とある新人プレイヤーが、自分の「ホスト」役である熟練プレイヤーに報告をしていた場所―――
多くのプレイヤーがその場所で種々様々な難度のクエストを請け負い、その成果を報告する場所・・・『ギルド』
そんな場所の一角にある「酒場」で、このゲームの「新人」である蓮也が、
自分をこのゲームへと誘ってくれた「ホスト」役の熟練プレイヤー・・・
身形は「巫女装束」を纏い、ながらも・・・武器に「刀」を装備する〘武者巫女〙―――という職である「市子」に報告・相談をしていたところでした。
そう・・・“その場”は、云わば「二人きり」だったはず・・・
新人は新人なりに―――ホストはホストなりに、親身になって話しを聞いていた・・・“はず”―――なのでしたが。
“それ”が破られたのは、市子が蓮也から聞かされた、さある「有名なプレイヤー名」と、
ほぼ同時に、彼方よりかけられた“声”に―――
市:(えっ??)い―――今なんと??
蓮:いや・・・だから―――(あっ??)
誰?:ちょっと―――そこの空いてる席・・・いいかい。
不遜にもその者は、二人の会話を割くように登場し、そして「ずけずけ」とその間に割り込んできた―――
そのことに一瞬蓮也は、「ムッ」とするのでしたが、すぐさま「ハッ!」と気付くのです。
それもそのはず―――・・・
蓮:おっ―――お前え〜〜〜
#2;「女傭兵」リリア
その不遜なる者の「プレイヤー名」こそ、『リリア』・・・
そう、その名を聞かされるのと同時に、市子は驚かされたものだったのです。
なぜなら、その者と同じ「プレイヤー名」を持っている者のことを知っていたから・・・。
このゲームの開始以来から存在をし、数多くの英雄譚を残す、高名なプレイヤー・・・
しかしながら、こうまで有名なのだから、「彼女」(?)の後にも「同名」でキャラクターを作成する者は後を絶たず―――だったようで、
このままでは埒も開かず、また混乱も生じる―――ということで、『オリジナル』以外は「BAN」の傾向にさらされた経緯もあったくらいのようです。
とは言え―――現実の世界でも同じことは言えるのですが、人を取り締まる「法」が、厳しくなればなるほど、
その「穴」を探り出し悪さをする連中は後を絶たず―――とは、儘にしてあったようで・・・
だからこそ市子も、自分が尊敬しているプレイヤーを貶める行為は、「良くないことだ」とも思っていたのです。
けれど“今”―――聞き違いでないとするなら、現に蓮也が例のクエストをこなすに当たり、幾度も阻んできた“存在”と―――
ここに佇む傲岸不遜な“存在”が―――「同一」であることを知るに至り・・・
市子は―――
市:(・・・)あなた―――が、「リリア」・・・なのですね?
けれど、この傲岸不遜な女傭兵は、その質問には返答えようとすらせず・・・
徐に、空いていた席に「ドッカ!」と腰を下ろすと、こう切り出し始めたのです・・・。
リ:ヤアヤア―――皆さんコンバンハw
蓮:貴ッ―――・・・手前え〜なにしにここへ!
リ:そう吠えるな―――キッドw
蓮:なっ・・・にい〜〜?!
市:やめなさい―――蓮也・・・
蓮:(!)しっ・・・しかし―――お嬢・・・
市:(キッ!)またあなたは―――!!
リ:フ・ン・・・ヤレヤレ―――そろそろお話し、始めさせてもらっていいもんかねぇ?w
市:(!)・・・ええ―――
傲岸不遜にして、慇懃無礼―――そのことだけで、蓮也の怒りが頂点に達するには十分にはすぎました。
それを窘められ、またしても思わず口から吐いてでた言葉・・・それが「お嬢」なのですが、
その呼ばれ方を、市子はあまり快くは思っていませんでした。
なぜなら“それ”は、現実での「自分」というものを、特定できてしまう「言葉」であり、
こんな、顔の見えない匿名性のある「ネットゲーム」などで、公表らになったらどうなるか・・・
そんな事を軽々しく口にしてしまう自分の“子”を、戒めるのでしたが、
けれどそんなことは、第三者でもある「リリア」には関係のないこと・・・
それに、自分のことを無視し、丁々発止するこの“親”“子”に、当の本人は別段怒るでもなく・・・
いや寧ろ、呆れた感じさえ見受けられたのです。
ところで―――この「リリア」なる者も、この二人の間を割いてまで、なんの「お話し」を・・・?
いや、それよりも―――・・・
市:それよりあなた・・・「私の」蓮也を、どういうつもりなのですか!?
リ:ふぅ〜ン・・・あ! なる程ねェ〜w
“お嬢”サンは、そのことで「カリカリ」きてると〜?w
市:あなたっ―――!
