偶発的に起きたとされながらも、ここへきてようやくの機を迎えたサヤ率いる部隊。

その中には人間であるミトラ(森野 婀娜奈)ペルセウス(杜下 驍)も参陣していたのです。

そして今回、正式ではないながらも当作戦行動(キャンペーン)に加わることを許された、リリアと市子の姿もあったのです

 

しかしどうしたことか、リリアの魂の奥底には、この世界では「(いにしえ)の英雄」と讃えられたリリア王の魂が眠っていたのです。

 

こうして賽は投げられた―――当作戦行動(キャンペーン)に及ぶために、着々と準備を進めている最中。

ある不審とも思える行動をとる人物が・・・

 

 

リ王:(ふむ・・・彼らの後ろ盾となってやりたいものだが、やはりここは“アレ”が必要となるな。

   それにこやつが使っているモノも悪くはないのだが・・・やはり上等のモノとなれば、こやつの技もさらに冴え渡ろう。)

 

 

その、不審とも思える行動をとる人物こそ、リリア王その人でした。

とは言ってもリリア王は、なんら疚しい(やましい)事を想っていませんでした。

言わば彼ら彼女達の願いが成就するよう、そっと力添えをしてあげるつもりでいたのです。

 

だからこそ、王ご本人の武器が必要と感じた―――とは言え、ただで少ない人員、自分と同時期に参入を果たした市子でさえ準備を手伝っている・・・。

それゆえにリリア王自身が単独で行動をしようとしていた矢先に。

 

 

豹耳:―――待つなさい、どこへ行くと言うのです。

 

 

自分の求めるモノの場所は判っている、要はそこへ取りに行けばいいだけ。

だからリリア王は、たった一人でその場所へ向かおうとしていたのです。

けれど如何せんこの拠点から距離がある為、馬を一頭拝借しようとした処、サヤの副官である、あの獣耳の少女が見咎めたのです。

 

黒の長髪に黒豹の耳と尾を持ち、背は低く顔立ちも少し幼い作りではあるものの、身体つきと言えば持つものは持っている・・・そんなアンバランスさを持っている少女。

名を『ノエル』と言いました。

そんな可愛らしい存在から見咎められ、リリア王は―――・・・

 

 

リ王:ノエル殿か―――どうしたのだ、司令官殿の側を離れていてよいのか。

 

ノ:誤魔化さないでください。

  あなた一人でどこへ行こうとしているのです、返答次第では・・・

 

リ王:剣呑だな―――。

   なに大したことではない、少し用入りのモノを取りに行って来るだけだ。

 

ノ:用入りのモノとは?

 

リ王:私自身の武器だ。

 

ノ:どうやらあなたは・・・ご自分の立場が良く判っていないみたいですね。

 

リ王:ほほう、面白い事を言うものだな。

 

ノ:(〜)私とて・・・もう子供ではありません。

  それにあなたは、元を糺せ(ただせ)ニンゲン―――しかもこんなにも忙しく慌ただしい中、私達が目を離している隙にどこへ行こうとしているのです!

 

 

ノエルは、戦災孤児でした。

そこをサヤに拾われ、やがて彼女の副官になるまで育ててもらった。

だからこそサヤには恩義を感じ、サヤの期待に応えようと努力を惜しまなかったのです。

そうした報恩の一部としての副官の働き、今も不審な行動を取ろうとしている、自称を「亡国の王」と名乗った者に自分なりの推理をぶつけてみたのです。

 

とは言え、ノエルは判っていなければなりませんでした。

かつて・・・たった一人で魔王を倒した事のある、「英雄王」と呼ばれた者の事を。

 

それにリリア王も、自分の目的が知られたからには、さすがに都合が悪いと思い始めたのか・・・

 

 

リ王:ならば、そなたも来るか? 私の「見張り役」として。

 

ノ:(・・・)は? も、もちろんです! そ、それに少しでも私が怪しいと感じたら―――

 

リ王:はっはっは―――承知、承知。

   では、参るとしようか。

 

 

#135;城内への侵入

 

 

ノエルとしては生真面目に振舞うものの、どこか本気で相手にしてもらっていない・・・そう感じてしまったため、少しばかりムキになってしまうのでしたが。

そもそものリリア王の目的の地・・・とは?

 

 

ノ:あ―――あのっ、ど、どこへ向かおうとしているのです??

 

 

自分達が戦略目的としているのは「東南」のはず、なのに・・・リリア王が駆る馬は別方向に向っていた―――自分達の拠点である北東の拠点から、「東」へ??

いや―――しかし・・・

 

 

この方角・・・いや、まさかそんな事は―――

わ、私はこの者の事をニンゲンだと聞いていた、だから目指しているのは「東南」だと思い込んでいたのに。

 

 

それがまるで違う―――しかも今、自分達が向かおうとしているのは・・・

 

 

リ王:知れておる、この私の「城」だ。

 

 

かつて―――ニンゲンの王国があった時代、その場所こそは「王都」であり、リリア王の「城」があった場所でした。

しかし―――王朝最後の王、リリア=クレセント・ロード=オデッセイアの死去と共に王国は亡び。

時を経ずして王都マジェスティックも廃墟と化してしまった・・・そうつまり、彼女達が目指していた場所とは、かつて栄華を誇っていた場所でもあったのです。

 

しかし、そうと判った途端・・・

 

 

リ王:おや、震えておるようだが大丈夫か?

