一見して物々しい雰囲気―――

“彼ら”が「拠点」としている『大聖堂』内では、誰しもが仰々(ぎょうぎょう)しい鎧や甲冑に身を固め、

動く(たび)(ごと)には、剣と甲冑が(こす)れ合う、「ガチャガチャ」とした、耳障りな音が響き渡る―――

 

だがしかし・・・この場所こそは、ある“宗教”上、神聖にして敬虔な場所・・・

の、はずが、そんな場所が、こんなにも騒々しく、殺気立っているのは―――なぜ・・・

 

 

騎士:団長―――総員、揃いました。

 

騎士団長:―――・・・。

 

騎士:総員、拝聴―――!

   これより、我等、「異端諮問庁」所属、『天籟(てんらい)騎士団』団長―――「プレザンス」様よりの、直々のご訓示であられる!

 

 

 

#59;異端審問官(インクィジター)

 

 

 

そう・・・彼らは、「異端」を―――

彼らの“教義”に従わない人間を―――不浄なる者を、(ちゅう)する存在・・・。

 

それゆえに、手段を選ばず、そうした認可を、「教皇」なる者より与えられし者達・・・

 

だからこその武装―――

だからこその使命―――

 

だからこその・・・“狂った”―――

 

 

プレ:皆―――良い目をしている・・・。

   我々は、神より与えられし、その刃を・・・

   憐れなる者達に振り下ろすを許されし存在。

 

   我々には・・・糺さねばならぬ責務がある。

   我々以外の、“神”を・・・信じる者や―――

   なにより!! 不浄なる者共は、決して赦してはならない―――いや! 赦しておくべきではない!!

 

   さあ―――剣を取れ・・・そして征くのだ・・・。

   さすれば、我らが神の偉大なる恩恵は、授けられるであろう・・・

――エイメン!!――

 

 

“彼ら”は、自らが信じる神を、強く信じるあまりに―――その「狂気」で“他”を誅殺せしめてきました。

 

それが、この集団(クラン)・・・「ナユタ教」「異端審問庁」所属の『天籟(てんらい)騎士団』・・・

 

その騎士団の多くは、これまでに出演してきた「ブラダマンテ」の様な、

神聖騎士(ディヴァインナイト)」や「神殿騎士(テンプルナイト)」、「聖騎士(パラディン)」と言う、騎士職でも上位の職達で構成されており、

彼らが言う処の、“自分達の教義に従わない者達”からしてみれば、まさしくの恐怖の対象でしかなかったのです。

 

そして今回、彼らが本拠(ホーム)としている「大聖堂」に詰め寄ってい居たと言うのも、

これからあるとされる「罰の代行」を執行する為に・・・だったのです。

 

そして、出撃前の訓示を述べた者―――に、寄り添っていた者こそが・・・

 

 

プレ:(・・・)どうしました―――「セシル」副官・・・

 

セ:ハッ―――!

  どうやら・・・“彼の者”が―――

 

プレ;フム―――『公爵』が・・・

   今度はどこに出た?

 

セ:こちらになります―――

 

 

そう、「異端審問官」の(おさ)である、プレザンス(なにがし)の、「副官」こそ―――

前回話題に出てきた、「さあるアイドル・ユニット」の、“もう一人”―――・・・

 

そう―――つまり、「セシル」なる者は、プリンからのメッセージを、無視していたのではなかった・・・

 

彼女は、優秀にして生真面目・・・

一つの目標があれば、それに邁進してしまう性格・・・

 

良い意味としては、「真面目にして一途」―――

けれど、悪い意味としては、「融通が利かず」、「頑なにして」他とは迎合しない―――

できない―――・・・

 

つまり、ユニットの崩壊は、プリンとセシルの、性格の不一致もあったのです。

 

 

プリンには、明確な自分の主張があり、メンバー達に色々意見を出していました。

けれどもセシルは、その性格から、所属プロダクションから言われていた事だけを、着実に守ってきた・・・。

 

「革新」と「保守」―――

決して容れられない・・・相容れないモノ・・・

 

