選定者達の意志により彼岸の次元へと送られた選定れた者達―――
これは“その一つ”である―――ブラダマンテとセシル・・・
#144;それぞれの思惑『ブラダマンテ・セシル編』
セ:ここは―――廃墟?
ブ:そのようですわね。
それにしても建物の様式が、普段わたくし達が見慣れている「西洋」の様式ではない―――どちらかと言うと、お姉サマの住まう地域・・・「東洋」の様式に近くありますね。
ブラダマンテとセシルが、プリンによって飛ばされてきた場所。
それこそは廃墟になって随分と時間が経った場所なのでした。
それにしても往時としての面影もなく、僅かながらに残るこの地の断片と思われるモノに、
2人ともここが元はどう言った場所なのかが、朧げながらに判り始めてきたものでした。
それに・・・この地に遺された印象としては、自分達の知る西洋式の「バロック様式」だとか「ゴシック様式」だとかではなく。
寧ろブラダマンテが「お姉サマ」として慕っている人物が住んでいる地域、つまりは東洋式に限りなく近しい―――と言う事が判明してきたのです。
とは言え急務なのは、自分達の状況の把握。
ここがどう言った場所で、自分達はこれからどこへと進むべきか―――なのですが・・・
セ:(前方より何者かの気配?)
あっ・・・ブラダマンテ卿―――?!
ブ:少々モノをお尋ねいたします。
ここは一体どこになるのでしょう?
この廃墟に人影――――、一体何の用でこんな場所に自分達以外の何者かがいるのか。
セシルはすぐに警戒をするのですが―――ブラダマンテは逆に人当たりのよさそうな質問を投げかけたのです。
するとその質問に彼方からは―――
蜥蜴:何者ダ―――お前タチ、この辺ヲうろつくトハ、なニガ目的ダ?
どこかカタコトの―――少し聞き取りにくいような喋り方に言語。
良く視れば衣服からチラリとのぞいて見える肌には、爬虫類特有の“鱗”が・・・?
ブ:(・・・)わたくし達は―――ニンゲンです。
蜥蜴:ニンゲン・・・ふむそウか、ではお前タチがソウなのだな?
ブ:その通りでございます―――しかしながらこの地は不案内なものでして、不覚にも迷ってしまった次第ですれば・・・。
蜥蜴:フフフ―――そウだろウと思ってワザワザ来てやっタのだ、感謝すルがよイぞ。
今のこの時点で短慮を発してはならない―――何しろ自分達はこの次元の出身ではないのだから。
だからお互い不明だとはしても、向うが勘違いをして“そう”思ってくれるのは、ありがたいとはしながらも、
セシルとブラダマンテは、いま自分達が置かれている状況を把握する為にと恭順する態度を敢えて見せ、
有益な情報の収集に努めたのです。
ブ:それで・・・皆様方はお待ちかねなのですか?
蜥蜴:ああ―――オレ達の大願成就ノため、今はもまえたちニンゲンと手ヲ組ミ、魔王城を攻メ落とス。
しかしよく考えタものよwなにシロもまえたちトハ長年殺シ合っテ来た間柄なんだからナア?w
それをヤツの呼びカケで、一時的に手ヲ組モウ―――て事なんダカラな!w
セ:ほぉう―――それで、その者は何と言う名なのだ?
蜥蜴:ああン?そう言ヤなんテ言ったかなァ―――そうダ、確か『ペルセウス』・・・
ブ:(「万能者」!)それよりもなぜ―――攻撃目標が魔王城なのです?
蜥蜴:ン・ン〜?なんダお前タチ・・・さっきからおかシナことを言う―――。
セ:ええ、私達は配属されてから日が浅いですから・・・。
蜥蜴:ふゥ〜ン・・・上等な鎧ヲ身に着けてルって言うのニなぁ・・・まあいい。
今代の魔王ハ弱腰ダ、その一語ニ尽きル!
ブ:ああなるほど―――。
そうですわね、戦争を一方的に放棄するなどと・・・
蜥蜴:ああ全くダ! だがそノ魔王さエ亡くなレば、また次代が選定される・・・。
おお―――ッと・・・こいつは余計なコト言っちマッたかあ?
セ:いいえ? とは言えその事を上に報告しても、所詮私達は新参者・・・ゆえに、上層部に受け入れられるかどうか―――
蜥蜴:そウ言えバそウだなァ・・・もまえたちニンゲンも、随分ナ昔に「英雄王」ト称されたヤツがいたソウだが。
そいツが亡くなった途端、ニンゲンの国は瓦解・・・今じゃそこカシコに勢力が乱立サレて、この世はサナガラ乱世ッテところよ!w
人語を解し行使するものの、所詮この者は人間ではない・・・。
けれどお蔭で自分達が知りたかったことをベラベラと喋ってくれたお蔭で、自分達がこれから為すべき事が決まりました。
それにしても『ペルセウス』なる者が、ニンゲンではない彼ら―――いわゆる魔族に入れ知恵をしていたとは・・・?
いやしかしながら―――
「万能者」と謳われるほどの智の持ち主『ペルセウス』―――その様な者が軽挙妄動に奔るのはあまりに不自然。
ならばこれは、なにかの計略なのでしょうか?
