#37;論功行賞(リフレイン)

 

 

今回レイド戦を終え、自分達()抱える「ある問題点」が明確になってきました。

そもそもの話し、今回のレイド戦参加のきっかけは、未だに「新規」の殻から脱却できないでいる、自分の幼馴染の為でした。

 

「見る目」がないから、参加できる枠につい飛び込んでしまう・・・

それも、「構成」も何も判っていない部屋に・・・

だからこそ、失敗をする―――

 

一人で成長をしたい―――と言う気持ちは、痛いほど判る。

けれどレイドはたった一人ではこなせられない・・・

ある意味では、他人の特性も理解しなければならない・・・

 

このイベント・コンテンツ攻略の分かれ目は、そこにあったのです。

 

所謂(いわゆる)、「リリア」「市子」「サヤ」は、そんな「構成を見る目」が備わっていたからこその、

数々の勝ち星を重ねられた―――「勝ち組」

 

一方の蓮也は、我武者羅(がむしゃら)に―――レベリングだけを目的とするから、

勝ち星を重ねられない―――「負け組」

 

と、言えたのです。

 

とは言え、ならば―――と言う事で、幼馴染の為を思い、一肌脱ごう・・・としたわけなのですが、

今回入った「部屋」は、構成としては申し分なし―――ここまでは、PTリーダーであるリリアの「見る目」は、間違っていなかったのです。

そして、それは市子にサヤも同じことが言えました。

 

ただ―――操作するプレイヤーの「人格」は、()()とはまた別の話し・・・

 

ある意味で、協力して難敵を倒す(たぐい)のコンテンツは、味方同士の協力や連携が不可欠・・・

その部屋全員(4PTX4=16人)が、「知り合い」同士ならば、こうした不満は解消するのでしょうが、

この頃は、まだ実装されて間もなかったことから、そうした「大型PT」と言うものは、片手で数えるしかなかったのです。

 

しかも、そうした大型PTの、一つの特徴としては、「自分達の仲間以外は」・・・の、排他(はいた)的思考が強かったのです。

 

そう・・・今回は、運悪く「そこ」に当たってしまった・・・

これから自分達と力を(あわ)せて闘う・・・12人の即席の仲間達に対して、連携を取りやすいように・・・と、

リリア自身から自己紹介をしたものだったのに―――

 

「そんな事オレらには関係ねーから、適当にやってくれ」

 

いわゆる暴言―――ココロない言葉に、リリアのPTの一人が「カチン☆」ときたものの、

開始時間も差し迫っていることもあり、(なだ)める者も・・・

 

けれどやはり、開始してみれば「大型PT」の一つでもあっただけに、リリア達以外の12人は、互いに連携が取れあっていた・・・

ならば、リリア達は全くの不要―――だったのか・・・

 

しかし―――「大型PT」は、16人全員が揃って初めて言えること・・・

後の4人が欠けていたから、本来の実力は発揮出来なかった・・・

しかも、指示する「司令官」の役割のプレイヤーも欠けていたため―――

 

そこで唯一の「ヒーラー」が狙われてしまった・・・

今回の、即席レイドPTの構成では、リリア自身を含め、「タンク」役は5人・・・

 

しかし、レイド・ボスからの全体範囲攻撃の第二波で、リリアを除く他のタンク役全員が、体力のレッド・ゾーンに踏み入ってしまった・・・

 

タンク役は地味―――華々しい「アタッカー」や「キャスター」と比べて、派手さは欠けるものの、

味方の負担を一手に引き受ける・・・と、言うのは、ある意味で「男気」(あふ)れる役割だったのです。

 

それであるがゆえに、「壁」役の崩壊は、PT全体の崩壊を意味する・・・

 

「味方の負担を一手に引き受ける」―――と言うのは、敵からの攻撃を、“総て”受け切れるだけの「防御力」「耐久力」がないと、務まらない。

 

そんな「壁」が、今・・・崩れようとしている―――

 

それを阻止するために・・・と、“回復”の上位魔法を唱える「ヒーラー」。

 

この選択行動は、正解に見えて実は“最悪の一手”だったのです。

 

“回復”の上位魔法を行使したお蔭で、レイド・ボスからのヘイト値を引き上げてしまうヒーラー・・・

そして迫りくる、「ウオーロード・ドラゴン」の(あぎと)・・・

 

「壁」はまだ、崩壊はしていない―――

けれど、生命線とも言える唯一のヒーラーに、ここで撤退をしてもらっては、

例えすぐに復活できたとしても、その数秒間、PTのダメージ回復は見込めない・・・

 

飛び交う怒号―――(あざけ)り・・・

 

自分が取った選択行動が間違いだったと気付き、後悔するヒーラー・・・

 

