リリアと市子が互いに和解(わか)魔王真実共有させた―――

 

現実内の米国最大の都市ニューヨークにて、ある小さな花屋に“夫婦”と見られる一組の男女(カップル)・・・

 

 

ユ:はい―――お待ちくださいな。

  お待たせいたし・・・―――

 

 

その小さな花屋の店主は、名を『ユリア』と言いました。

この店舗を埋め尽くす色とりどりの・・・季節の花々の様に優しく、(たお)やかなる女性・・・

けれどこの店―――『フォゲットミーノット』を訪れた一組の男女(カップル)は、彼女(ユリア)真実っていた・・・

 

この世を混乱に陥れ、やがて崩壊を目論んでいた“至上の悪”―――『四凶』の一柱であるエニグマとして・・・

 

 

とうとうこの日が訪れましたか―――

それにまさか、以前に取引のあった方々だったとは―――

ですが仕方がありません、ここは一つ―――・・・

 

 

すると女の眸が怪しく光り、店舗の花々もどこかザワつき始めた・・・

しかし、これが本当の彼女(ユリア)―――

 

 

ユ:なにか・・・ご用件ですか―――?

 

 

女は・・・警戒を解かないままに、店を訪れた()()()目的―――

すると・・・・

 

 

マ:以前、私の夫の社屋を素敵な花々でアレジメントしてくれた、ユリアさんですね?

 

ユ:は・・・あ―――確かにわたくしがユリアですが?

 

マ:いえね? ホンッットう、うちの人ったらものぐさなモノですから、妻である私がどうにかしてあげないとダメなんですよねえ〜〜

 

カ:おいおい―――マリア、オイラの事ものぐさ〜〜って・・・

 

マ:けれど、そのお蔭で大口の契約が取れたの、誰のお蔭だったのかしらねえ〜?

 

カ:いやははは―――全くお前の言うとおりだよ、マリア。

 

マ:本当に分かってんの? 連邦警察の署長と企業の取締役―――二足の草鞋履かなきゃならないだなんて、聞いてないわよ??

 

カ:いやァ〜〜けっどさあ・・・うちんとこの取引先、えらくマリアの事気に入っちゃっててねえ〜?w

  あんたも―――そう思うだろ? エニグマさん・・・

 

ユ:やはりあなた達の目的は―――!

 

 

しっかり者の“妻”と、少し剽軽な“夫”―――

妻の方は米国の連邦警察の中で『猟犬』とまで畏れられた名うての捜査官にして、カルフォルニア州の地方分署の署長であり、

夫が経営しているIT企業の取締役でもあった・・・。

対して夫の方はと言うと、米国・・・いや世界でも指折りのIT企業の経営者兼CEOであり、その“趣味”が泥棒―――と言う、

一風変わった人物だったのです。

 

ともあれその時ユリアの店に訪れたのは、以前夫が経営する社屋を雅やかに飾ってくれた、その“お礼”―――ばかりだと思ったのですが。

やはり警戒しておいたのには間違いなく、夫の方から自分のもう一つの存在性を示すものが・・・

その事に反応し、身構えるユリアでしたが・・・

 

すると―――・・・

 

 

マ:お止めになって頂けませんか―――今回私達が訪れたのは、()()()()()ではありませんから・・・

 

 

今までのやり取りがまるで“道化”であったかと言うように、マリアの眸の色が変わった・・・

そう―――まさしくの『猟犬』のように・・・

しかし、これで交渉の主導権を握れた・・・だからこそ―――

 

 

ユ:『そう言う事』・・・とは?

 

マ:以前私達は、互いを敵とみなしぶつかり合いました―――

  けれど、“それ”は“それ”―――と言う事です。

 

 

マリアには、ひとつの(わだかま)がありました。

それは、対『エニグマ戦』に於いての、終盤のユリアの行動・・・

 

絶対的な悪ならば、自分の手駒すら見棄て―――見殺し―――犠牲とさせるのに、それどころかこの人物は自分の身を呈して(かば)った・・・

しかも消え逝こうとするときに、まるで誰かに詫びるかのようにして・・・

 

『自分の』・・・『不手際』を―――?

 

その事はまるで、この人物は本来やりたくなかった―――けれどやらざるをえない状況に追い込まれ、やらざるを得なくなった・・・

そうした直感が働き、今回の行動に至った―――

 

 

* * * * * * * *

 

 

けれど実は今回の事はマリア一人でやろうと思った事なのでしたが・・・

 

 

カ:(ふわあ〜〜ああ・・・)こんな朝早くからどこへ行くつもりなんだい。

  まあ〜〜満更「実家に帰らせていただきます。」てな様子じゃないみたいだけど。

 

マ:カイン・・・フフッ―――あなたに内緒で・・・って、土台無理な話しだったわね。

 

カ:まあねえw それに彼女の店の場所、君しか知らない事だしなあ?

