束縛の日曜から解放された璃莉霞―――ではありましたが、
翌日の登校日に、昨夜ログインしなかった理由を聞かれ・・・。
清:おい―――璃莉霞、どうしたんだ?
お前、昨日ログインしなかったよな。
璃:あ・・・秀ちゃん―――
うん・・・ちょっと、ね。
私用でインできなかったんだよ。
清:そうかあ―――・・・。
いやでも、やっぱお前がいないとガタガタだったわ。
璃:えっ?
清:いやほら、レイド戦だよ。
お前がいなかっただけで、前線が崩壊しちゃってさ・・・。
璃:あ〜〜そ―――・・・
てか、私の価値って、そんなところ?
清:いや・・・そうじゃねえんだけどな?
ただ―――なんていうか・・・
「キスを二度までした相手がこないんじゃ、ヤル気の半分も出やしない・・・って、言ったら失礼だろうしなあ・・・。」
―――などとは、決して口が裂けたとしても言えない、初心な清秀君なのでありました。w
それはさておき―――その日の放課後、ほぼ清秀と同じような質問を、生徒会長自らがしてこようとは・・・
けれどその内容は、彼の“それ”とは違っていたのです。
市:璃莉霞さん、一つお訪ねしたいことが・・・
璃:はい―――
市:あなた、昨日ログインは、しませんでしたよね。
璃:ああ―――それ?秀ちゃんにも言われちゃったw
なんでも―――私がいなかったから、(レイドの)前線が崩壊しちっゃたとかw
市:(全く―――不器用なんだから・・・)
まあ、それは事実なのですが・・・私が聞きたいのは、「何の事情」でインしてこれなかったか―――なのです。
「私の信友は、全て知っていた・・・まるでそのように聞こえた―――」
「恐らく今日、秀ちゃんにしたような説明じゃ、誤魔化しきれないだろう・・・」
「まあ確かに、「私用」ではあるものの、それだけじゃ曖昧すぎるし・・・」
「とは言っても、解放される前に、『今日ここであった事、誰にも話しちゃダメよぉ〜ん?』―――て・・・」
「釘刺されちゃってるしなあ〜〜・・・どう説明しよう―――」
またしてもの、ネガティブ思考全開となってしまう璃莉霞なのではありましたが、
このまま白を切り通せるものでもない・・・況してや、信友に対し、嘘は吐きたくない―――
けれども、「鬼姫」にキツく釘を刺されていただけに、曖昧とは知りつつも、真実に近しい説明をしたのです。
璃:あ〜〜〜ちょっと私・・・お料理教室に通ってて?
それで遅くなっちゃって―――・・・
市:「お料理教室」―――ですか・・・
そう言えば、清秀も「惚気」ていましたね。
璃:ほえ?? な―――なんて?!
市:いえ、以前もらったお弁当よりも、各段に美味しくなっている―――って。
璃:(あ〜・・・)そうそう!まさにそれ!
ああ〜〜良かったぁ〜お料理教室での成果、ちゃんとあったのね〜〜w
「下手なお芝居―――けれど、そこがまた可愛らしい・・・」
市子は、その総て―――ではありませんでしたが、ある事実は知っていたのです。
今、璃莉霞が、誤魔化し半分で言っていた「お料理教室」―――こそ、「蜆亭」・・・
そこで、何があったかは推測できる・・・
それに市子の信友が、あの「味の修羅場」へと向かった事実は、昨日のお昼休み頃に、
自分の家の使用人から、暗に齎された事でもあった・・・
まさしく、あの料亭こそは、“表”では数々の美食家の舌を肥えらせる、超一流の食事処として知られている・・・
ものの―――また曰くつきの“噂”もあったのです。
あの料亭に巣食う、事実上の“鬼”の眼鏡に適わなければ、あそこの職人である「板前」にも容赦はない―――
もし、大失態などをやらかした暁には、湾内にドラム缶にコンク詰めにされて沈められる・・・だとか、
翌日の出汁を取る為、身体を切り刻んだ上に、バラバラに解体されたり・・・だとか、
兎角、黒い噂は出回っていたのです。
とは言え、そうした「黒い噂」が真実ならば、許可は下りずに店も畳んでいるはず―――
それに、そうでないならば、否定しなければならないはず―――
“あそこ”に巣食う鬼が、否定すらしない―――と、言う事は・・・
けれど、自分の信友は、五体満足で帰されている―――今はその事で満足するべきなのだろう・・・と、市子は思うのでした。
その総てではないものの、信友からの疑惑を払えて、一安心する璃莉霞・・・
その日の晩、一日ぶりにログインした彼女を待ち受けていたものとは・・・
リ:皆―――おっ久〜
誰?:おう―――ようやくインしたか。
誰?:お久しぶりです―――
リ:あれ?あんた達―――どうしたの?
