リリア王ご自身の剣こそ、誰しもがその眼を奪われてしまう、黄金造りにしてその装飾も絢爛豪華。
その所々に宝石がちりばめられた、まさしくの「宝の剣」そのものでした。
けれどこの剣の価値とは、もはやそんな処にはなかったのです。
ミ:それがあなた様ご自身の剣だと?
リ王:そうだ。
ペ:すみません、少し拝借してよろしいか?
リ:ああ、構わんぞ。
ペ:では・・・
ぬおっ―――?!
サ:どうしたんだ、ターさん。
その場にいたミトラ・ペルセウス・サヤ・・・そしてノエルも信じ難い光景を目の当たりにしてしまったのです。
それと言うのも、リリア王自身の手に収まっていた時には眩いばかりに光り輝いていたものを。
それを今、他人であるペルセウスの手に渡った途端、それまでの輝きは失い一変しての様変わり、単なる鈍の様になってしまったのです。
ペ:こっ―――これは・・・
リ王:だから、申したであろう。
それは私の・・・ふむ、私しか持つことを赦されぬ剣―――そう申した方が良いのかもな。
ペ:(なんと・・・?ではこれが―――)
ミ:ペルセウス、何をそんなに驚いているのです?
ペ:あ・・・ああ―――ワシも見るのは初めてになる・・・。
そうした事実に触れ疑問とするも、またもリリア王からの言葉のお蔭である事実に突き当たってしまうペルセウス。
そう彼は、彼自身の師から彼岸に伝わっている説を口伝えられていたのです。
その師が曰くには―――
『こちらの世界では武器自身が使い手を見極める事がある。』
『そして武器から使い手に見定められた者は、その武器の特性を如何なく発揮し、その使い手はたった一人で万の軍勢に匹敵するとさえ言われている。』
『たけど、使い手以外の者が手にした時、途端に鈍以下に成り下がってしまうものさ。』
『そうした武器を私達はこう呼んでいる―――』
#137;神器
しかも、まだ更には―――
ノ:あ・・・そう言えば、彼の城から私達が脱出しようとした時に、私がレギオンに捕まってしまいまして―――
サ:なにッ―――?!
ミ:それは本当ですか、ノエル殿。
ノ:えっ・・・ええ―――ですがこうして私は無事帰還を果たすことが出来ています。
それに私の不手際の所為で、この人の不利になってはならないと思い、私を人質に取ったレギオン共々斬り伏せて欲しいと懇願したのです。
サ:おい、ちょっと見せて見ろノエル―――やっぱ気の所為じゃなかったか・・・首の辺りに絞められた跡の様なものが見えたから気にはなっていたんだ・・・。
それで―――?
リ王:この私がノエル殿から言われるがまま、そのレギオン共々斬って捨てたのだ。
ノエルの証言によりまた一歩真実に近づいた。
そうノエルは元リリア王の居城で起きた出来事をそのまま話したのです。
しかもリリア王も、自分がしたことを包み隠さず話した・・・これによってある事実が浮き彫りにされてきたのです。
紛れもない―――この剣こそは我が師ガラティア様から口伝えられた事のある「神器」。
ワシもこの目で見て、手にするまでは絵空事だと思っていたが・・・
それにノエル殿と一緒にレギオンを―――と言っていたが、ノエル殿はこうして生きて帰って来ているとなると・・・
『エセリアル・シフト』―――ある武器の特性の一つとして、使用者が使用する対象のみに効果を及ばせる恐るべき性能。
それにこの性能は、使い手であるリリア王自身が良く理解していないと、役に立たない代物と成ってしまう。
そして信じようが信じまいが、救わんとしている者が救われた事実を以てすれば―――
サ:とは言えひとまず礼を言わさせてもらうとするよ。
こいつ―――ノエルも、元々は「東南の集落」の出身でね、ニンゲンの兵によって両親を殺された過去を持つ言わば「戦災孤児」なんだ。
それを私が拾ってね・・・それにそうした経緯もあったもんだから、ニンゲンの事をひどく憎んでいた時期もあったものでな。
リ王:そう言う事であったか、ならば合点がいく。
サ:うん?どう言う事なんだ、そりゃ・・・
リ王:実に簡単な事だ。
今回の件は私一人で為そうとしていた・・・ところを、出立しようとしていた時にノエル殿に見つかってしまってな。
まあ無闇に騒がれでもして、また時間も稼がれてしまってはと思い同行を許可したのだ。
ノ:けれど私は、救われるまでこの方の事をニンゲン一括りにしてしまっていたのです。
サヤ様が言われていたように『ニンゲンの中にも話しの判るヤツはいる』・・・そしてあなた様は―――
リ王:はっはっは―――もう過ぎた話だ、その辺で良いではないか、それに自分を責めなくとも好い。
何より我々は志を同じくする者―――なのだから、な。
今にして、思う。
なぜリリア王がニンゲンの「英雄王」として語り継がれたのかを。
早逝されたのはまさしくの不運―――と、言えましたが。
この方がもしもう少し長く生きられていられたなら―――・・・
それは今の立ち居振る舞いから見ても判った事でした。
だとするなら―――自ら毒杯と知りつつ煽り、齢17にして生命の華を散らせなければならなかったというのは・・・?
