これぞまさしく、“運命の出会い”と言うべきものでした。

 

片や、全世界が盛り上がり、注目をされている―――女子フィギュアの現・女王と出会いを果たした、一女子高生・・・。

片や、自身が5年以上前から仮想内で出会い、『お姉サマ』と呼んで慕っている存在と、リアルで会おうとしているイタリア出身の美少女・・・。

 

だからこそ、普通の女子高生である璃莉霞が、女子フィギュアの現・女王イリスと出会った事は、天にも昇る浮かれ気分・・・にもなったのですが。

 

璃莉霞がその日、ログイン(22:00)した時、「誰か」からのメールがあるのを確認し、それを開封した時・・・?

 

 

 

リ:(ん〜? 誰からのメール・・・)

  な・ぬ・う!!? なんで“アイツ”がぁあ!?

 

 

 

そして、これもまた『運命』―――

 

今までが有頂天だったばかりに、まさかの要注意人物が、この国に入っている事など夢にも思っていなかったので―――

そのメールの内容を見て・・・

 

from;糸しのお姉サマへ

to;今年のクリスマス、リアルでお会いしたく―――

それと今、わたくし東京へ来ていますのよぉ〜^^

 

たった二行(これだけ)・・・たった二行と題だけで、自分の身に危機が迫りくるのを犇々(ひしひし)じるリリア―――

 

これが、“地獄”でなくてなんであろうか―――・・・

 

今年こそはと、恋人である幼馴染と“キャッキャ ウフフ”したいと思っていたのに・・・

“真の友人”や師と共に、リアルで愉しみたいと思っていたのに??

この平穏を乱すべく―――の、「魔王」(??)が、降臨してこようとはああ゛!

 

 

 

リ:ぬ゛あ゛あ゛あ゛〜〜っ゛・・・折角今年のクリスマスは、愉しみにしてたのにいぃぃ〜〜・・・

 

市:(・・・あら?)このメール、添付の画像が付いていますね?

 

リ:へえ? 添付の画像・・・どうせロクなもん送り付けてきてる訳が―――

  て・・・ヤダ、ウソ、ナニコレ・・・ちょ〜可愛い〜〜〜!

  それより―――服の模様と腕のアクセ、最近見た覚えが??

 

 

 

送付されてきたメールの題と本文だけでパニくるリリア・・・でしたが、市子は冷静に、メールに添付されている画像に気が付いたのです。

 

その事にリリアは、『またどうせロクでもない加工写真でも送って来たんだろう』と思っていたら・・・?

ここ最近の、自分が“一推し”しているアニメのキャラクターの、大型ぬいぐるみ・・・それを、あの過激で知られる義理の妹分のリアルと思われる人物が“自撮り”をしたのだろうか・・・

全身ではないにしても、身体の一部―――それにどうやら、義理の妹分のリアルが背丈が低いと判るくらいの角度で撮られており、

なにより意図的なのか―――顔までは映り込んでいないものの、リリア自身ここ最近見た事のある洋服の柄に、腕に付けているアクセサリーを見て疑問に感じるのでしたが・・・

 

ただ、事の重大さに色々な事が錯綜し合い、混乱しているリリアに“冷製になれ”と言っても無理な話し―――

 

こうした不安渦巻く中でも、大会は始められる・・・昨夜あった出来事は払拭させ、今は愉しまないと―――・・・

 

そして待ち合わせの場所に5分前につき、クランメンバーのリアル達と合流して、早速会場入りする璃莉霞達。

 

一方その頃、選手控室にては―――・・・

 

 

 

キ:変な意味での緊張はないみたいね―――

 

イ:あっ・・・キリシアさん―――はい・・・昨日ちょっと、いい事がありまして。

 

 

 

「それで・・・なのね―――」

「こんな大きな大会で、緊張をするどころかリラックスしている・・・」

「常にトップを奔る者は、様々な要因のプレッシャーに晒されているというのに・・・」

()()が、のこのには微塵にもじられない・・・

 

 

キシリアは長年トップの座に君臨し続けていたことがあるから、その“化け物”の正体の事を知っていました。

けれども、そんなものをものともしない現・女王―――『これは余程の気合を入れてかからないと、リベンジは果たせない・・・』そうキシリアは感じたのでした。

 

それに、今回はまだ「予選」・・・明日のクリスマスにある「決勝」本番のリンクに立つには、少なくとも予選を突破しないことにはいけないのです。

 

それは、キシリアでなくとも他の出場選手もそうでした。

 

これがトップに立った者への重圧―――それまでは、イリア自身も女王キシリアの背後を追いかけていたものだった・・・

それが今は、追いかけられる立場―――・・・

 

そう・・・あなたは常に、追いかけている私達のこの闘志を、一身に受けていた・・・

これが・・・女王の―――女王として君臨する者の責務・・・

 

その瞬間―――未だ弱冠(14歳)の、少女つきわる・・・

他の追随を許さない―――それこそがまさしくの女王としての風格・・・

 

それはイリスの演技にも―――そして選んだ曲にも反映されていたのでした。

 

 

 

璃:(!)これ―――って・・・『アイス・ショー』でも使用されてた・・・

 

市:ええ、有名な米国アニメ作品の・・・

 

聡:すごいです・・・とても優雅で、それでいて大胆―――

 

豪:おおお! 四回転―――のあとに、三回転半?!

