図らずも、レイドボスが最後に見せた非情なる横顔に、終ぞ反応してしまったリリア―――
彼女が持つ「緋刀爾聯」は、今度こそ迷うことなく、「四凶」の一柱・・・女媧を斬り裂いたのです。
そして、女媧の亡骸に近寄り、有らん限りの声を絞り尽くし、泣き叫ぶリリア・・・
「なぜ・・・こうしなければならなかった―――」
「この人は、何も・・・どこも悪くなんてなかったのに―――」
けれど・・・それは“奇蹟”の為せる業か―――
今、討伐ったばかりの存在が、泣き叫び・・・崩れている女勇者に、最期に伝え遺したい事があったからなのか・・・
薄らと目を開け―――・・・
女:もう・・・泣くのはおよし―――リリア・・・
リ:ジョカリーヌさん!
だって・・・私・・・私―――・・・
女:実に・・・見事だったよ、君も・・・君達の仲間も・・・
「君達は、見せてくれたんだ、君達に眠る“可能性”を・・・」
「君達は、決して弱くなんかはない。」
「けれど、その事を証明してみせる必要があったんだ。」
「その“証明”とは、自分達よりも強大で強力な敵の打倒・・・」
「それも、「私達が創り上げた偽物」なんかじゃない」
「まさに「私達が敵」となり、君達の“可能性”を見い出す必要があったんだ。」
「それをやるからには、甘えたことを言ってはいられない・・・」
「この私も非情にならなければならなかった―――」
「大切な君を、貶めてしまったことを、どうか許しておくれ・・・」
「けれど君は、私が用意した困難や試練に打ち克ち、“師”であるこの私を討ち果たしてくれた・・・」
「もう君に・・・教えてあげられるものなんて、何もない―――・・・」
「おめでとう、リリア―――」
「そして、これから逝く私に、最期に見せておくれ・・・」
「“異界の神”とも呼ばれた、この私を・・・討った君の、その顔を・・・」
「ああ・・・それにしても、よく似ている―――君の母上に・・・」
それはまさしくの、女媧の最期の力を振り絞った、伝言でした。
存在の消滅を示すかのように、光の粒子となって、虚空へと還って逝く女媧・・・
ただ、その右手だけは、まるで母親が愛しの我が子にするかのように、
そっとリリアの頬に添えられ・・・そして最後に消えて行った―――
けれど・・・
#53;泣かないで、きっとまた、すぐに会えるだろうから
それは・・・最期にして末期に遺された言葉・・・
けれどそれは、風の流れに掻き消され、空耳の様にも聴こえたのです。
それからしばらくの日時が経ち、とある場所にて―――
ガ:長い間、ご苦労だったね―――
誰:いえ、私は信じていましたから―――
ジィ:少しばかり休んでてもいいのよぉ〜?
誰:それも心配いりません。
私は一刻でも早く―――
ジィ:そ〜〜れが迷惑だって―――の!
あなたがそんなに「シャカリキ」になっちゃうから、地道に活動してる私が割食っちゃうじゃないの・・・。
誰:それは・・・すみません―――
ガ:気にするこたぁないよ。
ちょいとジル、お前もちったぁ「この子」を見習ったらどうなんだい。
ミ:全くだ―――
大体、一番厄介な仕事を、ワレに押し付けおって・・・
大体お前はだな―――
この―――暗く閉ざされた空間・・・別の称を『次元の狭間』と呼ばれた場所で、
4人の姉妹と見られる者達同志の会話がありました。
長女―――ミリティア
次女―――ガラティア
三女―――ジィルガ
四女―――ジョカリーヌ
この4人は、元々いた自分達の次元から脱するに際し、
最初に出会い、それから仲を緊密にしていった、血の繋がりがないながらも『原初の姉妹』と呼べる者達でした。
そして、今回の成果を精査する為に報告に上がった「ジョカリーヌ」と、その現場に立ち会った「ミリティア」の証言を基に、
これから自分達がやらなければならない計画のロード・マップを、一段先に進める為の話し合いを、そこで行っていたのです。
けれど・・・そう―――ジョカリーヌは今回、「女媧」として討伐されたはず・・・
そして討伐された後に、光の粒子となって、その存在を散らせたはず・・・なのに?
