市子がその日の為に―――と巡らせていた事・・・

それこそは、自分の真友である征木璃莉霞の事を、世間に大々的に知らしめることでした。

 

それというのも、璃莉霞はこのお話し上、最初の登場場面では全く名前が違っていたのです。

そう・・・松元璃莉霞―――

その理由は話せば長くなるのですが、要約すれば当時の征木の当主であり、璃莉霞の母親である人物が、ある時機に不意に居なくなってしまった―――

その原因も公にされないままに“行方不明”扱いになっているため、当時齢7つの璃莉霞を当家の当主の座に据えるのも・・・と言う事で、

いわゆる大人達の判断の下、その当時征木家に仕えていたメイド長の家―――“松元家”に預けられたのです。

 

それが・・・とある機会をして、元の征木家に籍が戻った―――

本人の意識がどうであれ、地域の者にとってはようやくにしての御三家揃い踏みの(かたち)なっているのです。

 

そう・・・(かたち)ではそうはなっているのです―――浸透ではだしていない・・・

ならば? この契機をして―――というプランニングが、市子の頭の中では組み立てられていたのです。

 

 

 

ギ:そう言う事かあ・・・大して気にはしていなかったが―――

 

ソ:璃莉霞さんには、隠された秘密があった・・・と、言う事なのですね?

 

市:(別に隠していたつもりはないのですが・・・)まあいいでしょう―――

  これからは、璃莉霞も自分の立場と言うものを理解してもらわなくては。

 

サ:フフン―――そ〜れで、私らにも協力してくれ・・・ってか。

 

蓮:お、わっ―――サ、サヤ? ・・・てことは―――

 

秋:中々面白そうなことをしているではないかw それで、どうする?

 

市:すでに手は回してあります―――恐らく今頃は、自分の居住に着物がない・・・と、嘆いている頃でしょう。

 

蓮:(お嬢・・・あんた―――)先読みしてやんなよ・・・

 

秋:だが、よくそんな事実を知っていたモノだなあ?

 

市:秋定様―――私も知りませんよ、そこまでの事は・・・だからこそ動かせたのです、忍の三人衆を。

 

 

 

程なくして市子達と合流をしたのは、千極厳三(秋定)橋川小夜子(サヤ)2人でした。

そして今回の計画を褒める秋定に少々頬を赤らめながらも、訥々と計画の全容を話し始める市子。

それに今回の事を計画した市子自身も、璃莉霞の総てを知っているわけではなかったため、隠密行動が出来る者達を動かせた―――と言うのです。

 

その内の一人が―――気配も・・・音も立てずに、今回の依頼人の背後に現れ・・・

 

 

 

市:才蔵―――報告を。

 

才:細川様の思ってた通りでしたよ。

  今璃莉霞の奴“アワアワ”してる最中でした。

 

蓮:・・って、お前―――?

 

才:ぃよう、童貞w

 

サ:ほほ〜う、早えぇな―――もう仕上げてきたか。

 

才:ま、こんくらいの事は時間かけるまでもない―――てことで・・・ほい。

 

秋:ふむ―――慌てぶりが手に取るようだな。

 

ギ:ああ・・・なんて言うか―――あいつにこんな一面もあるのな。

 

ソ:私達・・・普段しっかりした璃莉霞さんしか知らないから―――意外です。

 

市:普段はこんなものですよ・・・そこがまた璃莉霞の魅力でもあるのです。

  ―――それで団蔵の方は?

 

才:ああ―――頭ならエリマスに事の次第を報告して、今は別の任務で動いていますよ。

  あと小太郎は関係各所に報告の為、回ってる最中です。

 

 

 

恐らく―――今回の事は、璃莉霞本人に伝えてしまえば拒んでしまうだけだろう・・・ならば、外堀から埋めていくまで。

本人以外の誰しもが認めてしまえば、いつぞやの様に・・・自分が招き入れた「生徒会入会」の時の様に、陥落(おち)てくれるだろう・・・

それに―――関係各所・・・御三家の現当主達は(もと)り、へのごあいさつはかせてはならない・・・手抜かりはあってはならないのです。

 

 

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#120;母から娘へと受け継がれるもの

 

 

一方その頃―――璃莉霞は・・・

 

 

 

璃:う゛〜〜〜見つかんない―――確かあったと思ったんだけどなあ・・・

 

☆―〜ピロリン〜―☆

 

璃:あれっ? 誰から・・・はい―――征木です・・・珠子さん?

  あ、はい・・・はい―――判りました。

 

 

 

璃莉霞自身の記憶では、所有していた“はず”―――と、思っていた着物でしたが、どこをどう探しても見つかりませんでした。

・・・と、そんな時に、登録していない番号からのTelがあり、出てみれば・・・なんと相手は稲荷珠子(玉藻前)だったのです。

 

その彼女からの呼び出しを受け、一路璃莉霞は稲荷大社へと来てみれば・・・

 

ところがなぜ、稲荷珠子(玉藻前)璃莉霞ったのか―――それは・・・

 

 

 

璃:(あ・・・っ)素敵・・・あの、珠子さん、この着物一体・・・

 

珠:ぬしのご母堂よりワシが預かっておった―――この様な逸品、世に2つとないものぞ。

 

璃:(―――て)これ母様の??

