今回の交渉を終え、リリアはトウキョウへと戻ってきました。

そして宛らにして、厳しい現実に直面したものと見える彼女からの一言目は、

まさに今回の交渉で何があったのかを、如実に物語っており―――

 

 

サ:おっ―――戻ってきたか。

  で、どうだったんだ。

リ:ああ・・・うん、エリヤ様からはいい返事もらえたんだけどね、それも「条件付き」で。

市:「条件」?

 

リ:うん―――二人貸し出してくれるようなんだけど、こっちの指示には従わない・・・

  って、言うようなことを言われちゃって・・・

ギ:おい、それって大丈夫なのか?

ソ:戦力として、当てになるのでしょうか?

 

リ:まあ・・・それでも人数が足りてないんだ―――

蓮:ん?けどお前―――こっちに知り合い、一杯いるじゃねえか。

市:信頼できる方々―――と、言う意味ですね?

 

 

その市子からの一言により、「ハッ!」とするメンバー達・・・

そう、今回の「パーソナル・クエスト(レイド)」に関しては、数が多ければ「いい」と言うわけではない。

互いが互いの事を信頼出来合える者同士でなければ、クリアは困難とされる“最難関”のクエストとなるだろう―――

そうリリアは感じていたのです。

 

それに・・・確かに蓮也の言う様に、リリアは仮想内の知り合いは多かった―――

けれど、その全員が、彼女が心から信頼できている者達ばかりではないことを、その場にいた仲間達は感じていたのです。

 

それはそれとして、シベリアの件は、それで良かったのでしたが―――・・・

 

 

サ:その様子じゃ、「モスクワ」はダメだったみたいだな・・・。

リ:うん・・・厳しいこと言われちゃった・・・。

  「お前は頼み事をする前に、全ての可能性を検討したのか」

  ・・・って、ね。

 

サ:はあああ〜〜〜そっか―――

  て、事は、「最悪」は回避できなかった・・・て事だな。

リ:そ・・・それが一番ショックなんだよ。

 

ギ:「最悪」・・・だと?

  もしかして―――「フルレイドPT」・・・16人に足らないままでやるつもりだったのか?

リ:そこは半分当たりかな。

  今の時点で11人―――

 

サ:うっへ・・・かなり厳しいな。

  で・・・「最悪」の“あいつ”を加えたとして、12人か―――

 

ギ:「最悪」って、プレイヤーの事かよ?!

 

リ:そう言う事―――

  まあ、そいつは事前の根回しがいらないから、いいんだけどねぇ〜〜・・・

 

ソ:(事前の根回し・・・)あの・・・それって―――

 

リ:よし、まあ取り敢えずは明日、私とサヤさんと市子さんとで、そいつのいるエリアに行くことにしよう。

 

 

「モスクワ」の件の失敗を受け、どうやら「最悪」が回避できなかったことに嘆くサヤ。

そう、つまりはサヤも「最悪」の事を知っているのです。

だからこそリリアに同情するのですが・・・

 

今回、交渉に成功をしたシベリアのメンバーを含めても11人―――

PT1つ分足らないことは、どこかで(ひず)みを来たすことになる・・・

だからこその、回避できなかった、「最悪」への依頼・・・

そこでソフィアは“至って”しまったのです。

 

そう・・・その「最悪」のメンバーは、リリアやサヤが認めるだけの実力はあるのだろう・・・

それに、事前の根回しが要らない―――と言うのは、恐らくリリアが直接頼み込めば、すぐにでも二つ返事をするのに違いない、

ただ―――この二人が、口を揃えて「最悪」と言うからには、その“人格”“性格”に問題があるのだろう・・・と。

 

そのソフィアの予感は、恐ろしいまでに当たっていたのでした。

 

 

その翌日―――示し合わせていたように、12:00頃にログインした、リリア・サヤ・市子の三人は、

そのプレイヤーがいるであろう「ロンドン・サーバー」に来ていました。

 

 

市:ここが―――「ロンドン」・・・

サ:いい処だろ?

 

市:はい・・・ですが、ここに―――

 

リ:あれ?来てないな。

  こっちに来る前に伝えといたハズなの――――

 

 

するとその時??

 

お〜〜〜ね〜〜〜え〜〜〜サ〜〜〜マ――――!