なぜその場所には、彼女の姿が―――
そこも疑問とするところなのですが、未だ更には―――
ジョ:(・・・)実は―――姉さんたちに一つ提案したいことがあるんです。
ガ:(・・・)フフ〜〜ン―――なんだい?言ってごらんよ。
ジョ:もう少しでいいんですが・・・待って頂きたいんです。
ジィ:待つ―――って・・・何を。
ジョ:次の「四凶」の実装―――いわば、フェーズの移行を・・・
ガ:ああ―――構わないよ。
ジィ:お姉ェさま?
あのっ・・・ちょっとお言葉ですけど―――我々には残された時間と言うものが・・・
ミ:しみったれたことを申すな、ジィルガ―――
ジィ:大お姉さままでも??
そうは言いますけれどねえ〜?
ミ:なにを今更―――
ワレらは待ったではないか・・・気の遠くなる時間を。
それを「少し」のばすだけだ、貧乏くさいことを言うな。
ジィ:全くぅ・・・二人とも、この子に本当に甘いんだから―――
ガ:ほほぉ〜〜ん?w
じゃ、お前はこの子のことが、可愛くないってのかい?ww
ジィ:ん・もう―――お姉さまったら・・・
ジョカリーヌちゃんの事は、他の誰よりも!この私が可愛いと認めてること、知ってるんでしょうにッ!!
「うん・・・それが「端迷惑」って言うんだよね―――」
この4人の内では、まだ幾分か年若く、だからこの姉妹の中でも「末っ子」に位置しているジョカリーヌ。
そんな彼女を、実の妹の様に可愛がってくれるのは嬉しいとはしても、過ぎたるはなんとやら・・・少々鬱陶しは感じてはいるようです。
ともあれ、どうやら彼女達の間では、これから次の局面に進めるべきところを、
また新たなる“可能性”を見い出してみたいとの希望もあり、
紆余曲折はありましたが、どうやらその事は受け入れてもらえたようです。
場面は一転し―――現実内では・・・
夏季休暇に入り、皆アオハルを謳歌しているものかと思えば・・・?
璃:あ゛あ゛〜〜〜っ゛づう゛〜〜〜
なんか・・・もう・・・ヤル気でん〜〜〜
市:では、これが終わりましたら、少し休みがてらにログインしましょうか。
し:賛成〜〜〜っス☆
朋:てか、おい―――コラ
清:っ―――てえな、なにすんだよ。
朋:どうだあ〜〜?お前のコレ、中々ええ軆してんだろうよ?w
清:お前・・・なあ・・・・
璃:ちょっと、朋!なんてこと言ってんのよ??!
朋:け〜〜どなあ?お前・・・これだけのキレー処に囲まれて、全然反応すらせん―――ちゅうのは、
ひょっとするとこっちに問題あるんじゃないんの〜?w
清:何言ってやがんだ―――このッ・・・(←しかし顔は赤いw)
全く―――夏休みの課題、早いうちから終わらせたい〜ってから、気安く乗っかっちまったのが、そもそもの間違いだったぜ・・・。
そ―――れに大体、なんで場所が森野家なんだよっ!
朋:はあ゛〜?なに可笑しな事言ってんだか―――
大体お前ん家、「御三家」の1つだろ〜によ・・・そしたらなんだあ?
クーラーぶっ壊れてるって、ふざけてんのか!!
清:逆切れかよ・・・ったく―――てめーは、そういうとこ昔っから変わんねえな!ブス!!
朋:あ゛あ゛んじゃとぅ!ごる゛ぁ゛!もっぺん言ってみろや゛!!
し:て〜〜かさあ・・・二人とも元気だよネッ☆
璃:ホント・・・見てるだけでも暑苦しい・・・
市:新垣さん・・・清秀・・・二人とも、大人しくしましょうね?