だとするならここは一時的にでも彼の者の策に乗じ、この彼には今しばらくの間騙されたままでいて頂きましょうか。
彼女達2人がその能力を如何なく発揮する―――その対象を違えてはいませんでした。
それは彼岸に来るのに際し、予めプリンより言い聞かせられていたから判っていた事。
戦争を放棄している魔王―――に歯向かい、弱体化をしている今をして攻め込まんとしている者達。
そのどちらに「正義」があるのか・・・とは言え、そうそう旨い話はなかったようで、レギオンとみられる彼らが集結している場まで戻ってくると・・・
蜥蜴:よぅし―――着いタぜ・・・おウお前ら、ニンゲンのお客人ダ。
人狼:なにヲ寝惚けテやがるオ前。
人獅子:そうダゾ―――ニンゲンの協力者なラ、もうここニ来てイル。
蜥蜴:な―――ナンだと? もまえラ、まサカオレを・・・
既に、蜥蜴頭の彼が頼みとしていた者達は、自分達の拠点へと来ていた・・・?!
ならばと言う事で、自分が謀られたものだと思い、彼女達の方を振り向くと―――
ブ:フフフフフ、あぁらようやく判ってしましましたか、道案内ご苦労様に御座いますわ。
セ:しかし心苦しいものだ、かの『ペルセウス』なる御仁の仕掛けた策を、私達で台無しにしてしまうのだからな・・・。
自らの佩剣を抜き、今まで抑圧させてきたモノを解放させる、セシルとブラダマンテ―――。
実は、今現在彼女達が帯びている佩剣は、以前から彼女達が愛用していたモノとは少し違っていたのです。
プ:彼岸へと行くのに際して、君達に渡しておきたいものがある。
セ:これは・・・!
ブ:(今までわたくし達が振るってきた剣とは別格―――)
プ:セシルに渡したモノは『イクセリオン』、ブラダマンテ殿に渡したのは『エクスカリバー』だ。
言われた瞬間、雷に打たれたかのような衝撃が走る。
そう、今自分達が聞き違わなければ、幾つもの創作話で語り継がれてきた・・・
セ:伝説の武器―――?!
プ:そう―――そしてその武器は、武器自らが使用する者を選定ぶ。
いかがだね?今まで伝説とさえ思っていた君達が手にしたとしても、サビつきだにしないだろう?
ブ:え・・・ええ―――それどころが剣自身がわたくし達に力を与えてくれている様な・・・
プ:だからこそ違えてはならない―――所詮剣とは君達の奥底に眠る秘められた能力を引き出すための道具であり、また鍵でしかないのだからね。
そう・・・それこそが「神器」の特徴。
武器そのものが意志を持ち、振るわれる者を選定ぶ・・・。
けれどそれは、だからこそ思い当たる節があるのです。
セ:だからこその・・・あの「四凶」戦―――!?
ブ:そう考えれば納得がいきます! ならばあのレイド戦に参加した者達全員が・・・
プ:ああ、全く以てその通りだ。
それに、私達がしてやれるのもここまでだ。
セ:いえ、これでも十分に過ぎます、私達もこの剣に恥じないような働きをせねば・・・。
パーソナル・レイド戦に参加してくれた者に用意された、ほんのささやかな報酬。
それこそ参加者それぞれの個性に合わせ、設えさせた「神器」でした。
そう―――今、彼女達の手に握られたのは、まさしくのそれ・・・
セ:ならばそのせめてもの報いとして、穢れあるお前達を討ち払うまで!
≪来れ、風よ≫――≪ウインドラス・ランページ≫
ブ:わたくし達を招待してくれたあなたには心苦しい処はありますが・・・
≪我が光輝の剣よ、浄化せよ≫――≪ホーリー・ヴェイパー≫
セシルの剣である『イクセリオン』は、「風」を司り操る神器。
そして試運転にと行使させたスキルも、数多の真空波を刃に変えて、複数の敵を屠る御業でした。
ブラダマンテの剣である『エクスカリバー』は、誰しもが知る聖剣中の聖剣、そして「光」を司り操る神器。
目も眩まんばかりに輝ける光の聖剣から放たれたモノにより、消失した者は数知れず。
結果―――モノの数分と経たない内に、自分達がこれから敵対とする者達の拠点を壊滅させていたのです。
ブ:それにしても・・・コレが現実なのですね―――。
セ:いかがされましたか、ブラダマンテ卿。
ブ:わたくし達は已むを得ず敵対をする者達を掃いました―――が、しかし・・・
この感覚はそれまでの「ゲーム」の感覚ではない・・・そう思いまして、ね。
セ:ええ、そうですね。
私も此岸では普通に暮らしを営み、こうした刃傷沙汰とは無縁でしたが・・・
ブ:それはわたくしとて同様です。
セシル卿もお気づきでいらっしゃいますでしょうが、わたくしの本来はいまだ年端も行かぬ存在・・・。
ゆえに最初プリン様から誘われた時は躊躇する嫌いはあったのです。
セ:ブラダマンテ卿はそれでいいのかもしれません。
しかし私は同様に彼岸の記憶も持っていたのです。
そして、そう・・・私がかつて主君に頂いた彼の方の意志を、こうも容易く蹂躙る連中がいるとは・・・
ブラダマンテ卿、あなたが為せないというのならば、この私一人でも・・・
ブ:要らぬ気遣いは無用に御座いますよ、セシル卿。
なぜなら今ここにこうして彼の地に立っている事こそ、わたくし自身の意思なのですから。
ブラダマンテも、そしてセシルも、此岸のリアルではこうした殺傷行為とは無縁の生活をしていました。
それが彼岸へと移ってからは、そうした甘えを言っていられなくなった・・・
「甘え」―――それこそは闘うべき時に闘わないと言う意思表示をする事。
ならばそうした意思を棄て、非戦の理念を打ち出す当代の魔王はそれにあたるのではないか・・・と、思われるのですが。
違えてはならないのは、彼の魔王が放棄したのは、『下らない戦争』なのであって、なにも「争い」そのものを否定しているわけではないのです。
つづく