一定の間隔を置いて大地が揺らぐ・・・もしこれが現実内で起こった時、体感震度にして「M5」レベルのものに相当すると感じました。
しかも、そう言ったモノが本来“自然”の摂理によって起こされる事ではなく、たった一人の行為で為されている事に、
その場にいた者達全員が常識と言うものを改めざるを得なくなってしまっていたのです。
それにそうしたものが、徐々にこちらに近づいてきている・・・とともに、その揺れが大きさを増してきている。
そして、ふと揺れが止んだ―――か、と思うと、なんと上空から「大岩」の様なものが??
クリ:全員回避! 周囲2k圏内、衝撃波も含んで・・・来ます!
バー:こっ・・・これが―――!?
たった・・・たったの一撃で、クレーター並みの窪みが出来た・・・。
しかもそう―――「たったの一撃」で。
けれど、この時点で最も憂慮しておかなければならないのは・・・
クリ:続いてきます! すっげぇやこりゃ・・・まるで「隕石」だ!ww
クル:ジゼル・・・あんたこんな時に笑える―――って・・・
クリ:仕方ないでしょう?w あたしら、何もかもを無に帰せれるほどのチカラの持ち主と闘り合ってんですよ?
そう―――“神”・・・『闘神』と『破壊神』のね!ww
ドゥ:(しかしこのままでは・・・)ユリアさん―――あなたの権限も、あんなものではありませんよね?
「たったの一撃」ですらこうなのに、それが連続性を以てなされることに、彼らはただ人間の無力さと言うものを思い知らされました。
まるで「エアーズロック」並みの大岩が、間断なく天空から降り注がれてくる・・・しかも自分達には、回復役どころか補助系の魔術を使える者すらいない・・・
けれどマリアは、今回に限り味方についてくれた人物の態様を見させられていたから、そう促したのです。
すると彼方は微笑むのと同時に、態を変じ―――
ユ:我らが可能性達の為になれ―――『加護の大樹』
≪天紗万有≫
すると東の魔女は、それまでの「世界樹ユグドラシル」を収め、今度は「悟りの樹」として知られる、三大大樹の中では唯一花をつけるその樹の特性を活かし、
咲き誇った花びらを一気に舞わせ、その花びら一枚一枚にある効果を含めさせ、戦闘に参加している全員の身体に張り付かせたのです。
すると・・・
バー:こっ―――これは!?
バジ:ち・・・力が―――漲り溢れかえって来る!!
クリ:こいつは・・・! 攻撃力・防御力・耐久力・耐性力、元の能力値の10倍?? それに体力ゲージが3本追加???
すげェ・・・これだったら或いは―――
ユ:いえ、まだです。
バン:「まだ」・・・って、まだ他になんかあるのかい!?
ユ:今のは単なるパーソナル・パラメータの数値向上でしかありません。
それにそれしき上がったとしても、この方達の前では“多少”増えたにすぎませんからね。
レ:フフン―――相も変わらず小憎らしい演出をするもんよのう・・・。
ほいで? ユリアよ・・・おどれはこれからどうする言うんない―――
ユ:勿論―――こちらを使わせていただきます!
≪用命不変≫
レ:カカカカ―――やっぱしそれか! ほなら一切の手加減なしじゃのう・・・心置きなく死ねい!!
≪双羽落爪破≫
DIVA達の基本能力値が大幅に増量された事に伴い、この事に多少は怯むモノと思われたものでしたが。
先程の闘争の在り方でさえも「手加減をしておいた」とさえ思われるその発言に、あのドゥルガーですら一瞬の内に切り刻まれ、
かの拳帝神皇の強さと言うものをまざまざと見せつけられはしたのでしたが―――
今・・・メンバー全員の前で五体をバラバラにされたと思われたドゥルガーの屍体が、不思議な輝きを放ち・・・こちらも一瞬にして―――
バー:(復活・・・だ、と? バカな―――では彼女が先程行使したと言うのは・・・)
クリ:『リ・レイズ』・・・
バー:なに―――?
クリ:あのユリアって人、サポートのロールでもヒーラー寄り?
今のはですね、死亡する対象を予め特定しておいて事前にかけておかなきゃならないもんなんですけど・・・
ドゥ:(くゥ〜〜)今のは流石に効いたわ―――けれどこれが拳帝神皇の本当の実力!
けれど今の私達には強力な助っ人がいます!
ユ:言ったはずですよ、このわたくしの庇護の下に入った者達は、例え如何なることがあろうとも死なせはしない―――と。
今にして判った事・・・彼の者達の持つ権限の強大さと言うものを―――
今東の魔女が口にしたことに嘘偽りは一切ない―――それを今自分達は共有し、体感している事なのですから。
それに・・・だからこそ―――
ドゥ:私達は弱い・・・けれどそれは「これまで」はそうです―――だけど「これから」は違う!
拳帝神皇―――レヴェッカ様・・・受けて下さいますか、今この時点で私が出来る渾身の一撃を!
* * * * * * * *
ドゥルガー達DIVAが米国で死闘を演じていた・・・と、時期をほぼ同じくした頃―――欧州では・・・
とあることを質す為にセシルが単身、自分達のクラン・マスターでもあるナユタの下を訪れようとしていました。
#128;セシル=グラディウスの疑義
セ:ブラダマンテ卿―――・・・
ブ:教皇様に、何用でございますか? セシル卿―――
セ:少々お尋ねしたい事がございまして・・・
ブ:その事に関し、アポイントメントはお取りになられたのですか?
