今回のクエスト攻略に関し、選出されたのは4名・・・

それは、「PT」と言う“集団”の、最大限の人数なのです。

 

けれど、今回は「一人のプレイヤーに関する」クエスト・・・

ならば、この団体行動は「違約」なのではないか・・・と、思えるのですが、

意外とも思えるのですが、リリア達は着々とこのダンジョンを攻略できていた・・・

そこを見ると、「過程」までは抵触しないものとし、改めてリリアが「因縁の宿敵」である単于と対峙となった時に・・・

と、言う事のようなのです。

 

しかし―――実は・・・

ここまでに―――でも、リリアは「その総て」を伝えていなかった・・・。

 

それは、(いま)だ仲間達の事を、信用していなかった・・・

―――と、言う事なのではなく、言わば・・・「真実を知ることが、良い事ばかりだとは限らない」から・・・

 

 

そして―――早くも「その前兆」が、ダンジョン中層に差し掛かった辺りから、顔を(のぞ)かせ始めたのです。

 

上層では、苦も無く突破できていたものでしたが、中層に差し掛かった辺りから、

リリアの呼吸が乱れ始めた・・・?

 

そこが、市子にしてみれば、不審に感じたことだったのです。

 

「この人は、私達よりも、一つ上の武道の心得と言うものを修めているはず・・・」

「なのに?」

「スタミナの配分と言うものを、考えずに動いているとは思えない・・・」

 

そう・・・市子の“不審感”とは、まさにそこでした。

 

それに、注意して表情などを見てみると、息も上がって―――時折苦痛に(ゆが)みはじめた・・・?

それに、どことなく身体も気怠(けだる)そうにしている・・・??

 

すると、サヤからは―――・・・

 

 

サ:そんなに苦しいのか? 横になるか?

リ:あ・・・ああ―――大丈夫・・・ッ! これしきの事で・・・!!

市:大丈夫―――などではないのですか?

 

リ:大丈夫だ・・・! それ以上近づくな!!

 

 

苦しんでいるのを心配し、近づこうとしている自分を―――その人は寄せ付けなかった・・・

その事には寂しい気もしましたが、なにより疑念は深まる一方・・・

しかし、リリアの固い意志表示に、そうするしか他はなかったのです。

 

とは言え―――時間が経つにつれ、徐々にふらついてくる足下、汗だくになってくる全身、

それに熱でもあるのか、顔も上気(じょうき)し、紅潮してきている・・・

 

そして、ついに耐え切れなくなり、膝を地に着いた瞬間―――市子は、リリアの身体の一部に、「あるモノ」を(かいま)見てしまったのです。

その「あるモノ」とは・・・

 

「なんなのですか―――“これ”は・・・」

「もしかして―――「タトゥー」??」

「でも―――“なぜ”?」

「なぜこの人が・・・そんなモノを??」

 

市子が、リリアの身体に見てしまったのは、まるで「刺青」「タトゥー」のような、“なにか”の模様のようなモノ・・・

しかも、その「タトゥー」()()()モノは、リリアの生体反応に呼応するかのように、脈動していた・・・

そして、その「タトゥー」()()()モノが脈動するに際し、リリアもまた・・・

 

 

リ:あうぅっ―――く・・・っ!!

サ:バカ野郎! 全然大丈夫じゃないじゃないか!

  おい、さっさと横になれ―――!

 

リ:あ・・・う―――うん・・・

 

 

どこか、サヤは知っていた―――いや、「知らされていた」と言うべきか・・・

リリアの異状を確認すると、手早くも適切な措置がなされた・・・

 

しかし―――「知っている」からこそ“出来る”こともあるし、また“出来ない”こともある・・・

その事も踏まえた上で、指示を出すサヤ―――

 

 

サ:蓮也、あんたは「男」だから、これ以上近づいちゃダメだ・・・だからと言って、ただ指を(くわ)えて待ってろ―――とは言わない、

  私が“処置”を施している間、周辺の警戒をしていてくれ。

蓮:―――分かった・・・

 

サ:それから市子・・・あんたはもう「知ってしまった」立場だから、よく見ておくんだ・・・

  こいつに、何があったのか・・・を―――

市:(・・・)え―――・・・

 

 

まるで、腫物(はれもの)に触るかのような対応・・・

けれど、それだけのものが、そこにはあったのです。

 

そしてそれは、まさしくしてそうだった―――

サヤに促されるまま、身体を横臥(よたわら)せ、装備を程度ばかり脱がせると、そこには―――

 

 

市:(!)こっ―――これ・・・は? これは・・・一体―――?

  “これ”は一体何なのですか―――サヤさん!!

 

 

その・・・リリアの身体に(まつ)ろっていたモノ―――

まるで、「蛇」や「蚯蚓(みみず)」或いは「触手」のようにうねり、リリアの身体を締め付けるかの如くに苦しめているモノ・・・

それが『呪紋』―――

市子が垣間見てしまった時、「タトゥー」の様に見えてしまったのは、見た目も禍々しい、「呪いの言葉」で綴られた「紋様」だったのです。

 

しかも、リリアにかけられていた「呪い」は―――・・・

 

 

サ:・・・やはりな―――

市:サヤさん? あなたは知っているのね? “これ”がなんなのか―――

  だったら教えてください! 私の友人に何があったのかを!!

