今回、ひょんな事から自分達のクランに、新規参入をした新たな仲間―――
それが、「アイドル・プリン」だったのです。
それに、今更なのですが、自分の信友の、仮想内に於いての人脈の広さに、感じるところとなる市子・・・
今も、アイドルが次の歌曲の為にと、詞を起こすためにメンバー達の体験や経験を聞いたり、
信友からのアドバイスを受け、歓談に花を咲かせたり―――と、少々羨ましくもあったのです。
そして、ついには―――
プ:ねえ―――あなたのお話しも聞かせてよ。
市:え―――私のですか?
プ:うん、それにリリアからも聞いたけど、あなたが一番の信友―――って、言っていたからね。
その言葉は、市子の胸に「ジン」と染み渡りました。
「親しい」友ではない―――「信じている」友・・・
今更ながらに思う・・・これ程に、勿体のない事はない―――と・・・
だから市子は、信友と出会い、今日に至るまでの経緯を話しました。
その事を、一つ一つの「フレーズ」に代え、「詞」を仕立て上げる吟遊詩人・・・
そんな最中―――
プ:(よし・・・と、一応は出来たかな。
まだ、色々推敲する余地はありそうだけど・・・)
―――ねえ、クラマス・・・
・・・・
プ:(あれ?)
ねえ?リリア―――ちょっと聞いてる?
リ:えっ、どうしたの?
プ:「どうしたの?」―――じゃなくてさあ・・・「クラマス」って、呼んでるんだから・・・
リ:(・・・)やだなあ―――w 私、クラマスなんかじゃないよ?w
プ:えっ? でも―――リリアのクランなんだからさぁ・・・
リ:ああ―――まあ、結成した当初は、クラマスだったんだけれどね。
それに、だったらサブマスだったらいるよ。
プ:へえ〜〜それがリリア?
リ:違うよ―――w
おーい、市子さーん。
市:はい、なんでしょう?
リ:うん、プリンさんが呼んでるよ。
市:それで、一体どうしたのでしょう?
プ:え〜〜あ〜〜〜まあいいや・・・。
一応、詞が出来上がったから、どうかなあ〜〜って・・・
確かに、そこに落とされてあったモノは、情緒豊かにして感性溢れるモノ・・・
幼な声をしたアイドルは、やもすれば、世間体からは頭の悪いイメージがありがちでしたが、
この人は“別”・・・
以前も、このサーバーの一角にある、広場の噴水前で披露された、路上での「リサイタル」の歌の詞は、
そのどれもが、そうであったように、自分たち全員の胸に沁み渡ってきていた・・・
自分達が認識していた、「アイドル」達とは、また違うアイドル・・・
彼女が不運だったことは、頭が賢く、文才が備わっていた・・・
だからこそ、市子達がイメージする「アイドル像」とは、乖離が激しかったのです。
それであるがゆえに、真剣に読み解く市子―――・・・
確かに、その「フレーズ」一つ一つが躍動感あふれ、シンパシーが感じるものがありました、
けれども―――・・・
市:う〜〜ん・・・何か―――こう・・・一つ物足りないような?
プ:あ・・・やっぱりそう思っちゃうんだ―――
市:え? やはり―――って・・・?
プ:うん―――ここからここまでの間に、もう一つ別のフレーズ・・・
ううん―――「因子」を取り入れた方がいいと思うんだけれど・・・
今の、このクランじゃ、これが精一杯・・・
そう―――大体の大筋では、出来上がったものがありましたが、
どこかこう・・・もう一つ決め手に欠ける―――
プリンとしては、もう一つパンチの利いた強いフレーズが欲しかった・・・
けれども、今所属したばかりのクランでは、これ以上は望めないとしていたのです。
―――と、そんな悩める彼女の下に、救いの主とも呼べる者の到来・・・
そう、現在このクランの、事実上の・・・
リ:―――あっ、帰ってきた・・・。
プ:えっ?
