ひょんなことから、自分達のクランに入ってくれた“麗人”こそ、

リリア達が即席ながらPTを結成し、倒した「レイドボス」―――その人なのでした。

 

しかもジョカリーヌは、リリアのクランに新規参入―――したばかりではなく・・・

 

 

ジ:さて、と・・・それでは、クランの“マスター”も「委譲」させてもらおう。

リ:はいっ―――判ってます。

 

市:(えっ?)リリア―――さん?

リ:いいんだよwこれで。

  それに―――「クラマス」って、結構肩凝っちゃうんだよね〜〜

 

 

新規参入者―――なのに、「マスター」の権限を譲るよう提言され、それに従うリリア・・・

そのことにもビックリとさせられたのですが、どうやらジョカリーヌの目的は、「クランの乗っ取り」・・・なのではなく―――?

 

自分が貯えている「知識の解放」―――

 

現在、このクランのメンバー達が抱えている諸問題を、解決に導くための助言や相談をする・・・

しかも、そのやり様に関しても、実に分かり易く、噛み砕いての説明がなされるので、

市子も最初に感じた疑問を払拭せざるを得なくなったのです。

 

それはそれとして―――

ジョカリーヌがクランのマスターに就任し、それぞれのレベルにスキルを(かんが)みて、一つの行動に移ろうとしたのです。

 

 

ジ:少し・・・私からの提案があるんだけれど、いいかな?

リ:(うん?)なぁに―――?

 

ジ:このクランのメンバーに、少しレベルのばらつきがあるように見えてね・・・

  リリアの様に、「上級者」がいる半面、蓮也やソフィアの様に、まだ「駆け出し」の人もいる・・・

  だからこれを機会に、レベルやスキルの底上げをしようかと思うんだ。

 

市:それは判りましたが・・・では、なにをしようと―――?

 

ジ:うん・・・そうだね―――

  「上級ダンジョン」の攻略でもどうかな―――

  それに、君達からしても、私の実力というものも、知っておきたいだろう?

 

ソ:そうは言っても・・・あなたは「レイドボス」だった経緯が―――

 

ジ:その事なんだけど・・・今の私は、「一人のプレイヤー」でしかない。

  いわば、君達と“同じ”―――つまり、「四凶(レイドボス)」だった経緯は、忘れてもらいたい・・・。

 

ギ:なぁ〜るほど―――つまり、あの時、オレ達が苦労させられた、あんたの能力は、今はない・・・と?

  だったら―――知っておかなくちゃなあ?

  前のクラマスから、譲ってもらえるほどの、あんたのその実力・・・ってヤツをよ。

 

ジ:厳しいね―――w ではせいぜい、君達から愛想をつかされない程度にしなくちゃね。

 

リ:それはそうと―――メンバーは蓮也とソフィアさんは必須で・・・

  あとの二人と、攻略するダンジョンは?

 

ジ:残りのメンバーは、この私―――と・・・市子、君だ。

市:私がですか?

 

ジ:君は、このクランのサブマスターでもある。

  私がインできない時は、君が“導き手”となるんだ。

 

 

レイドボスを倒せはしたものの、実際あのレイドPT内では、バラつきが見られた・・・

とは言え、バランス的には、リリアやブラダマンテ、玉藻前や加東団蔵、サヤやなど、上級者が割と多く、

中堅になりかけている蓮也やソフィアは、(エネミー)からしてみれば、でもあったのです。

けれども、そこを「敢えて」狙わなかった・・・そればかりか―――

 

そこでジョカリーヌは、そんな二人を一人前とする為の方策を取ったのです。

それこそが・・・

 

 

 

#55;ダンジョン攻略

 

 

 

市:「焔龍の祠」??!