リ:そちらのボクちゃんが言ってたジャンかよw
あんたのことを「お嬢」―――ってw
市:これだからっ―――!あれほど・・・!!
蓮:す―――済まねえ・・・
リ:それよかさ―――聞きたくねえの?
私からの「お話し」・・・
所謂ところの、そこの「ド新人ちゃん」を“認めた”・・・ってことを、さ。
「話の導入」は、より刺激的なほうがいい―――
これは、嘗て“師”として仰いでいた人から教えられたことでした。
そして今、自分の事ながら実践できていたことに、
「嗚呼、こう言う事だったんだ」
と、感心することしきり―――だったのでしたが。
いずれにしても、話しの主導権を取れたのは僥倖だった―――
これでこの二人は、自分からの話しに、耳を傾けずにはおかれないはず・・・
それに、意外性というのは、あったほうがいい―――あとは・・・
市:やはり―――あなたが蓮也を“狙った”のは、「そう言う事」だ、と?
リ:おっ―――と、勘違いはよしとくれ。
とは言っても、そう取られてもおかしくない状況でもあったからねぇ。
市:では、率直に申し上げます。
ならばいかなる理由が―――?
リ:なァに―――難しい話しじゃない、ちょっと私に関わる『あるクエスト』に協力してもらいたいのさ。
今―――市子自身、それに蓮也自身の聞き違いでなければ、自分達よりも“上級”のプレイヤーから、クエストの依頼があった?
それも、“協力”の―――??
確かにそれは名誉なことであり、市子にしてみても二つ返事で返しても良かったのでしたが・・・
ならばなぜ蓮也を「ターゲット」に? もしかして、「自分」を釣るために蓮也を介して―――??
そう思えなくもなかったのでしたが、意外なことには―――・・・
リ:フ―――フッ・・・クククw 心配なんざしなくても、「そういう理由」じゃねぇよ“お嬢”サンww
市:(!!)また―――!
リ:おおっと、悪ぃ悪ぃw だが、私が目を付けたのは、紛れもなく「彼」のほうなのさ。
またしても、気に入らない呼ばれ方をされた事に、市子は反論しようとしましたが、
それよりも・・・一瞬、どこか自分の思惑を見透かされたような感じが―――した?
市子は、このゲームを始めた頃より、とある気になる“噂”を耳にしていました。
それが―――他人の思考・思惑を見透かせる存在が“いる”・・・と。
ならばこの「リリア」がそうなのか・・・と、思ってしまったのでしたが、
次に「彼女」(?)の口から出た言葉に、目を丸くする二人が・・・
そう―――やはりリリアは、蓮也が「目的」だったのです。
その理由というのも―――・・・
リ:あんた達二人して、不思議そ〜〜な顔してっけど、私がこいつに目を付けたのは、明確な理由・・・ってのがあるのさ。
市:(えっ・・・?)
蓮:なんだって―――?
リ:フッ―――アッハハハ!w あんたら、揃いも揃って傑作ダヨww
なぁる程なあ・・・こういう反応をするものなんだ―――・・・
市:(?)なんですって?
それはどういう―――
リ:まあまあ―――w ま、お陰でこっちも切り出しやすくなったけどもな。
ま・・・なんでか―――っつうと、そこの「ボクちゃん」、あんたなにか「武道」をやってるだろ?
蓮:えっ?? なんでそんなこと―――
リ:わからいでか―――とは言え、あんたはこの世界じゃ、所謂「ド新人」「ズブの素人」・・・て言っても差支えない―――
けれどもな・・・
市:(!)もしかすると―――?!
リ:おおよ、そっちの人は気付いたようだがな。
蓮:どういう事なんだ? もうちょっと詳しく・・・オレにも分かるように・・・
市:・・・このゲームでは、常々言われていることがあるのです・・・。
それは―――このゲームの“プレイヤー”は、現実で操作をする人間の「技能」・・・
所謂、このゲームにおける「プレイヤー・スキル」と、密接な関係がある―――と・・・
市子自身、このゲームを始めた頃から耳にしていた、その当時としても『雲の上の存在』―――
そんなプレイヤーと同じ名を持つ、この「リリア」なる者の口から出てきた“理由”・・・こそ、
このゲームをする上での「攻略wiki」や「情報掲示板」等に書かれた事のある事実。
それが、このゲーム内の“キャラクター”の「プレイヤー・スキル」は、遍く現実で操作する人間の「技能」“そのもの”を、反映させる―――
そう言う事だったのです。
しかしながら、この「リリア」なる者は、いつの時点で蓮也のプレイヤー・スキルの事に、気が付いていたのか・・・?
それには、歴とした理由が存在していたのです―――。
つづく