一日ぶり―――とは言え、リリアをいつもの待合い喫茶にて待ち受けていたのは、いつもの顔ぶれ・・・
市子と清秀―――の他に、以前レイド戦で一緒に戦った、あの大型PTの一員でもあった、
「キャスター」の「ギルバート」と言う者と、「ヒーラー」の「ソフィア」と言う者でした。
そんな新しい顔ぶれを見たリリアでしたが、彼らの事情を聴くと・・・
ギ:オレ達2人はな―――以前いたクランを抜けてきたのさ。
リ:ええ〜〜っ、それなんかちょっともったいないような・・・
ギ:まあ、普通に考えるとそうだろうなw
だが、大型PTが出来るクランは、それだけ旨味はあるが、同時に“ある悩み”も抱えちまってな―――
リ:(あ・・・)やっぱり―――
ギ:ま、そういうこった―――
戦果だけを求めて「オラオラ」でやれるのはいいこと―――なんだけどな、
それが「こいつ」への負担になっちまってた・・・てことなのさ。
ソ:私も悪かったんです・・・自分のレベルを上げるために、強いクランに入れば―――と、思っていたんですが・・・
リ:そっか―――やっぱ私が、思ってた通りになっちゃったてた・・・てことだったんだ。
ソ:えっ・・・では―――
リ:うん―――まあ正直話しちゃうと、あなたのレベルで、あのクランはちょっとキツいだろうなあ〜〜てね。
そこの彼は、まあなんとかなってたし・・・
でも―――・・・
ギ:ああ、つまりはそう言うこった。
こいつ一人を放り出せば話しは早いんだが、それってなんか違うだろ?そう思ってな。
だからオレも付き合う事にしたのさ。
「やはり―――」とリリアが言った瞬間、市子は気付きました。
「やはりこの人は、私達のことをよく見ている・・・。」
その上での危険性を指摘してもいいけれど、自分達は所詮、そのクランのプレイヤーではない・・・
言わば外部の人間なのだから、安易に指摘するのもまずい―――
それに、指摘をすれば、した―――で、この気の弱そうなヒーラーが集中攻撃に遭うかもしれない・・・
そう言う事を鑑みてのキャスターの行動に、市子は男気を感じてしまうのです。
とは言え―――彼らの目的は、これからの自分達の身の振り方・・・
その上での、日曜のレイド戦前にクランを脱退し、リリアが結成しているであろうクランに―――と、
思ってはいたのですが・・・
#43;クラン結成
リ:えっ?私達・・・そんなの結成していないよ?
ギ:なぁにい〜? お前・・・嘘だろう??
リ:いや―――唐突に嘘吐き呼ばわりされてもなあ〜〜w
でも事実は事実なんだもん―――ねえ?市子さん。
市:そうですね、取り敢えずの処、私達は常に3人で行動していたこともありますし・・・
それに、クラン結成の最低条件を達していないものでしたから。
ギ:いや、でもよ―――だったらあの女剣士はどうした?