皆、誰しもが、今回のレイドは途中中断しなければ―――と、頭を(よぎ)った時、

PTの生命線であるヒーラーを救っていたのは、未だダメージを負っていない、

「タンク」のリリアなのでした。

 

「タンク」―――なのに、ダメージの一つも負ってはいない・・

“前衛”にいた者は、自分達の仲間ではなかったことから、

「もしかするとこいつは、今の今まで高みの見物を決め込んでいたに違いない」

そう思っていました。

 

けれど、ヒーラーとキャスターの一人・・・“後衛”にいた者は、リリアの動きを(つぶさ)に見ていました。

 

「違う・・・こいつは、高みの見物を決め込んでいたんじゃねえ―――」

「まるで、ボスからの攻撃が・・・“通ってない”―――だ、と?」

 

それに、「(タンク)」役は、大なり小なり、皆「盾」というものを装備していると言うのに―――

盾一つ持っていないこの女性プレイヤーが、「タンク」だとは・・・?

 

しかし―――「盾」は存在していました。

発現をすれば、あらゆる“物理的”“魔術効果”のある攻撃や障害の全てを、

防ぎ切る光の盾―――『晄楯(こうじゅん)』が・・・

 

それに、「高みの見物」とは言っても、その女性プレイヤーは、()()見ていたわけではありませんでした。

この「戦場(フィールド)」を俯瞰で見れる・・・そうした「目」を持ち合わせる・・・。

 

そう―――紛れもなく、その女性プレイヤーこそは・・・

 

 

リ:ここからは、総てこの私がダメージ・コントロールを(にな)います!

  展開―――『晄楯(こうじゅん)』!

 

  そしてここからは、総て私の指示に従ってください!

 

  「キャスター」の方全員は、ありったけの攻撃魔法を叩きこんで―――「アタッカー」の方は、全ての持てる力を注ぎ込んでください。

  「サポーター」の方は、攻撃する方の「物理」「魔術」の「攻撃力アップ」を前提に行動を開始してください!

 

 

的確な指示―――現在の、このPTは、本来のリーダーであり、「司令官」役を欠いていたため、

各々(おのおの)が判っている範囲内での選択行動をしていました。

 

それでも、レイド・ボスの7割方の体力を削ったのですから、中々大したもの・・・

なのでしたが、やはり(ひず)みはどこかで生じた―――

 

しかも、この時の様に、一瞬の混乱は動揺を呼び寄せ、何をしていいか判らなくなる・・・

そのタイミングを見計らったかのように飛ぶ―――的確な指示・・・

それに、“即席”の司令官とは言え、このPTの動きを、よく把握していた・・・

 

しかも“後衛”達が見ていたように、この女性プレイヤーは・・・

いや、この女性プレイヤーだけ、レイド・ボスからの攻撃が“通って”いないように見えてしまった―――?

 

これは、なにかの「不正手段」を使っているのではないか・・・と、疑いたくもなったのですが、

ヒーラーの仲間であり、ヒーラーと同じ“後衛”にいた、キャスターの一人が呟いたのには・・・

 

 

P(術):あいつ―――確か『晄楯(こうじゅん)』とか言ってなかったか?

P(回):えっ?あっ―――はい・・・

 

P(術):マジか―――あいつ、帰ってきたんだなあ?

P(回):えっ・・・何を―――何のことを言ってるんです?

 

P(術):なんだ―――知らねえのか?

    一時(いっとき)オレ等の間で“噂”になったことがあってな・・・。

    なんでも、『无楯(むじゅん)』―――つう、あらゆる攻撃を“通さない”「盾」、あらゆる防御を“通す”「剣」、て言う万能型のOUS(スキル)を持っているヤツがいたんだ。

    だがそいつは、ほんの数年前に「プイ」といなくなっちまってなあ・・・

P(回):へ・・・え―――そんなことが・・・

 

P(術):それが今、なぜかオレ等と一緒にレイドを闘っている・・・だと?

    こいつは、大変名誉なことだぜ!

P(回):どうしてなんですか?

 

P(術):あのOUS(スキル)を持っている―――ってのはな、同時にこのゲームの「最強」の証しでもあるからなんだよ!

    へへへ―――こうしちゃいられねえ・・・! 出遅れちまっちゃあな―――!

    おいお前ら!これから惜しみなく、最大級に攻撃力のある術式を、あのドラゴンに叩き込んでやれ!!

P(回):だっ―――大丈夫なんですか? そんなことをしたら・・・

 

P(術):ハッ―――ハハハ!w そいつは心配するだけ無駄・・・っつうもんだぜ!

    オレ等へのダメージは、全部あいつが肩持ってくれるからよッ!!

