海外でも有名なロック・アーティスト「CECIL」が主催した、仮想内でのゲリラ・ライブはここに終幕を迎えました。

 

本来は“ここまで”の事をするつもりはなかった―――

ただ、これまでの事を鑑み、ずっと騙しつづけていたメンバーに詫びようとする、そのせめてもの気持ちで・・・

そんな軽い気持ちでステージ上に登ってしまった・・・。

 

 

ああ―――いいものだ・・・この感覚・・・

どうやら、一番判っていなかったのは、私自身だったようだよ―――

 

 

プリンがその当初から拒み続けてきたのは、決して自分から目立たない事だった―――

目立ってしまえばどうなるか・・・判っていたから―――

今回の件でも、どうにか2人の合力によって強力過ぎるスキルを抑えられることが出来たけれど、

それがいつも同じ結果に収まるとは限らない―――

 

だからプリン自身が、それでも好きな「歌う」ことを止めず、シークレット・ライブなどで細々と続けてきたのは、そんな理由があったからなのでした。

 

 

 

リ:プリンさん、凄いよ!

 

プ:あはは〜〜いやあ・・・本当はここまでの事はするつもりじゃなかったんだけどね。

 

市:それは・・・どう言う意味です?

 

プ:だって―――今回誘われたのはセシルからだからね。

  そしたら・・・フフフ―――ジョカリーヌ、君も随分と悪知恵が働くようになったものだw

 

ジョ:だって―――あなたがどう言った理由であれ、衆目にその身を晒して歌う・・・と、言っているんですよ?

   だったら、こうした機会がない限り―――

 

プ:やれやれw それはいいとしても、“彼女達”の渋い顔が浮かぶようだよww

 

ブ:彼女達―――?

 

ソ:私達・・・だけじゃないんですか?

 

プ:当然―――だろう? 少なくともこの私の事を良く知る人物は、少なく見積もっても10人は下らないかな?

  なかでも2人・・・ややこしいのがいてねw

 

ジョ:(ああ・・・姉さん達のことね―――)

 

キ:(ガラティア様やジィルガ様も、滅法この方のフアンでしたものねえ)

 

プ:ジョカリーヌ? 覚悟しておいた方がいいと思うよ? 自分達にも内緒で―――って事で、絶対詰め寄ってくるだろうからねえ?ww

 

ジョ:あ・・・は・は〜―――そ、その時は〜〜w

 

プ:あはは―――よく判ってる、判ってる。

  弁護くらいはしてあげるよw

 

 

 

実際このあと、鬼のよ〜な形相をした2人の姉に詰め寄られ、半泣きになったジョカリーヌを、プリンが2人の姉をよろしく宥めたのだとか―――

 

 

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ともあれ、無事に聖夜のイベントは終わりを迎えましたが、その数日後に控えたるは―――

 

 

うぅ〜〜〜っ・・・キッツ――――太ったつもりなんてないんだけとなあ・・・

 

 

今璃莉霞が苦心しているのは、普段着なれていない和服(振袖)を着ていたからなのです。

 

それに璃莉霞自身も言っていた事なのですが、『太ったつもりもない』―――

 

事実璃莉霞は、いち女子高生にしては抜群のプロポーションを誇り、そんな彼女が「太った」などと言ってしまったら、それこそ大炎上になってしまっていた事だったでしょう。

とは言え、いつもは洋服―――和服の様な“帯”はしたことがなかったのです。

{それに、そこまでキツく締めてはいなかったのですが―――これは、璃莉霞の心象からくるものとだけ言っておこう}

 

そんなことよりも?? ならばどうして普段着付けていなかったような和服を、璃莉霞は・・・?

 

 

実は―――

 

 

 

#119;陰されたる謀

 

 

 

あの日―――クリスマス・イベントの終わりに、自分の真友から声かけられたことが事の発端でした・・・。

 

 

 

市:ねえリリア、あと数日経てば年が変わるわよね。

 

リ:あっ、そうだね・・・ふぅん“初詣”かあ・・・。

 

市:そこで、ですね・・・私達と一緒に―――と言うのはどうです?

 

リ:いいね―――それじゃいつ待ち合わせをしようか?

 

 

 

確かに話の流れとしては、順当そのものでした。

誰が、どこからどう聞いても、仲の良い者同士が年末年始を一緒に楽しもうとしていた・・・

 

                                                             

 

 

市:それはもちろん大みそかから、瑠璃恩寺で除夜の鐘をつき、本番である初詣は稲荷大社の線でいかがです?

―――皆さん?

 

・・・えっ?

 

ギ:おっ、いいねえ〜〜

 

ソ:それで、集合場所はどこにしましょう?

 

蓮;そうだなあ〜〜

 

 

 

てっきり真友と二人きりで―――と、そう思っていたら、その場にはまだクランメンバー達は残っていた・・・

けれどまあ、それはそれで別に良かったのではありましたが―――?

 

 

 

市:それで、女性の皆さんは振袖―――で、いかがです?

 

・・・ほ・え?

 

ギ:それもいいな! おい聡子―――お前持ってんのか?

 

ソ:いえ・・・けれどレンタルできますから―――

 

蓮:そういや璃莉霞―――お前持ってたっけか?

