聖護院聖里奈が、半崎凛のマンションを、押しかけ同然で訪れたのも、
これまでの事と直近にあったパーソナル・レイド戦に関わった事で、噴出してしまった疑問に答えてもらう為―――でした。
そして、“近衛長セシル=グラディウス”としての疑問には答えてもらった・・・けれど聖里奈にはあと一つ―――
そう・・・此岸での聖里奈―――セシルとしての・・・だったのです。
聖:あのレイド戦の直前に、あなたから貰った“コレ”の事なんだけど。
凛:あ・・・ああ―――その件ね? 何が気に入らなかったのかなあ〜?
聖:“したり”顔して言ってるんじゃないわよッ! “コレ”あなたの作品なんでしょう?
ならどうしてあなた自身が歌わないの!?
凛:いやあ〜〜だってその作品、セシルみたいな“ロック”な方が似合うかなあ〜〜そう思って・・・
聖:あっそう―――
凛:(はうう〜〜た、助かっ・・・た?)
聖:判った―――もういいわ・・・
凛:(・・・)え?
そう―――今回聖里奈が凛のマンションを訪れた理由こそ、以前までは“ハシリ”部分を触れただけ―――だったのですが。
凛―――プリンが仮想内で感じ、詩にしたものに簡易ながらも旋律をつけ、そう言ったモノをデータ化して聖里奈にメール送信した・・・
聖里奈が凛から送られてきたデータに目を通し、聴いてみた処―――確かに自分の音楽性に合ったモノだと感じた・・・
ここで、そのままにしておけば、何ら問題なかった―――の、でしたが・・・
実は―――
凛:あのぅ〜〜『判った、もういいわ』・・・って、何のことを言っているのかな?(アセッ)
聖:あの子達は・・・この時間、まだ学校か―――
凛:あの・・・聖里奈さん?(アセアセッ)
聖:なら、直接“あそこ”でした方がいいわねえ―――
凛:なにをしようとしてるの?(アセアセアセッ)
聖:ねえ、あの子達いつログインするか、知ってる?
凛:(へ??)夜中―――21:00頃じゃないかなあ・・・
聖:そう、判った・・・それじゃその時また出直すわ。
凛:(あっ)ね、ねえ―――聖里奈?
聖:もちろん、あなたも同伴よ―――拒否権はないから、そう思いなさい!
『かつて同じユニットで一緒にやってきたことはあったけれど、あの時の彼女が一番怖かったデス』(プリン談)
―――と、のちに本人が語ったように、この時の聖里奈は少し異常でした。
聖里奈が得たかった、満足できる回答が得られなかったからか、途端に彼女だけで計画を立て、しかも凛との会話を成立させない―――
しかもなんとも的外れな事に、璃莉霞達のログイン時間を訊いてくるとは??
もうすでに、なにやら嫌ぁ〜な予感しかしない凛―――なのでありました・・・。
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#108;インストール
一方その頃―――同日の放課後・・・璃莉霞や市子が通う、白鳳学園の教務員室にて・・・
理事長:あ〜〜先生、ちょっとよろしいかの?
禍:あっ、はい―――(どうしたんだろう? “坊主”・・・)
白鳳学園の理事長である細川重太郎は、同校の生徒会長―――細川市子の祖父でありました。
そして現在、同校の教育実習生として務めている神宮寺禍奈子の“教え子”でもあった・・・
そんな彼から、特別に指定しての“頼み事”―――それが・・・
禍:“この子”を―――ですか?
重:そう言う事です。
あちらさんの意向では、是非とも先生に―――と。
その部屋には、白鳳学園理事長―――細川重太郎と、同校実習生―――神宮寺禍奈子と、
あと一“人”・・・?
“それ”は、一見して人間の少女の様でありました。
白人特有の白い肌、スカイ・ブルーの眸、金のボブ・・・どこからどう見ても―――の、
米国生まれの、年頃にしても璃莉霞達の学年相応に見えた・・・の、ですが??
禍:(あ゛〜・・・)初め―――まして?
?:<――――――>
禍:(参ったなあ・・・兎にも角にも返事をしてもらえないと・・・)
あの・・・あなたのお名前は、なんていうの?