それはまた、別の話し―――
ともあれ、それはさておき―――
リ王:どれ―――一応私の本懐は果たさせてもらった、ゆえに少し休ませてもらうぞ・・・
リ:・・・ってえ?! 全くぅ、あいつも急に入れ替わったりするなよう―――ちゃんと私に一言言えっての!
サ:お前も中々大変なやっちゃなあw
リ:ああ―――でもそれより・・・
サ:そうだな、まさか「英雄王」の城がレギオン共の溜まり場になっていようとはな。
ペ:婀娜奈―――至急作戦を変更するぞ。
ミ:はあ?はあ・・・
ペ:ノエル殿を傷付けた報い、思い知らしめてくれるわあ! 係る上は徹底的に潰し、彼奴等の出端を挫いてくれるわ。
フハハハ―――!
リ:あのぉ・・・お父―――さん?
ミ:ヤレヤレ、悪いスイッチが入ったみたいね。
リ:あの〜〜おば様? それって―――・・・
ミ:なに簡単な事よ。
あの人の中ではあなたとノエル殿を微妙に混合させているようでね。
リ:(は?)わ、私―――と?
ミ:だってあなた、あの人の娘でしょう?
サ:あ゛〜〜〜そう言やそうだったなw
とある事情で実の娘にも実の父だとも言えず―――可愛いまっさかりの璃莉霞ちゃん愛でられなかった反動が、そのままうちのノエルに〜って事よw
ノ:ペルセウス殿は、それはサヤ様に次ぐ可愛がりようでして―――ですがそうした事情があったのですね・・・。
自分の父の知られざる姿に、今にして思い知らされる璃莉霞でしたが、そうした大人の事情に詳しい2人の証言通り、
その後のペルセウスの仕立て上げた戦略の、まさに鬼も裸足で逃げ出すような苛烈さに、
『お父さん・・・なにもそこまでしなくても』―――と、心の中で思ってしまうリリアがいたのでした。
それにリリア王が入れ替わってくれた事で、確かめたいことが出来た―――
この剣が、自分の父の手に渡った時の様に・・・
あっ・・・大丈夫だ―――けど私はあいつ自身じゃないのに。
自分が手にしても輝きを失わない剣。
それどころか鞘から抜き放って素振りを数回繰り返してみても―――。
軽い・・・まるで重さを感じない―――だったら・・・!
まるで木の枝を振っている様な感覚―――事実その剣は「純金」で出来ているので、現実としては金メッキでもなければ、剣そのものを黄金で創造った場合、
それはかなりの重量になるはずなのに・・・それが「小枝」―――
しかも剣を振る毎に風が追い付いてくるかのようだった。
だからリリアもつい欲を出してしまい、あの時ノエルを救った時の様に、リリア王が発した言の葉を、念に乗せて叫んでみると―――
しいぃ〜〜ん・・・
恰好をつけて叫んではみたものの―――まさかの空振りぃ?
しかも余りの気恥ずかしさに、いま自分がした行為を誰かに見られなかったか―――と、したところ・・・
ノ:・・・・・・・・・・・・・・・・・・。(うわぁ。)
リ:(あ゛っ!)み―――見て・・・た?
ノ:・・・・・・・・・カイザー・フェニックス。(プ・フw)
見られちゃってたあぁ〜〜〜!
ちょー恥ずかしい〜〜〜!!
偶々通りがかった所を見られてしまっていた―――。
しかもリリア王が権能を発現させた時のポージングまで真似ていたのを、もう一人の現場の証人に。
それによろしく、叫んでしまった権能の言の葉を復唱された際、嘲笑れてしまったようでして―――
しかもどことなくノエルの見つめる目の、どことなくイタイ人を見つめるかのような眼差しだったことに。
リ:あ・・・あのさあ、ノエル―――
ノ:なんでしょう。
リ:いま見た事・・・皆に内緒に―――
ノ:よろしいですけれど、私達まだそんなに交流を深めてもいないのに、呼び捨てにしてしまうと言うのはいかがなものかと―――
リ:あ、そ、そうだよね! じゃ・・・じゃあ〜“ちゃん”?“さん”?それとも“様”??
ノ:まあ・・・見かけの上では、確かに私はあなたよりは幼くは見えますけれど―――さすがに“ちゃん”づけはないものかと・・・。
リ:あっ、ああ〜〜それじゃ“さん”だね?
ノ:そうですね―――「カイザー・フェニックス」w(プププw)
俗にこう言うのを「イイ性格」と言うのでしょうかw
しかもよろしくリリアの弱点もモロバレになっていたようで。
そう、それが以前にも明かしたことがある様に「可愛らしい物好き」。
確かにノエルも、リリアのそうした感性をくすぐる特性を持っていた様でして。
どうにかして自分に気に入られようとした態度を見透かされてしまっていた―――
だからこそノエルも、悪戯がかった笑みを浮かべたものなのです。
つづく