突如として、自分達の目の前に現れたクラン創設者『権天使』によって、眠らされていた記憶の封印を解かれたセシル―――ではありましたが。
ならばなぜ、天使は自分の存在性を割かなければならなかったのか、その理由はセシルもどことなく判っていました。
セ:教えてプリン、あのレイド戦で闘ったあなたは、私達が相手としてきたどの敵よりも強かった・・・。
なのになぜ、あなたを追い出した者達から“こそこそ”と逃げ隠れなければならなかったの?
プ:ハハハ―――セシル、それはもう答えを半分以上も出している様なものだよ。
セ:では、やはり―――・・・
プ:ああ―――そう言う事だ。
たとえ私一人が強かろうが、それは飽くまで君達基準での話しだ。
向うは私と同等・・・それ以上の権限を持つ者がわんさと居る。
この私一人が立ち向かった処で―――まあ・・・よく保って1分だとすれば、上出来かな。
ブ:あの・・・少しよろしいですか?
プ:何かね、ブラダマンテ殿。
ブ:あなた方の会話を聞いて概ねは判りましたが・・・ならば私達の本来の敵とは?
プ:そんな事は知れている。
それは“神”であるとも言えるし、“神を模した悪魔”とも言える。
そして私も、一人では敵わないと思ったから同じ志を持つ者が現れるのを待ったのさ。
それが『原初の四姉妹』であるとも言えるし『七人の魔女』だとも言えるだろうね。
だがね・・・たった七人でも戦力としては不足―――それであるが故に大きなバック・アップが必要だと感じた。
そこで目を付けたのが―――『魔王』だ。
ブ:魔王?! けれどそれは―――・・・
プ:そう、『聖典』にもあるように神とは対極の位置にある。
けれどセシル―――君はもう気付いているよね、神の本質が何なのかを・・・
セ:『神も魔族の一種属』・・・では『魔王』とは?
プ:その通りの解釈で構わない―――そう、「魔族」の「王」だ。
何故天使であるプリンが、これまで神の目を盗むかのように・・・時として「魔女」などという負の烙印を背負わせながらも生き永らえてきたか。
そうプリンは機を伺っていたのです。
自分がニンゲンや他の魔族よりは強いと言っても、その他・・・特に自分の種属の中では下位でもある為、どう抗った処で勝ち目はない―――
ならばより多くの仲間・同志を集め、自分の失くした『信じうるモノ』を取り戻すべく雌伏すべきなのだと。
それをするには自分達の大きな後ろ盾として、魔王を迎え入れるべくの準備をしていたのですが・・・
プ:ところがね〜〜世の中そうそう旨い話しは落ちていない―――と言うべきか・・・
今代以前の者達は全員脳筋全開オラオラ系でねえ、これは早くも計画が頓挫するものだと思ったのだが・・・
セ:けれど「今代」―――つまり、王と友誼を結ばれた方だけは違った・・・こう言う事ですか。
プ:その通りだ―――そして王の種属であるニンゲンも、我々の勢力に戦力として加わってくれれば・・・
ブ:あ―――あの? ちょ、ちょっと待って下さい? 王とは・・・? 王とは何者ですか??
セ:王は、私が使えていたかつての主であり、そして友―――こちらにいる、魔族である『北の魔女』ことイセリア=ジェノーヴァであるプリンとも友誼を結ばれた。
そして今代が魔王位に就く以前に互いが固く手を握り交わし、これ以降ニンゲンと魔族との間での無益な戦争を止めさせる―――その終着点に向かっていた処だったのに・・・
プ:王は、なぜか自ら死を望まれた―――奸臣逆賊が用意した毒杯を、それと知りながら煽って・・・ね。
ブ:そのエピソード・・・このゲームの導入部で流されたプロローグ?!
プ:いかがだね、ブラダマンテ殿。
君達は気付かずの内に、私達魔族の手伝いをさせられていたのだよ。
ブ:(・・・)本来ならそこは怒って然るべきなのでしょうが―――ニンゲンの王と魔族の王が手を結ぶなど前代未聞。
しかしその向かわんとしていた先が『戦争のない世』だとは・・・私も一度お目にかかってみたいものです、かの魔王と・・・。
プ:まあ―――見たら見たでびっくりするだろうねw なにより今代は、魔族の中でも最辱と言われているゴブリンですら、勝てるかどうか疑わしいくらいだからね。
だが・・・その芯の強さたるや他の誰をも凌いでいる・・・彼岸の次元で700年―――此岸に換算すると7000年あまり・・・
決して血を流すことなく魔族の最終防衛ラインを維持してきたのだからね。
ブ:それは・・・本当に“弱い”のですか?!!
