#109;お祭り数週間前の夜
“前回”のお話しの―――同日21:00頃・・・とあるプレイヤーと接触を図る為にログインした者達は。
セ:ええっ? まだログインしていない?
プ:うん・・・そうみたい。
セ:ちょっと? まさか自分が追いつめられるから―――って、事前に吹き込んだんじゃないでしょうね?
プ:ええっ? それは考え過ぎだよ。
セ:(・・・)どうだか―――まあいいわ、今インしていないんだったら、そのうちインしてくるでしょうから、待っていればいいだけのことだからね。
この同日に凛のマンションへと押しかけ、色々と問答していくうちに、どうした話しの縺れ合いからか急遽当初(?)からの計画通り(??)
セシルはあるプレイヤーに何かを打ち明ける為に、この時間帯にログインしてきたのです。
けれど・・・?
実はセシルは、そのプレイヤーと以前にあった事はあるものの、フレンド登録していなかった・・・
だからそのプレイヤーとフレンド登録しているプリンに、そのプレイヤーのログイン状況を聞いてみたところ、「まだインはしていない」とのこと・・・
その事に自分の真相を知られまいと、事前に「インしてこない様に」と、吹き込んだものか―――と怪しんだのです。
けれど、あらぬ疑いをかけられてしまい、「そんな事はしない」と、否定はするのでしたが・・・
あ〜〜あ・・・とうとうこんな日が来ちゃったか―――
別に隠してた・・・ってワケじゃないんだけど―――
この事あの子が知っちゃったら、私を見る目が変わっちゃうんじゃないかなあ・・・
実は、プリンのOUSはそんなには知られていませんでした。
それに大概は、そのOUSの名称を聞けば、高い確率で勘違いを起こしてしまう・・・
セシルもその内の一人でした。
“過去”に「あんな事」さえなければ・・・知るはずもなかったユニットメンバーのスキル・・・
プリンが―――プリンでしか修得しえない、優れた能力こそ・・・
【セイレーン】
セシルはその時知りました―――『このメンバーは、自分一人で何でもできる』のだと・・・
だからこそ、『自分でも歌えるのに、なぜ自分で歌わないのか』―――
セシルは、“好き”“嫌い”“合う”“合わない”で歌わない―――そのメンバーの事が、だからこそ嫌いでした。
本来ならば―――総ての・・・
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それはそれとして―――やはり同日21:30、同じくしてログインしてきた・・・
ジョ:(ふぅむ・・・この時間帯なら、もうインしていると思ったが―――)
ナ:マスター、いかがしましたか。
ジョ:えっ? ああ、うん・・・君を導くために最適な子達がいるんだけど、誰もインしていないみたいなんだよね。
ナ:ああ、そレでしたら、近々フィギュア・スケートの世界選抜選手権が、日本であル模様です。
ジョ:ふう〜ん・・・ネットでの情報収集能力は確かなようだね。
ああそれと、何も私は君のマスターではないよ。
ナ:それにしては、私の事を気にかけ、色々ト導いテくれているではありませんか。
ジョ:(まあ・・・それは頼まれたから―――なんだけど・・・)
けれどそうか・・・フィギュアの世界選手権―――
ナ:ハイ、特に、女子の部が熱イようでス。
ジョ:(女子の部・・・と言えば、“あの子”もかなり有名な選手だったね)
ちなみに・・・“熱い”と言う事は、“誰か”と“誰か”の直接対決―――と言う事だよね。
ナ:その通りです―――新・旧の女王対決・・・と言えばよろしいでしょうか。
旧女王キシリア=アグリシャス、新女王イリス=アディエマス―――両者は既に現地入りしており、
来たる24−26日の大会に備えての最終調整に余念がないと思われます。
ジョ:(おお? 実に流暢に・・・こんな短期間で、ここまで成長するものなのか!)
ナ:今から押しかけますか?
ジョ:(・・・)“押しかけ”て、何をしようと言うのかな??