実は、禍奈子―――ジョカリーヌは、目の前にいる“それ”のことに、見当はついていました。
それと言うのも今回のパーソナル・レイド戦に、『可能性を秘めし者達』の側に立ってくれた自分達の姉妹の一人から、その報告はなされていたから・・・
そう・・・あの時の―――パーソナル・レイドエニグマ戦の時、“援軍”として現れた「一体」・・・
すると―――・・・
?:(ピーッ、ピーッ、キュイン・・・キュゥィィン)<情緒操作>――<完了>
<コレヨリ ネットケンサク ニ ヨリ サイテキカ シタ ゲンゴ ニ マトメマス>
私の名ハ ナオミ=サード=アミテージ ト言います こんご トモ 夜露死苦 DEATH
「う・・・うん・・・ま、まあ、まともに聞こえるみたいだから、細かい処までは言わないでおこうか・・・」
「しかし・・・と言うより、またとんでもないモノを創ってくれたものだなあ・・・」
なにも“それ”は、禍奈子を無視していたわけではありませんでした。
少なくとも、此岸の次元の人間達に怪しまれないよう、また馴染むようにネットの海にダイブし、“会話”がスムーズになるよう努めていたのです。
{*まあ・・・その際、厨二臭い処はスルーしてもらうとして・・・w}
そう―――もうお分かりだろうか。
今、自分の事を『ナオミ=サード=アミテージ』と名乗った“モノ”こそ、パーソナルレイドエニグマ戦に、援軍として現れた「一体」の、あのアンドロイドだったのです。
それに禍奈子―――ジョカリーヌも、“彼女”の作成者の事を知らないわけではなかった・・・
自分達が支援をしている者―――現・魔王・・・その存在の施策により、何か一つの事に秀でた者を援助する・・・
その“モデル・ケース”の一人として、研究・開発の援助を受けた者こそ『発明王』―――
その存在が予てから没頭していた“成果”こそが、このアンドロイドだったのです。
―――とは言え、その外見よろしく経験が年相応ではない・・・言わば、“生まれたての赤ん坊”の様な状態・・・
それに、それはそれで危険なのです。
“彼女”には、まだ感情と言うモノは育っていない―――もとより、善・悪の判別など・・・
それを導くために、ジョカリーヌに話しが舞い込んできたのです。
禍:(う〜ん・・・とは言っても、私も機械を相手にするのは初めて―――)
うん? どうしたの?
ナ:なにを心配してるの?
禍:(・・・)君はまだ、真っ新な状態だからね。
だから正しき道へと導いていかないといけない―――
ナ:「正しき道」・・・とは何でしょう? 「正しき道へと導いて」どうしようと言うのでしょう?
禍:それは君が、誰からも好かれるようにする為・・・だよ。
ナ:(チーチキ・チキ・チキ・チキ・チー)<学習>――<完了>
<コレマデ ノ ジョウホウ ヲ シュウヤク サセ セイサ イタシ マス>
禍:(ん〜〜〜〜)そう言うのを音声化させてしまうのは―――ちょっとどうかなぁ・・・
ナ:(・・・)了解しました、有り難う御座います。
素直にこちらが言っている事に従ってくれるのはいい事―――けれど、それはそれで当然なのです。
なにしろ“彼女”―――ナオミは機械なのですから。
だから、間違ったデータやプログラムを入力しない限りは、間違った動作はしない―――それも判っていた事なのですが・・・
何と言っていいのか―――「物足りない」・・・
璃莉霞や市子は、生きているからこそ様々な反応をし、仲良しの二人だとて考え方が違うから衝突・反発することさえある・・・
けれど機械は、人間が間違った事をしなければ、“間違い”は起こさない。
それにそこには感情なんて全くない―――
その事にジョカリーヌも、一抹の寂しさを感じてしまったのです。
禍:(・・・)―――そう言えば君は、私達が作ったゲームにキャラクター・クリエイションをしていたのだったね。
ナ:はい、その通りです。
禍:(ふうむ・・・)これから時間があるんだったら―――そうだね、21:30頃にしようか・・・その時間にログインできるかな。
ナ:はい、全く問題、ありません。
「少しお披露目が早くなってしまうけれど、この子をリリア達に合わせてみる事で、何か打開する道が見えてくるかもしれない・・・」
ジョカリーヌは、自分一人でこの問題を抱え込むよりも、自分が所属するクランの“彼ら”“彼女”達に託してみることにしたのです。
しかし・・・今回は3つの出来事が、並行して同時侵攻しているのです。
璃莉霞―――リリアを“お姉サマ”と呼び慕う、困った妹分の来訪。
本当は自分より優れているのに、遠慮をする友人・・・と、その本来の姿を知ってもらう為に一計を案ずる者。
「機械的彼女」に正しくも様々な感情を見せる事で、更なる成長を見込む者。
・・・と、様々にあるのですが―――取り分けて最初の接触が、今夜・・・なされようとしていたのです。
つづく