 

 

 

璃莉霞が珠子の神社―――稲荷大社の社務所を訪れた時、煌びやかにして雅やかな着物が一張り―――衝立(ついたて)てかけられていました。

しかしそれこそが、璃莉霞の母―――征木阿重霞がまだこの現実内の世界にいた時に仕立てた、大島紬の振袖と帯の一式・・・。

 

珠子曰くに、これ程の逸品はこの世に2つとない―――とされるまでの・・・

そして促されるままに袖を通して見ると・・・

何から何まで―――自分にぴったりだった・・・まるで母が娘である自分の為に仕立ててくれたのだとさえ、錯覚するほどの採寸の仕方だった・・・

しかしそれは、驚くほどに璃莉霞と阿重霞の体型が同じだった―――と言う事にもなるのです。

 

―――と、ここで話しが繋がってくるのが、「♯119」の部分・・・

 

 

 

璃:う・うぅ〜〜〜っ・・・キツい―――太ったつもりなんてないのになあ・・・

 

珠:はて? 阿重霞殿はぬしと同じ体型であったと思うたのじゃがのう?

 

団:たまちゃあ〜ん、もしかすると先輩、着物着たことないから・・・

 

珠:ふむ、なるほどのう。

  ――――これでどうかの?

 

璃:あっ、ちょっと楽になった―――それにしても・・・そうなんだ・・・これが母様の―――

 

 

 

この時はまだ、“その日”ではありませんでしたから、仮に着ただけ・・・でしたが。

そこには母の在りし日の姿が伺えるようだった―――

その事に、暫く姿見に映された自分の姿を、“ぽーっ”と見惚れていた璃莉霞がいたのです。

 

 

その、一方で―――

 

 

☆〜―ピロリン―〜☆

 

 

才:おっ・・・頭からだ―――ってえ〜?!

 

市:どうしたの?

 

才:ああ、細川様―――“これ”を!!

 

市:(!!)これ・・・本当に璃莉霞?!

 

 

 

このタイミングで、霧隠才蔵のスマフォに、才蔵が所属している集団の長から転送されてきた画像・・・

それがまさに、未成年ながらも既に大人の女性の色香を漂わせる・・・

 

それは着物がそうさせているようでもあり―――自分に見惚れている表情もそうであったり・・・

そんな真友の姿そのもの―――

それは、一瞬ながらも同性である市子自身も心奪われてしまいそうなものでしたが。

今この事を仲間達に報せたとしても、それはそれで勿体ないことだとし、飽くまでこれは、この後控えるイベントまでお蔵入りさせることにしたのです。

 

 

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それから数日が経ち―――いよいよその時が・・・

大晦日の日、璃莉霞は市子から言われたとおり22:30に瑠璃恩寺の山門近くで、例の振袖を着て既に待っていました。

 

 

まだかなあ〜皆・・・通りすがりの人達、私ばっかりジロジロ見てて―――落ち着かないよぅ・・・。

それとも?? もしかして母様の着物、私に似合っていないんじゃ?

ああ〜ンどうしよう―――これじゃ母様に申し訳ないよう!

 

 

少し悪い表現をしてしまうと「晒し者」・・・

街ゆく人々―――特に女性などは璃莉霞の様に振袖を着ている者も少なくはなかったのですが、

誰かを待ち合わせている璃莉霞を、少しばかり奇異な眼で見ていたのです。

 

けれどそれは、振袖と似合っていない―――ではなく、むしろその逆・・・

似合いすぎてしまっている、魅力的な和服美人が、物憂げに想い人を待ち焦がれている―――という表現がしっくりと来ていたのです。

 

それに? 約束された時間通りに来たと言うのに、なぜ璃莉霞一人・・・?

なのかといいますと―――

 

 

 

小:おほ〜w すんげえのなんのww 皆が皆、あいつのこと“チラチラ”見てるぜえ〜?w

 

清:小夜子・・・お前なあ―――

 

聡:け・け・け・けど〜〜なんだか女性の私でも、つい見惚れちゃいますう〜〜!

 

豪:でもよう・・・なんつーか、あいつ本人全く気付いてねえのが居た堪れない―――つーか・・・

 

厳:ふむ、だがPRにはまだ一つ足らんな。

 

市:そこの処も手抜かりはなく―――さ、清秀・・・出番ですよ。

 

清:・・・は? オ―――オレ? なんで・・・

 

市:あなたが行かなければ話になりませんよ。

  このタイミングで私が出ても、何のことはありません・・・あなたが璃莉霞の下へ行く事で、意味が違ってくるのですから。

  さあ―――つべこべ言わず、とっとと行きなさいッ!

 

聡:(なんだか・・・今日の市子さん、ちょっと怖いね?)

 

豪:(ああ・・・まあ、なんて言うか―――てより、お前絶対その事口に出すなよ。)

 

小:(ケケケw 市子も判ってんじゃんw あそこへ私やあんたが行った処で、単なる女子会にしかならないが―――)

 

厳:(フッ・・・森野のあやつが行く事により、その大きな意味を成す―――清秀よ、ここがお前の正念場と心得よ。)

 

 

 

半ば気後れをしている将来の御三家を背負って立つ、少し女心に疎い同級生の男子の尻を叩き、送り出す細川家ご令嬢・・・

その彼女の手には、しっかりとスマフォが握られており、しかも既に“誰か”に向かって発信された形跡もあったようでした。

 

ともあれ、この後の展開は次話に―――

 

 

 

つづく