 

―――に゛ゅいっ?!:リ

 

 

突如、どこからともなく現れたのか、光速の勢いでリリアにとびかかり、抱き付いてきた人影が??

しかし、この人影こそが、「最悪」なのだとしたら??

 

 

誰?:お姉サマ―――お姉サマ〜〜♪

   わたくし、嬉しゅうございますぅぅ〜〜

 

リ:ン・ギギギ・・・・ハ〜〜ナ〜〜レ〜〜ロ〜〜!!

 

誰?:嫌です、嫌ですぅぅ〜〜!

   どうしてお姉サマは、わたくしの事・・・

 

リ:いぃ〜から離れろっ! 苦しくて息出来んだろうがっ!!

 

誰?:あっ―――ごめんなさい〜〜

 

市:リ・・・リリア―――さん? こ・・・こちらの方は?

サ:ヒヒヒw そう言う事よw

  「こいつ」が、私らが言ってた「最悪」ってなわけさ。

 

 

まるで、熱烈なカップル同士がするような仕草―――「ギュッと抱きしめ」ているのを見て、

女性同士でそんな事をする行為に、少々・・・と言うより、かなり引き気味になる市子。

 

しかも、その抱き付き様―――締め付け様も尋常ではないらしく、鬱血(うっけつ)状態となりくなっていくリリアが・・・

そこでリリアは厳しく、その人物を注意したお蔭で、どうにか事なきをえたようですが・・・

 

では、だとするならば、この人物とは一体―――?

 

 

リ:〜〜〜ったく・・・お前には毎回(かな)わんわ・・・。

  改めて紹介しておくけど、「こいつ」が今回、私達のPTに加わってくれる―――

 

 

 

#47;ブラダマンテ

 

 

 

ブ:『ブラダマンテ』―――と、申し上げます。

 

市:(ブラダマンテ!)もしかして・・・伝説に残る、あの(・・)女騎士―――

 

 

その人物こそが『ブラダマンテ』―――その人なのでした。

 

そして、市子も知る様に、元々この名前は伝説として語られるまでに有名な、女騎士のものなのですが―――

 

やはり、その人物の装備を見る限りでは、「騎士」の装束をしていた・・・けれど、どこかほんの少しばかり違う―――

 

確かに、騎士の装束ではあるものの、標準の“それ”とは、どこか違っているのだと感じたのです。

 

 

サ:―――っと、どうやら全員揃ったみたいだな。

リ:そっか―――じゃ、取り敢えずトウキョウへ来てもらえるな、ブラダマンテ。

 

ブ:はい〜〜〜♪

  お姉サマの言いつけなれば、このブラダマンテ―――例え地の果てであろうと、お供をさせて頂きま〜〜す♪

 

 

対象となっている人物を確保できたことを知らせる為に、サヤはリリアのクランメンバー全員に、その事を伝え、

集合場所に指定している、待合い喫茶に呼び出したことをリリアに伝えたのです。

 

そして、この人物の、より詳しい説明をする為に、一度トウキョウへと来てもらう様にお願いをするリリア・・・なのですが、

“返事”とすれば、「いい返事」―――をするも、信友の表情がどうも優れない・・・

なにか―――こう―――鬱陶しさを感じているかのような・・・

 

どうやら市子も、どこか薄々ながらも気付き始めたようです。

 

 

それはそれとして、待合い喫茶では、自分達のPTに加わる人物と、交渉に出かけた三人の帰りを待つメンバー達が・・・

 

 

ソ:あっ―――帰ってきました。

ギ:あ゛あ゛? なんだ?ありゃあ―――

 

 

その時メンバー達は、一種異様な光景を目の当たりとしていました。

 

クランマスターであるリリアに纏わりつく、不逞の女性―――と、

リリアの供としてついていったものの、ゲートからこの場所までの道中、変なものを見せられて「ゲッソリ」としている市子・・・

 

その事を見ただけでも、ソフィアは、「ああ・・・だからこその「最悪」だったんですね」と、宛らに気付いてしまった様なのでした。

 

それに―――

 

 

リ:いい加減に〜〜離れろ〜〜〜っちゅうのに゛!

  待て―――!

