徐々にボルテージが増し、会場全体を異様なまでの“熱気”が包み込む。

当初予測していたモノより越え始めたのを危惧する者と、反面待っていたとする者―――

それにプリンも、事態をジョカリーヌに丸投げするつもりなどなかった・・・

 

『自分で出来る範囲の事は、自分でするよ』―――

 

そう言い、彼女は再びステージ上に立つ・・・

 

そして―――・・・

 

 

 

#118;『星に願いを』〜『大いなる恩寵』

 

 

 

 

 

リ:(この曲・・・!)

 

市:(クリスマスソングでも定番の―――)

 

蓮:(けどっ、この“声”・・・!)

 

ギ:(“男”のじゃねえか??)

 

ソ:(それに・・・! プリンさん普段はあんなに可愛いらしい声なのに・・・)

 

ブ:(これは・・・『サッチモ』??)

 

 

 

信じられない出来事が、その場で起こった―――

 

プリンは身体の線が、か細い女性にして・・・その声の特徴は“幼な声”だった・・・

それが長い間の共通としての認識でした。

 

けれどそれが、今―――根底から覆された・・・

かつて組んでいたユニットメンバー3人分の声色を持ち合わせる・・・だけか―――と、そう思っていたら、

その時絞り出された“声”こそは・・・

 

重低音が魅力的で、時折“皺枯れる”ビートもセクシー・・・

旧き良き時代の米国で、優れたトランぺッターにして有名な黒人男性歌手・・・

“サッチモ”こと―――ルイス=アームストロング・・・

しかも、その時披露された曲こそが、『星に願いを』・・・

 

そしてまだ更に―――

 

 

 

リ:(ええっ?! また変わった・・・!)

 

市:(凄い・・・これこそが―――)

 

 

 

曲の半分でまたしても変わる、声色に声質―――

先程のは、重低音が利いた魅力あふれる、セクシーさ満載のモノでしたが・・・

今度の“声”も、やはりサッチモと同年代に米国で活躍した、白人歌手・・・ナットキン=コール

 

今ここに、夢の共演が開催される―――それにより上がり過ぎてしまった“熱”を下げさせる為、リラクゼーション効果を促せたのです。

 

そして―――まだ更には・・・

 

 

 

ブ:(この曲は・・・)『モミの木』―――!

 

ソ:えっ?

 

ブ:私達も、幼い頃から良く聴いていた“クリスマス・キャロル”・・・そうでした、今日は『聖夜』でしたね・・・。

 

蓮:そっ―――それに、また曲が変わったぞ?

 

キシ:これは・・・今回私が、大会で使用した曲―――

 

 

 

今度は、高音で艶のある有名な白人女性歌手―――

その声で歌われたのは、この時期特有にして独特のクリスマス・キャロル―――だけかと思っていたら、

この度惜敗してしまった“同郷”の者を慰めようとしたのか、キリエが今回のフィギュア大会で使用した曲―――

 

大会の演技の最中では、歌がない状態―――つまりは“インストルゥメンタル”でしたが。

その曲に“歌詞”なるものがつくと、ここまで違ったものとなって来る―――

 

まさしくの圧巻―――圧倒的な歌唱力で歌い上げが行われる・・・

 

そのステージ上に立っているのは、紛れもなくの天使を思わせた・・・

 

そして―――魅惑的な天使の歌声そのもので、熱は鎮静される・・・

 

 

―――ものか・・・と、そう思われたのですが。

 

 

 

プ:いやあ〜どうにかなったものだよ―――私の心配も、どうやら杞憂に終わったみたいだね。

 

リ:(え?)そうなんです?

 

プ:ああ―――だって、君達なんともないだろう?

 

市:ええ―――はい・・・別に何とも・・・

 

 

 

そう・・・別に、何ともなかった―――

少なくともリリア達“人間”にとっては―――

 

けれども―――・・・

 

 

 

ジョ:(・・・)北の魔女―――もう、いいんじゃないですか・・・?

 

リ:(え・・・?)ジョカリーヌ―――さん・・・?

 

プ:(・・・)何が―――『もういい』と言うんだい?

  西の魔女―――

 

 

 

その時感じた異和・・・なぜ師は、今になってその人の事を“そう呼び、その人も師の事を”そう“呼び返したのか・・・?

 

なぜ―――“彼岸(あちら側)での呼ばれ方

 

 

 

ジョ:今日くらい、“ハメ”を外しても―――

 

プ:(はあ〜)まさか―――最初から“そのつもり”だったと?

