その、「言葉」一つ一つに意味を持たせ、自分の意のままに状況を操れる―――

それが「話術師(ロア・マスター)であるミリティア本領だったのです。

 

そして―――そのミリティアの「一言」により、一時的な「失語」に見舞われる女媧・・・

 

「キャスター」の一番の泣き所は、術式の詠唱を唱えられなくさせられる事・・・

つまりは今、自身が負った傷の回復を試みる為、唱えようとしていた術式を、

この「たったの一言」により、出来なくされてしまった・・・

 

たった・・・「たったの一言」が、こうも戦況を左右するものとは・・・

しかもその一言は、短くも重く()し掛かる言葉(ことのは)であったれる・・・

 

決して多くを語らず、その一言に集約された「言葉(ことのは)こそが、ミリティアミリティアある証明なのです。

 

が―――しかし・・・

この一言も長くは続かない・・・

 

一時的にしろ、相手の“手段”の一つを奪ったことは、自分達の優位性を確保していることを物語るのでしたが・・・

 

 

 

#52;決着

 

 

 

ミ:なにをしておる豎子よ、この機を逃すではない!

リ:(!)―――はい!

 

ミ:よし―――では【(ゆきすすめ)(ひるむことなく)(けいぞくてきに)

  そして―――≪戦場領域の属性変動(エル・アーリオ)秩序たる

 

 

新たなる指揮官が唱えた「言葉(ことのは)意味こそ、行動速度向上耐久力の向上継続性』でしたが・・・

未だ更には、「戦場の属性」と言うものを変動させたのです。

(実はこの時点では、レイドボス「四凶」に有利に作用するように、戦場の属性は{混沌なる悪}だった。

しかし、このミリティアの術式により、真逆の属性に変えられた・・・と、言う事は?)

 

(しか)して―――その効果絶大だった・・・

今、声()しみ掻く女媧・・・

その叫び声は、最早声にすらなりませんでした・・・。

 

けれど、レイドPTは攻撃の手を止めない―――

今ここで息の根を止めておかなければ、今度は自分達が・・・

 

しかし、今少しの処で、解けてしまう“縛り”・・・そして、復活する―――

 

 

女:おのれ・・・おのれおのれおのれ―――!

  最早許せぬ・・・うぬら総てを滅してくれるわ!―――⦅落魂陣⦆

 

 

今少しの処で、取り戻されてしまった女媧の声・・・

そして、それにより、唱えられてしまったあの術式―――

 

 

ブ:お姉サマ! あの術は危険です―――!

  あの術は、いくらお姉サマの「晄楯(こうじゅん)」だとて・・・

 

 

先程、女媧からの、この術を受けて一時的な死亡状態に陥ってしまったブラダマンテは、

だからこそ知っていることが出来ていました。

 

今現在では、玉藻前からの蘇生術により、多大な経験値と引き換えに(デス・ペナルティ)復活出来てはいましたが、

もう一度、その術を見るにつけ、足を(すく)ませてしまったのです。

 

その女媧の術式こそ⦅封術⦆・・・神代(かみよ)の時代に於いては、“神”すらも封じ込めたとされる術―――

その一つである⦅落魂陣⦆こそは、光属性にして、防御無視―――透過貫通の凶悪さを持ち

尚且つタンクのヘイト操作も関係なく、ランダムに対象を攻撃をしてくる性質(たち)の悪さだったのです。

 

それに・・・まだこのレイドボスは、切り札を隠し持っていた―――

それが、今行使した⦅落魂陣⦆・・・恐らくは、レイドPTの全滅を視野に置いた手段だったのだろう・・・

 

「ダメだ・・・これで私は、またこの人を救う機会を失ってしまった―――」

「そしてもう・・・二度とこんな機会は巡っては来ないのだろう―――」

 

迫り来る、無数の光の柱の中で、リリアは救いたかった人を救えなかったことに、後悔をしていました。

 

「私が止めなければならなかったのに―――」

「闇へと、堕ち切る前に救いたかったのに―――」

 

 

         

 

 

べ:ならばこの攻撃、オレが食い止めてくれよう!

  ヌぅン―――“出でよ”<フォートレス・タラスク・ロード>!

 

 

突如として戦場に木霊する咆哮―――

それは、この戦場に居ながらにして、参戦の意思表示をしていなかった、“あの”2人の内の1人・・・

「ベイガン」が()()した20Mはあろうかと甲羅のついた―――タラスク・・・

その(せい)獰猛にして残忍としてはあの「ベヒーモスすら捕食するとわれている・・・

しかも(あまつさ)、その甲羅ダイアモンドをもっているとされる・・・

 

それに、彼によって女媧の切り札を、完全に防ぎ切った―――かと思えば・・・

 

 

ス:では―――私も・・・“出でよ”<ディバイン・ドラゴン>!

  ―――∽∽∽善なる神よ、立ち上がりし勇者に、邪悪を払う聖なる盾を∽∽∽―――

  ―――∽∽∽慈悲深き癒しの神よ傷つきし者に恵みを与えたまえ∽∽∽―――

  ―――∽∽∽汝、その諷意(ふうい)なる封印の中で安息を得るだろう、永久(とわ)(はかな)く∽∽∽―――

 

ギ:なッ―――なに?あ・・・あいつ・・・

ソ:し・・・信じられない―――

 

ヒ:どうしたと言うの?二人とも・・・

 

ギ:い・・・いや、あいつ―――信じられん。

  あんなことが出来るのか?!

蓮:だから―――なにがどうしたってんだ。

 

ソ:今、あの人が詠唱しているのは、「高速多重同時詠唱」なのです!

