そのゲームの中では、マリアは圧倒的な武を誇っていました。
そんな彼女が、圧倒的な意志の前に屈する―――
そして今にして思う・・・
こんな権限を―――あのレイド戦で使われていたならば・・・
けれどこの人はそうはしなかった・・・
まるで私達を、これまでより強力な相手に立ち向かわせるために・・・?
マ:あなたが「魔女」? けれど―――
ユ:残念ですが、わたくしは神などではありませんよ?
けれどわたくし達の世界では、神も魔族の一つでしかないのです。
カ:な、なんだかすげー世界だこと・・・
確かにその場には、神と見紛わんばかりの権限を行使する者がいました。
―――が、そこは間もなくしてかの存在自身から否定をしたのです。
人間ではない魔族が、自分達以外の“可能性”を求め、来訪した“異次元”・・・
それに―――
カ:ん〜〜〜それにしても、なんたがここ妙に気持ちいいんだよなあ〜
マ:ええ―――そうね・・・。
それに「沙羅双樹」・・・確かある宗教の歴史で、偉い人が“悟り”を開いたと言われている・・・
ユ:“彼”でしたら、わたくしが啓発しこの木の2つの枝を手折ってそうさせました。
マ:(・・・)ええ〜〜っ? けれどそれ、何千年前の話しですよ?
そこで知り得た事実―――沙羅双樹の下で悟りを開き、その後「聖人」として昇華し崇められた人物を、そうさせるように促せた存在こそユリアだった・・・
けれどその話しが本当ならば、彼の成人が悟りを開いたのは現在から3000年前の話し・・・なのだとか。
そんな―――マリアやカインが太古の昔として認識している出来事を、さも昨日あったかのごとくに語ってくれる存在・・・
けれど最早、その存在には敵意はない・・・それは、その場に坐し彼の聖人の説法に中っているかの如くの感覚に陥っている自分達がいる・・・
それはやがて、結論にまで辿り着くのです。
マ:ではやはり、あなたはあなたよりも強力な者と私達を宛がわせるために・・・
ユ:「そう」―――である・・・と言えますが、しかし、その計画はわたくしの不手際によって頓挫しかけているのです。
カ:そういうことかあ―――本来なら、おいら達があんたを倒さなくっちゃならなかったわけだが・・・
マ:そこで―――です。
少し私からの提案を聞いていただけますでしょうか。
『やはり思っていた通りだった。』そうマリアは理解しました。
そして理解し得たからこそ、数々の疑問が氷解してきたのです。
それに、その想いに応答るべき一つの案として、ユリアに提じてみると・・・
ユ:『レヴェッカ』様と『エリーゼ』様を?
マ:はい。
それとこの事は私達だけの秘密と言う事で―――でなければ、本気にはなれないでしょうから。
そしてあなたにもお願いがあるのです―――
そのマリアからの提案とは、あの最強の姉妹を相手とする「討伐戦」を、今回はユリアをこちらの陣営の支援に組み込んでこなしてみよう―――と言う事でした。
それにマリアは、この交渉に先んじて既に最強姉妹の“姉”の方と「渉り」をつけており―――・・・
* * * * * * * *
マ:レヴェッカ様―――改めてのお話しがあるのですが・・・
レ:ほお〜? それが「今回は敵役になれ」―――ちゅうんか。
マ:承諾・・・願えますか?
エ:なんなら―――マッポがきよったけん、まぁたガサ入れかぁ思いよったら、違うんかい。
レ:エリーゼ―――黙っちょれ。
エ:おねいちゃん―――ほいじゃがのぅ・・・
この場所は、エリーゼが根城として構える「覇神会」の建物。
そこへ連邦警察の制服を着用したマリアが、たった一人で乗り込んできていたのです。
国は違えど、警察と反社会的勢力とは“犬猿の仲”・・・
とは言え、そんな処を徹底的に潰すと言うなら、州警察にも応援を頼まなければならない・・・
なのに―――その場にいたのは、分署といえど署長一人のみ・・・
すると―――・・・
レ:・・・クックック―――ハッハッハ―――アーッハッハッハッハッハ!
こいつは傑作じゃのう?! のう連邦警察の姉ちゃん、ワシ等も実は行き詰っちょったんよ。
まあ〜ユリアの奴の不手際もあったが、そがいなことでウジウジとはしとられん―――
じゃがのう、あれと同じ様な事をヤレぃ言われても、中々ええアイデアが浮かばんかったんよ。
マ:―――では??
レ:ああ〜えかろう、協力しちゃろう―――ほいじゃがのう・・・
マ:ありがとうございますレヴェッカ様! エリーゼ様!
正直な処を言うと、レヴェッカ達の方でも今回の失敗の後を、どう埋め合わせをするかを考えあぐねていた処でした。
それが、まさか“可能性”を持つ者達より「リトライ」を申し込まれるとは―――
とは言え今度マリア達が相手としなければならないのは、まさに武の頂点に君臨する「頂きの2人」・・・
その危険性を伝えようとはしたのですが、それは被せ気味のマリアからの感謝の辞に掻き消されたのです。
そしてマリアが去った後で―――・・・
エ:あ〜んの姉ちゃん大丈夫かい。
おねいちゃんが言おうとしとった事半分も聞いとりゃせんで?
