「黄金週間」も中盤に差し掛かり、かのレイド戦も大盛況を迎えるのでしたが、
早くも「ある問題」が浮上してきているのでした。
#36;とある問題点
蓮:うっへ―――中々上手く行かないなぁ・・・
リトライばっかで、一つもクリア出来ないなんて・・・
ようやく、「新規」から「中堅」へと移行するも、未だ自分の殻を破れないでいることに、蓮也は嘆いていました。
彼は、彼なりに努力をし、彼なりに目標へと向かおうとしているのですが、
そんな彼の気持ちとは裏腹に、これまでにクリアできたのは一度きり・・・
あの“紛れ”の成功体験があっただけに、蓮也はどこか勘違いをしてしまい、
あの“紛れ”の成功体験の時の様に動いていた―――
けれど、それだけでは足らなかったのです。
だからこその失敗―――
この「レイド戦」に限って言えば、幸いなことに「時間制限」と言うものは設けられておらず、
“それなり”に実力のあるPTならば、“それなり”にクリアが出来ていた・・・
つまり、蓮也が例の“紛れ”の後、一度足りとクリアできていないと言う理由は、
“それなり”にも程遠かったから・・・
だから、彼は判らない―――
何が至らないのか、何が至っていないのか・・・それすらも―――
あんなに沢山用意してきた装備アイテム(主に回復系)も、今では底を尽き、
これ以上体力・気力を回復させることが出来ないから、こその・・・途中中断―――
体力が尽き、撤退しても自動復活出来るものの、そこの処を軽く見ていた為、
中断の決定をした時に、自分のステータス画面を見た時には、愕然としたものでした。
そう・・・レイド戦を始めた当初より、大幅に減退してしまった、自分の経験値・・・
所謂「デス・ペナルティ」―――その事に悄気かえ、憂さを晴らすために彼が向かった先とは・・・
「待合喫茶」なのでした。
そこで蓮也が見たものとは―――
「あ・・・れ?璃莉霞のヤツに、お嬢も―――」
「それに雷鳳の小夜子もかよ〜・・・」
「―――にしても、なんだあ〜?璃莉霞のヤツ・・・」
蓮也が見た、一種異様な(??w)光景・・・
それは、自分の幼馴染を取り囲み、地域の二大セレブ嬢が華やいでいた・・・と言うのです。
しかも―――いつもの「戦士」としての装束ではない・・・「おしゃれ」に着飾った幼馴染を見て、
一瞬「ドキッ☆」としてしまっている蓮也・・・
そして、“それ”に気付いてしまったリリアは―――
リ:あ〜〜秀ちゃ〜〜ん、助けてよぉう―――
私が私でなくなっちゃう〜〜―――
蓮:はあ?何言ってんだ、お前―――
サ:それよりお前・・・いつもよりサッパリしてねぇなあ―――
蓮:放っといてくれよっ―――あんたにゃ関係ねぇだろうが・・・
市:(・・・)その様子だと、レイド戦に失敗したようですね―――
いつもながらも、鋭すぎる指摘に、「グゥ」の音も出ない蓮也。
例え、“紛れ”だとしても、成功体験があっただけに、後に続く失敗は、
その原因が何であるかを掴めもせず、憂悶とするしかない・・・
だから周りにも当たってしまうのです。
しかも、サヤからはこんな指摘も―――・・・
サ:はぁん?あんなのに手古摺ってんのか―――なにやってんだ、お前・・・
大体あんなのって、適切なヤツ揃えてりゃ楽勝だろうによ。
蓮:(悪ぅ〜ございましたね!どうせオレは―――)
その場にいた女性プレイヤー、「リリア」や「サヤ」は、誰しもが認める「上級プレイヤー」だっただけに、
ここ最近でようやく「中堅」になり始めた者からすれば、自分の悩みなど取るに足らないものだと思ってしまっていました。
それに「市子」も、この頃では柔軟にシステムの事を取り入れ始め、徐々にでも「リリア」達に近づいてきている・・・
変わらないのは自分だけ―――・・・
このゲームを始めて、もう数か月経つと言うのに、成長の壁にぶち当たっている・・・
つまり、現時点においての「問題点」とは、蓮也と同様のプレイヤーが輩出していたことにありました。
「リリア」や「サヤ」―――「市子」のように、“適切”なPTを組めているプレイヤーは、「難なく」勝利を収められている・・・
それに対し、蓮也の様なプレイヤーは、そんなPT構成を気にすらもせず、言わば「脳筋全開」で事に臨んでいるからこそ、失敗をする・・・
更に―――耳の痛いことには・・・
どうやら、今回の蓮也の“失敗例”が、どこぞかの動画サイトにアップされており、
それを見たリリアが一言―――
リ:あ、これダメだ―――
市:どうしたのです?