プ:“弱い”・・・さ―――それも戦闘になればの話だけれどね。
だが今代は頭脳が明晰で弁舌滑らかにして交渉事に長けている・・・これがどう言う事だかは判るよね。
ブラダマンテも、リリアや市子が至ったように、そう言った存在には到底敵わない―――と思ってしまいました。
なにしろ兵法の要諦としては、『戦わずして勝つ』を至上とし、『戦わねばならない時に闘う』を次善、『戦わなくていい時に闘う』を下策にして匹夫・蛮夫の勇である事を知っていたのです。
それを今代の魔王は、まさに気の遠くなるような時間をそうした事に費やしている事に、畏敬の念すら抱いた・・・とは言え、自分達は神を崇め、従う立場にある事に葛藤を覚えてしまうのです。
ただ―――・・・
セ:それから、まだ先がありますよね。
プ:ああ、あるとも、ここからが「今」に繋がる話しだ。
早い話し“連中”に見つかりそうになってね、その時に苦肉の策として編み出したのがこの状態なのさ。
ブ:『大司教猊下イセリア=ジェノーヴァ』様と『権天使プリンシパティウス』・・・
プ:うむ、そう言う事だ。
これまで私が所有してきたスキル『神聖魔術』に『白魔導』は、概ねイセリアの方に委譲させてある、もちろん「神霊力」の一部もね。
そして私だが・・・北の魔女時代趣味としていた“音楽”と言うモノと神霊力の殆どがこの媒体に詰め込まれている。
とまあこういう感じかな。
セ:しかし―――『存在性を割く』・・・と言われても、私達にはいまだ理解にまでは至らないのですが・・・大丈夫なのですか?
イ:それは私の方からお答えを―――「神霊力」とはまさしくの「天使」としての顕現の在り方・・・けれどその様な強大なチカラを行使してしまえば、
“連中”共に知覚されてしまうことになってしまうのです。
ブ:なるほど・・・しかしこの度の『四凶戦』であなた様は、その強大な権限を行使された・・・
プ:ハハハハ―――あんなのはまだ本来の権限の1/10程度しか発生されてはいないよ。
そんな僅かなモノなら、“連中”が気付くまでもない・・・それに、ようやくだ―――
そう・・・ここにきてようやく反撃の烽火を上げる機会を得た。
何の為にと異次元に渡り、手探りながらも未知の領域である『システム』の構築を行い、そして“可能性”を得てきたか・・・
無論これだけで刃が届くものとは思っていない、飽くまで“けじめ”は自分達で着けなければならないのだから・・・。
#130;雌伏の時機
時として場面が変わり―――リリアと市子は彼岸の地にいました・・・
市:ここが・・・ジョカリーヌ様達の故郷。
リ:ああ―――始めてきた時は、私も面食らったよ。
私達の住んでいる次元と何ら変わりはしない・・・けれどここには―――
自分達が暮らしている現実世界と比べてもどこも違わない・・・
それにどことなく見ていくと、あのゲームと程なく似ていた・・・
それに二人とも何をするでもなく―――と言うのもなんなので、取り敢えずの処近くにある“集落”らしき場所を目指そうとしたところ。
見慣れない格好をした女性が二人近づいてくるのを怪しんだものか、彼岸での人間・・・・ニンゲンの兵士と見られる者達が―――
兵:おい、そこの怪しい女―――ここに何用だ。
リ:ああ、ちょっと道に迷ってしまってね、出来ればここで少し休ませて欲しい・・・
自分達と同じニンゲン―――の様にも見える二人の女性を警戒し、怪しむニンゲンの兵士・・・でしたが。
道に迷ってしまったため、休む場所を提供して欲しいとの申し出に、
「シャンパン・ゴールド」の髪をポニーテールに結い、碧の眸、蒼のドレスに白銀の重装鎧で身を固めた女騎士の言うとおりに、その集落・・・『東南の砦』にと誘うのでした。
つづく