 

清:すっげえ〜〜以前みせてもらったあの動画より、更に洗練されてやがる―――

 

ナ:はい、それに何があったのか・・・あの演者、とてもリラックスしています。

 

禍:ふうん・・・こんなにも大きな大会なのに?

 

ナ:はい―――只今サーモグラフィで分析してみたところ、僅かに熱を帯びているようです。

  ・・・が、これは恐らく、脳内のエンドルフィンの分泌が増量―――

 

 

 

若い・・・弱冠(14歳)だからなのか、選曲傾向若年層しそうな・・・そうったジャンルからのものだった。

けれど、そうした青臭さを払拭させるかのような圧倒的な演技力―――まさしく、他を寄せ付けない構成と演出に、会場も呑まれるばかり・・・

 

それは―――観客は許より、あとに演技する選手達をも・・・

 

けれど“彼女”だけは違っていました。

『氷上の美女』と謳われた、かつての女王・・・キシリア=アグリシャスは、今大会で再び女王に返り咲く為にと、切磋琢磨してきたのですから。

 

 

そして、圧倒的な演技を見せつけ終えたあと・・・

 

 

 

イ:(・・・)―――私、敗けるつもりはありませんから・・・

 

キ:フフフ―――上等よ。

  私もすぐに返り咲いてみせるから。

 

 

 

彼女達は“いい意味”での好敵手(ライバル)―――

今演技を終えたばかりのイリスが自分の控室に戻らないのは、今回も自分の前に立ちはだかって来る最大の強敵の演技を、肉眼に焼き付けておきたかったから・・・

そう・・・画面越しでの間接的な()()ではない―――直接その(まなこ)に焼き付けて、今後の対策を練らなければならないと思っていたから・・・

 

 

 

璃:(・・・)あの子―――イリスさん・・・控室にも戻らずに・・・

 

市:もう既に彼女の中では、誰が真の鎬を削り合う相手なのかを判っているのでしょうね。

  だからこそ、その相手の演技を、“直接”眼に焼き付けておきたい・・・

 

聡:それに、前女王キシリアって人の、この選曲・・・

 

豪:これって、クラッシックじゃないけど、結構有名な外国アーティストの曲だよな?

 

禍:(それもある・・・が―――)あの子のあの衣装(コスチューム)・・・本気だね。

 

ナ:そのようです。

  過去のデータを照合、キシリアが過去、女王の座に君臨した時と同じ轍を踏むようです。

 

璃:そんな事が判るんですか??

 

禍:あの子の“トレード・カラー”・・・黒と蒼をモティーフにしたあの衣装こそ、あの子の本気度が伺えると言うモノだ。

 

清:知っているんですか? あのキシリア―――って人の事・・・

 

禍:知っているよ―――誰よりも良く・・・ね。

 

市:“誰”―――なのです?

 

 

 

けれどその後、禍奈子は口を噤みました。

その事にクランメンバー達は気付かされもしたのですが・・・それも、突如湧く歓声に掻き消された・・・

 

自分よりも前に、圧倒的な実力と言うものを見せつけた現・女王―――

そんな現・女王をも上回る、パフォーマンス・・・

 

これこそがまさに熟達の業―――とでも言いたげに、リンクを所狭しと駆け、時にはエッジの効きで氷を削り、“雪”の様に思わせる・・・

 

こうした技術は、若いイリスにはまだ、ない・・・

けれどそれを、羨望の眼差しで見つめる現・女王イリス―――

 

しかも―――

 

 

 

禍:ふむ・・・それにどうやらあの子、実力の8分と言うようだ。

 

璃:えっ・・・それでもあの圧巻の―――? イリスさん・・・どうするんだろう―――

 

市:心配は無用みたいですよ・・・寧ろ、逆に笑っている・・・?!

 

聡:あ・・・本当です―――凄い・・・というか、あの子私達よりも年下ですよね?

 

豪:大胆不敵―――ってやつだな!w

  もしオレ達のプレイしているオンゲにいたら、結構有名になるぜ? アイツw

 

璃:豪志さぁ〜ん・・・余計な事言わないでよ―――思い出したくないような事、思い出しちゃったじゃない。

 

清:ん? なんかあったのか?

 

璃:んん〜〜あのね・・・なんだかブラダマンテのやつ、日本(こっち)てるぽいんだ。

 

豪:げ、あいつがか?! そりゃ悪い事をしたなあ・・・

 

璃:ん〜〜〜でもね・・・私にメール寄越したっきりで、あれから何の音沙汰もないっていうか・・・

  けどさ、そう言うのもある意味不気味じゃない? あいつ、私の知らないような処で何企んでるんだか・・・

 

聡:そのブラダマンテ―――て言う人、璃莉霞さん付け狙っている人ですよね?

  言われてみれば、メール送信してからのリアクションがないのって、変ですよねえ・・・

 

 

 

そう―――実は、その時点で気付いておくべきだった・・・

この時点で璃莉霞達が共有している情報は、ブラダマンテ=超危険人物なのでしたが、

ブラダマンテの“リアル”までは辿り着けていなかった―――事にあるのです。

 

 

 

#113;お祭り前日の夜(クリスマス・イヴ)

 

 

 

つづく