リ:あ〜〜うん―――多分蓮也の参加してたPTなんだろうけど・・・
サ:うっわ―――こりゃひどいわ
蓮:なっ―――なにがだよ。
サ:「なにがだよ」つったってなあ〜〜w
リ:あのさぁ―――秀ちゃん・・・全員「アタッカー」じゃ、クリア出来るものも、出来ないよ?
そう―――失敗するのが、「当たり前」・・・
そのPT構成では、「タンク」「ヒーラー」はもとより、「キャスター」や「サポーター」が一人としておらず、
全員が「オラオラ系」の、脳筋集団―――
だからこそ、回復アイテムが尽きてしまえば、そこで「おしまい」だったわけなのです。
ならば―――???
蓮也、唯一の成功例・・・“あの”「紛れ」のとは、一体どう言う事だったのでしょうか。
これも、後のちによく調べてみたところ、さある有名な「クラン」のレイドPTに、“偶々”参入できただけ・・・
しかもその「クラン」は、全員が「廃課金」として知られており、常識外れの装備で身を固める者達の集まりだった・・・事が判ってきたのです。
それはそれとして―――そこで一念発起したリリアは。
リ:よぉ〜し、だったら私達が一肌脱ごう! 蓮也の為に!!
サ:つ〜〜か、上手いこと逃げやがったなw
けーど、ま、さんざ弄り尽くして、退屈してたとこだし、いっちょ乗っかってやるかw
リ:サヤ・・・さん―――面白がってんなよ・・・
サ:私ゃ、どっちでもいいんだぜぇ〜?w まだまだやり足りないところもあるわけだしぃ〜〜?ww
リ:あ゛あ゛あ゛う゛う゛う゛・・・え、遠慮させてもらいますぅ・・・
ねぇ〜〜―――市子さぁん!
市:そうですね・・・では取り敢えず、私達4人で組むことに致しましょうか。
リリアにしてみれば、似合わない(?w)「おしゃれ」から逃げ出したかったからか、
それとも、未だ本当の勝利を見ていない幼馴染の為か、急きょレイドの為のPTを編成させたのです。
そして、“適切”と思える「部屋」を探し、「入室」すると同時に戦闘準備を整えるリリア達・・・
けれどリリアは、この“適切”に見えた「部屋」に潜む・・・
それも言わば自分達も少なからず抱え始めている、「ある問題点」に気付いてしまったのです。
リ:初めまして―――私達はこれから、皆さんの為に「タンク」をやらせてもらう・・・
P:ああ゛〜?オレ達の為?
P:まあ―――精々頑張ってくれやw
サ:(!)おい、お前―――
市:(!)サヤさん―――
こちらから、丁寧に自分の役割を紹介しようとしていたのに、連れない反応・・・
その反応に思うところとなり、突っかかろうとするサヤを、宥める市子―――
一瞬、空気は気まずくなるのでしたが、各自のパラメータを覗いて見てみると、遜色のないレベル・・・
確かに、プレイヤーとしての「スキル」「レベル」共に申し分ない―――
けれども、態度は「尊大」―――
そんな連中のいる「部屋」に、飛び入りで参加してしまった・・・
PTリーダーである自分の責任もあるからか、リリアはしばらくその行く先を見つめることにしました。
そして―――レイドの開始・・・
最初は“前衛”が奮闘し、レイド・ボスの体力を1/3削ったところで、レイド・ボスの攻撃行動の変化―――
そのレイドPTには、数人の「タンク」がおり、最初の範囲攻撃はどうにか防ぎ切りました。
しかし、「壁役」の体力も半分以上が消耗し、そこを“後衛”の「ヒーラー」が回復をする・・・
そこを―――?!
