思えば、「ある言葉(ワード)がきっかけでした。

ではその「ある言葉(ワード)とは・・・

 

『それ、確かレギオンと言いましたよね。』

 

リリアがその言葉を発した―――それが引き金となったか、奥に潜み眠っていた「人格」が覚醒(よびさま)される。

またそれと同時にリリアを強烈な眠気が襲い、睡眠(まどろみ)―――

 

『あ・・・れ? この・・・感―――か・く・・・』

 

今まで覚醒していた人格を押しのけるように顔を覗かせ始めた、リリア自身の深淵(ふかく)もう一人人格

 

しかしこちらの話しは、リリアに起きている変調とは関係なく進められていき―――

 

 

市:あの?ちょっと?? ちょっと待って下さい―――ならばここは? ここはどう言う処・・・

 

ペ:その事を明確に説明するには少々難しいのだよ、市子殿。

 

ミ:そう、「これまで」はどう行動を起こしたものか、考えあぐねていた部分もあったのだけれどね。

  しかしここであなた達―――が・・・(うん?)

 

市:リリア? どうしたの・・・急に立ち上がったりして。

 

 

その市子の質問はまさに中核の部分を衝いていました。

この地は魔族で充満をしている・・・それも武装をした魔族達で。

『武装をしている』と言う事は、明らかなる「戦う」事の意志としての現れ。

けれどしかし、「反戦」「非戦」を掲げる魔王とは全く違っているのです。

 

そして更に、ミトラが今後の自分達が取るべき方針を述べようとしていた時―――俯き加減だった者が急に立ち上がり・・・

 

 

?:ふむ―――なるほどな、概ねの処は理解した。

 

市:あなた・・・?一体何者―――リリアではありませんね?

 

リ:()()リリア―――それよりそうか、らぬ行動結末、このような事態引き起こしててしまうとは・・・。

  私は―――私の“盟友(とも)に、どのようなけてよいやららぬな

 

 

急に立ち上がり、今までにしないような口調となった―――その事にリリアの真友である市子も、

またその場にいたミトラやペルセウス、サヤやその副官にいたるまで全員が大きく目を見開き、呆然とする始末。

しかも、それだけならまだしも。

 

 

リ:それにしても我が盟友(とも)―――魔王殿直轄であったあの集落わり様・・・やはりあの、この無理でもてやるべきだったか

 

ペ:(・・・)ご無礼―――ご非礼を承知で申しあげます・・・あなた様は一体何者なのでございましょうか?

 

リ:先程も言ったはずだと思ったが―――『私の名は、リリアだ』と。

 

ペ:真の名を、お聞かせ願いたい。

 

リ:必要なのか。

 

ペ:是非とも―――

 

リ王:そうか―――なら聞くがよい、私の名は、『リリア=クレセント・ロード=オデッセイア』・・・亡国の王だった者だ。

 

 

#134;甦る伝承

 

 

やはりそうだった、17歳の少女にしては過ぎたる威圧感を持ち、なによりも荘厳を思わせた。

それが「亡国の王」ご自身だったのです。

 

その事にも驚かされたのですが、いま心配をしなければならない事とは―――

 

 

市:それは―――判りましたが・・・ならば私の真友は? リリアはどうしたと言うのです?!

 

リ王:心配をするような事ではない、市子・・・あやつなら少し眠ってもらっている。

 

市:あの・・・それってもしかすると、以前リリアが話してくれた時の様に?

 

ミ:うん?どう言う事だ、それは―――。

 

市:以前リリアが話してくれたことがあったんです。

  それが二度ほどこちら側に来たことがあって、その内の一回がリリアと名を同じくする「王」と言う方と肉体と魂を共有した事があると。

 

ペ:ほう、そんな事が。

 

リ王:そう言う事だ―――まあ今回に限ってはあやつのお株を奪う事になってしまったが。

  それよりも参謀、そなた先程言いかけていたことがあったよな、詳しく話して貰えぬだろうか。

 

 

以前リリアが「王」であるリリアと肉体と魂を共有させた時と同じことを、今度は「王」であるリリアが行使した。

しかもこれまでの事を(つぶさ)理解をしていたらしく、ここでようやく脱線していた話しの本筋を元に戻したのです。

そしてまさに“これから”の事を、この拠点にいる「参謀」ことミトラが話しを進めると。

 

 

ミ:あなた方が彼の砦を騒がさせた―――そして追ってきた十数名もの兵士を死傷させ逃亡。

  いまだその不審者は見つかりだにせず、剰え追っていた者も帰ってこず・・・

 

市:ならばやはり私達のした事とは―――

 

ミ:まあ、聞きなさい。

  しかしながら・・・不審者の行方を追っていた処、「北東の拠点」の方角から魔族が一人で出てきて、越えてはならぬ境界を越えた者を喰い散らかせた・・・。

  フ・フ・フ―――これで一応の、こちらとしての意義は立っている、そう言う事です。

 

リ王:なるほどな―――ならばあの砦に充満しておった殺気は、いずれ「北東の拠点(この地)失陥視野いていた・・・そうべきであろうな

 

