、()()()植物系モンスタわせる攻撃行動目立ってはいましたが・・・

勘違いをしてはならない―――

 

 

 

蓮:ん、なっ―――?

 

ヒ:あれは・・・ドゥルガーさん?

 

秋:いや、少しばかり違うようだぞ。

 

クリュ:バカな? ()()()()―――・・・っリリアってされて消滅したず??

 

 

 

彼の者が最も得意とするのは―――『ヴェクサンシオン(嫌がらせ)・・・

 

 

 

エ:ウフフフ、あらあ? おかしなことを言うものだわ?

 

バー:なんだと?

 

エ:だって・・・この者は、このわたくしが此岸(こちら)召喚(よん)存在・・・

  ゆえに、憑依した対象から剥がすも剥がさないも、このわたくしの意のまま・・・。

 

ドゥ:そんな―――・・・

 

エ:なぁにを勘違いしていらっしゃったのかしらぁ? このおぱぁかさん達は―――

  このわたくしこそは・・・

 

 

 

そして、この『ヴェクサンシオン』を操る者こそ、こう呼ばれる―――

 

 

 

バー:『暗黒魔導士(ヴェネフィック)・・・だ、と? 植物系スキル―――それをではなかったのか?!

 

エ:お前達が、このわたくしをどう思うが勝手・・・勝手に勘違いをし、仕掛けてきたのはお前達の方だ―――

  さあ・・・お征きなさい、カーマ! かつてあなた達を苦しめた、“ニンゲン”に報いを与えるのよ!

 

ドゥ:そうはさせない! 以前は不覚を取ってしまったけど、お前はこの私が迎え撃つ!

 

カー:やってご覧なさいな・・・この私が何のために、お前に取り憑いたのか・・・わからせてくれる!

 

 

 

この期に及んでの、自らが得意とする術の発動。

戦端を切り拓いた当初から、間違えた行動をしていた者達に襲い掛かるヴェクサンシオン・・・

その時に現れた存在も、四凶を倒す前段として倒さなければならなかった、「因縁の宿敵」・・・

その際に、本来ならそのクエストを克服しなければならない対象者に、意図的に取り憑かせた―――

彼岸(あちら)次元(せかい)住人カーマ。

 

しかも、憑依した事で、憑依したドゥルガーのスキルを、遍く“コピー”されていた・・・

 

他人が嫌がる行為を好んでする―――それがヴェクサンシオン(嫌がらせ)・・・

まさしくその術は、まだ序盤にも拘らず威を発してきたのです。

 

 

 

つづく