「エリア」のマスターであり、この“種族”のマスターでもある、『焔帝』エリヤに仕える・・・

エリヤのためだけの「親衛隊」―――『高潔なる騎士団(エーデル・リッター)・紅焔』・・・その「団長」を務めるという、この少女こそが、

この“種族”の「No,2」である、「キリエ」という存在なのです。

 

ですが、市子と蓮也はさておき、リリアにサヤは、この少女に(まつ)わる“噂”のことは、よく知っていたのです。

 

そう―――この少女こそは・・・

 

 

キ:どうぞこの度は―――お見知りおきのほどを・・・

メスブタ・クソビッチ共

 

市:―――はい?

 

キ:あらあら私としたことが―――それとも、破廉恥にして下等の単細胞生物・・・

  そ〜〜〜う、言い換えるなら、「スライム以下」と、言って差し上げた方が良かったかしらあ〜〜?w

 

 

なんと言う―――不適切、下品極まりない言動の数々!

それが初対面の人間に対して為される事なのか・・・と、すぐに怒りの沸点を迎えてしまう市子なのではありましたか・・・

 

なんと? この不届き者に罰を下したのは、意外にも―――?

 

≪燃え尽きるがいい〜〜!≫

 

エ:こんのおバカっ―――! お客人に対して、なんて態度をするのッ!!

 

 

いきなり口より「轟炎」を吐き、自分の従者を燃やし尽くす(おしおきする)エリヤの姿が・・・

そして、あらぬものを見せられ、先程の怒りはどこへやら―――呆気に取られる市子の姿が・・・

 

その一方で、“こちら”は・・・と、言うと―――

 

 

サ:(あ〜〜〜ヤッちまったなあ〜〜〜〜)

リ:(ハ・ハ―――いや、実際見るのと、噂で聞くのとでは、ダンチだわ・・・w)

 

 

そう・・・奇しくもこの二人は、この少女の事を、「ある噂」をして、知っていたのです。

 

「その者」に(まつ)わる“噂”―――貞淑(ていしゅく)そうに振舞えど、口を開けば不適切の数々・・・

それが、初対面であろうが、主人の友であろうが―――誰彼構うことなく・・・

 

ではなぜ、彼女がそうせざるを得ないのか―――

それは全く、「彼女」が“彼女”である―――と、言う意義に他ならなかった・・・

しかして余人は、彼女の事をこう(たた)えるのです・・・

 

 

#15;伝説の“M”

 

 

リリアにサヤは、確かに“噂”では知っていました。

その“彼女”が不適切な言動に及ぶのは、“彼女”自身の主人から、罰してもらいたいから・・・

ただ、それだけ―――・・・

とは言え、それが“手”を変え“品”を変え催されてくることに、終ぞ主人(エリヤ)は耐え切れなくなり、

いつも「おしおき」をしてしまうのです。

 

しかも―――

 

 

キ:ニョ〜〜〜ホホホホ!w 嗚呼〜〜〜やはり最ッ高ですわッ―――!

  今日もまた一段と、猊下(げいか)からの炎を浴び、このキリエ―――満足のあまり、昇天してしまいそうでしたッ!!

 

 

うん・・・この人、反省するどころか歓喜に沸いちゃって―――w

 

とは言え、こんな不適切に過ぎる言動を、立て続けに見せられると、

やはり他人は、然るべくしてそうするワケであり―――・・・

 

 

リ:(はあ〜〜あ・・・ヤレヤレ―――って?!)

  やぁっべ―――

サ:(こ〜りゃ展開進むのか?―――って)

  あん?どったの・・・

 

リ:ヤメロ〜〜〜―――市子! “今”それやっちゃダメェ〜〜〜!!

 

 

真実とは、噂よりも奇なり―――

噂により聞いていた以上の「変態」っぷりを見せられたリリアにサヤは、諦めにも似た境地になり―――なのでしたが・・・

“こちら”は、そうは行かなかった―――

 

どうやら市子は、目の前で起こされた現象を、“()”に受けてしまい・・・

 

“それ”を見てしまったリリアは、すぐに“それ”を止めさせようとしたのです。

 

なぜならば・・・“それ”こそがまさに、「変態」を、より「変態」に促進―――加速させてしまえる、言わば・・・の、『特効薬』。

 

なんとも救い難い―――救いようのない―――愚劣極まるモノを見る時の「(さげす)みの目」・・・

まるで「汚物」を見る時のような・・・そんな目―――

 

しかし“それ”こそが、「伝説のM」への、“最上級の供物ならば???

