#121;年が改まるこの時に
清:よ・・・よう―――待たせた・・・な。
璃:あっ、秀ちゃん―――あれ? 他の皆は?
清:あ、ああ〜まだちょっと遅れてくる・・・ってよ。
璃:そう・・・なんだ―――
待ち合わせの時刻を少しばかりすぎて現れたのは、互いが想い合っている相手でした。
その事はその事で嬉しいのですが、本来このイベントは皆で一緒に・・・との事だったので、他の皆の事を聞くのでしたが・・・
実は清秀は、その事に関してこんな風に言い含めさせられていたのです。
市:いいですか清秀―――まずあなたがやるべき事はたった一つです。
清:・・・はあ? 一つ??
市:そうです、まず璃莉霞を褒めなさい。
清:・・・ん? たったそんだけでいいのか?
市:いいのです―――兎にも角にも璃莉霞の事を・・・それともあなた、あの着物を着た璃莉霞が不似合だと?
清:いや・・・別に・・・そうは思わないが?
豪:おいおい、大丈夫かよこんなんでw
市:だったら褒めるのです―――「その着物似合ってる」くらいの事は言いなさい。
それにこの事は、私や小夜子が言ったところで、別に―――なぁ〜んにもなりませんから。
清:え? いやでも―――あいつとお嬢と小夜子・・・ゲフゥッ!
市:その・・・“お嬢”という呼び方、止めなさいと何度言ったら!!
いい〜ですか? 清秀! あの子はあなたにこそそう言われたいのです! いい加減その事くらい察しなさい!!
清秀にしてみれば、既に想いが通じ合っている仲なのだから、いま殊更そんな事を言う必要はない―――くらいの事にしか思ってはいませんでしたが。
市子にしてみれば、まさしくのこういう処が頭痛の種でもあったようで―――
互いに想いを通じ合わせている―――“だけ”で、それ以上から中々発展しない・・・
果たして鈍いのか、遠慮をしているのか・・・そこは定かではありませんでしたが、またしても―――の禁句の連発に、同級生の男性に肘鉄を見舞わせると、
この朴念仁の尻を蹴り上げて送り出したのです。
小:やぁ〜れやれw 本ッッ当鈍い事この上ありゃしないったらw
市:全く・・・彼のお母様はヤリ手で有名ですのに・・・どうして彼の様なのが―――
厳:フ・・・さてな、ではそろそろオレ達も参るとするか。
市:あっ、はい―――厳三様。
奥手と言うには奥手すぎる次代の森野家当主―――清秀の母である婀娜奈は地域きってのキレ者として知られており、
璃莉霞の母である阿重霞とはいい意味での“好敵手”同士でもあったのだとか・・・
なのに―――の、清秀君・・・鳶が鷹を生む―――とはよく喩えに引き合いに出されはするものの、その逆パターン・・・とは思いたくはないのですが、果たして?
それはそれとして―――
清:(・・・)な―――なあ、璃莉霞・・・
璃:ん? なあに?
清:まあ―――その・・・なんだ・・・よく似あってるぜ・・・着物。
璃:(・・・)本当?
清:ああ―――普段見慣れないからビックリしちまったけどな。
少々照れ隠しをしながらも、言われたとおりに・・・いや、自分の本心を述べる清秀。
するとその途端、大粒の泪が璃莉霞の眸より溢れだし、想い人である幼馴染の胸元に抱き付きました。
清:お―――おい璃莉霞? オレ・・・何か悪い事・・・
璃:ううん―――そうじゃない・・・嬉しいんだ・・・。
その言葉を秀ちゃんから聞けたって事が・・・。
市子や小夜子さん、聡子さんも仲良くなったけれど、彼女達の口からじゃない・・・
秀ちゃんがその言葉を言ってくれるのか―――それだけが心配だったんだよ!
そこでようやく―――幼馴染の・・・いえ先程自分の尻を叩いた細川の令嬢が言っていた事の理解に辿り着いたのです。
どうしてお嬢が、オレが褒めた方が良かったか―――これで判った・・・
こいつ・・・オレがそう言わなければ―――
ああ―――そうだよ・・・良く似合っている、似合いすぎている
こんなオレなんかには、勿体ないくらいの―――美人だよ・・・
自分の胸元に飛びついて来た幼馴染の気持ちが、今にしてようやく分かった―――とでも言う様に、優しくも強く抱きしめる森野清秀・・・
そしてここで―――
小:ぃよう〜盛り上がってるようじゃなあい? ご両人w
璃:あっ・・・小夜子さんに―――
聡:良かったですね、璃莉霞さん。
豪:てえ〜か清秀よう、お前にゃあ勿体ないくらいの彼女いながら何やってんだよ―――w
市:全く・・・豪志さんの言う通りですよ? 大体私からの啓発ではなく、こう言う事はあなた自身から―――
厳:まあ、オレにしてみればお前が鈍かった方がよかったんだがな!w
市:ン・・・なっ―――?