リ:(!)いけない―――!
P(回):(シールド・・・)ありがとう―――!
確かに蓮也は、今まで自分がこなしてきたモノとは、明らかに別のモノを見ていました。
敵を倒すために、敵の体力を削る役目の「アタッカー」「キャスター」
けれども、反撃を喰らえば、死亡が確定してしまうので、その傷を癒す為の「ヒーラー」は、不可欠・・・
ですが、それらは皆、敵からの「ヘイト値」を稼いでしまうことになるので、
そこで重要となるのが、「攻撃」「回復」と同様に、重要とされている「ヘイト管理」なのです。
確かに・・・この「部屋」にいる“彼ら”は、「構成」としては十分でした―――
けれど、それと「ノウハウ」とは別のもの・・・
攻撃形態の変化に伴う、全体の範囲攻撃の“第一波”は、なんとか防ぎ切ることができていましたが、
「タンク」の削られた体力を回復するために・・・と、「ヒーリング」を行う行為は、
実は正解のように見えて、「悪手」だったのです。
その所為で、大事な「ヒーラー」を狙われ、全滅してしまうパターンは、よくある・・・
だからこそリリアは、自分のスキルである「シールド」を展開させ、「ヒーラー」を防ることができていたのです。
それにようやく・・・このPTの「クセ」が、見えてきた―――
そこで―――・・・
リ:ここからは、私が全ての「ダメージ・コントロール」を担います!
展開―――『晄楯』!
最前線へとと出て―――レイド・ボスからの攻撃を受け切る「万能の盾」と、化した・・・
これで、ボスの全ての攻撃は封殺される・・・
そしてこれから、リリアは「ある役目」も担ったのです。
それが―――
リ:今です!「キャスター」の人全員は、総ての攻撃魔法を叩きこんで!
「アタッカー」の人は、持てる力の全てを注ぎ込んでください!
「司令官」―――的確な、敵・味方の動きを把握し、指示を与える役目・・・
こうして、レイド・ボスの撃破―――と、なったのですが・・・
これは、戦後の“評価”の場面にて・・・
P(回):助かったわ―――あの時、あなたのスキルがなかったら・・・
リ:ああ〜いいの、いいの―――
P:てかよう〜〜なんだ、途中からしゃしゃり出てきやがって―――
P:こっちも、ポーションとか常備してんだからさあ〜w
P:そーそー「ヒーラー」の一枚や二枚、デスったって、オレらにゃ関係ねーよw
P:それより、オレらに命令すんな―――っつうの
P:そうだなあ〜なんだよ、偉っそうに・・・何様のつもりだぁ。
サ:(チッ)あんの野郎ども・・・
市:サヤさん―――
サ:判ってるよ、それよりあんた、つまんなくねえか?あんな奴らとつるんでさ・・・
P(回):いえ・・・いいんです・・・。
あの人達のお蔭で、私・・・ここまで成長できているんですから・・・。
それより、今日は本当にありがとう―――あの、フレンドいいですか?
リ:ああ―――もちろん!
感謝する者もいれば、今回リリアが起こした行動に異議を申し立てる者もいる・・・
まあ、今回に限っては、「後者」が多数派だったようですが―――・・・
その事が癪に障り、またも突っかかろうとするサヤを、宥める市子。
今回は、無事にクリアをした蓮也も、得られるものが多くあったようでしたが、
自分達が抱える問題・・・「司令官」と「ヒーラー」の不在。
そこのところに思う処となったリリアの姿があったのです。
つづく