現実内に於いての対決は、現・女王であるイリス=アディエマスの勝利に収まりました。

 

・・・が―――ここは一転しての仮想の世界、現実内ほど“まあるく”収まるモノ・・・かと思いきや?

 

 

 

ブ:(クスクスクスw)ああ〜ら、誰かと思いましたら―――このわたくしに負けたキシリアさんじゃございませんコトぉ〜?w

 

キ:(チ・・・)現実内との乖離がここまで激しいとはね―――けれどどうやら、“それ”がお前の本性のようねッ!!

 

ブ:あらあらw 負け惜しみが“ソレ”DEATHかあ〜?www

 

キ:ぐ・・・ヌヌヌ怒怒怒〜〜〜

 

リ:ま・・・まあまあ、キリエさんもここはおひとつ〜〜〜

  (て、なんで私がこんなことしなけりゃならないんだぁ?)

 

市:そ、それよりも奇遇ですよねえ〜〜

  (本当に・・・どうしてこんな事を―――)

 

ソ:(・・・と言うより、“イイ性格”してるよね―――)

 

 

 

まあるで正反対ww

現実内ではあんなに清々しく、淑やか()()で、礼儀()()だったのに

どうして仮想内では、こんなにまで尊大に振舞えてしまうのかw

しかも相手は、仮想内一機嫌を損ね拗らせたら始末に負えない『氷結の暴君』なのに。

 

それもあるからなのか、先程まで(ウザい)ブラダマンテにヘイト値を上げていたリリアなのではありましたが、

これ以上機嫌を悪くされて、自分達が永久凍結の憂き目になりたくないが為、どうにかキリエを宥め透かせようとしていたのです。

 

それにしても? 不思議な事と言えば・・・

 

 

 

市:あの・・・キリエ様? 一つお伺いしてもよろしいですか?

 

キ:―――なによ。

 

市:結構・・・と言うか、かなり機嫌が悪そうに見えるんですけれど―――

 

キ:“そうに”じゃなくて、実際機嫌は悪いわよ・・・

 

リ:(お、お、おい市子―――何を余計な〜)

 

市:それにしては随分と抑えられていますよね? 何故なのでしょう?

 

リ:(あっ、言われてみれば―――・・・)

 

 

 

そう、普段のキリエを知っている者ならば、機嫌が損なった時点で暴れ狂う・・・そうした性格を知っていたにも拘らず。

なぜか今は、機嫌自体は損ねてはいるものの、実際の行動には移ってはいない―――そうした差異に気付いたのです。

 

すると―――・・・

 

 

 

#116;“もう一つ”の『お祭り(クリスマス)

 

 

 

キ:いい勘しているわね、市子。

  けれど私がそうしないのは(れっき)とした理由があるのよ。

 

市:その理由・・・是非ともお聞かせ願いませんか?

 

キ:そんなに小難しいモノではないわ。

  我が友ジョカリーヌからの招待に甘んじただけよ。

 

リ:(え?)ジョカリーヌさんから?

 

キ:そうよ―――あなた達もいると言う事は、あの人もいたのでしょう? でしたら私の敗けも知っている・・・

  現実内での結果としては―――まあ多くは言わないでおきましょう・・・。

  けれど、闘争の種属の一つと知られている私の事を気遣っての事なのでしょう。

  『君の傷心を癒す最適な催しがあるのだけれど、もし君さえ良かったら来てみない?』

  そうしたお誘いを頂いてね・・・だから、今ここに居るの。

  そしたらまあ〜〜この小娘は、現実内とは違って小憎たらしいッたらありゃしないッ!!

 

 

 

『氷結の暴君』の憤懣やるかたなし―――とはこの事か。

事実、現実内では清々しく終わらせたと言うのに、かつての友人から誘われるままにインしてみると、傷口に塩を塗りたくるかのような行為に、青筋を立てていたようです。

{*けれども、()()()()小爆発すらしていない事実注目

 

とは言っても? ジョカリーヌが関わっている“このあと”の催しと言えば・・・

 

 

 

リ:ひょっとしてキリエさん―――これから私達も行く、ライブに行こうと?

 

キ:あら、あなた達も? ええそうよ、私がこんなにも「イラッ」とキても、大人しいと言うのは・・・

 

ソ:あ゛〜〜〜っ! 大変ですう!!

 

リ:なに・・・どうしたの、ソフィアさん・・・そんないきなり大声出して―――

 

ソ:時間です! 時間!!

 

リ:時間? (・・・)あ゛あ゛〜〜っ! もう23:25回ってるんじゃん!

 

 

 

いつの間にか、ライブの開演時間が差し迫っていた―――

その事に、今までの事を(取り敢えず)棚上げにしておいて、会場に急いだのです。

 

 

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一方その頃―――

 

 

 

セ:(イライライラ)あの人達・・・まだ来ていないじゃない―――

 

プ:あ〜〜来ていない―――て言うなら、私はこの辺で〜〜(そそくさ〜)

 

セ:にゃに逃げようとしてるのよ゛ッ!

 

プ:えええ〜〜・・・だって、もう別にイイ―――

 

セ:“別に”なんか良くないからね゛?

