現実世界のものではない、むしろ仮想世界での名で呼び合う彼女達・・・
そして以前には、“こう”記述もなされているのです。
「私達「7人」の他に、仲間の「13人」も―――」と・・・
そう、「13人」とは、ある程度判っているのです。
それが、このゲームに携わる、「運営」「開発」の人間達・・・
通称として「13人の長老」と呼ばれている者達の事なのですが・・・
ならば残りの「7人」とは??
それはまだ、語られてはいない―――語られるべきではない・・・
ただ一つ言えたこととは、その内の仲間の誰もが、口を揃えて「ある言葉」を口にしているのです。
それが・・・『姉妹』―――
ただ、それからと言うものは、なにもありませんでした。
普通通りに学園へ通い、普通通りにログインして、クランの仲間達と楽しんだり―――・・・
けれどそれは、あまりにも似通っていたのです。
そう―――言うなれば・・・
#44;嵐の前の静けさ
と・・・。
そしてやはり、異変は顕著にしてありました。
その「きっかけ」は―――
「土曜に、どうしても外せない用が出来たから、ログインができない」
と、クランマスターのリリアが、メンバー全員に伝えたことからでした。
その話しを、普通通りに聞いていれば、誰しもが「ああそう言う事なんだ」と、納得してくれたものだったのでしたが・・・
やはり、このメンバーだけは、欺けなかった・・・
この日のログアウトの翌日、生徒会長室に璃莉霞を呼んだ市子は、開口一番―――
市:あなたが土曜にログインできない事情―――
やはり「蜆」絡みですね。
璃:あ〜〜はは・・・やっぱ、市子さんにはバレちゃってたみたいだね。
うん―――そうだよ・・・。
市:どうしてなのです?
璃:どうして〜〜って言われても・・・
瀬戸様から、「あなたをご指名しているお客様がいるから、土曜の予定空けといて頂戴ね〜」って・・・
市:璃莉霞さん・・・厳しいことを言うようですけれど、我が校の校則では―――
璃:判ってるよぉ〜〜「バイト禁止」でしょ?
てかさあ〜〜私、あそこに強制的に来させられた上に、瀬戸様直々の「試験」?受けただけなんだもの・・・
市:あの方の―――ですか?
璃:うん・・・あの時のが、ただの試験―――て言うなら、それって「バイト」じゃないよね?
けど・・・今回のは、誰もが見てもそう思っちゃうよね・・・どうしたらいいんだろ。
「いや―――そこは心配するところではない・・・」
「おそらくは、「その事自体」も、鬼の謀略によって、「その事自体なかった」ことにするくらいは、造作もないこと・・・」
「なのだとしたら、他の目的があるはず―――」
そう思った市子は、放課後に自分の家の使用人に、事の次第を打ち明けると、やはりこんなことが・・・
市:ロシアの外渉団?
弓:はい―――ですが、それも“表”向きの話しです。
市:何があると言うの・・・?
すると、自分の家の使用人は、一つの画像を提示してみせたのです。
そこには、あまりにも外渉団のイメージとはかけ離れた、
「炎の様な紅いドレスを纏った、金髪の美女」と、「氷の様な青いドレスを纏った、モデル体型の美女」
けれど、どこか自分も見たことのある風貌―――
そこで市子は、より一層の確証を得るために、友人の一人に連絡を取ると・・・
小:〈ああ―――その情報なら、うちにも出回ってるよ。〉
市:それで・・・誰なのです?
小:〈多分―――あんたが思ってるそのままさ・・・〉
〈ああそうさ・・・『焔帝』様だよ。〉
市:(やはり・・・)けれど、どうして―――?
小:〈さぁてねぇ・・・その辺は解らない―――〉
〈こんなちっぽけな島国で、なにやらかそうとしてるんだか・・・〉
「そう―――私が今抱いている疑問は、そこなのだ・・・」
「彼の地―――「シベリア・エリア」を統括する責任者が、一体何の理由でこの国を訪れたのか・・・」
「その名、『焔帝』が示す通り、この国を焦土と化すために―――?」
「いや・・・その推理は、些か飛躍しすぎと言うもの・・・」
「彼の方が、「シベリア・エリア」の「エリア・マスター」にして、『焔帝』と称されていられるのは」
「所詮、仮想世界の内だけの話しなのだから・・・」
ならば・・・だとすれば―――?
疑惑が疑惑を呼び、それは更に混沌へと誘い行く―――・・・
「それに、信友の動向も気にかかる・・・」
「彼女本人の証言からして、恐らくその事は本当なのだろう・・・」
「そして、「シベリア」の実力者二人の来訪―――」
「この二人は、一緒にして考えた方がいいのだろうか?」
「いや、そも・・・一緒にしたところで、ならば璃莉霞は、あの二人の“贄”として捧げられるために、蜆に・・・?」
悪い推測しかできなかった市子は、その日ある決断をするのでした。
そして―――問題の「土曜」・・・
予定の時間まで少し時間があることから、歓談に花を咲かせる、こちらの二人は・・・
キ:フフ―――それにしても、捨てたものではありませんね、ヤポンも。
エ:ええ―――それに瀬戸様も、我々の事を気遣い、上等なホテルまで用意してくれるなんて・・・。
キ:それに、このアメニティの、クォリティの高さと来たら―――!♪
エ:キシリア―――はしたないですよ、タオルまでにしておきなさい。
キ:え〜〜〜いいじゃないですかぁ―――
エ:よくありません!
大体私達は、今は落ちぶれているとはいえ、歴とした貴族なのよ?
