鋭くも―――また真っ直ぐな疑問。
人工知能如きが神と見誤ったかどうか―――そうした問いを投げ掛けた時、ナオミに組み込んでいたセンサーが、ある“揺らぎ”を捉えていたのでした。
プ:ほほう―――“揺らぎ”・・・どの部分だね。
するとやはり、素直に答えてもらえそうにない―――そう感じたナオミは、立ち止まった歩みを再開させ、
やがてメンバーが集まるクランルームへと現れたのでした。
クル:ん〜〜?誰だ、お前―――
ナ:どーも、ちはーッス、ドゥルガーいます?
ド:いるけど・・・あなた今、何でもない様にクリューチの個室から出てきたけど・・・誰なの?
ナ:ン〜な事はどうでもいいっしょ?説明めんどくせーんで。
バー:な・・・っ?!お前のその口調―――クリューチか!?
ナ:はーい正解〜〜けど、景品ありませ〜〜ん。
てなわけで、色々押してますんで、とっとと彼岸に行っちゃって下さ〜いね・・・ッと。
ド:えっ?あっ??ち、ちょっと・・・こちらも準備と言う・・・も――――
ナ:お達者でぇ〜w
クランに所属していない赤の他人が、メンバーの一人の個室から出てきた?
だからこそクルセイダーもドゥルガーも、誰なのかという疑問を拭いきれなかったのです。
けれど、その赤の他人が自分達も良く知るメンバーの一人の口調をした時、丁度その場に集まっていた者達は、
その赤の他人がメンバーの一人だと言う事に気付かされたのです。
が、そんなことはお構いなしにと、やはり態が変じてしまったメンバーの一人と一緒にいた者によって、
有無を言わさずどこへやらと飛ばされてしまったクランのエースの所在に・・・
クル:ちょっ―――お前・・・クリューチ、お前なにしてんのか・・・
ナ:判ってますよ―――あとそれと、今の私クリューチじゃねぇんで、そこんとこ理解しとけなw
バー:何を言ってるのか・・・サッバリなんだが??
ナ:『物語はいよいよ佳境に』―――て、事ですよ。
あとちなみに今の私は「ナオミ=サード=アミテージ」なーんで、シクヨロネーット☆
クル:ナオミ=サード・・・?それってうちんとこの『インベクター』が造ってたって言う・・・
ナ:ああ〜更に付け加えると、その『インベクター』も私なw
クル:はああ?益々ワケ判らん―――
ナ:ま、理解すんのに苦労するでしょうけど、大概は全員集まったら話しますよ。
何も私はおたくらを混乱させる為だけに、ここに留まっちゃいないんでね。
こうして残りのメンバー全員がクランルームに集まった時、「これまでの」経緯と「これから」の経緯を説明するナオミ。
しかしそこはやはり信じ難い事実の告白を受けてしまい、さながらに放心状態となってしまう『DIVA』達・・・
バー:ふぅ〜む、いまだ信じられんことばかりだが―――
バジ:うむ、今は信じざるを得ないというところだろうね。
カリ:それで・・・マリアは無事なのか?
ナ:大丈夫だと思いますよ?なにしろ彼岸でも無事なようにさせる為の試練を突破したんですから。
ワス:それが「四凶」―――
ナ:そ・・・それにこのゲーム自体、彼岸よりもレベルを落としてるとは言え、中々に手強かったっしょ?w
まあ概ねこのゲームのx10を想定しとくと、あんた達も死なずに済みますよw
バー:(死・・・)と、言う事は―――
ナ:そう、ここから先は“現実”です。
ゲームの延長線上だと思ってたら理由も判らない内に死にますよ。
その覚悟だけは―――
クル:ハ!上等じゃないさ――――こちとらリアルでも命賭けた仕事やってるんだ。
ワス:そうだな、伊達に銃を扱っているのではないを見せつけなくてはな。
彼らが活動の拠点としているのは米国―――、一般国民でも銃を所持し使用する事を許可されたお国柄。
ゆえにこそ、クルセイダーの様な「賞金稼ぎ」や、ワスプの様な「軍隊上がり」は常に身を危険に晒しているのです。
だからこそ、傷つく事、死ぬ事の怖さを誰よりも知っていた・・・。
とはいえそうした覚悟だけでは彼岸では生き抜いては行けないのです。
そう言う事もあるからなのか―――
ナ:バーディにバジリスク、ちょっと・・・
バー:なんだ。
バジ:どうした。
ナ:まずはバーディから・・・あんたまだそのまま―――「ウオーロック」としてやってくつもりなンすか。
バー:何が言いたい―――。
ナ:あんた・・・サービス開始当初は全く違う特性でしたよね、『鉄腕』。
ナオミから明かされた事実として、バーディはサービス開始当初は現在とは違う特性を持っていました。
それにしても『鉄腕』―――その事にメンバー全員は色めき立ったのです。
カリ:確かそいつ―――サービス当初は無類の暴れっぷりで、日本のリリアって子やうちのマリアと並び称されるほどのチート持ちじゃなかったか?