 

ジ:うん、少しばかり攻略難度としては高めだけれど、ナニ・・・何とかなるさ。

 

 

市子が驚愕したのは、以前にも訪問した事がある、難易度「AA」の「焔龍の祠」・・・

そこを、これから自分を含めての4人PTが攻略すると言うのです。

 

それに、市子は忘れていませんでした。

以前あの当時、リリアから教えられたことを―――

 

「ここは、元々は難解なダンジョンだけど、私が事前に話を通しておいたからね。」

「クリアはしなくても大丈夫―――」

 

そう・・・あの当時は、リリアの“根回し”のお蔭で、このダンジョンを攻略することなく、「最奥部」での歓待を受けた・・・

それが今度は、“一”からの攻略・・・

しかも、レベルの低い蓮也やソフィアの、レベルやスキルのアップの為に、ここを訪れることになろうとは・・・

 

市子の心配は、尽きることがありませんでしたが、それが杞憂であることに、彼女自身が気付いてくるのには、そう遅くはなかったのです。

 

それが、「ジョカリーヌ」・・・

自分達が、「レイドボス」であるこの人と戦ったことがありましたが・・・

今回は、後進を育てる為にと、“前線”に出てくることはなかった・・・

飽くまで“後衛”―――それも、「パーソナルレイド戦」の時の、「玉藻前」の立ち位置・・・

 

それが「指揮官」―――

しかも、その指示の一つ一つが的確で、恐らく・・・でなくとも、ジョカリーヌが今回のダンジョン攻略に加わらなかった場合の事を考えると、

こうも自分達よりもレベルが上の、このダンジョンのMobエネミー達を、容易(たやす)撃破できなかっただろう・・・

 

それに―――

 

 

べ:フッ―――まさか、こうも早く“お礼参り”に来ようとはな。

ス:―――逆恨み?

 

ジ:フフフッ―――反面耳が痛いよ。

  けれど・・・私の方も、“腕”を鈍らせていないか、知っておく必要もあったからね・・・。

 

べ:フ―――参る!

  出でよ・・・<フォートレス・タラスクロード>!

ス:―――出でよ・・・<ディヴァインドラゴン>!

 

 

ダンジョン中腹に差し掛かった辺りで出てきたのは、例の「パーソナルレイド戦」にて、自分達に協力をしてくれた、「竜族」の二人・・・

「ベイガン」と「スターシア」でした。

 

しかもこの二人は、自分達のダンジョンを攻略している者達が、どう言った(たぐい)なのかをると、

最初から“全力”で―――自分達に宿る“竜”を召喚したのです。

 

それに・・・今回の、自分達のPTには、「優秀なタンク(リリア)いない・・・

これはどうしたものかと、考えあぐねていたら―――

 

 

ジ:ふむ―――申し訳ないけれど、少し使わせてもらうよ・・・

 

市:(片目を・・・(つむ)った

 

べ:(ムッ!?)まずいぞ―――《ラゼッタ》、詠唱を急げ!!

 

市:(えっ―――??)

 

ス:(く・・・っ!)≪スペルキャンセル≫―――<イグニート・ジャベリン>!

 

 

さすがに、これまでの様に、「前線に出て闘わない」と言っていられなくなったか・・・

ジョカリーヌは「参戦」の意思表示をしてきたのです。

 

しかし―――彼女は、参戦意思表明(それ)をしたとしても、「片目ってしまった・・・

その事に、市子は疑問に感じたものでしたが、逆にベイガンは危機感を(あら)わにめた・・・

両者の、この「ギャップ」―――

自分達は、実は、余りこの人の事を知らない・・・なのに、向うは、この人の事を良く知っている―――

その差異から生じる「ギャップ」・・・

だからこそ、一族随一の「術師(キャスター)でもあるスターシアに、術式展開がせたのです。

 

そして、「詠唱」を省略しての、術式の行使―――

それによって、天空より降り注ぐ、数多(あまた)槍・・・

ですが―――

 

 

ジ:―――“転化”【万古幡】

 

 

「あの術は―――?!」

市子やリリア達が、苦しめられた、重力場を形成し、操る術・・・

けれど今回は、「攻撃用」として使用せず、その術式としての特性を、「防御用」として使用した・・・

つまり、“重力場”に、その“焔の槍”が、集中する―――・・・

 

例え、優秀なタンク役がいなくても、“こういうやり方”もある―――

一つの“やり方”だけではなく、色々な“可能性”を模索し、事を為す・・・

 

それに、ジョカリーヌの、術の行使の仕方にしても、

「スターシア」と同様、“詠唱”することなく―――しかし、その“仕様”にしても、

術者自身の前で、特徴ある“手指の組み方”・・・それを「印迎」と呼ぶのですが、

そうしたものを組みながら、“空を切る”諸動作・・・

“それ”によって発動をさせたのです。

 