レ:まあ・・・ユリアの奴があっちにつく―――ちゅんなら、その心配は無かろうてのぅ。
レヴェッカはマリアからの提案を受けた時、こう言うつもりだったのです。
『ワシらと殺り合うからにゃ、一度や二度は“死ぬ”覚悟はしとけよ』―――
#126;死 闘
そしてクラン「DIVA」は、マリアが誘うがまま指定された場所まで来てみると。
バー:(うん?)なんだ、あいつは―――
バジ:見覚えがあるが、確かどこかで・・・
クリ:(!!)要警戒―――あれは、“元”『エニグマ』です!
ワス:なんだと? いやしかし―――
クル:“元”・・・って何なのよ、煮え切らないわね。
クリ:“元”・・・は、“元”―――ですよ。
それよりどう言うなンすか、ドゥルガー・・・
バー:どう言う事だ?
クリ:いえねえ・・・少し前から妙だったンすよ。
バン:そう言やぁ、オレらが“狩り”に誘っても付き合わなかったなあ―――
ま、旦那のカリギュラと一緒だ〜つってたから、イチャコラしてたんじゃないのか・・・と思っていたんだがな。
バー:それは本当か・・・? 私は何も聞いてないぞ。
クリ:本当―――ですよ・・・けど、あたしもバンディットさんみたく思ってましたがね・・・。
―――で、何してくれたンです? このあたしにも勘繰られないくらいにコソコソと・・・。
ドゥ:一つ―――私からも聞いてみたいわね。
あなた達・・・あの『レイド』で満足できたの? 出来るわけないわよね・・・。
だって本来私達が倒すべき敵が、言ったら“自害”したようなものだもの。
あのトラブルさえなければ、私達が勝てたかどうかも、正直怪しいモノだわ・・・・。
だから―――その“代用”として用意させてもらったのよ・・・この私がね!
DIVA達の動揺の色が隠せない理由―――とは、あの苦戦の思い出しかない『レイド・エニグマ戦』のボスであるエニグマが、
何故かあの時とは全く違わせた印象で現れていたから・・・。
そしてその原因を、リアルでは凄腕のハッカーとして鳴らしたクリューチが、ここ数日のドゥルガー(及びカリギュラ)の行動を追えなかった事で推察し、
本人に問うてみた処・・・ドゥルガーは悪びれもせず―――ですが、あのレイド戦での無様な自分達の闘い方にこそ疑問を呈したのです。
そして―――この仮想世界にはあり得ないとされる『地響き』が・・・?
バー:な・・・なんだ―――? この仮想の世界で・・・地震―――だ、と??!
クリ:(!!)要警戒MAX―――! これ・・・エニグマの比じゃないッスよ!!
バジ:なんだと? では一体何が起ころうとしている!
クリ:マリア・・・あんたァ―――・・・
ドゥ:エニグマでは物足りなかったのでしょう? だから、この方達に渉りをつけたのよ。
クル:マリア・・・お前ぇ〜〜〜!
クリ:喧嘩割れしてる場合じゃないですよ―――来ます! エネミー2!!
『拳帝神皇』と『破神壊帝』です―――!!
特級の危険性存在・・・かのレイド戦に於いては自分達に協力をしてくれた二の存在・・・。
その時のPTの一人が、ふざけ半分にこう“ぽつり”と漏らしたことがありました。
『この二人がもし敵だったら・・・』
けれど今、その『もし』は『もし』ではなくなった―――
今まさに迎え撃つべき敵として現れた強大な敵―――
そして、自分達とかつて敵対した強者と、仲間を売った仲間内の強者・・・
途端にクラン全員が軽い混乱状態に陥ることになるのですが、けれどそう言った彼らの事情など“敵”は汲んでくれるはずもない・・・。
容赦のない『拳帝神皇』からの奥義が襲い掛かる―――
レ:ちぃとばかし痛いが―――歯ぁ喰いしばれい!!
『“破”の輪』
バー:ぐおっ!? こっ―――これほどとは!!
レ:なんなら―――ちったあ歯応えがあると思うたがのう!!w
ワス:バーディ! くそっ―――・・・
クリ:深入るな、ワスプ―――! (くそっ・・・)バジリスク止められますか?
バジ:判った―――
≪邪眼解放≫
クリ:クルセイダー、バンディット突出したワスプを回収―――
(く・・・)そしてドゥルガー頼めますか・・・
ドゥ:―――判ったわ。
?!!
乱れ始めたPT内の連携を、何とか立て直そうと臨時の指揮官となり、指示を与えるクリューチ。
本来なら戦場におけるあらゆるデータ、情報の収集を一手に引き受けるクリューチこそが本当の指揮官“らしい”のですが、これまではそうしなかった・・・。
それは自分よりも優秀なリーダーがいるからそうしてこなかったのでしたが、この時ばかりはそうも言っていられなくなった・・・。
拳帝神皇かからの強烈な一撃を浴び、片腕を失ってしまったバーディー・・・そんな傷付いた彼女の事を想い、レヴェッカに反撃しようとするワスプ―――
そんな彼の無謀な行動に警鐘を鳴らすも、時すでに遅し・・・敵中に深入りしてしまったワスプを救出する手立てを打つため、クルセイダーとバンディット―――
と、あと・・・自分達を罠に陥れようとした身内の強者が、果たして自分の指示に従ってくれるものか―――と、一か八かの賭けに出たところ・・・
するとドゥルガーは、自分よりも早く動いていたメンバーの誰よりも、回収すべき対象の二人に辿り着いていたのです。
つづく