ここは、森野家・・・市子の提案により、夏休みの課題を視野に置いた「お勉強会」をしよう・・・と、いうのでしたが、
どこがどう繋がってしまったのか、不思議なPT構成(?)となり、
ですがしかし―――問題となったのが「集合場所」のようで、どう言った抽選内容だったかは判らないものの、
決まったのはどうやら清秀の家である「森野邸」となり、そこへ押しかけて来る美女4人・・・
(上記に於いて、清秀は朋子のことを「ブス」呼ばわりしているが、それは「容姿」ではなく、「性格」が・・・と言う処に注目すること)
けれど現在・・・森野邸は、ある一つの問題を抱えているのでした。
それが「エアコンの故障」・・・
この年は、例年に洩れることなく「猛暑」でもあるため、例え・・・いくら風通しがいい部屋で課題に取り組もうとするも、
無理らしからぬ処と言うモノ・・・
しかも、「危機的状況」(それも清秀のw)であるのは、女性は全員薄着であり、
汗だくで肌に張り付いている布地―――下着は着けているのだろうが、胸の先端辺りや谷間に、目のやり場が困る・・・
と言った若い男子生徒には、刺激が強すぎたようでございます。
そんな彼を、揶揄ように年上の先輩が囃し立てるものだから、暑いながらも熱い戦いを勃発させてしまうのです。
(そんな彼らを止めたのは、涼やかな面持ちをしながらも、その内面は修羅の如きだった“お嬢”サマだったようで・・・
それに、しの曰く「アレ、ホントやばかったっスね〜☆」とは、「今まさにそこにある危機」だったようではある。w)
ともあれ・・・一旦休憩―――と言う事で、仮想内にログインした彼らは・・・
団:ほ〜いじゃ、あたしら、ちょいとエリマスんとこに、顔出してくるよッ☆
才:んじゃな―――と、その前に・・・
お前、ちゃんと襲えよ―――?w
「ナニ言ってんだ・・・あいつ・・・」
「あいつも、あんなことさえ云わなけりゃ、普通に可愛いのに・・・」
―――とは、蓮也の弁。
確かに「霧隠才蔵」こと「新垣朋子」は、容姿としては“それなり”にいいものを持ってはいたのですが、
どうやらその口が禍いしてしまっているからなのか、蓮也からは「(性格)ブス」のレッテルを張られているのです。
それはそうと―――仮想内に於いては、現実内とは違い、環境は整っているようで。
現実内では猛暑であったとしても、ここ仮想内では常に適温が保たれていたのです。
だからなのか―――仮想内に回避している者達も多く、
リリアもクランの溜まり場としている、待合い喫茶で、他のクランメンバーたちと合流することとなったのです。
ギ:おっ―――クラマスに・・・あんた達も一緒か。
市:そういうあなた達も―――
ソ:はい・・・どうにも暑いですからね。
蓮:そう言えばあんたら・・・リアルでも知り合いなのか?
ギ:ん〜まあな―――
オレ達は、「龍聖高校」のバレー部に所属してるんだ。
市:(龍聖高校・・・)今年新設された高校ですよね。
それのバレー部となると・・・
リ;どうしたの?
市:実は・・・この春季大会に於いて、優勝したのは・・・
私達の白鳳でなければ、雷鳳でもなかったのです。
それも、男女ともに・・・その「部員」があなた達だったとは・・・
ソ:なんだか・・・申し訳ありません。
ギ:気にすんなよ―――こう言ったのは「勝負事」なんだ、
情に流されて負けちまうって、どうかしてるぜ。
リ:(・・・)そうだね―――判るよ、それ。
だからもう、それから先は、言いっこなし・・・で、ね。
リリア達が溜まり場に到着する以前から、彼ら二人は現実の猛暑から逃避するように、そこへときていたのでした。
しかも、この二人はもどうもセットで行動している事が気にはなっていた蓮也が、その事について聞いてみるとやはり・・・
彼らは、この春に新設されたと言う高校の出身であり、また新たなる「ライバル校」の出現に、気を揉んでいる市子があったのです。
けれどここは仮想世界―――現実内でのそれとは違い、これまでにも多くの協力・・・手を携えてきた「仲間」でもあるのです。
それに市子としても、ソフィアの事を「新たなる友」に迎え入れたかった・・・
それであるがゆえに、リリアのとりなしで、ひとまずは現実内の問題は、棚上げにすることにしたのです。
そして―――また・・・運命の歯車は回る・・・
それは今まさに、このクランに近づこうとしている、静やかな足音とともに―――
つづく