もう、これ以上ない簡単な説明を、理解ってくれない―――
これまでが「おしゃれ」に無頓着だっただけに、リリアからの質問に、完全に行き詰ってしまった市子・・・
かれこれ数分間、頭を抱え・・・悩ませ、ようやく辿り着いた一つの解―――
そうだ・・・ここはやはり―――
市:リリアさん―――では参りましょう!
リ:はい?どこへ―――・・・?
「実践あるのみ」―――と言う事で、仮想世界内の「ショップ」を巡り、
それを元にして、現実世界の姿を、劇的に変化を遂げさせる―――そうした対策を講ずるわけなのです。
#34;璃莉霞大改造計画
リ:これ―――で、似合う?・・・のかなあ。
市:ええ!そのフリルのついたドレス、とってもよくお似合いですよ!
リ:(う〜〜ん・・・市子さんが褒めてくれるのは嬉しいんだけど、今一つ判んないや・・・)
けど―――さあ・・・動きにくいよね?コレ・・・
市:“街中”での格好ですからね―――“戦闘”に不向きなのは当たり前です。
それに、いかがです?このバッグ―――
リ:ん〜〜―――ちっちゃくて可愛いんだけど・・・回復ポーション幾つ入るの?
「ダメだ・・・こいつ―――戦闘以外・・・と言うか、「おしゃれ」は全くのポンコツだ・・・」
完全無欠の「完璧超人」かと思われた自分の友人が、「おしゃれ」の方はからっきし―――と言う事が分かり、
けれど市子は胸を撫で下ろすのです。
完全無欠と思われた、自分の友人の―――完全無欠ではないところ・・・
「私しか知らない、この人の秘密」
それはまさしくの、かけがえのない宝物の様に思えてしまうのです。
―――が、しかし・・・リリアの悩みは一向に解決せず・・・なので、
思いついた閃きを頼りに、どこかしらの誰かに「ダイレクト・トーク」を取り付ける市子・・・
そう―――市子は気付いてしまったのです・・・
一人でダメなら、もう一人増やしてしまえばいい・・・
幸いログイン時間も知っていたことなので、“その人”に直接交渉を取り付けて、
急きょ「トウキョウ・サーバー」まで来てもらう事にしたのです。
さて、ではそこで、市子は一体誰に「援軍」を頼んだのか・・・と、言うと?
サ:よっ―――呼ばれたから来たぜ。
リ:サヤ・・・さん?どうしてまたここに?
サ:ん?そこのお嬢に呼びつけられた。
リ:へっ―――?
市:お待ちしておりましたよ。
それよりサヤさん、私は“お嬢”―――
サ:―――じゃなくって、「市子」と言えってんだろ?判った判ったw
ん〜〜で、なによ、また改まって―――
一瞬忘れてしまっているようですが―――リリア達が住まう地域で、「2大双璧」とも呼べる、「女性のセレブ・プレイヤー」の一人・・・
それが「サヤ」―――現実世界内では、「橋川コンツェルン」のご令嬢・・・
そう―――つまり市子は、「細川」と「橋川」の“二大財閥”が手を組めば、この難敵を撃破できなくはないものと思い、
急きょレイドPTを組んだのです。
それにサヤも、市子からの依頼を聞き―――
サ:ほっほぉ〜〜中々面っ白ぇ〜こと考えんじゃん?w
やぁ〜るぅ〜〜w
市:でしょう―――!?
リ:(あ?あ・・・れ?)
サ:いっやあ〜〜私も兼がね思ってたワケよ―――
ほら、雷鳳に単騎で来た時でもさあ、もちっと小奇麗にすりゃいいのに―――て、思ってたのよ。
市:そうですよね!すごく分かります!
今はもう慣れましたけど・・・最初、璃莉霞さんに声をかけた時、クラス全員が奇異な目で私を見るんですもの・・・
「セレブの二人が、私がいるのにそっちのけで、話しを進めていく―――?」
「しかも話題は、この人達に、現実世界内で初めて出会った時のエピソードで湧いている・・・」
「これは変だ―――?」
何か変だ―――と、思ったから、リリアはこう切り出したのです。
リ:あ・・・あのうぅ〜〜〜こ、この「クエスト」放棄していい・・・?
市:いい訳がないでしょう?(ニッコニッコ)
サ:フッフッフ―――安心したまえよ、リリア君w
君はこれから、我々●ョッ●ーの改造手術を受け―――
なにやら一部で、間違った誇大表現があったようでしたが―――w
リリアの叫び声をよそに、次々と加えられる改造手術の魔の手(違w)
こうして・・・あらゆる「メーク・アップ術」に、「コーディネート術」を施術されたリリアは・・・
サ:おっほお〜?w やぁっぱ、元々の素材がいいから、仕上がると逸品モノだぁ〜ねぇ〜w
市:そうですよね!
さあ―――リリアさん、よく仮想世界内での姿を覚えておくのです!
そして、休み明けにこの成果を、皆に見せつけてやるのですわ!!
