断片的―――だったものが、一つに繋がった・・・
「誰もいない」と思ったから、一大決心の告白をした―――はずだったのに・・・
実は誰かに見られていた―――?
だからこそ、限定的ながらも広まってしまう“事実”―――
そして、その“事実”を伝えられた、こちらの人物は。
小:へっえ〜〜―――やるじゃん、ガッキーw
・・・に、しても、こいつはエグイw
遠目から見た「こちら」はビミョーだけど、「こっち」のは完全に重なり合ってんじゃんww
厳:小夜子・・・楽しそうだな。
小:お前も見ただろ?
それにしても「鬼姫」の暗部が、こうも早く動いた・・・とはねえ〜。
厳:あまり・・・関わり合いたくはないな、あの「クソババア」とは。
別段―――“彼”と“彼女”とは、付き合っている・・・わけでは、ない。
けれど二人とも、「ある関係上」情報共有の為にと、一緒にいる事が多かったのです。
(つまりは、そこの処を、他の生徒達にしてみれば、地域の財閥子女の「ただならぬ」関係―――と、思われてしまう事も、致し方のなかったところのようです。)
それに、「ある関係上」―――と言うのも、お家柄の関係・・・と言うところもありました。
それが、今回の様な「スクープ」にしても、「ある家」と自分達の家との関係を、照らし合わせた上で・・・の関係でもあったのです。
それに、厳三をしても不適切と思える発言―――それが「クソババア」・・・
はてまたこれは、一体「誰」の事を指しているのか・・・
とは言え、これから起こり得るであろう出来事を、ある程度予測したかのような、小夜子の一言が・・・
小:ハハハ―――そいつは言えてるw 違いはないw
それに、ガッキーのことだ、恐らくこの場面は、偶然出くわしたものだろう。
厳:ほう―――?
小:お前も知っての様に、新垣は瀬戸家の暗部の一人さ・・・
しかもあいつは、白鳳ではヤリ手の「新聞部部長」としても知られている。
だから「この場面」も、最初は学校新聞の、ネタの取材としての行動だったんだろうさ。
厳:なるほどな―――
小:だ〜が・・・このイメチェン娘が起こした一大行動が、あいつの頭の中の思考を一変させてしまったのさ。
さあ〜て・・・これから面白くなってきたぜ。
もしかすると、あの「鬼姫」―――ここ最近の、この地域の勢力構造の一新を図ってるかもしれない・・・。
お前も精々気を付けとくんだな・・・厳三―――。
そう・・・事の契機は、璃莉霞が起こした一大行動―――「一緒にお帰り」が発端でした。
それを見張っていた朋子は、二者選択を迫られていたのです。
このまま―――ただ単に「一緒にお帰り」をするだけだったなら、
先程小夜子が言っていたように、学校新聞の“ネタ”の一つとしてしまえばいい・・・
(その際もちろん、目には「黒棒」をw また、あいての男性生徒には、敢えて「黒棒」をずらす・・・など、イタズラゴコロも、お忘れなく・・・w)
ただ―――
「一緒にお帰り」をする際に、何かがあれば、その話しは即座に「お流れ」・・・
今、手にしているチープなモノよりも、より鮮明―――かつ、より高精度・・・囁き一つも漏らさないで録音できる、
「最新式」のモノに変えないといけない・・・
一つ、不安材料があるとするならば、このカップルの男性生徒が、非常にニブチンで、朴念仁なこと―――
ある意味では、朋子は、その「タイミング」を見逃さないよう、チープなモノと最新式のモノとを、併用して操作していた・・・
そして・・・お互いの顔が、これまでにない距離に近づいてきた―――
それを契機に、即座にチープな方の電源を落とし、最新式の機能をフル活用させた・・・
そこからは全てお察しの通り、朋子はこの数日間、仮病を使うなどして無断欠席をしており、
ただひたすらに、「配布用」のや「報告用」に使用するための「写真」「動画」を作成・編集していたのです。
そして、その「配布用」の「写真」を受け取った者の一人である、細川市子は、
放課後までの間、やはり小夜子と同じ思考に至っていたのです。
そう・・・この地域の「裏の実力者」として畏れられている『瀬戸朝霞』―――
またの異名を「鬼姫」「クソババア」・・・として知られている、あの御仁が描いている事―――
それは、ここ最近マンネリと化している、この地域の支配構造にメスを入れようとしているのではないか・・・
「恐らく、あの方が描いている構想とは・・・」
「ならば、そのアクションを起こすタイミングを、見誤らないよう注視しておかなければ・・・」
「それに・・・「こんなもの」が、意図せず発信されるようなことはない・・・」
