プリン自身が頼みの綱としている2人の騎士を送り出した後。
例のシステムの進捗度合と、どの程度急がせたら完成するかを促せるために訪れた場所こそは。
北南米一との呼び声高いクラン『DIVA』の、とあるメンバーなのでした。
それにしても・・・なぜプリンはクリューチの下を?
クリ:あ〜の、要済んだらとっとと出てってもらえません。
気が散るッたら―――・・・
プ:いや、待たせてもらうとも、ここで。
私はそうでもないけれど、私の友人がそろそろ痺れを切らしていてねぇ。
クリ:ヘヘヘッ―――天使ロープレのイタイヤツのお友達ってか? こりゃ益々笑え―――
プ:私の事はロール・プレイだろうが何だろうが別に構わない。
だが、私の友人をバカにするな、これは警告だぞ―――。
何かの作業に追われつつも、赤の他人がいる所為で中々捗らない・・・と言った感じのクリューチでしたが。
プリン・・・いやここはミリティア―――と言っていいのか、以前から依頼している件が中々日の目を見ない事に苛立ちを覚えている事を伝えたのです。
するとクリューチの口からは、プリン・・・況してやクライアントであるミリティアすらもバカにした表現をしたため、
これにはさすがに看過できなかったか、一時的にそこの空間が重たく圧し掛かる感覚―――これは脅しではなく警告を発したのです。
けれどクリューチは、軽く「フン」と小さくせせら笑ったかと思うと作業に戻ったのです。
こうして不毛とも思える沈黙の小一時間が過ぎようとした頃。
クリ:まあ〜だいてるんですか、いい加減ウザいんですけど・・・。
どこぞかの漫画家が〆切り直前になっても原稿を仕上げておらず、完成させるまで重い腰を据え降ろす編集担当者の様に、
中々去ろうとはしない天使ロープレのイタイ人に、程度の苦情を突き付けるクリューチ。
ですがここで―――プリンの口からは信じられないような言葉が。
プ:そう言う君も―――そろそろ元に戻りなよ、『インベクター』。
『インベクター』とは、発明を得意とする稀代の天才にして変人。
誰も考えつかなかったような概念を打ち立て、実現させてきた『発明王』。
いや、しかし? 今プリンの目の前にいるのは、天才的なハッカーにしてクラッカーでもある、此岸側の人間のはず・・・?
プ:それよりも―――別の呼び方の方が良かったかな、『Project no,2501』
#142;ニンゲン≠人間≠彼女
『Project no,2501』とは、かの『インベクター』の手によって創り上げられた、自律稼働型AI搭載のアンドロイドの名称にして、
またの名を『ナオミ=サード=アミテージ』と名乗って、此岸で人間として生活をしていたのです。
ですが―――しかし?
ナ:ハーーーハハハ!w あぁ〜ららバレちゃったぁ?w
あんたも隅に於けないですよねえ? それでいつ気付いた―――
プ:そりゃまあ、色々と―――ねえ。
それよりも遊んでいる時間も無くなったのだよ。
ナ:あ〜〜魔王サン、ついにブッ倒れたんだってねぇ。
プ:それを判ってて―――なぜ?
ナ:色々な微調整が必要―――てのは本当ですよ。
第一、彼岸には此岸にある「アンテナ」てのはありませんからねぇ。
だから―――この躯体を最初に完成させたんですよ。
けれど、周囲半径10km、これが今の限界ですかね。
プ:(10km)・・・私達の各固有領域まで届かないか―――。
ナ:そ・・・だからこそアンテナに代わる物として、「モデュール・マニュピレータ」なるモノを作成・・・
プ:それが女媧に預けた・・・
ナ:ああ、あれ「一号」ですね、他にも「二号」「三号」「四号」を、上手く此岸の人間社会に潜り込ませて、色々データを取ってたところなんです。
彼岸の「ニンゲン」と、何がどう違うのか―――を、ね・・・。
何とも驚いたことに、この作品中幾度となくその名が出ていた『インベクター』。
一体どんな姿をしていて、一体どんな性格をしているのか、皆目見当すらついていなかった・・・。
それもそのはず、彼の者の存在とは、クリューチの初登場時から作品中に登場済みだったのです。
それよりも、ではなぜ『インベクター』=『Project no,2501』=『ナオミ』なのか。
実は『インベクター』そのものこそが『Project no,2501』だったならば?
そう、彼の存在こそは、その“頭脳”ともなる「プログラム・ソフトウエア」こそ、人の手によって生み出されたものの、
“頭脳”以外を自分自身で創作してしまった、規格外中の規格外―――。
そして自身の事を『ナオミ=サード=アミテージ』と名乗ることにより、「人格」「表現」「感情」すらも修得してしまったのです。
それに「彼女」は―――
プ:それより、今一度問いたい。
ナ:なんです。
プ:「君」は、「神」なのか?