  それも、「補助」「回復」「攻撃」の、『古代語魔術(ハイ・エイシェント)』・・・

  しかも、全く性質の異なる術を、同時詠唱―――だなんて!

 

 

これまでの魔術の常識を、いっぺんに覆してくる“竜”の魔術師・・・

それは今ソフィアが説明したように、「攻撃」「補助」「回復」は、それぞれが個別に確立しており、

「攻撃魔術」が得意な―――「ウィザード」「マジシャン」「メイジ」

「補助魔術」が得意な―――「バード」「エンチャンター」「ウォーロック」

「回復魔術」が得意な―――「ビショップ」「クレリック」「プリースト」

 

と、それぞれに(ジョブ)が分かれているのです。

 

それを・・・全く別の性質を持つ魔術を、しかもその取扱いは、通常の魔術より少しばかり難しいとされる、

「古代語魔術」で展開して来るなんて・・・

 

そして、完全に詠唱が終わった“竜”の魔術師の口からは・・・

 

 

  ―∽マイト・マインド・オーソリティ∽―

ス:―∽キュア・レイズ∽―

  ―∽セレスティアル・スター∽―

 

 

レイドPT全員の戦意向上、全体の大回復、そして天から降り注ぐ光の鉄槌―――

そのどれもが強力であり、形勢を逆転させるものでもありましたが・・・

 

それにしても、どうして今まで―――

 

 

べ:フフ―――至極簡単なことだ。

  これは“戦”なのであろう・・・?

  “戦”なれば、心から愉しまねばなあ?!w

 

ス:ベイガン―――止めてください。

  このままでは私まで悪役の巻き添えです。

 

べ:ハッハッハ―――まあそう言うな、スターシア。

  そう言うお前も、愉しんでいるのだろう・・・?

 

ス:フッ―――不本意ですが、その通りです。

 

 

「ここには・・・“光”がある―――」

「光ある“未来”が―――」

 

「それが、この者達に宿る“可能性”―――」

 

「こんなにも素晴らしいものを見せられて、ただ指を(くわ)えて見ているだけ・・・というのは、」

「性に合わない―――と、言うものですから・・・ね。」

 

一見すると“少女”のようにも見えたその存在は、実に多くの理を修めた、このレイドPT内唯一の「賢者」のようにも見えました。

 

それに・・・この二人の参戦によって、大きく傾く戦局―――

そこを見逃してはならないと“檄”を飛ばす「話術師(ロア・マスター)」。

 

 

ミ:征け―――豎子(じゅし)よ!

  止めは(なれ)が為すのだ!!

 

リ:はいっ―――!

  展開―――≪无楯(むじゅん)≫・・・<鎧化(アーム・スライド)

 

 

今―――ミリティアからの指示により、光の盾を発し、そこから更に「光の鎧」に仕立て上げるリリア・・・

そしてこれが、このレイド戦の総仕上げとでも言う様に、リリアは「ある武器」を創造したのです。

 

それは・・・一つの柄の、その両端より伸びる、対なる刃―――

それが、「晄剣(こうけん)」の最終発展形―――『緋刀爾聯(ひとうにれん)

 

その、雄々しき姿を見て―――

 

 

―――嗚呼・・・ようやく終わる・・・

―――ようやく・・・

 

―――永かった・・・実に・・永かった・・・

―――けれど、これでようやく見定めることが出来る・・・

 

―――君たちの・・・それぞれに宿る、“可能性”を・・・

 

―――姉さん・・・不出来な妹でしたが、褒めてくださいますか・・・

 

―――そして・・・先に逝きます・・・

 

 

その存在こそは、「大いなる偽り」でした。

そして、これまでのことも、総てが「この為」・・・

 

自分達の次元(せかい)にはいなかった、“可能性を秘めた者達”を探し出すために、

取った・・・取らなければならなかった―――

 

自分達の次元(せかい)には、自分達よりも手強い者達が多くいる。

それを、別の次元(せかい)の者達に押し付けてしまうのは、少々虫が良過ぎたかも知れない・・・

けれども、それもまた致し方のないことだった―――・・・

 

そこで姉妹(彼女)達7人は、この“新たな可能性”を探す為、別の次元(せかい)の現実内で、「あるモノ」の開発に着手したのです。

 

 

そして・・・気付いてしまう―――討たれる前にして、その人に宿された哀しみの真実に・・・

その事に気付いてしまった“こちら”も―――

 

 

ミ:なにをしておる、豎子(じゅし)よ―――!!

 

リ:あ・・・う・・・あ―――

 

ミ:(この・・・ッ!)

  (なれ)がやらねば、誰がするのだ―――!!

 

女:姉・・・さん・・・この子を・・・責めてあげないで・・・

 

市:(えっ―――?!)

 

女:さあ・・・その剣で・・・「断罪の刃」の一つである・・・その剣で・・・

  私を倒しなさい・・・リリア―――

 

リ:いやだ―――いやだ、いやだ、いやだ!!

  だって・・・あなたは―――

 

女:フフ・・・ごめんね―――

  最後の最後に・・・非情になれなくて・・・

 

  けれど・・・もう・・・お終いにしよう―――

 

リ:いやだ・・・どうして―――なんで?!

  あなたが―――・・・

 

女:そう―――・・・カ ナラバ オマエ ノ ダイジナモノ ヲ ウバウトシヨウ・・・

 

 

彼女がレイドボスを倒したきっかけは、最後の力を振り絞り、彼女が大切にしている信友(とも)を奪おうとしていたから・・・

 

その殺意―――悪意に反応してしまった・・・

 

するしかなかった・・・

 

彼女が持つ「断罪の刃」は、今度こそ迷うことなく、「四凶」の一柱(ひとり)誅滅(ちゅうめつ)せしめたのです。

 

 

 

つづく