 

ノ:だっだっだ、だいじょびです!!

 

リ王:はっはっは―――健気だな、ノエル殿は。

 

 

恐怖の余り震えを隠せないでいるノエルに心配をかけてやるも、少し噛み気味に気丈に振舞う獣人の少女に可愛らしさを見い出してしまったようです。

 

そしてそうこうしているうちに―――・・・

 

 

リ王:見えてきたな―――アレがそうだ。

 

 

これが未だ、栄華を誇っていた当時の威容のままだったなら、なんと素晴らしい城なのだろう。

教書で習った通り「威風堂々(マジェスティック)」と呼ばれたリリア王の住まい。

そうノエルは思いましたが、いまは当時の威容はどこへやら、城壁も所々が崩れ落ち、庭園も雑草が伸び放題―――しかも・・・

 

 

リ王:(!)隠れろ―――

 

ノ:(えっ?あ・・・っ)

 

リ王:(やはりな・・・案じていた通りか。)

 

ノ:(あれは・・・私達と同じ、魔族??)

 

リ王:(いや、少し様子が違う・・・恐らく彼奴等は―――)

 

ノ:(レギオン?? そんなっ―――そんな危険な処をあなたは・・・!)

 

リ王:(おや、言わなかったかな、だからこそ私一人で―――と言ったのだが。

    それに知ったる場所故に色々融通も利こうと言うものだ。)

 

ノ:(ふにゅぅぅ〜・・・あ、あの決して一人には〜〜)

 

 

今までの、気丈に振舞っていたのはどこへやら。

今では半ベソを掻き、こんな敵中ど真ん中に置き去りにさせられる心配をし出したのです。

とは言え、リリア王は彼女を一人にするのは毛頭も考えていなかったため、勝手知ったる自分の城の様々にある侵入口。

それも簡易なレベルの場所からの侵入を試み・・・。

 

 

ノ:(こっ・・・こんな場所からも侵入できるなんて―――あの、少しお話しを伺ってもよろしいですか?)

 

リ王:(それは後だ、それにやはり・・・見張りが立っているな。

   ならば“あそこ”から出直すとするか。)

 

ノ:(あ、“あそこ”とは??)

 

リ王:(私の部屋だ。)

 

 

リリア王が最終的に目的地としていた場所こそ、この城にある「武器保管庫」でした。

けれどやはり見張りが立っていたようで、これがリリア王一人ならば見張りをどうにかして強引な手段に出れていたものでしたが。

今はそうではない―――・・・だからこそ、武器保管庫に侵入できるもう一つの経路―――それがリリア王自身の部屋だったのです。

 

それにノエルも王族の部屋にお邪魔するのは初めての体験。

だからこそどんなに豪華なモノか―――と、思いを馳せていたものでしたが・・・

 

 

ノ:(あ゛〜〜)なんだか、凄い事になっていますね―――。

 

リ王:まあこんなモノだろう。

   あれから700年経っているのだ、まだ形が残っているだけマシと言った処だな。

 

なっ、700年?!

ノ:あっ・・・す、すみません―――

 

リ王:気にすることはない、想定内だ。

   それより―――・・・・あった、ここだ。

 

ノ:えっ―――

 

リ王:掴まれ、一緒に飛ぶぞ!

 

 

かつての絢爛豪華な装飾はどこへやら、とは言え実際にリリア王が亡くなられて以降は放置されたままだったので、仕方のない事ではあるようです。

けれどコレはいけなかった―――そう・・・「700年」、700年前もの昔、リリア王はこの地に君臨をしていたのです。

その事で思わずの大声を発してしまった―――「しまった」と口を塞ぎつつも、リリア王にしてみればその事自体も想定内だったようで。

失態を冒してしまったノエルを責めるよりもまず―――あるモノを・・・

 

そう、やはり700年前もの昔、当時として友誼を結んだある魔族が施してくれた「転移陣」を探り当て、ひとまず目的の場所である「武器保管庫」へと飛んだのです。

 

その場所こそは、まさにこの城に収められた、武器・防具の集大成(見本市)

それにこの城に在留しているレギオン共も利用しているものと見え、この場所だけは他の場所とは違い、部屋全体に手入れが行き届いていたのです。

 

そして―――・・・

 

 

リ王:フ・フ・フ―――ようやく見つけだぞ。

 

ノ:(!)その黄金造りの長剣は―――・・・

 

リ王:ああそう言う事だ。

   この剣こそが私の本来の武器、この身体本来の持ち主の武器もさして悪くはないのだが、それよりも上質のモノならばあやつも文句までは言うまい。

 

 

見る者も目を奪われる―――黄金で出来た長剣。

その黄金の長剣こそリリア王自身の武器でした。

それにこの武器には“ある特性”が付与(つい)ていたのです。

 

それよりも、今度は気付かれない内にこの城から離脱を図らないといけない―――。

しかしながら先程のノエルの不用意な大声に、長剣を探す際にしても“ガチャガチャ”と音を騒がせてしまった・・・

これで気付かないようならば、よほどこの城に詰めている者達は無能の集まりか―――と言う事になってしまうのでしたが。

 

果たして―――リリア王とノエルの運命は、いかに。

 

 

 

つづく