リ:クラマスだよ―――プリンさんが会いたがっていた・・・。
「そう言えば、私がクラマスだと思っていたリリアは、その事を否定した・・・」
「それに今、私の詞を見てもらった、市子って人も、このクランのサブ・マスターだった・・・」
「このクランの、事実上のマスター・・・」
「一体、どんな人なんだろう・・・」
クランの新規参入者であるプリンが、入会をした時に承認をしたのはリリアでしたが、
実は彼女は、当時クランのマスターなどではなく、ですがしかし、クランの幹部だったことには間違いはなかったのです。
そして、遅まきながらの、クランのマスターの、ログイン・・・
リ:お帰りなさい―――
ジ:ああ、ただいま・・・
おや?誰か新しく入ったみたいだね。
リ:うん―――紹介しますね。
こちらが、私の昔からの知り合いで、吟遊詩人の・・・
プ:「プリン」―――です。
以後宜しくお願いします。
ジ:ふぅん・・・吟遊詩人―――
それにしても君、面白い特性を持っているね。
私は、このクランのマスターをしている、「ジョカリーヌ」という者だ。
プ:(・・・)はい?
ジョ・・・ジョカリーヌ―――って・・・もしかして??
ね・・・ねえ、ちょっとリリア―――この人、もしかしなくても、『13人の長老』の一人・・・?
リ:う・・・うん―――
プ:こっ!これは大変失礼しましたぁ〜〜!
し―――知らないとはいえ・・・
ジ:ああ〜〜まあ―――確かに、以前まではそうだったんだけどね・・・
けれど今は、後進の育成の為に、「管理者」としての権限の大部分は凍結させてある。
だから今は、君達プレイヤーと、さほど変わらないと言っていいよ。
そこで知ることとなる、重大な事実・・・
それにそう、ならばどうして自分達は、“そこ”に気付かなかったのだろうか―――
思えば、「パーソナル・クエスト」とは言え、「レイドボス」だった存在が、
今はこうして自分達のクランにいる・・・
経緯としても、当時のクランマスターだったリリアが、承認した事だったから、
皆疑う余地すらなかったのでしたが―――
今、プリンからの指摘を受け、他のメンバー達は・・・
市:私も・・・気付きませんでしたが、言われてみればそうなんですよね―――
ソ:・・・と、言うか、リリアさん凄すぎ―――
ギ:だよなあ〜〜次から次へと・・・
あいつ、未だ隠してあることが、あるんじゃねえのか?
蓮:有り得る話―――だよなあ〜(はは・・・)
リ:な―――なんだよぅ・・・皆して、
私が何か、悪いコトしたみたいじゃん〜
キ:ハハ―――違ぇねえw
大体、オレ等んとこのクラマスが、元レイドボスで、元運営・・・って、他に捜してもねえぜ?
ソ:なんだか・・・もう・・・これ以上、驚く要素なくなっちゃいましたね。
蓮:ああそうだ―――オレも、もう、こいつが驚かそうとしても、絶対驚いてやんねえぞ!!
リ:秀ちゃんの―――バカ・・・
思わずも知れてしまった、今回自分が所属することになった、クランのマスターの正体に、
クランのメンバー全員は、目に耳を疑ったモノでしたが、
そもそもがよく考えてみれば、辿り着けた解・・・
けれども、皆一様にして、元のクラマスの意外性もあいまり、何より笑顔が絶えなかった・・・
その始終を見ていた吟遊詩人は、まさに今―――
プ:あった・・・あったよ!ここに!!
市:えっ?何か見つかったんです?
プ:さっき見つからなかった「因子」―――“この人”だったんだ!
ジ:(ん?)私が―――?
今回、作成した詞に、どこか足りなかったモノ・・・
それが、“この存在”が居る―――それだけで、この場の雰囲気が華やぎ出した・・・
そして今のイメージを、薄らませることなく、急いで自分が『足りない』としていたスペースに放り込む、一人の詩人・・・
そこから急いで、即興的に節を入れ込むと―――
“陽”は、大いなる恩恵を我らに与え
時には大いなる試練を―――
時には慈愛を与えたりもする・・・
だからこそ我々は、“陽”のある事を、忘れてはならない
豊かに我々を包み込み、温もりを与えてくれる
なくてはならない、大切なモノだから・・・
それは、単なる“イメージ”かも知れない・・・
けれども、どこか聞き入った者達は、「ほんのり」温かくなった気持ちがした・・・
この“歌”は、これで完成ではない―――
これから“微調整”を繰り返し、そして世に出て行く・・・
けれども、この「即興曲」を聴いた者達からは・・・
ギ:いやぁ〜〜スゲエいい曲だぜ・・・
これ、今、出来たばかりなんだよな?