しかし、市子は、また違う観点から、この事を捉えもしたのです。

「これは・・・私に見せる為に―――?」

市子の基本職は「巫女」―――ではありましたが、武器を手にして戦う、武器攻撃職「武者」でもあった・・・

それであるがゆえに、本来の「巫女」としての、術式を展開するという行為は、あまり得意とはしていなかったのです。

(その原因の一つが、自分の“子”である蓮也を育てる為に、そうせざるを得なかったから。)

 

それを・・・「こういうやり方もある」―――その事を教えられた気がしたのです。

 

それに―――

 

 

ジ:ふむ・・・やはり“それ()邪魔だね―――えてもらうとしよう

☆〜―☆パァン☆―〜☆

“転化”【万仙陣】

 

べ:ぬ・・・おっ―――?!

ス:ひ―――やッ??

 

蓮:あ―――あいつらの「竜」が・・・

ソ:「柏手(かしわで)」の一つで―――消えた・・・?

 

ジ:そして―――“転化”【火尖槍】【紫電槌】【霧露乾坤】

 

市:(あ―――あっ!閉じられていた目が・・・!!)

 

ジ:【山河社稷図】

 

 

やはり、邪魔だと感じていた、二匹の竜の「強制退場」―――

それを、攻撃時とは別の効果で無効化させ、しかもその仕様にしても「柏手(かしわで)・・・

次いで、今回の課題の一つでもある二人に対し、それぞれ「攻撃力向上」「素早さ向上」「防御力向上」を付与させ、

極め付けに・・・市子自身、不思議に感じていた、瞑られた片目が開かれた時―――

自分達すら気づかない内に、その人の足下に敷設され、展開した「魔法陣」・・・

それによって、発動された術式の効果―――更には・・・

 

 

ジ:<確定戦域の属性変動>―――〘中立たる“善”〙

  今だ―――蓮也!市子!

 

 

「あの時・・・この人を討った時に、ミリティアなる方が唱えた、支援の極め業とも言える“モノ”を・・・この人も?!」

 

最早市子は、疑う事すらもせず、ジョカリーヌが言うがままに行動し、竜族の二人を撃破―――までではないものの、撤退をさせた・・・

 

「私達は・・・何一つ判っていなかった―――」

「この人が「その気」になれば、あの時私達は、何度となく全滅させられていたのだ・・・」

「なのに・・・っ、では、どうして、私達はこの人を―――?」

 

未だ、市子には判らない事ばかりでした・・・。

が、今ここで、考える余地はなかったのです。

 

そう・・・ダンジョン中腹にて、撤退を余儀なくされた同志―――

そして、“主人”の部屋に通じる路に、立ち塞がる者・・・。

 

高潔なる騎士団(エーデル・リッター)」団長―――にして、市子の信友のOUSを、「因縁の宿敵」から取り戻してくれた存在・・・

 

 

キ:全く―――あなたは・・・どう言うつもりなのですか。

 

ジ:“鈍らせた勘を取り戻す為(リハビリ)”―――と言ったら、少しは判ってもらえるかな。

 

キ:(・・・)そんな―――下らない理由で、私達の領域を踏み荒すなあ!

≪ホーロドニー・スメルチ≫!

 

ジ:“転化”【禁鞭】―――

  悪い癖だよ・・・《クゥオシム》、頭に血が上って、自棄(やけ)になってしまうのは・・・ね。

 

キ:フン・・・言ってろ―――ですわ。

  覚悟は、出来ていますわね?

 

ジ:フフフッ―――ヤレヤレ・・・

  済まないが、どうやらここまでのようだ―――

 

 

やはり、最後に立ち塞がってくるのは、「この存在」だった・・・。

今まで見せてきた“性格()”からは、とてもそうは思われなかったのですが・・・

市子に蓮也にソフィアは知っているのです。

 

リリアの「因縁の宿敵」である単于を、その凶暴性で圧倒させたのを。

 

その、「武を極めし者」であるキリエが、どこか怯えてすら見えた・・・?

また同時に、信じられない言葉が、この人の口より紡がれた・・・?

 

「済まないが、どうやらここまでのようだ―――」

 

「そんな・・・?この期に及んで、私達を―――見捨てた?」

 

市子は―――蓮也は―――ソフィアは知らない・・・

 

本来の、ジョカリーヌの実力と言うものを・・・。

 

 

 

つづく