リ:ああ、あの人は違うんだよw
あの時は・・・そうだね、臨時にPT組んだだけであってね。
何とも驚いたことに、ギルバートが以前まで所属していたクランのリーダーに匹敵するほどの、プレイヤー・スキルを兼ね備えていた者が、
未だにソロで活動をしていた―――言わば、野に隠れた逸材は存在していたのです。
それに、まさか・・・とも思いたくなるような事情も、仲間の武者巫女より説明がなされた・・・
そう―――このゲームに於いての「クラン」と称される“団体”・・・
その結成の最低条件として、「必ず4人PT」で、結成しなければならない・・・
けれど、あの時―――自分達のPTに混ざって参加をしていた時に、4人PTではなかったか・・・との指摘を受けたのですが、
その事も、当時のPTリーダーだったリリアからは否定をされた・・・
つまり、「彼女達」は、本来3人で活動をしていたにすぎなかったのです。
が・・・―――
ギ:よし―――まあじゃあ・・・とっとと4人組んで、クラン結成しようぜ。
オラ、ソフィア・・・お前こいつらのPTに入れてもらえ、そんでもって―――
少々強引―――とは思いながらも、リリア達はすぐさまPTを結成し、そのままギルド会館にてクラン結成を申請するのでした。
それとはまた別の話しとして―――
時間を少々遡り、昨晩の「あの出来事」を終え―――
一人の女子高生を送り返した後の出来事で・・・
婀:それにしてもまあ―――あんな確証の薄い状況証拠のみで、よく踏切れましたね。
瀬:あら?私はそうは思わなかったわよ?
婀:(・・・)まあ―――そう言う事にしておきましょう・・・。
それで、いつ頃になるのですか?
瀬:う〜〜〜ん―――・・・「連中」集める前に、まだ二・三やっておかなくちゃならないことがあってね―――
婀:(・・・)「二・三やっておかなくちゃならないこと」―――とは?
瀬:そうねぇ・・・取り敢えずは、「シベリア」にいる竜を呼び出すわ。
婀:あの方々を―――またどうして?
瀬:一つ言えることは、「これから」の事よ。
恐らく「あの子」は、“駒”が足りていない・・・それも「ヒーラー」の、ね・・・。
だから「あの子」は、「シベリア」の《ルクスゥ》と《ラゼッタ》の二人を借り受けることになるでしょう。
そこを・・・無理を言ってでも貸し出してあげるよう、頼んであげるの・・・《プレイズ》と《クゥオシム》に・・・ね。
今回、図らずも巡らされてしまった謀略―――
それこそは、ある時期を睨んでの、『パーソナル・クエスト』解放のタイミングでした。
そして、それに合わせるかのように、現在の「あるプレイヤー」周辺の状況を鑑みてみるに、
足りていない因子―――それは、「人数的」にもさながらにして、圧倒的に絶望的なのは、
「回復役」の不足―――だったことから、瀬戸も婀娜奈も、この二人が共通して認識をしている、
ある種族に属しているベテランの「ヒーラー」と「タンク」を、セットにして貸し出してもらうよう・・・
実は、その「打診」が、前回のお話しの最後にあった、エリヤに届けられた「あのメール」だったとしたら・・・
―――と、ここで、諸兄には不思議に感じなかっただろうか。
そう・・・一介の料亭の「大女将」と、「臨時女将」を務めていた両者が、
なぜ璃莉霞達が興じている「ゲーム」の事に、通じていたのか・・・。
そして、我々は知らなければならない―――
この・・・『鬼姫』と畏れられた、当代随一の謀略家の、「この言葉」を―――・・・
ジ:そして―――その後は・・・フフフフ―――
「ミリティア」にも、個別に相談をしようと思っているのよ・・・
「ミトラ」―――
ミ:(・・・)ほう―――あの方にも?
どう言う事なのですかな・・・
「ジィルガ―――」
つづく