 

 

キ:ンホォォォ〜〜〜!♪ た・・・(たま)りませんわぁ〜〜〜?♪

  その・・・私を下等生物でも見るかのような、(あわ)れみにして侮蔑(ぶべつ)の視線―――!

  わ・・・私〜〜〜イッてしまいそうですうぅぅぅ〜〜〜!!

 

 

スミマセン―――完全に手遅れでしたw

 

市子から(そそ)がれた最上級の視線を“糧”に、絶頂(エクスタシー)を迎えてしまう「伝説のM」―――

見ると、エリヤの方も壇上にうっ伏し、後悔の念に駆られることしきり―――だったようです。

 

・・・が、事態がこのままでは、中々収束しないので、「回収役」のご登場―――と、成り・・・

 

 

誰?:<クゥオシム>―――その辺にしておけ。

キ:あら・・・『ベイガン』―――いたのね・・・。

 

べ:まあな―――お客人、とんだ失態を見せて申し訳なかったな。

  紅焔の団長がこのような状態なので、変わって「副団長」であるワシが、クエストの内容を説明させて頂く。

 

 

その存在―――慇懃(いんぎん)にして礼儀正しく、自分達の不始末を率直に詫びる姿勢を見せるなどをすると、

やもすれば、こちらの彼の方が「団長」なのではないか・・・と、疑問も湧いてくるのでしたが、

その「副団長」だと名乗る人物から、現在エリヤが頭を悩まされている事を説明されるに至り・・・

 

 

べ:恥ずかしい話し―――ではあるのだがな、我らは現在「とある問題」を抱えていてな、

  些末な問題を先送りにした結果―――

リ:積もるモンが積もって・・・ってことか、それで―――?

 

べ:うむ、取り敢えずの処としては、こちらの諸問題を解決して頂きたい。

 

 

その男―――「ベイガン」と名乗った男の口からは、現在彼らは大きな問題を抱えており、

小さな問題―――これが今回、リリア達に(あて)がわれたクエストとなるわけなのですが・・・

その“内容”も―――「賊の討伐」やら「エリア境間(きょうかん)での小競り合いの解決」・・・などなど、

自分達が日頃請け負っている、「ギルド提供のクエスト」と、難度的にも似通っていた―――

その諸問題の解決のため、奔走することとなるのですが・・・

 

市子にしてみれば、とある疑問が引っ掛かってきたのです。

 

 

市:(彼らから提示された諸問題(クエスト)―――こんな、難度的にも、そう大した事のないモノをして、私たちに“協力”・・・とは

  リリアさん? これはひょっとすると・・・

リ:(さと)いもんだね―――そうさ、これは「試されて」いるんだ。

蓮:なんだって? オレ達に対してそんな事をするなんて・・・

 

リ:違うよ―――蓮也、所詮私達は、「あの人達」にとって“初見(しょけん)”で、信用が置かれていない・・・

  そうさ、“こういうの”をサクッ―――とこなして、私達が「出来る」ことを示さないといけない・・・

  つまり“アレ”さ―――「プレゼンテーション」? てなヤツ?

  まあ、なんにしろ、“コレ”は私達の・・・次のステップへと進むための、「土台作り」でもあるのさ。

 

 

やはり―――自分が予測していた通りだった・・・

こんな「子供騙し」「子供のお使い」じみたモノを依頼するのには、何らかの理由が・・・

つまりは、あちらにしてみれば、「自分達のPTの実力」というものを知らないから・・・

だから、次への―――より「重要さ」が増すクエストの為の「試金石」なのだ・・・と、思ったのです。

 

そして、手早く与えられた問題をこなしてきたリリア達に対し―――・・・

 

 

エ:―――なるほど、まずまずと言ったところのようね・・・

  では、本題に入ると致しましょうか。

 

  実は今―――先程ベイガンも述べていたように、私達は「ある大きな問題」を抱えているの。

  そして、その「大きな問題」とは―――・・・

 