    それに・・・あいつへの回復やバフは、やるだけ無駄・・・っつうもんだぜ。

 

 

“後衛”で、見えていたからこそ言えることがある。

味方への「ダメージ・コントロール」に「ヘイト・コントロール」を、一手に引き受けながらも、

「ミリ」も体力が減っていない―――

しかも、自分への「ヘイト」が逸れてしまった暁には、わざと大技を使っての自分への注目を集中させていた・・・

 

この時点では、有り得ない「プレイヤー・スキル」・・・だったからこそ、このPTのキャスターの一人に疑われてしまったのです。

 

この世界(ゲーム)の、最強の称号の持ち主が、帰還してきた―――の、だと。

 

そして・・・レイド・ボスの撃破―――

戦後の“評価(ブリーフィング)”では、感謝や批判が入り混じる中、今回リリアが為したことを判っていた者達は・・・

 

 

P(術):今回は、まあ―――ありがとうな。

    あいつらも悪気はねぇんだが、前ばかり見てりゃ、あんたのしてたことなど見えなかったんだろうしな。

リ:うん―――まあ、判っているからいいよ・・・。

 

P(術):―――にしても、すげぇな!あんた・・・

リ:はい?なにが?

 

P(術):あんた・・・あの『晄楯(こうじゅん)』使えてる―――ってことは、「清廉の騎士」なんだろ?

リ:(・・・)違うよ―――w

  だってほら〜キャラ紹にもあるっしょ? どこにあるっての、そんなのw

 

P(術):なにッ・・・あ、ホントだ―――

    いや、しかし、あのスキル使えるの、一人だけだったような気がしたんだがなあ・・・?

リ:気の所為(せい)―――気の所為(せい)

  最近同じようなスキル、実装されたんじゃないの?w

 

 

この「キャスター」は、かなり年季が経っていた者とみえ、図星で痛いところを衝かれてしまったようでしたが、

そこはそれ―――リリアも巧みに追及を躱していたのです。

 

その、このやり取りを見ていた者からは―――

 

 

サ:ケケケ―――w 下手な考え休むに似たり〜てか?w

リ:いやァ―――ホント、迂闊なことはできんわ。

市:それって―――つまり、優秀・有能なプレイヤーの「青田買い」・・・とかです?

 

リ:そう言う事―――そうは言っても、あそこで私が指示出さなかったら、立て直せなかったことだしなあ・・・

サ:それに、見えてない奴らの、なんとまあ多いことw

 

リ:うん・・・そうだね―――・・・

 

 

今回は、「大型PT」(くずれ?)への、飛び入り参入でしたが、批難する者―――評価する者もおり、賛否両論だったようです。

しかしながら、取り分けてリリアには、為さなければならないこともあった為に、少し思い詰めてしまったのです。

 

けれど、やおらすると―――

 

 

リ:うん・・・そうだね・・・そうだよね―――!

サ:ん〜〜?どうした、なにを閃いたんだ?

 

リ:今回は色々あったけど、ようやく見えてきたよ、ありがとう―――皆。

 

 

何かに「至った」・・・

だからこそ今、晴れやかな表情となってきた―――

そこは、市子もサヤも蓮也も判ってきたことでした。

 

けれども、リリアが何に「至った」のか・・・までは判らなかったため、その事を訊いてみると―――

 

 

リ:今の私達に決定的に足らないもの―――

  今回の様な「大型PT」を組めるだけの仲間と、その構成・・・

  そして、「回復役」と「司令官」の不在・・・

 

市:あ・・・っ

サ:そっかあ―――そういや、今回の私ら、あんたを除いたら全員「アタッカー」だもんなあ。

 

リ:うん・・・でもまあ、これはこれで、足りないところへ滑り込めるから、「軽い」って言えば、軽いんだけどね・・・

サ:(・・・)煮え切らない言い方するんじゃないよ―――言いたいことを言いな。

 

リ:今一番、信頼できるのは、この4人・・・てことだよ。

  けれど・・・たったの4人じゃ全然足らない―――レイドは全員で16人・・・不足している12人は、

  これから見繕って探さないといけない・・・それに、おそらく―――

 

 

今・・・友人からは、ありがたくなるような言葉を掛けられた・・・

「今一番、信頼できるのは、この4人」―――

 

ようやく得られた“信頼”―――

 

「ようやく私は・・・この人の信友(しんゆう)になれた―――」

 

こんなにも嬉しくなるような、それでいて衝撃的な告白に、市子にはこみあげてくる感情(モノ)がありました。

 

「信じあえる仲間がいる―――なんて心地のいいものなのでしょう・・・」

「けれど、私の信友(しんゆう)が見つめる先は、遥か遠い・・・」

 

その“頃合”を見計らっての、不可欠とされるピースを見繕い、埋めようとしている・・・

恐らく時間は残されていない―――“あの存在”が立ちはだかってくるのは、

遅く見積もっても「来週のアップデート」・・・

 

「待っていて―――「ジョカリーヌ」・・・あなたを止めるのは、私だけ!」

 

 

 

つづく