ペ:はい―――それに恐らく、奴らは今日中にでも「夜襲」「奇襲」「急襲」なりと仕掛けようとしていたに違いありません。

  そこへ行くとなると、そなたたちの働きは非難するまでもなかったのだ。

 

サ:つまり―――アレよ。

  こちらも奴らの動きを逐一掴んでいた、そこへ・・・だ、未明のどこぞの誰とも判らないあんたらに引っ掻き回された―――。

  私も、もうちっと近くにいれば傑作なモノが拝めたモノをねぇw

 

 

そう・・・ニンゲン側は、いつ作戦行動を起こしてもいいような状態だった。

そこを、たったの2名の不明な者達によって崩された・・・しかもその者達は、逃走経路を魔族の拠点がある“北東”へと進路を取っている―――とくれば、

何が何でも捕えて魔族との関係性を洗わなければならない・・・けれども、その者達を追って行った者達は、二度とニンゲンの砦には帰還する事はなかったのです。

そこで懸念をされたのが「北東」と言う方角―――魔族達の拠点があると言う地。

その地からの意思表示なのでは―――ならば「夜襲」「奇襲」「急襲」では迎撃される畏れが出たため、見直される形跡が大きいのです。

 

けれどそうした事によって、魔族側にも抗する余裕と言うものが出来てきた。

つまり市子とリリアがした事とは殊の外大きく、この後の状況を左右しかねない程の規模を作りだしていたことになるのです。

 

 

リ王:では、改めて聞くことにしようか、この拠点の意義とやらを。

 

サ:ま―――言わば私らは「独立愚連隊」てな訳ですよ。

  細川のお嬢さん達みたく、どこの勢力にも所属せず、況してやレギオンなんつーハグレ者でもない。

 

ミ:彼奴等は彼奴等で魔王軍とニンゲン軍が互いに争い合い、疲弊・消耗し切った所で漁夫の利を得る―――まあそう言った処でしょう。

 

ペ:フッ・・・だが、多寡だか婦女子2人によって目算が大きく崩れようとしている・・・。

  ここでこそ―――なのだ、ワシらが戦意を示し彼の者達の横っ面を張るのはな。

 

リ王:ふむ、中々に面白いな、何奴の策なのだ?

 

ペ:ワシです―――(ニヤリ)

 

リ王:フ・・・気に入った。

   ただ惜しむらくは、そなたほどの男が「彼岸(こちら)で、それもまなかったにある

 

市:えっ―――あっ、あの・・・まさか?

 

リ王:ハハハ!知れておろう、もしそうだった場合間違いなく私の伴侶としていたものをな。

   そうすれば、時代もこんなにも歪まなかったのだ・・・。

 

 

やはりこの拠点の意義とは、リリア王が睨んでいた通りでした。

恐らくこの拠点に集う者達は、元・魔王軍所属だった―――なのだろうけれど、消極的な魔王に業を煮やし魔族の矜持あるがままに振舞うハグレ者達とは違い。

彼の方の高潔な理念に触れ未だ見ぬ世界を望まんとしている者達の集まりだったのです。

 

とは言え、「非戦」「反戦」を掲げたままでは戦いにくい―――それになにより魔王自身の志に傷をつけてしまう事にもなり兼ねない。

そこでヴァンパイアの種属が誼を結んでいる随一の知恵者、『万能者(ペルセウス)からの知恵拝借、なら自分達魔王勢力から独立してみては・・・としたのです。

けれどもそこは当然、レギオン達と似た存在ともなり、少なからずの反発もあったようでしたが。

『ならば』と、そこでペルセウスは説き伏せたのです。

『ならばこのまま殴られ損でいいのか』―――と・・・。

 

以前にも述べた事がある様に、ヴァンパイアとは『闘争の種属』・・・その、ペルセウスからの煽りにより、種属の長である『大公爵』も頬を緩ませるのです。

 

こうして―――同じ志を抱く者達を募り集め、北東の“集落”だった場所を“砦”とは行かないまでも“拠点”と言う軍事施設に仕立て上げたのです。

 

しかも、これもまたペルセウスの思惑のようで、砦の様に「これ見よがし」ではない―――外から見れば集落の様にも見えつつも、

その実、実用性のある軍事施設―――拠点として仕立てる。

 

そこは、その地点も絶妙な位置取りをしていたのです。

{*その事は後日にて}

 

こうしたペルセウスの策略は、リリア王が甚く(いたく)気に入られるところとなった―――

ある“鬼”の策略によりタイプの違う女性を2人同時に娶り(めとり)それぞれにけたとしていても。

リリア王が生きていた時代には、それ程の器を持った漢は居なかった―――だからこそ王は生涯独り身であり、

自ら死を選んだ時でも王の位を継ぐ者はいなかったのです。

 

{*ここで一つ注釈を。

確かにリリア王は(よわい)17くなったものの、その時代では13−15結婚適齢期であるとされていた。

これは少し昔の日本や西欧に見られがちの風習ではあるが、そもそもは平均寿命が50年行くか行かないかだったため、

現代に於いては幼いながらも子を成し、育てていかなければ人口が増えて行かなかった事情があったようではある。}

 

 

 

つづく