セ:(・・・)いえ―――
ブ:では、お引き取りを―――
しかし、クラン・マスターである教皇ナユタに拝謁する為には、事前通告により予約を入れておかないといけない・・・
それにナユタに直接目通りをするまでは、直下の親衛隊の隊長であるブラダマンテを介さなければならない―――
それが新参のメンバーならばいざ知らず、何年もエリート集団である「異端審問官」の副長を勤め上げているセシルほどの人物が知らないはずはない・・・
それに、こうした“前例”を作ってしまえば真似をしてしまう者が輩出してしまいかねない者と思い、ブラダマンテも厳しく対処したのです。
けれど、セシルにはある考えがありました―――それが・・・
セ:では、その前にお聞きしたい事が・・・ブラダマンテ卿、ならばサブ・マスターであられる「大司教猊下」は、今どこにおられるのです。
ブ:(!)それは―――・・・
セシルが質したかった核の部分を衝いてみると、果たしてブラダマンテは口籠ったものでした。
そう―――セシルが質したかった事こそ、まさにそれだったのです。
自分達を試すかのように現れた『四凶:サトゥルヌス』―――その存在こそは、大司教イセリア=ジェノーヴァその人だった・・・
けれどあの場に現れた真の敵こそは―――・・・すると返答に窮するブラダマンテを救うかのように・・・
――判りました・・・セシル、あなたのその疑義に直接お答えしましょう・・・。――
ブ:教皇ナユタ様! そう言う事ならば畏まりました。
――そしてブラダマンテ・・・あなたもこの真実を識りうる権利を有する者、セシルと一緒に参じなさい。――
いずれこの日が来る―――と予見していたか、教皇ナユタはセシルの案件を容認し、
そればかりか同様の疑義を持っているとされるブラダマンテをも招き入れたのです。
そして、この期になってようやく明かされる―――・・・
セ:急な用向きにお答えをして頂き、恐悦至極に存じ上げます―――教皇ナユタ様。
ナ:いえ、それには及びませんよセシル―――それより、イセリアはどこに・・・との事でしたか。
セ:はい―――
ナ:そうですか―――ならばその質しの返答は、直接本人から聞くと良いでしょう。
ブ:(な・・・?)大司教猊下はすでにおられると―――?
ナ:いかにも・・・そして彼の者からの説明の前に、これだけは話しておきましょう。
このクランは実質上、この私がマスターと成ってはいますが、このクランそのものを設立させたのは、
もうあなた達も存じた通り「権天使」様に外ならぬのです。
セ:(やはり・・・)では、あの戦場で私達の前に立ちはだかったのは―――!
イ:その事は、この私から説明いたしましょう。
ブ:大司教イセリア猊下―――!
クラン・マスターである教皇ナユタにより、自身が抱く疑問の一つが解けました。
以前セシルは、やはりナユタからある告白を受けていたことがあったのです。
その「告白」と言うのが、『私は所詮、このクランを天使様から預かっているのに過ぎないのです。』と言う事だった・・・
しかしそう―――その事が真実ならば、本来のマスターは天使・・・権天使出なければならない・・・の、でしたが。
なぜかそうではなかった―――・・・
それに、セシルは知ってしまったのです。
よもや自分が、此岸側の人間ではなく―――彼岸側のニンゲンと言う記憶を持っている事を。
そして彼岸側の記憶では、ある存在・・・『北の魔女』イセリア=プリンシパティウス=ジェノーヴァと友誼の契りを交わしていたと言う事を・・・。
それに、此岸側ではやはり同じ存在だと見られている、“一人”は元・アイドルユニットのメンバーとしての半崎凛・・・そして“もう一人”が。
セ:大司教イセリア=ジェノーヴァ猊下、あなた様は彼岸に於いての私の友人であった、北の魔女―――イセリア=プリンシパティウス=ジェノーヴァなのでしょうか。
イ:その答えは「そう」であるとも言えるし、「そう」でないとも言えましょう。
セ:どう言う事です?
確かに私は、北の魔女であるイセリア=プリンシパティウス=ジェノーヴァでありました。
けれど“ある事情”により、一つの存在性を二つに割かなくてはならなくなったのです。
自分達のクランの中で、確固たる権威と地位に就いている者の口から、自分達の常識では計れないようなことが語られました。
しかしセシルにしてみれば、これで“また一つ”自分が抱いていた疑義が晴らされた・・・だからこそ―――
そうなのだ・・・やはりこの方こそが、「プリン」であり、「権天使」であり、「大司教猊下」なのだ―――
確かにその場に於いて、自分が疑義を抱いている存在から、疑義の根底の説明がなされました。
為されはしましたが、そもそもの話し存在性を割く等と言う行為は、例え彼岸側のニンゲンであるセシル=グラディウスでも理解するには程遠かった・・・
しかも、その存在からの言によれば、“ある事情”と言うものが原因で、敢えてそうしなければならなかった―――という事が伝わってきたのです。
しかしそれにしても、“ある事情”とは・・・?
すると―――・・・
プ:ふむ―――ヤレヤレ・・・やはりこうなってしまったか。
まあ、致し方あるまい。
その場に・・・確かに居ました。
自分達を試し、そして消え逝った―――権天使としてのプリンが・・・
しかしなぜ「神の御使い」である天使が、あたら「魔女」等と言う負の烙印を押されなければならなかったのか・・・
そしてプリンが、己の存在性と言うものを割かなければならなかったのか・・・
この真実を知った後、この二人が取るべき行動とは―――?
そして・・・真実は、ゆっくりとした口調で語られ始めたのです―――
つづく