  私の事を抑えなければならない君が、私の権限に中てられてしまう・・・私もまだまだだったよw

  ああ―――だからなのか・・・本当の私の事を知っている、“もう一人(キリエ)がいるのは・・・

  いやあ・・・ハハハ―――迂闊だったよ、私も。

 

キ:ウフフ―――そうですよ、なにしろ今日と言う日は、こちらでは『聖夜』なんですもの・・・。

 

 

 

なんなんだろうか―――この人達の会話は・・・

少なくとも、私達の間では噛み合わない・・・けれどもこの人達の間では、“さも知るが如くに”だった―――

それにどうもこの人達は、天使本来の顕現を、切望しているかのように見られる・・・

 

『なにしろ今日と言う日は、こちらでは聖夜なんですもの』

 

人々の想いが、総てに於いて“その事”に集約する時―――

突如として、再びステージ上に立つ・・・けれどもそれは、望まれもしない登場だった・・・

 

 

その時、同じくステージ上では、最後の締めくくりの為としてセシルがMCで会場を纏めているところでした。

 

それを―――誰の指示もないままに、再びステージ上に立った者に対して・・・

 

 

 

セ:え〜〜それではまた次回―――・・・(えっ・・・)

  どうしたの―――プリン? もう終わろうとしているのに・・・ねえ、ちょっと!

 

プ:ああ―――そうか・・・すまない・・・けれどセシル、君はまだ知らないだろう?

  本当の私を・・・

 

セ:え・・・ちっ―――ちょっと待って?? あなた・・・・ッ、なに―――を・・・

 

プ:それにセシル、“これ”は君も望んでいた事じゃないか。

 

 

 

本当は・・・一緒に組んでいたユニットのメンバーに対し、恩を返すつもりで催したライブでした。

本当の自分と言うものを隠し、細々と・・・陰ながら活動をしていたと言う恩人―――

その恩人に救われ、今では海外でも持て囃されるまでに活躍をしている自分―――

ユニットの解散と同時に、明暗が分かれてしまった自分達が、ふとしたきっかけで同じ道を、また歩めるものとそう信じていた・・・

 

セシルが当初描いていた計画は、“そこ”まででしたが―――

今日この時まで加わった不確定因子が、そうはさせなかった―――

 

今度こそ、魅せると言う―――知ら識めると言う・・・

途端に、セシルを言い知れない不安が襲う―――と同時に、ステージ上に立った歌い手の“態”が変じる・・・

 

 

 

リ:(!!)あれは―――っっ!!

 

市:(権天使(プリンシパティウス)!!

 

ジョ:キリエ―――セットアップ!

 

キ:いつでも構わなくてよ? ジョカリーヌ!

 

≪万仙陣≫

≪コールド・フォール≫

 

 

 

そこにいたのは・・・一人の人間ではありませんでした―――

光り輝ける2対4枚の翼―――その者の本来の種属、聖霊の階位1位にして、全体で第7位の天使・・・

 

人間ではない種属・・・“魔族”の一つ、「神族」出身の・・・

 

 

 

ナ:態が変じたことにより、総ての能力値が上昇しています。

  あれが本来の姿なのでしょう。

 

ブ:けれど・・・神がその枷を外した状態で、その権限を行使したとなると―――

 

ナ:その為の、彼の合成術だと思われます。

 

 

 

最大にして、最高の舞台は整えられた―――さあ始めるとしよう・・・

今宵こそは、万人が祝福すべき聖なる夜・・・

 

一つ、違えてはならないのは、何も彼の者達は人間達を混乱の渦へと堕とし込もうとしていたわけではありませんでした。

 

言わば、与えられしは、“祝福”のそれ―――

 

けれども、強すぎる“祝福”は、いつしか“禍根”と成り果てる事もある・・・

 

だからこそ、天使と同等の権限を持つ彼岸の同志と、同じくして彼岸の住人・・・

その2人の合力によって、この会場全体を巨大な円陣が包み込み、中和させるとともに更に“冷え込ませる”―――鎮静化を図る氷の補助魔術・・・

 

この2人が、ここまでしないと抑えきれない天使の御業―――

 

 

ア・カペラ

 

 

ブ:(これは―――)

 

ギ:(伴奏や旋律が一切付いていねえぞ?)

 

蓮:(けれど知ってる・・・この曲って、よくTVでも―――)

 

ソ:(あああっ・・・い、今までの穢れが―――)

 

 

大いなる恩寵(Amazing Greace )

 

 

セ:(アメイジング・グレイス)

 

リ:(どうしよう・・・涙が―――涙が止まらないよぅ!)

 

市:(これが・・・これが本来の、あなたの権限なのですね―――)

 

 

 

その場では、一切の無駄口が禁じられました。

けれどもそれは、誰がそう言った指示を出したわけでもなく、いわば聴衆(オーディエンス)自主自発的したことでした。

 

天使が紡ぎ出す歌声に、最早楽器を用いての伴奏や旋律は不要―――

勿論マイクを通してでさえも―――

 

それでも、彼の者の歌声は、その会場にいた総ての耳・・・いや、心に響き亘りました。

 

それこそが、『セイレーン』真の権限の有り方だと―――そう言いたげに・・・

 

 

 

つづく