 

リ:えっ・・・? い、いや・・・あの・・・その・・・―――

 

市:丁度今、小夜子さんや厳三様にも連絡が付きました。

  お二人とも来られるそうですよ。

 

え・え・ええぇぇぇ〜〜〜

 

 

 

あ・・・れえ? どうしよう〜〜なんで、こんな流れになっちゃったの??

 

 

事態が進展―――展開していくに従い、自分の想定を遥かに超えてきてしまっていた・・・

 

よく考えれば市子や清秀―――小夜子や厳三は、誰もが言うまでもなく璃莉霞達が住まう地域の良家の出・・・

そこに自分が―――???

{ここで璃莉霞の設定・・・なのですが、彼女自身もこの4人に引けは取らないくらいの良家の出身―――なのではありますが、

なぜか今の時点に於いて、彼女の頭の中にはその事がすっぽりと抜け落ちてしまっているようなのである。}

 

そんなこんなで、“アワアワ”していると―――?

 

 

 

蓮:(―――ん?)どうした・・・おい、顔色悪いぞ?

 

リ:ふへっ? あ・・・ああ・・・うん―――ちょ、ちょ〜〜〜っと疲れちゃったカナ〜〜〜なんちてw

  お、お先に落ちさせてもらうね―――w

 

 

 

年の暮れ、年の明けの一大イベントに、気心知れた仲間達が一堂に集うと言う・・・

しかも女性は全員振袖―――?

 

そこで璃莉霞は自問自答をしていました・・・

 

 

あれぇ〜? そう言えば私・・・着物なんて持っていたっけ?

し、しかも・・・市子や秀ちゃんだけかと思っていたら、小夜子さんや厳三さんまでも??

 

 

普段、滅多な事では動揺しない璃莉霞ではありましたが、リアルでの上流階級の家柄の人達と一緒に、年末年始を過ごす―――

そこで彼女は舞い上がってしまい、別にたいして疲れてもいないのに、ログアウトを選択してしまったのです。

 

そして・・・完全にリリアが、仮想内から退出したか―――を、見計らうようにして・・・

 

 

 

蓮:(なんだあ? あいつ・・・)変なヤツ―――

 

市:(・・・)皆さん、お話しがあります―――

 

ギ:どうしたんだ? サブ・マス―――

 

市:あなた方にひとつお願いがあるのです・・・

 

 

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それはさておき―――無事、緊急避難で現実内に逃げてきた璃莉霞は?(えっ?)

 

 

はああ〜〜〜なんだか大変な事になっちゃったなあ・・・

私は、てっきり市子とだけ―――百歩譲って秀ちゃんとの3人まで・・・て、思ってたのに・・・。

それが、クランの皆に小夜子さんや厳三さんまでも一緒―――だなんて・・・

あの4人の前でちゃんとした格好しないと、市子に恥掻かせちゃうよう〜〜〜

 

 

一部? 間違った表現が? なされていた様でしたが??

あまりの突飛な出来事に、どうやらまぢでテンパっていた様子の璃莉霞。

 

仮想内では誰とでも対等に亘り合える“対人スキル”を持ち合わせていながらも、

どこぞの創作作品よろしく、現実内に於いては“弱者”の部類に入っているようです。

{とは言え、同じ校内で仲の良い市子や清秀達に対しては、仮想内と同じ様に接しているようである。}

 

ともあれ―――約束は約束、来たる日に備えるべくの重要キー・アイテム、着物(振袖)してはみるものの・・・

 

 

あるワケ・・・ないよなあ〜〜―――普段着ないもの・・・

どうしよう―――聡子さんのようにレンタルするしか・・・ないのかなあ・・・

 

 

一方その頃―――ログアウトをしたリリアを確認したか・・・の様に、クランメンバーを集めた市子は。

 

 

 

蓮:『お願い』―――て、なんだ?

 

市:あなた達に一つお聞きします。

  璃莉霞の事、どこまで知っています?

 

ギ:はあ? 急に何言い出すんだよ。

 

ソ:そうですよ・・・璃莉霞さんは璃莉霞さんじゃないですか。

 

市:では・・・璃莉霞の本名は?

 

蓮:はあ? そんなん征木―――・・・ああっ!

 

ギ:なっ、なんだあ? どうした!?

 

市:すっかりと忘れていたようですね・・・。

  そう言う事です、璃莉霞の“家”こそは、本来であれば清秀の『森野』と並び称されてもおかしくはない家柄なのです。

 

ソ:け・・・けど〜〜〜

 

市:恐らく―――璃莉霞本人でも、その事を忘れてしまっているのでしょう。

  思っていた通りです。

 

蓮:お嬢・・・あんた―――(ゲフゥ!)

 

市:全く・・・“お嬢(その)呼び方めなさい! と、何度っているでしょう!!

  けれど・・・そう、つまりはそう言う事です。

 

 

 

市子にしてみれば、新たに年が改まるこの契機に、やっておかなければならないとした事案が一つだけありました。

それが璃莉霞の立場―――

 

この地域には自分達『細川』『橋川』『鷹山』『千極』の4つの家柄の上に立つ御三家として、『杜下』『森野』・・・そして『征木』という大きな家柄がありました。

 

そんな、隠すまでもない事実の一つとして、璃莉霞は征木家の出身である―――

 

つまりは、いまだ本人も自覚のないままならば、この契機をして璃莉霞本人―――況してや周りの人間達にも知らしめる必要性を感じていたのです。

 

 

 

つづく