「もお〜〜どうにでもしてぇ〜〜」(半ベソw)
―――と、半ば諦めが、リリアを襲っていたようですが、
二人が親身になって考えてくれた、また違った自分を見て、
これなら自分の幼馴染も、少しくらいは意識してもらえるのかなぁ〜と、淡い期待を寄せるリリアなのでした。
その後の「女子トーク」にて・・・
サ:て〜〜より、うちんとこの大将も、粋なことをしてくれるわ。
市:そうですね・・・そこは感謝しないと。
サ:それよりさ、お嬢・・・じゃなかった、市子さんよ―――
あんた、うちんとこの大将と、あれからなんか進展あったのか?
市:そのことなのですが―――今日の19:00から、お食事に誘われまして・・・ね。
サ:おほっ―――やぁ〜るねぇ〜〜♪
リ:おデート・・・
市:―――であれば、よろしいんですけれどね・・・。
あの人が私に会ってくれると言うのは、少し意味が違うんです。
サ:(“意味”ねえ・・・)
お互いが不器用同士―――であるがゆえに、互いの“想い”を切り出せないでいるのだろう・・・と、
ヴァンパイアの子爵は思いました。
それに、“この国”は、あらゆる意味で、世界各国から遅れてきている・・・
だからこそ焦るのは判る―――とは言え、焦ったところで実を結ばないことも、判ってはいる・・・
恐らく厳三は、自分が未だ学生の身分の内に、成果を残しておきたいのだろう・・・
学生の身分から卒業し、実績あるまま“代”を継ぐ―――
そこで、世界と亘り合えるまでの度胸を培っておきたい・・・
けれど彼には、「幼馴染」という、いわば“枷”のようなものがついていました。
こんな苛烈な性格の自分に、付き合わせていたら、保つものも保てない―――
だから、市子からの誘いも一方的に切り捨てるようにしてきた・・・
陰で泣き―――恨み事を言われても構わない・・・
いずれこの国を、背負う事を「今」覚悟しておかなければ・・・
だからこそ「今」、自分にとって有用な人材を確保しようとしていたのです。
けれども、市子には判らない―――判ってもらおうとも思っていない。
しかし、市子も覚悟を決め、自分と同じ道を歩むと言うのであれば・・・
厳三が誘った「今夜の食事会」は、そんな意味が含まされていたのです。
場面は一転し―――
仄暗い場所に現れていたのは、あの・・・「モスクワ・サーバー・エリア」の「マスター」である・・・
ミ:(・・・)変わらぬな―――辛気臭い場所だ。
皆―――揃っているな・・・
「闇」の・・・さらに深い場所にあるとされる場所―――
そんな場所に、ミリティアはいました。
そして「皆」と言う―――
「皆」・・・しかし彼女以外に、実像を持つ者など見えない・・・
けれど、それはそうなのであって、彼女以外の誰もが彼女を知覚しており、その他も知覚しえている・・・
では一体、これは何の「会談」「会合」なのか―――
定期的に行われているのか―――
臨時的に行われているのか―――
そのどちらでもあり―――
どちらでもないのか―――
それは「彼ら」のみが知覚しえ、我々の様な「一般人」は知覚しえない・・・
我々「プレイヤー」は、「彼ら」が与え給うたるモノに甘んじ、興じる―――・・・
ここ最近では、ほんの数日前に行われ、我々が興じているモノ―――
その“評価”を見聞するたに開かれていたのです。
運:【ふぅ〜ん、今回の「レイド戦」中々好評のようじゃないか?】
ミ:今のところは・・・な―――
運:【ですが―――やはり「今回のボスは強すぎる」とのクレームもちらほら・・・】
運:【はッ―――そがぁなのは、ヘタレが言うかばちよ!w】
開:【けれど、今回のはテストもしないままでの実装―――でしたからねぇ・・・】
開:【それでは―――次の“調整”の折にでも・・・】
開:【いや、しばらくは様子を見た方が・・・】
運:【賛成〜〜とは言うてもねぇ、おねぃちゃんの言うとったように、根性足らんと思うんよぉ〜】
開:【また、精神論―――ですか】
開:【ならば、“調整”は、また次の機会に―――としてはどうかな?】
「一つの議題」―――に、様々な議論・・・
しかも、議題に上がったのは、ここ最近流行し、皆誰しもが熱を上げている、
「あの」新しいコンテンツ・・・
“一撃”でも喰らえば「即死」も有り得る、その強力過ぎる「攻撃力」―――
今現在、プレイヤー達が持てる全力を解放しても、ほんの僅かしか削れない、高い「防御力」―――
おまけに・・・そのレイド・ボスを倒すために―――と、組まれた「即席レイドPT」全体を、全滅に陥れる「スキル」―――
一体、この難敵を倒すのに、何度全滅をしてきたことか・・・
けれども、苦労に苦労―――忍耐に忍耐を重ね、やっと倒した時に得られる「経験値」や、
これまでに見たことのない貴重且つ豪華な「ドロップ・アイテム」や「装備品」の数々・・・
やはりプレイヤーがのめり込むのには、それなりの理由がある。
今は手強く、倒せなくとも、何度となく試行錯誤を重ね―――幾度となく撤退・全滅を重ね、
その身体に染み込ませ、また刻み込んでいく「クセ」の数々・・・
今回、リリアが秋定を強引に誘い、勝利の美酒を味わったのは、そんな「イベント」だったのです。
つづく