バジ:ああ―――ボクも噂だけは聞いた事がある・・・。
だがサービスが開始されてから3年後、その噂がプッツリと途絶えたと言うが・・・
ワス:それは事実か?
バー:―――ああ、事実だ。
しかしこの私の過去を知っている者がいようとはな。
ナ:不自然なんですよ―――あんたの動き、明らかにね。
バン:不自然?
ナ:あるぇ〜?もう忘れちゃったんですゥ? 私がクエの最中やレイドの時、何してたか・・・
クル:戦闘には加わらず、ひたすら戦闘のデータを・・・(ハッ!)
バジ:それってボク達のも取っていたのか?!
ナ:当ったり前ッしょw そうしない事には戦闘のバランスが崩れて一気に崩壊―――てな話しはよくある事ッスからww
今にして気付かされる・・・そう言うこのクランメンバーは、戦闘には加わらない代わりに戦況の推移と、この後自分達がどう動けばいいかの指示を、
仲間や指揮官であるバーディに送信っていた・・・。
しかもそれはエネミーは元より、自分達の事も判っておかなければ出来ない事。
だからこそナオミにはバーディの動きの僅かな差異に気付いていたのです。
それに今回は四の五の言っている場合ではない―――だからこそ・・・
バー:なんだ?これは・・・
ナ:そいつは、ドゥルガーが装備してるスーツの上位互換タイプ・・・とは言え、テスト期間無かったんでぶっつけ本番―――て事で。
カリ:性能は?
ナ:さぁーっすが気になってきます?w 愛しの奥サンより性能が好い事に。
けーど、どっちが良かったかは「これから」ッスよw なにしろそのスーツのデータ・サンプリングしたのは、あの『破神壊帝』なんスからねww
バー:『破神壊帝』並み・・・だ、と??
ナ:ええ―――けど、テストする期間が無かった・・・これ、何言ってるかさすがに分かりますよね?w
そう・・・それは試行運用期間がゼロだからこそ、そこで何が起こるかは判らない・・・加えてどんな弊害が起きるのかも。
その事が判ったからこそ、噛みついてきたメンバーも大人しくなったのですが・・・。
ナ:これでもね―――急ぎに急いだンスよ・・・。
こっちもねぇ、例のアレ・・・『次元転送システム』やら、それらに関するモデュール・マニュピレータやら、ドゥルガーのスーツの性能向上やら、バーディのスーツの新開発、それに・・・
バジ:これは・・・ボクの?
ナ:こっちの注文はたった一つ―――こちらとしては一人でも戦力が欲しい。
そんなとこへ能力減退を理由にしてもらいたくねェンすわ。
その「ゴーグル」、使用した暁にはあんたが思うがままに「停止」られる・・・。
さながらにして、あのメドゥーサすら畏れさせたという『邪眼竜』のようにねw
狂気の天才発明家は、だからこそ畏れられた・・・。
他の誰しもが考えもつかないような事を次々と考えだし、けれどそのあまりの突飛さに誰もが認めなかった。
時代が認めなかった・・・。
しかし、彼女を認めたたった一つの存在こそ―――。
#143;インベクター来歴
?:君の論説、大変興味深く拝見させてもらったよ。
ナ:なにモンなんスか?あんた・・・
?:皆は私の事を「学士」と、そう呼んでいる。
ナ:へえ〜〜あんたが・・・あの。
学士:おや知ってくれているとは光栄だね。
ナ:ええそりゃ知っていますよ、この私以上の変人とかでw
学士:ハハハwそれじゃ変わり者同士気が合うって事のようだね。
私は―――この時知った。
この私の皮肉すら知らない本物の「智」を。
智で智を争う場である『学会』でさえ相手とされず、爪弾きにされた『インベクター』ナオミ。
そんな彼女に近づいて来た存在こそ、この当時は「学士」と名乗っていたエリスその人なのでした。
それに誰もが見向きもせず棄てやられた自分の論文を、一字一句に至るまで目を通し理解したからこそ『興味深く』と言ってくれた。
そしてこれもまた「運命」―――その時よりエリスからの支援は始まりました。
その支援を基として数々の発明をナオミはしました。
時には惨事を巻き起こすものもあったようでしたが、それでも「7人の姉妹」達やその他にエリスを支える者達と交流を深めていった・・・
奇しくも「7人」の内には加わらなかったものの、事実上陰ながらの彼女達を支え援ける、存在しえない8人目・・・それが『インベクター』の役割だったのです。
つづく