ナ:このような機会は滅多にありません。
今サインを強請っておけば、後の機会に大変な“プレミア”が付いてくるものかと思われます。
「あの人・・・何を余計なプログラミングを組み込んでいるんだ?」
「まあ・・・確かに、“マザー”の眼に留まるまでは、研究資金の確保に結構奔走していたみたいだったけど・・・」
「だからと言って、自分の作品にオリジナリティを加えなくてもねえ・・・」
徐々に、時間が経つにつれ言語も流暢なモノとなり、なにより自分なりの考え方まてせも述べられるまでになった―――
{*まあ、その内容はさておくとして・・・}
それはそれで喜ぶべき事だったのですが、ジョカリーヌの狙いの一つとして、現在はクランの代表として収まってはいるけれども、
本来はリリアが結成したモノ―――かつては敵対したものの、自分達が課した辛い試練に打ち克ち、見事自分達の願い通り『可能性を持つ者達』となってくれた・・・
だから産まれたばかりの真っ白な“彼女”に、いい影響を与えてくれるものと思ったのです。
それに、以前にも触れたように、『少し早いお披露目』と言うのも、どうやら白鳳の理事長は、この“ナオミ”を留学生扱いで、同校に通わせる予定もあるようで・・・
そう―――だから週明けとなる月曜に、その“お披露目”の前に、璃莉霞・市子・清秀達にナオミの事を知ってもらい、
現実内でのサポート&ナビゲートをしてもらおうと思っていたのです。
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そして―――例の12/24〜26の3日間に亘って開催される『五大陸選抜世界選手権』・・・
その前段として放映された特集が終わった(22:45終了)―――かと言う様に、次々とログインして来るクランメンバー達・・・
そう―――『#107』でのクランメンバー同士の会話は、ここに繋がってくるのです。
現在時刻は22:50―――
今回組まれた特集の感想を、それぞれの視点で捉え、やがてそれは議論に発展する・・・
その議論は周りを巻き込み、“熱”も加わって“白熱”してくる―――
そんな状況を、連れていた者が収得したデータにより、特集放映終了時刻の22:45より早い時刻にクランメンバー達がいつも屯している場所を見渡せる位置へと待機し、
そこで彼らのやり取りを見せていたのです。
そして、こちらも―――・・・
セ:(はあ〜)ようやくインしたようね―――
リ:(へ?)あれ・・・セシルさん? ―――に・・・プリンさん・・・
市:(・・・)あの、うちのクランメンバーが、なにかしたんでしょうか?
セ:そうね・・・“した”―――と言うより“ずっとしていた”と言った方がいいかしら。
それより―――遠目から見させてもらっていたけど、今日あなた達のインが遅かったというのは・・・
市:はい、私もそうですけれど、皆さん今月の24-26日にあるフィギュア選手権の特集を見ていたからなのです。
それよりもそうでしたか・・・うちのメンバーが、あなたに不興を買うようなことをしてしまい、まことに申し訳ございませんでした。
セ:そう言う事だったのね―――どう、宮廷魔術師・・・
リ:(!)まさかあなた・・・近衛長?! けれど・・・どうして―――?
セ:その様子を見る限りでは、彼岸で見てきた事は忘れてはいない―――と言う事の様ね。
それは、いい―――ん・・・だけど、これは想定外だったわ・・・。
リ:(?)何のことを言っているんですか?
プリンとセシルが合流―――したは良かったのですが、どうにもプリンの表情が冴えなかった・・・
どこか裁きを待つ罪人の様・・・だから市子は、問題行動を起こしたメンバーにクランとしての立場を求める―――
つまりは謝罪と処分の行方・・・かと思っていたら、急に“別”の呼び方―――
そちらに今度はリリアが反応をしたのです。
そう・・・宮廷魔術師イセリア―――プリン、近衛長セシル―――セシルであることは、リリアでしか知り得なかった事・・・
けれど今回最も重要なのは、そこでもなかった―――
今までずっと隠し通してきた秘密を明らかにさせる為―――
実はセシルには、ずっと負い目にしている事がありました。
それは、誰に対しての―――?
それは・・・自分達を応援してくれたフアン達に対しての―――
自分達を救ってくれた、メンバーの一人に対しての―――
けれどそのメンバーは、自分からの感謝を受け取らな・・・いや、受け取ってくれなかった。
自分達よりも優れた“声”を持ちながらも、彼女特有の『幼な声』で歌い、アンチ・フアンからの『あざとい』『媚び』などのバッシングを甘んじて受けていた・・・
なぜ・・・?
あなたは、この私達を優にカバーできる・・・それだけの声を持ち合わせているのに―――
なのになぜ―――あなた自身は不名誉を甘んじて受けようとしているの・・・
セシルが我慢ならなかった事―――
それは、“総ての者達を魅了してしまえる”・・・そんな特性を持った者が、正しい評価をしてもらえなかった事―――
そしてプリンが、正しい評価を望まなかったことにあった―――から・・・なのでした。
つづく