そんなみみっちいことを―――
市子の心配をよそに、こちらはすでに旅行気分―――
特にキシリアは、今現在自分達が住んでいる処が、あまりに物資に恵まれていないことからか、
高級ホテル備え付けのアメニティを、全部持って帰るつもりでいたようでして・・・
そこをエリヤから咎められたようですが、彼女からの忠告を無視し、有らん限りを詰め込もうとしている不逞の部下に、
キツぅ〜いお灸は据えられたようです。
それはそれとして―――信友を心配するあまりに、大胆な行動に出た市子は・・・と言うより、もう一人??
小:てか、なんで私まで巻き込まれてんだ?
市:そこは申し訳ありません―――ただ、確かめないことには・・・
それより橋川さん、あなた「蜆」に行かれたことは?
小:あるよ―――てか、あんたはなかったっけ?
市:まあ・・・ある意味で、敷居は高いですからね、あそこは・・・
小:そう言う事ねw
ま、確かにあそこは、「一見さん」お断り―――だものな。
意外とも思われたのですが、市子は「蜆亭」の暖簾を潜ったことはありませんでした。
だからこそ、藁にも縋るような思いで、友人の一人(・・・と、少なくとも市子は思っているw)である、橋川小夜子とともに、
蜆亭の様子を見よう―――と言う事のようです。
そして・・・“超”のつく、一流の料亭の暖簾を潜った、財閥のお嬢様方は―――<現在時刻;19:00>
女従:いらっしゃいませ―――
(あら)あなた方は―――・・・
小:ああいえ・・・本日、こちらの料亭でお食事を・・・と―――
市:―――おば様?
小:(は?)はい?
婀:あら―――誰かと思ったら市子さんじゃないの・・・どうしたの?
市:いっ―――いえ・・・それよりおば様こそ・・・
小:おいお前、ここの女将の事知ってたのか?
市:いえっ―――そんな・・・それに私、おば様が蜆亭の女将・・・だなんて、聞いたことが・・・
婀:あら、言っておくけど、私は今回また「臨時で入ってくれ」って、頼まれただけよ?
それより橋川様―――あなた、地が出てるわよ。
市子と小夜子を出迎えたのは、今回も臨時で女将として入っている、森野婀娜奈その人でした。
それに市子は、婀娜奈から息子の清秀をよろしく―――と、言われていただけに、互いの顔をしってはいたのですが・・・
まさか、蜆亭の女将だった―――とは・・・と、そう思っていたら、それは間違っていたらしく、
そこの処の理由を述べられ、よろしく訂正されてしまったようです。
けれど、そこで市子は疑問を感じました。
この人物が「臨時」と言うのであれば、「本来」の女将は誰なのだろう・・・と。
そんな疑問をよそに、臨時女将は2人のお嬢様方を、「とある特定の部屋」へと案内し―――
婀:では―――細川・橋川ご両家のお嬢様方には、こちらのお部屋をご利用になさってください。
今回、臨時女将が市子達をお通しした部屋こそは、実は・・・
これからあるとされている、「三者」を交えての「会談」をする部屋―――の、「隣り」・・・
そう・・・婀娜奈は、この2人の行動が、ただの食事がその目的なのではなく、
恐らくは・・・ここ最近出入りするようになった、「噂の包丁人」の事を探りに来たに違いない―――
なんとも可愛らしいことを・・・と、北叟笑んでいたのでした。
そうしている内に定刻となり―――宿泊していた高級ホテルから、ハイヤーを使い、
老舗の一流料亭へと着いた、極北の美女たちは・・・<現在時刻;21:00>
エ:(これは・・・)なんとも格調高い―――
キ:ええ・・・噂で聞いていたよりとは、また違いますね―――
その建物の、格式や設えを見るにつけ・・・おまけにその時刻―――21:00頃と言うのは、
完全に陽が落ち、ライト・アップで荘厳さが一層強調されていた・・・
そして、2人は宛らにして思うのです、確かにこの場所こそは、その謂れの通り―――
「鬼の棲まう場所」として相応しい―――と・・・
そして、臨時女将により、大女将の部屋まで案内されている道中にて―――
市:(!)来ましたわ―――
小:ん〜〜と、どれどれ・・・あの「紅い」のがエリマスだとして―――あの「青い」の・・・って、もしかしなくても“アレ”だよなぁ?
市:そのようで―――(!)
エ:(・・・)どうかしたの―――?
キ:いえ・・・部外者でしょうが―――始末いたしましょうか?
エ:その必要はないでしょう―――
それにここは、「鬼」の領域・・・私達が出過ぎた真似をすると、この咽喉元に喰らいつかれかねませんよ。
キ:フ―――・・・仰せのままに。
自分達の目の前を、対照的な「紅」と「青」の外国美人が通り過ぎていく―――
それに、自分達はバレない様に・・・と、障子の隙間から覗き込んでいたわけだったのですが・・・
「青」の方の外国美人が、こちらの気配に気付いたかのような素振りを見せたため、慌てて障子から離れたのでしたが・・・
エリヤにキリエからしてみれば、彼女達の事はお見通しだったようで―――
キリエも「脅し」か「牽制」の目的で、行動をしてよいか―――の、許可を主人に求めようとしたものの、
よろしく主人からは、鬼と称されている存在の“領域”での「刃傷沙汰」はご法度―――とでも言う様に、昂る従者を宥めたのです。
そして・・・主目的である、大女将の部屋にて待ち受けていたものとは・・・
まさしくの「修羅場」が、そこにあったのです。
つづく