璃:厳さん、そりゃないですってw 厳さんには市子って言う人がいるじゃありませんか。
厳:フッ・・・まあ物は言いよう―――と言う事だ、さてでは参ろうか市子。
なんとも、厳三の方が市子よりも一枚も二枚も上手の様でw
それに市子にしてみれば、こうした大衆が集まる場で、清秀と璃莉霞の関係を公認にしたかった―――
だからこそこの計画を立てたわけなのですが―――厳三にしてみれば“人材”としての璃莉霞の事を未だ諦め切れてはおらず、
その事を口にした“だけ”―――なのでしたが、ついぞの本音に市子も開いた口が塞がらなかったようです。
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それはそれとして―――「#120」で触れた事でもあるのですが、実は市子は所有しているスマフォのある機能・・・「カメラ」を使用し、璃莉霞の振り袖姿を撮影していたのです。
しかも、その画像は既に“誰か”に向けて発信されていた・・・
では、“何処”の“誰”に―――?
時を同じくして年末年始の前後―――場所は・・・「欧州選手権」の舞台ともなっている、ロシア・サンクトペテルブルグの会場にて・・・
ブ・プーーーーーーーーッ!
キャアーーーーッ!
キ:どうしたの!? 一体何があっ――――――イリス?
女子フィギュアスケート現女王、イリス=アディエマス・・・何者かによる狙撃にて―――
大量の“鼻血”を吹き絶命?? ―――かと思いきや・・・
キ:しっかりしなさい、イリス!!
イ:あっ・・・キシリアひゃん・・・わ、わらひ・・・もう、ちんでも―――イヒッw ガク!
は い ?
名うての狙撃手によって絶命の一弾を撃たれてしまった事により、大量の(鼻から)出血を吹いてその場に倒れ込んでしまった・・・
いやしかし? よくよく調べてみれば、弾丸による傷痕もないし、なにより・・・
キ:(ン?? これ・・・鼻血??)この大量の血―――って・・・あなたの゛??
なんと、女子フィギュア・スケートの現女王が、突如として血を吹いてその場へと倒れ込んだのは、
鼻血を吹いてしまうまでの何か興奮してしまえる要素があったから・・・・???
すると、現女王の手には、しっかりと、彼女のスマフォが握られており、そこにはなんと??
キ:ああらこれは・・・ちょっと失礼―――
ほ・・・これはこれはw
キシリアも、失礼とは思いながらも、イリスが鼻血を吹いて昏倒してしまった原因が、イリス自身のスマフォにあるものだと思い、操作をしてみると・・・
なんとそこには、まさにく匂い立つ和服姿も艶めかしい成人女性が―――(注:言われるまでもなく璃莉霞ですw)
しかもよくよく注視してみれば、クリスマスに日本で開催された「五大陸選抜」の時に自分達と顔見せをしたイリスのフアンであり、
その後よろしく仮想内に於いても、イリスが慕う「お姉サマ」なる人物だった・・・
つまりイリスは、何者かが送ってくれた「最上級のお宝」につい悶絶してしまった―――と言う始末だったのです。
{しかもよろしく、この後医務室に搬送されるまで、とても幸せそ〜な表情にして、
それでいて時折『ケヘヘヘw お姉サマぁ〜ン♡』と、寝惚けた事を言っていたイリスがいたようですw}
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―――と・・・皆が愉しめていたのは、正月三が日まで・・・
それと言うのも―――・・・
小:(・・・)―――どうした。
?:申し訳ございません、無粋な真似はしたくはなかったのですが・・・
小:何かあったんだな――構わん、話せ・・・
?:はっ・・・実は―――
実はこの時、お互いカップル同士だった・・・。
清秀は璃莉霞と、厳三は市子と、豪志は聡子と・・・ただ、相方を連れていなかったのは小夜子だけ―――かと思われたのですが。
ならばこの男性は・・・
匂い立つ、イケメンにして細面の長身男性は―――?
そんな小夜子の“彼氏”と思われるような男性と、小夜子が話し込んでいるのを聡子が目撃し・・・
聡:(あれ? 小夜子さんも彼氏さん来てたんだ―――)でも・・・あれ? どうして小夜子さんだけこちらに―――
本来なら自分の彼氏のお披露目―――と、そうなるものと思い込んでいたのに、話し込み終えると小夜子一人だけが自分達に何かを伝える為に近づいてきた・・・
そしてそこで、小夜子が伝えてきた事とは―――
つづく