ソ:“未発表”―――ってことは、私達得をしたみたいですね。
プ:う〜ん・・・残念だけど、まだ“出来”てはいないのよね・・・。
これからちょっとずつ、弄って行かなくちゃ―――ね。
今、出来たとしても、満足はしていない―――
妥協はしなかったからこそ、プリンはユニットのメンバーから浮いてしまっていた・・・
彼女自身が、未だ「歌い手」として続けていられる最大の理由こそ、
『歌いたい歌を、歌い続けて行くこと』
大手の事務所に所属し、用意された華美な衣装に、
「萌え」属性の媚びた歌詞に作曲―――
「歌いたい歌を、歌わせてもらえない」
だからこそ、鬱積する感情―――
だからこそ、解散直前の、数か月前のユニット内は、
誰もが目を合せても、口を利かない程の、「険悪」なものだった・・・
そこを思えば、今のこの―――伸びやかに出来る環境の、なんと心地の良い事か!
それに、自身の口でも言いはしたものの、こうした環境では「すぐに出来る」だろうとした予感は、見事なまでに当たっていたのです。
それから―――幾何もしない頃に、現実内での、プリン様直々の「招待状」が、現実内の彼らの下に届いたのです。
それこそが、またしてもの、“あの場所”での「シークレット・ライブ」
そこで披露された歌曲は、あの時、仮想内で披露されたモノに、多少のアレンジを加えたモノ・・・
しかし、妥協を許さなかっただけに、あの時以上に沁み渡ってくる“心情”・・・
歌い終えた時には、誰しもが惜しみない、拍手喝采をしたものでした。
そして、その日のログイン光景にて―――
リ:いっやあ〜〜さすがだよね、私また泣いちゃったw
プ:フフフ―――ありがとう、リリア・・・
リ:そう言えば―――同じメンバーだった「セシル」さんいたじゃん。
あの人、今どうしてるのかなぁ・・・
プ:セシル―――
うん・・・
リ:どうしたの?
今回のライブ成功に、喜びを分かち合う二人・・・
でしたが―――ふとしたことで、リリアが漏らした、他愛のない一言・・・
そう・・・その時は、まさにそうだったのです―――
リリアにしてみれば、プリン同様、同時期に知り合った仲・・・
だったから、件のユニット解散時、メンバー達が散り散りになった事は知っていました。
プリンは、明確な目的があったからこそ、歌い続けていましたが、
メンバーの4人の内、2人は芸能界から足を洗い、今では、それぞれが所帯を持ち、上手くやっているのだとか・・・
けれど、もう1人のメンバー・・・
「セシル」という者に関しては―――
プ:知ってるよ―――今、彼女が何をしているか・・・
けれど、“あれから”全然連絡を取れ合えていないの・・・。
リ:(えっ―――)それ、どう言う事―――?
プ:うん―――あのね、彼女、ここのプレイヤーでもあるから、ここでのインまでは、確認取れているの。
でも・・・メッセージを送っても、返してもらえない・・・
でも、それってね、覚悟はしていたんだ―――
だって、私の「歌いたい歌」って、明らかに彼女の歌とは、性質が違うんだもの・・・
リ:それって―――つまり、セシルさんにも、「歌いたい歌」が?
プ:そう言う事―――
私の「歌いたい歌」って、“こんな”んじゃない?
けど、彼女の「歌いたい歌」って―――・・・
「幸い」・・・と、言っていいのか。
現実内でも、激しくやり合った仲ではあったものの、仮想内に於いての「フレンド」は、一方的に切られていなかった・・・
だから、「フレンドリスト」で確認するのに、ログインしている事は判っていた―――
だから、こちらから「メッセージ」を送ったまではよかったのですが、
やはり、現実内の出来事が原因だからか、返事はもらえなかった・・・
だからこそ、彼女は思う―――
「これって・・・やっぱり私、嫌われているんだろうな―――」
プリンの音楽性は、情緒にあふれ、他人の心に訴えかける、“それ”でした。
一方、セシルという者の音楽性とは、情熱的で―――熱狂的・・・
自分の感情―――魂許す限り“叫び”、“揺るがす”・・・
#58; R O C K
だから―――ネット民が囃し立てた、「ユニット解散の原因」も、言ってみれば就中、当たってはいたのです。
容れられない―――分かち合えない・・・“主張”
だからこそ、妥協し合えない―――譲り合えない―――
故に、
その人とは、いつも衝突を繰り返してきた・・・
そして、挙句の果ての―――解散・・・
プリンは、自分がセシル某から、嫌われている事に、自覚はありました。
・・・が―――それは、それ。
実は、彼女達は、未だ知る由さえなかったのです。
今・・・セシルの周辺で、何が起こっているか―――など・・・
つづく