  それよりも―――どうして保護者であるあなたが・・・

 

ジョ:あああ〜〜〜それは申し訳ない・・・一応、インは確認しているんだけどね―――皆どうしたのかなあ・・・(ハハ・・)

 

 

 

どうやら“こちら”は、ゲリラライブとは言え、満員御礼を迎えてはいるものの、肝心要の者達が来ていない事に“ヤキモキ”していたようです。

しかも、この期に及んでさえも、現場から逃走を図ろうとしている者に、一応は今件に関わり深い者達のログイン状況は把握しているものの、

なぜかまだ会場には来ていない事に、苦し紛れの弁解をしてしまう者・・・

 

と、こちらはこちらで三者三様があったようです。

 

 

そして、遅ればせながらに、息せき切りながら会場に到着したリリア達は―――

 

 

 

リ:(ハヒーハヒー)ま、間に合っ・・・た?

 

ブ:これから何かあるのです?

 

キ:そうよ、これから私達の間では、『天使の歌声』と・・・そう讃えられた人の、生での歌唱が拝められるのよ。

 

市:キリエ様は知っていらっしゃるのですか?

 

キ:知らない方がどうかと思うけれど?

  もうあなた達も知っての様に、私達は“魔族”―――その魔族の内でも魔王すら鎮められる声の持ち主・・・

 

リ:あれ? けれどそれって、『セイレーン』と言うのじゃ・・・

 

キ:伝わり方は様々―――と言う事よ。

 

ブ:(!)ちょっと待って下さい?! “天使”―――と言う事は、お姉サマ・・・わたくし達が倒した「四凶」の一柱も・・・

 

リ:『権天使(プリンシパティウス)!?

 

ブ:そうです―――それにわたくし達の所属するクランのマスターであるナユタも言っていたことがありました・・・。

  『私は、この私より偉大な権限を有する天使様より、“お預かり”しているものを管理しているに過ぎないのです。』・・・と。

  それにサトゥルヌスは、本来の姿である天使となり、討ち果たされることとなりましたが・・・

  考えても見れば、サブ・マスターである大司教ジェノヴァも、サトゥルヌスと同一の存在性だったではありませんか・・・

 

市:それに、私達のクランメンバーである、プリンさんも??

 

 

 

ここでようやく、ある一つの事実が明かされる処となりました。

四凶の一柱であり、ブラダマンテ・セシル・プレザンス達と協力して討伐したサトゥルヌス・・・

そのサトゥルヌスは元々、クラン「ナユタ教」のサブ・マスターでもある大司教ジェノヴァを媒体としていた・・・

 

ならば? サトゥルヌスが本来変化するべきは、ジェノヴァのはず―――なのに・・・

レイド戦の戦場に現れたのは、プリンであり―――権天使(プリンシパティウス)だった・・・

 

それに、プリンの更なる正体こそ―――

 

 

 

リ:(思い出した!)『北の魔女』・・・イセリア=プリンシパティウス=ジェノーヴァ―――

 

 

 

ふと、過去の記憶と繋がったか―――リリアがその名を告げる・・・と同時に、ライブの幕は上がり、そして壇上に立ちたるは・・・

 

仮想内でのライブ、その開催を告げる初めの曲は、やはりかつて所属していたユニットの“デビュー曲”こそが相応しかろう・・・

軽やか且つ、意中の異性を想う―――そんな純粋(ピュア)乙女恋心った曲・・・

 

けれどその曲が歌われていたのは、飽くまでも“ユニット”としての曲・・・つまりは―――

スゥイーツ・シャルマンは、女の子4人で結成されていたグループ、だからそれぞれに“パート”は用意されていたのですが・・・

 

 

 

ギ:今・・・パートが変わったハズだよな?

 

ソ:“一人”の声じゃない??

 

リ:(信じられない・・・)いないはずの、ルリさんやマロンさん・・・それにセシルさんの分まで?

 

市:これが『セイレーン』の力・・・

 

キ:こんなもので驚いてどうするの? まだ、()()()()3人分じゃない。

 

リ:(え・・・)―――って、それじゃあ?

 

キ:(クスクスw)だから愉快なのよ―――あの人が“その気”になれば、この私・・・況してやあなた達なんてw

 

 

 

その曲こそは、アイドル・ユニットの為にと作られ歌われたものでした。

 

だからこそ、そのユニットの4人それぞれに合わせたパートの部分があった―――にも拘らず、

それをたった一人で歌い上げた、元・アイドル・・・

 

しかもその“声”は、その人1人のモノだけではない・・・かつて組んでいた、他のメンバー達の“声”がそこに・・・

 

ユニットが解散して早2年―――中にはメンバーの声がどんなモノだったか、忘れてさえいたのに・・・

 

その人の咽喉から絞り出される“声”に、記憶が蘇えってくる・・・

 

ステージ上には1人・・・なのに、フアンに惜しまれながら解散したユニットが、「この日の為に」と、戻ってきた感覚にさえ陥った・・・

 

しかし、その人の本来の権限の意味を知っている者は、こうも嘯いていたのです。

『こんなもので驚いてどうするの? まだ、()()()()3人分じゃない。

 

確かにそうだった―――解散したアイドル・ユニット『スゥイーツ・シャルマン』のメンバー構成は4人・・・

プリンを除けば、あとの3人の代用をプリン自身がしていた・・・

 

そして更に言うには、スキル・ホルダー自身が、“その気”になりさえすれば・・・

この地上に在る―――“総て”の存在は・・・

 

 

 

つづく