ブ:(クゥ〜ン)はぁい・・・お姉サマ―――

 

ギ:(犬かよ・・・)で?誰なんだ、こいつ―――

サ:(はあ〜〜)そう言うこった―――こいつが、私らが言ってた「最悪」だよ。

 

リ:皆にも紹介しておく、こいつが今回、私達の「レイドPT」内で「メイン・ヒーラー」を担ってもらう、「ブラダマンテ」だ。

 

ギ:おいおい大丈夫なのかい―――「ちょっと性格に難あり」てどころじゃないぜ?

  それに、余所からのもんを「メイン・ヒーラー」?

  うちにはもう、「ソフィア」ってのがいるじゃねえか。

 

リ:うん、まあ・・・ギルバートさんからの意見も分かるよ―――

  けど、こいつに関しては、プレイをするうえで心配はいらないんだ。

 

  なぜなら・・・今現在、『清廉の騎士』の“称号”を持っているのが、こいつ―――だと言ったら?

 

ギ:(!)―――てことは!

 

サ:そう言う事よ・・・現段階においての「最強のプレイヤー」が、こいつってわけさ。

  頼りたくはないが、頼らざるを得ない・・・って言う、この葛藤が判るか?w

 

ソ:そのことは分かりましたが・・・外見上では騎士の様にも見えますけど、どこか違いますよね?

 

リ:おっ―――よく気づいたね。

  そう言う事、こいつの(ジョブ)は、神殿騎士(テンプルナイト)なのさ。

 

市:「神殿(テンプル)・・・と、??

 

リ:そう・・・2年前に実装(アップ・デート)された騎士系統(ジョブ)上級職である聖騎士(パラディン)しているってっていい―――

 

 

この不逞の女性こそが、今現在の「最強のプレイヤー」の“称号”を持っている人物だったとは・・・

その事にも驚かされもするのですが、一見して騎士の様にも見えて、その役割が「メイン・ヒーラー」と言われた時、

この人物の(ジョブ)り、一気理解をしたのです。

 

そう―――このブラダマンテこそ、騎士職の中でも、“上級職”と言われている「聖騎士(パラディン)

その一系統である「神殿騎士(テンプルナイト)・・・

 

 

ここでもう少し詳しく、「聖騎士(パラディン)と“その系統”の説明を―――

聖騎士(このジョブ)サービス開始当初は実在しませんでしたが、サービス開始してから5年後実装され

「攻撃力」や「防御力」のパラメータが高い騎士よりも、更に上乗せされたステータス。

 

そこから更に、現在より2年前に、“系統”が3つに分かれ・・・

 

「防御力」「体力」値にボーナス値が付き、更に「回復魔術」「補助魔術」を得意とする―――『聖騎士(パラディン)

「攻撃力」「防御力」値にボーナス値が付き、更に「攻撃魔術」を得意とする―――『神聖騎士(ディヴァインナイト)

 

そして・・・総てのパラメータは、上記の職にはやや劣るものの、

それでも普通の騎士や攻撃職のパラメータを上回り、

時には「回復魔術」、時には「補助魔術」、時には「攻撃魔術」を行使できる、

言わば「オール・ラウンダー・タイプ」の―――『神殿騎士(テンプルナイト)

 

つまりは、ブラダマンテが『清廉の騎士』を修得できる条件は、一通り揃えられていたのです。

 

 

ブ:それにしても、流石はお姉サマですっ―――!

  あのクソ運営が課した試練にもめげることなく、お姉サマの「OUS」を取り戻せたのですからッ!

 

  さあ〜〜それでは、このわたくしからの熱き愛の抱擁をッ!!

 

リ:そ〜〜れが要らんこと―――っちゅうんじゃい!!

  待て!おあずけっ!!

 

ブ:(クゥ〜ン・・・)そぉ〜んなあ〜〜―――お姉サマの、いけずぅ〜〜〜!

 

ソ:だ・・・大丈夫なのですよね?私達・・・

サ:だぁ〜〜から言ったろうよ、「最悪」って。

 

ギ:(ギョッ!)おいサヤ―――サブマスから、なんか変なのが出てやがるぞ??

 

市:呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪呪

 

サ:(ハハ・・・)市子ってば、根が真面目だから、こういうのに影響受けやすいんだよな・・・w

 

 

まだまだこの先、課題が残されている「即席レイドPT」

前途多難―――の、ようであります。

 

 

 

つづく