「「こんなもの」でさえも、単なる「先駆け」なのだろう・・・」
「こんな未熟な私が、謀略を好む鬼姫と対抗するなんて、100年早いことなど承知の上での事・・・」
そこで市子は、恥を忍び―――自分の家に「いる」、“ある者”を呼んだのです。
市:(・・・)弓梶恵―――
弓:―――はい。
市:教えてほしいことがあるの・・・
あなたの「主家」である瀬戸様は、何の目的・・・どのタイミングで仕掛けてくるのでしょうね。
教えて―――
第三十四代風魔小太郎
そう・・・市子は知っていました。
自分の家である「細川家」に勤めている、使用人の一人、「須東弓梶恵」の正体を―――
須東弓梶恵は、細川家の使用人としている間は、そのままの名を名乗り・・・
ですが、彼女が本来所属しているのは、「瀬戸家」の暗部・・・
然して、忍としての本来の名は「第三十四代風魔小太郎」だったのです。
そう・・・市子は判っていました。
細川の使用人と言いながらも、所詮は瀬戸家から貸し出されているようなものなのだと。
いくら密に行動をしたところで、自分達が企てる稚拙な謀など、
「この者達」によって、全て本来の主家へと筒抜けなのだろう・・・と。
「ならば、「そこを」逆に利用してやればよい―――」
「ただこれは、「それでも」無駄な抵抗となるのだろう・・・」
「この者達が、本来の主家である、瀬戸家に背いてまで、私達の肩を持つなど有り得ないこと・・・」
「だとしても、何らかの「きっかけ」が欲しい・・・」
果たして―――弓梶恵からの返答とは・・・
弓:(・・・)それにお答えすることは、出来ません―――
「ああ・・・やはりそうなのだろう―――」
「私は一体、何を期待していたのだろう・・・」
「ごめんなさいね―――力不足の私では、所詮ここまで・・・」
「これから・・・「鬼姫」様の謀略に呑まれて行こうとしている、あなたを救うことが出来なかった・・・」
市子は、宛らにして、己の力のなさに嘆いていました。
それほどまでに、この「写真」には、“災厄”そのものが盛り込まれているのだから。
ところが―――???
弓:そう言えば―――確か・・・『才蔵』からの報告は、“もう一つ”ありましたね。
市:(えっ・・・)えっ―――?!
弓:ふふふ―――それにしても、この「お弁当」・・・実に美味しそうです。
単なる「静止画」とは言え、まるで手慣れたモノのよう・・・
市:弓梶恵―――??
弓:ああ―――これは失礼しました。
今のは、単なる「独り言」でございますよ・・・市子様。
「今―――何気のない「独り言」で、私にヒントを与えてくれた・・・?」
「それに―――私ですら知らない「この静止画像」・・・」
「そうだ・・・これはまるで、「あそこ」のようだ―――!」
何気のない(?)自分の家に勤める使用人の独り言により、一条の光明を見い出した気がした市子・・・
けれどその「静止画像」は、自分ですら知らない―――恐らくは、彼女達の仲間内で伝わったものなのだろう・・・
その「静止画像」を見せられた時、市子は、瀬戸が描く謀略の全容までは把握は出来ないでいたものの、
何かの「きっかけ」を掴んだ気にはなったのです。
それはそれとして―――その日の夕刻過ぎ・・・(現在時刻17:00前後)
「ある建物」の前に立つ、璃莉霞の姿が・・・。
その建物―――中世の風格を漂わせながらも、厳格にして風流・・・
この地域やこの国―――のみならず、「それ」を求めて来る顧客は、世界各国に亘るのだとか。
それに、この建物に棲まう者達も、「それ」を求めるが如く、日々の精進を忘れず―――
ただ・・・ここの「主人」だけは、“別格”だった―――
この場所に建ちたる館こそは、「味」を求める“修羅”の巣窟―――
そして、誰彼と言うことなく、こう呼ばれもしたのです―――。
#40;味の修羅の棲まう場所―――『蜆亭』
そう・・・この場所にある建物こそは、「料亭」―――なのですが、
来店する客層は、政界や財界人などが、その密談によく使用していたり・・・などする場所でもあり、
海外の有名人やセレブ・・・と、兎角よく舌の肥えた人種にも人気があった処でもあるのです。
それなのに、海外で“評価”をする企業が作っている「ガイドブック」には、一切載った事などなかった・・・
ただ、無知なる周辺の人間は、恐らくこの料亭が、そこの“評価”を受ければ、
最高の「三ツ星」を、何年も維持することが出来るだろうに・・・と、思いもするのですが。
けれど、「それ」を一切望まないのが、ここの「主人」―――だとしたなら・・・?