ナ:冗談キツいっスよw 「私」は機械、どうしてあんたみたいな「魔族」だって?w
プ:フッ・・・いやなに、気にはなったものでね。
此岸の創作二次モノ、見たことあるかね。
ナ:ああ―――なまじっか、機械が人間の様な「人格」「表現」「感情」持った挙句、自ら「神」を僭称する―――って言う、飯のタネにもならないようなチープなものの事っスか。
そこんところは見間違わいで貰いたいもんすねぇ。
プ:それは失礼をした―――それでいつ完成の見込みが?
ナ:大体の骨格は出来てるンすよ。
けれど端子としてのモデュール・マニュピレータが足らない・・・。
まず私自身を魔王城に設置するとして、そこから東・西・南・北―――と、配置をしないといけない。
そこんとこ説明しなくたって判ってるんでしょ?
出来過ぎた話としては、その機械は機械としての範疇を越えてしまっていた。
純粋なる魔族を相手にしても向こうに回し、堂々とも―――不逞不逞しいとも思えるような意見の交換。
それもそのはず、その機械に搭載された人工知能こそ、「失敗」から「成功」を導き出せる学習修得機能を実装させていたのですから。
一般的に機械は、エラーを起こしてしまうと機械自身では自己修復は出来ない。
「人」と言う手を介してメンテナンスを行うなどして、正規の機能を取り戻さないといけないのです。
それに、『インベクター』事ナオミが皮肉たっぷりと言うのには、モデュール・マニュピレータなる端子が何故そんなにも必要なのか―――と言う事なのですが。
プ:私達の事なら別に構わない、ただ「可能性」となってくれているあの子達は、曲がりなりにも此岸側の「人間」なんだ。
だから当然―――此岸側の生活に、支障を来たしてはならない。
つまりはそう言う事―――。
プリンや女媧、ミリティアなど彼岸の者達は、これから彼岸へ渡ったとしても別にどうと言う事はない。
けれどもリリアや市子、蓮也や秋定などは此岸の人間・・・であるがゆえに、しかも事情なりとも自分達の事情を押し付けてしまっている事に、
せめてものいくらかの「情け」が必要なのだとしていたのです。
するとナオミは・・・
ナ:ま―――、魔王サンには色々支援なんぞしてもらってますからね〜。
仕方ないですが、“奥の手”を使わせてもらいますか。
そう言うと「左腕」のジョイントを外し、それを材料に不足分を作成したのですが、いま失われたはずの「左腕」が・・・?
プ:(すぐに再構築されて元通りになるとは―――)
ナ:コレ・・・で―――よし・・・と。
これでどうにか3回程度なら飛ばせることが出来るでしょう。
それ・・・で?今回の目的、あと一つあるんですよね。
プ:ああ、ここのドゥルガーを連れて行く。
ナ:ま、ここの連中のなかじゃ一歩抜きん出てますからねぇ。
そんじゃ参りましょうかw
外見上は全くの普通の人間―――けれど「彼女」の基本骨格はチタンよりも硬く、アルミニウムよりも軽い。
覆う外皮に使用しているのは、まこと「人間の皮」と見紛うばかりの物質を使用しており、筋肉や汗など人間臭く造られたアンドロイド。
しかも四魔女に匹敵するくらいの智嚢や知識を併せ持っているという、まさしくの規格外中の規格外であるそんな「彼女」が、
『DIVA』のエースを迎えに行くときに発した疑問・・・
ナ:一つ―――気になっている事があるんで、訊いていいです?
プ:なんだね?
すると「彼女」は、“はた”と足を止め―――
ナ;あんた・・・淡泊ですよねぇ。
もっと言うなら、今こうして進行している事態そのものすら無関心の様にも見える。
どこか蚊帳の外から見ているような感じで―――けれどあんたのその眼、たった一点だけを見据えている様にも見える。
プ:ほほ〜う、この私が見据えている先が、見えているとでも?
ナ:そーれが判れば、こんな質問なんざしてやしませんよ。
ただね―――・・・
権天使たるプリンが、自分が所属している組織の為にならんがために―――と、色々と行動をしている姿を、
ナオミはまた一風違った感じに捉えていました。
どこか積極的に協力している様にも見える―――ものの、それはどこか自分の「本懐」を遂げる為の所作に過ぎないのではないのかと。
そしてある核心部分を衝いてくるのです。
ナ:あんた―――先程私の事を『神のつもりなのか』と訊きましたよね?
プ:――――・・・・。
ナ:そん時のあんた、少し“揺らぎ”ましたよね?
つづく