 

 

* * * * * * * *

 

 

同じ大陸―――と言えど、東の端から西の端・・・では片道でも飛行機を利用しても長時間かかる為、

だからマリアは朝早くからニューヨークへ出かける為の用意をしていたのです。

けれど泥棒としての嗅覚は最たるもので、自分が愛する泥棒には自分の行動など余すことなく総て盗られていた・・・

ならば―――と言う事で、「表向き」は以前にしてもらった事の感謝の辞を述べる為・・・と、本来の目的―――

 

 

マ:“あなた”は―――一体“何者”で、“何”の為にこんな事を・・・?

 

 

彼方からのその質問は、大雑把ながらも核心をついていた―――

 

 

そう言う・・・事なのですね―――

あなた達も、その事に気付いてしまわれた―――

このわたくしの“三文芝居”で―――・・・

ああ―――けれど満更でもありませんね・・・

 

 

すると急に、彼女からの警戒が解かれた―――

それは少しばかり表情の柔らいだ事でも判るくらいに・・・

 

 

ユ:その事をお話しするには、この場は相応しくありませんね―――・・・

 

マ:(えっ・・・?)

 

カ:(うん・・・?)

 

ユ:ならば誘いましょう―――我が固有領域に・・・

 

 

#125;自然の摂理を知りし者(ドルイド)

 

 

『固有領域』―――? 何故普通な人間が、()()()()()―――

 

 

マリアも―――()してやカインも―――ユリア()()だとはらない・・・

言わばマリアたちは、ユリアの事を人間でも僅かながらに存在する「超能力者」の類だと思っていたのです。

 

しかし・・・彼ら彼女達の想いとは裏腹に―――その場所だけの位相が・・・世界が一変する・・・

 

 

ユ:わたくしは―――わたくし本来の世界ではかつてこう呼ばれていました・・・。

  『東の魔女』―――ユリア=フォゲットミーノット=クロイツェル・・・それがわたくしの真の名です。

 

マ:『東の』・・・

 

カ:『魔女』―――? するってと・・・あんたは―――・・・

 

ユ:いかにも、わたくしこそは魔族です。

 

マ:(ゴクリ・・・)では・・・あなたは―――いえ、違うわね。

  ならばあなたが為し得ようとしていた事とは?

 

 

ユリアこそは人類ではない―――魔族・・・。

それだけを聞いただけで一瞬マリアは逡巡しました。

 

そう、最初にマリアが言いかけようとしていたのは、「魔族だからこそ自分達の世界を蹂躙し、自分の領土にしようとしていた。」

けれどそれは間違いだと判った―――その理由が、仲間を護るために身を呈し、自分の不手際を詫びていたあの行為・・・

 

ならば、この人物がやろうとしていた事とは―――・・・

 

すると、今まで以上にその表情が和らいだ・・・そして気が付けば自分達は・・・

 

 

マ:(こっ―――これは?!)

 

カ:(“禁じられた花園”―――エデン??)

 

マ:(そっ―――それ・・・に・・・)

 

カ:(なんっ・・・なんだ―――この・・・感覚・・・)

 

 

その場では、誰しもが争わない―――“敵意”を“戦意”を“殺気”を削ぐ『楽園』。

そして楽園の主はこう告げたのです。

 

 

ユ:ようこそ―――わが『固有領域(テリトリー)へ・・・

 

 

その瞬間―――マリアの戦意が挫かれた・・・

 

 

ダメだ・・・この人には(あらが)えない―――

これが・・・これこそが本当のこの人の実力―――

 

 

マリアは武道の達人であったからこそ、判り得ていたことがありました。

言うならくは武力で相手を制する場合に於いては、圧倒的な“敵意”“戦意”“殺意”を以て押し潰すのみ・・・

それが“今”―――適わなくなってしまった・・・いくら示威的にそれらを沸き立たせてみたとしても、その根底から挫かれてしまっている事に、

思い・・・そして知らされてしまう―――

けれど彼方は涼やかな顔で、こう述べたのです。

 

 

ユ:そう無理をするのではありません・・・あなた方は既に、わたくしの求める「可能性」なのですから・・・。

 

マ:「可能性」? それ―――って・・・あのゲームのキャッチ・コピー・・・

 

カ:『総ての可能性の為に』?

 

 

すると東の魔女は、更なる行為へと移行する。

 

 

ユ:我が名は『東の魔女』にしてユリア=フォゲットミーノット=クロイツェル。

  そしてわたくしが所有する固有権限こそ『ドルイド』!

 

〖来れ、我が権限の源となる三つの礎よ〗―――〖アンブロシア〗〖ユグドラシル〗〖沙羅双樹〗

 

 

ユリアが召喚した三本もの大樹、それこそがユリアの権限の源泉でした。

黒き色も禍々しげな“暗黒の大樹”―――『アンブロシア』

白きにして光り輝き総ての生命の源とも言える“生命の大樹”―――『ユグドラシル』

彼の二つとは違い唯一花をつけ光と闇を中和せしむる“運命の大樹”―――『沙羅双樹』

 

自分達が相手としていたのは、漠然たる“悪”等ではなかった・・・

まるで“神”―――そう思えるなら、今の自分が判る・・・

所詮人類など“神”の前には無力だと言う事を・・・。

 

 

 

つづく