言わば、「知る人ぞ知る」―――名店だったのです。
けれど・・・そう―――このお店は、言わば「そう言った人種」が、常連の客層・・・
それが、自分の様な平々凡人が「おいそれ」とは―――とも、考えたくなるのですが・・・
そんな一女子高生の自分でも知る、「その方」からのメール・・・
「もしここへと来なかったら、後で何をされるか、判ったものじゃない・・・」
そんな、「脅迫」めいた内容のものに誘われ、蜆亭の門前に立っていたのです。
そして、意を決し―――
璃:す―――すみません! お、お邪魔いたします・・・っ!
女従業:あら、すみませんね・・・まだお店を開けるのには早いのよ?
璃:ああ―――いえ・・・私、ここの・・・
この料亭の開店時間は、19:00〜なのですが・・・
2時間も前に、ここの暖簾を潜ろうとしたお客に、丁寧なお断りをする「女従業員」―――
なのでしたが・・・
お辞儀をした顔を上げた璃莉霞が見た、女従業員とは―――
璃:・・・って―――おばさま??
女従業:「おばさま」??
いえ、私はあなた様の「おば」―――ではありませんよ?
私は、この「蜆亭」で、臨時に「女将」を務めさせて頂いている―――「森野婀娜奈」と、申し上げる者です。
璃莉霞は―――ここの・・・「蜆亭」の“臨時”女将として勤めている、この女従業員の事を、知っていました。
それもそのはず―――自分が恋心を抱いている、幼馴染の実の母親にして、
幼い頃には付き合いもあった事からも、よくその顔を拝見していた事もあり、忘れようはずもなかった・・・
それがどうして―――?
森野清秀の母親にして、森野家の現当主である、この人物が・・・
「蜆亭」の女将―――? 女主人・・・だ、なんて―――??
そうそう混乱冷め遣らぬ璃莉霞―――ではありましたが、
蜆亭の臨時女将である者は、恭しく首を垂れたまま、その姿勢を崩すことなく・・・こう、低く呟いたのです。
婀:よく―――ここへと来たわね・・・。
「ここに来た」と言う事は、「覚悟を決めた」―――そう思っていいのね。
璃:えっ・・・でっ、でも私―――せ・・・
婀:まあ・・・あの方の呼び出しを、無下にでも断るような事があれば、
例えあなた達とはいえ、どうなるか―――判っているはずよね。
自分が踏み入ってしまった「領域」―――
それは、おいそれと避けられるようには出来ていませんでした。
それを清秀の母親である婀娜奈は、「蜆亭」へと踏み入ってしまった者に対し、
呉々も「鬼」の気に呑まれないよう、アドバイスをしたのです。
そう・・・この場所は、興味本位で入ってはならない―――
味の修羅が治める領域・・・
ここ最近、富みに噂となっている―――なろうとしている渦中の人物が、「蜆亭」へと誘われた「その意味」・・・
そして、「蜆亭」に棲まうとされる、本来の主人―――こそが、「鬼姫」なのだとしたら・・・?
璃莉霞は・・・さも、自分が神に捧げられる、「生贄の供物」のような気分となるのでした。
つづく