  あなた達に、「モスクワ・サーバー・エリア」へと飛んでもらい、そこにいる「ある者」と“交渉”をしてきて欲しいの。

 

 

エリヤからの「クエスト発注」―――それこそが、現在エリア達が抱えていた「ある大きな問題」だったのです。

その「大きな問題」を解決させるべく、リリア達は「あるエリア」へと飛び、そのエリアにいる「ある人物」と“交渉”をしてもらいたい・・・

との事だったのです―――が・・・

 

すると、エリヤから(もたら)された「あるエリア」の名称を聞くと同時に―――

市子は―――サヤは―――息を呑み、青褪(あおざ)めた・・・

ただでさえ、この「シベリア・サーバー・エリア」に来るだけでも、抵抗は少なからずあったと言うのに・・・

 

その「エリア」―――「モスクワ・サーバー・エリア」と言う名称を聞いただけで、

現在のエリヤ達が抱えている「ある大きな問題」の事が、明確に分かってきてしまったのです。

 

その・・・事の重大性―――重要性が判ってしまった二人ではありましたが・・・

 

 

リ:(・・・)ああ―――判っている。

 

 

自分達の、PTのリーダーからの返事は、想定外のものでした。

いや―――これだけでは、表現は足らないのかも知れない・・・

 

そもそもの話しとなるのですが―――

少なくとも、市子とサヤの二人にしてみれば「想定外」―――でしたが・・・

リリアにしてみれば、「それ自体」を待っていた―――と、言えなくもなかったのです。

 

なぜならば、通常通りにクエストを請け負うならば、「分かった」でいいようなものを、

 

「判っている」・・・?

 

「なぜ―――この人は、総てが承知の上で、その返事をしたのだろう・・・」

「なぜ―――この人は、斯くも危険な「エリア」に、自ら・・・」

「いや、私達を巻き込んだ上で、赴こうとしているのだろう・・・」

 

だからこそ、これから()の「モスクワ・サーバー・エリア」に向かおうとしているリリアに向かい、

市子は―――サヤは――― 

 

 

市:リリアさん!待って下さい!

  あなた・・・今現在、あのエリアが何と呼ばれているのか、判っているのですか?

サ:ああ―――そうだ! そこの武者巫女さんの言うのも(もっと)もだが・・・

  まさかとは思うが・・・お前、あそこの「エリマス」と、何か関係があるのか?

 

 

そう・・・市子にサヤは知っていました。

現在の「モスクワ・サーバー・エリア」が、なんと呼ばれているかを・・・

この「シベリア・サーバー・エリア」をも(しの)ぐ、このゲーム内に於いての「最も危険な地帯」・・・

しかも、この「エリア」間の関係も知っていました―――

つまりは、それは・・・「マスター」同士の関係性も指摘されているわけであり・・・

 

片や―――「旧帝政」の、“貴族”の“末裔”・・・

片や―――「旧帝政」を崩壊させた、“ある者”の“末裔”・・・

 

貴族の末裔は、旧帝政の崩壊とともに、極北の僻地(へきち)へと追いやられ、

旧帝政を崩壊させた「ある者」の末裔は、旧帝政の都に居座る・・・

 

しかし、なぜ今「シベリア」のエリヤは、「モスクワ」の“マスター”との交渉を望んでいたのか・・・

 

ですが、次第に分かり始めてきたこともあるのです。

リリアの「本来の目的」こそが―――「モスクワ・サーバー・エリア」なのではないかと言う事を・・・

 

早い話し、自分達を巻き込んだ大元(おおもと)所以(ゆえん)も、「リリアに関する重大な要素の絡んだクエスト」であり、

この大元に辿り着くまでに、ワン・クッションを置いた―――

 

つまりそれが「シベリア・サーバー・エリア」のマスターの(もと)(おとな)い、

どうにかして「その条件」を―――・・・

仲の悪いと噂されるマスター同士を引き合わせるための交渉役を、リリアが買って出た・・・

これにより、リリアが「モスクワのマスター」を、「容易に訪れてはならない」という条件は、当てはまらなくなった・・・

 

≪“親書”を当該の存在に手渡せ;SS≫

 

クエストの難度は、“S”が2つも付く、「最高難度」に近いもの・・・

果たして、リリアの狙いとは、何だったのでしょうか。

 

 

 

つづく