 

サ:ああ、教えてやるさ―――あんたが“拒絶”しようとな!

市:えっ―――・・・

 

サ:私も、じじぃから聞いた上でしか話せないが・・・

  おそらくこいつにかけられた「呪い」の類は・・・

 

 

 

#20;“鉛”の呪縛

 

 

 

最近見かける、ファンタジー系の読み物の設定で、「鉛の呪い」というのがある。

 

“鉛”・・・それは、金属でありながら呪われた存在―――

“鉛”・・・それは、一切の「魔術の効果」を打ち消してしまう存在―――

 

そう・・・総ての―――

 

総ての魔術の効果を打ち消してしまう―――

 

この効果は、「攻撃魔術」をいくら受けても、無効化―――つまりノー・ダメージにしてしまうこと

 

しかしそこだけを見てしまうと、いいことばかりの様にも見えてしまうのですが・・・

 

ならば―――?

ならば、味方からかけられる「回復」や「補助」の魔術は―――?

「魔術付与」された、装備の類は―――?

“それ”だけならいざ知らず―――「ポーション」などの、『マジック・アイテム』は??

 

それら総てが、牙を剥いて―――刃を立てて・・・襲い掛かる

 

しかも、現在のリリアの装備には、武器としては一級品―――業物(インペリアル)の「ファフニール」を持っている・・・

 

ならば―――このクエストの進行自体が、無謀だった??

 

 

市:なぜ・・・リリアさんが―――こんな「呪い」を・・・

 

サ:(・・・)いいか―――話すぞ・・・

リ:ダメだ・・・やめて・・・それだけは―――

 

サ:バカ野郎が! こんな(ざま)で虚勢を張っていられる場合か!!

 

 

なぜ―――どうして・・・友人の身体に、こんな「呪い」の刻印が・・・?

その理由を(たず)ねようとしても、当人の口からは強く拒絶する言葉が・・・

 

彼女が―――単于に敗れ()った後、そしてこの「呪縛」を「ある者」により受ける前後、

何があったのか―――・・・

 

それは、ここ最近になって、急激に仲を深めだした一人の友人に―――

それとまた、幼い頃から想いを寄せる幼馴染に―――

一番に知られたくはなかった・・・

 

けれど、そのことを話さない限りは、最善の選択を間違えかねない―――として、サヤから激しい叱咤が飛んだのです。

すると、そのことは理解したのか、リリアは小さく(うなづ)くのみ―――

 

そしてサヤより、サヤ自身が知っている限りでの、事の顛末(てんまつ)が話されたのです。

 

 

サ:つまりはな・・・リリアは単于に、言葉通り「征服」されちまったんだよ。

市:「征服」・・・

 

サ:単于の異名、知っているよな。

  つまりはそう言う事さ、もう少し厳しい言い方をすれば、リリアは完膚なきまでに叩きのめされ・・・

  そして、単于に服従を誓わされる一歩手前だったんだ。

 

  ただ―――幸か不幸か・・・その時単于と一緒にいた“ヤツ”から、この「呪い」を仕掛けられてな、

  「隷従」させられる代わりに・・・と、言っちゃなんだが、とんでもないものを受け取っちまったんだよ。

 

 

有り得ない事実―――けれど、「因縁の宿敵」の正体が分かった時点で、分かっておくべき事だったのです。

 

「略奪王」―――「侵略王」―――そして「征服王」・・・

 

本来の、その意味合いとしては、「他国」に侵略して、征服をする・・・

けれどもその対象が、「国」ではなく「人」だった場合には・・・?

 

それこそが、現在のリリアの「有り様」だった・・・。

 

しかし、新たな疑問も浮上してきたのです。

 

 

市:それより・・・待って下さい?

  今・・・なんと―――? リリアさんが敗れたとき、単于側には「もう一人」?

  単于とリリアさんは、一対一の対人戦・・・ではなかったのですか??

 

サ:(・・・)ああ―――ちょっと言葉足らずだったかな・・・

  確かに、その場には「もう一人」いた―――って、私は聞いている・・・が、

  実際に闘っていたのは、リリアと単于なんだ。

 

  私もな、それを聞いた時、妙に思ったものさ・・・

  なぜならその「もう一人」は、「オブザーバー」だと思っていたんだが・・・

 

市:勝負が決着すると同時に―――・・・?

サ:(・・・)だけならいいんだがな―――

 

 

次第に、明らかになってきた、リリアの敗北の経緯―――

当初市子は、リリアは単于と一対一の対人戦で敗れてしまい、剰えリリア自身のOUSを奪われてしまった・・・

そう―――だとばかり思っていたのに、今、他人からの伝聞とは言え、この自分より、もう少しばかり事情に詳しいサヤからの説明・・・

それで、「純粋」な一対一での対人戦とは言い難くなった・・・

 

そこは暗にサヤが指摘していたように、その「もう一人」から、なにかしらの作用を受けてしまっていたら・・・?

 

そして―――事の真相が、ようやく明らかにされてくるのです

 

 

 

つづく