けれども“それ”は、「仕事上」の関係であり、現実としての彼女達の仲は、そう悪くはなかったのです。

 

だから・・・プリンにしてみれば、“そこ”が唯一の頼みの綱でした。

 

蜘蛛の糸よりも、細くも頼りのない繋がり―――・・・

ゆえにこその“メッセージ”を、送り続けていたのですが、

プリンも、現在セシルが置かれている状況までは、把握し切れていなかったのです。

 

とは言え・・・プリンが現在、把握できている情報を伝えると―――

 

 

プリ:ああ―――でも、彼女が今いる「サーバー」と、「ジョブクラス」なら判るよ?

リ:ふぅん・・・で、どこでどう言ったジョブに就いてるの?

 

 

プリンは、現在セシルが「何をしているか」までは判ってはいませんでしたが、

セシルが、自分の“音楽性”を極める為に、渡った場所は知っていました。

 

それこそが、その“音楽性”発祥の地―――にして、聖地・・・

そして、「とあるジョブクラス」に成ったと言う事も、風の噂に聞いていた・・・

 

だからこそプリンは、正直に話した―――「だけ」だったのです。

けれど、自分が知り得た事が、必ずしも「良い」わけでは・・・ない。

 

だからこその、“この”反応―――

 

 

プリ:うん―――本拠(ホーム)としているサーバーは「ロンドン」で、確かジョブクラスは「神聖騎士(ディヴァインナイト)」・・・

リ:(・・・)――――。

 

ええええ〜〜〜っ??!

 

プリ:ど・・・どうかしたの?リリア―――

 

リ:え・・・うーあっ、いや―――

  ゴメン、びっくりさせちゃって・・・

 

  てか〜〜それ、ホント?

 

プリ:う・・・うん、間違いないはずだよ?

 

 

「マジですか―――てか、なんなんだよ・・・ソレ」

プリンにしてみれば、知り合いが本拠(ホーム)としているサーバーと、現在就いている・・・であろう、ジョブの事を、

正確に話した―――だけ・・・。

 

ですが、リリアの“とある事情”までは、知る由もなく・・・

 

今、自分の告白で、急に頭を抱え始め出した、(ふる)くからの知り合いに、心配をするプリンは・・・

 

 

プリ:ね・・・ねえ、どうしちゃったの? 具合でも悪いの?

 

リ:ああ〜〜〜あははは・・・そんなんじゃない―――そんなんじゃない・・・ん、だけどね〜〜

 

 

()()()は、退っ引き(のっぴき)ならない事情があった為に、()()協力を取り付けたことのある、

「優秀すぎる」妹分・・・(皮肉デスw)

 

けれど、()()()ですら、「渋々」―――と、言う事は、

本来は協力を乞いたくはなかった・・・の、ですが―――

それらを押し隠してしまうほどの、「性能の良さ」・・・

 

それが、今回に限っては、()()()とは別の事情でもあったわけで、

なるべくなら「超問題児」には、知られたくはない・・・

 

だから、そこの処で悩めるリリアを、「具合が悪い」としているプリンがいた―――わけで・・・

 

するとそこへ、「巻き添え一号」・・・イヤ失礼、市子が―――

 

 

市:どうしたのですか、リリアさん―――

 

リ:あ〜〜市子さぁ〜ん―――聞いとくれよぉ〜〜

 

 

顔を見合わせた途端に、頼られてしまった―――そのことに、気をよくする市子・・・なのでしたが、

持ち掛けられたリリアからの相談に・・・

 

 

市:えええ〜〜〜〜っ! ロ・・・「ロンドン」??!

リ:そうなんだよ〜〜

 

プリ:あのぉ〜〜そろそろ、どう言う事か教えてもらえませぇん?

   二人だけ盛り上がるなんて・・・ないなあ〜。

 

 

市子も、その「サーバー名」を、聞いただけでの、この「異常な反応(オーバー・リアクション)」・・・

それだけで、自分だけが「置いてけ堀」感、満載となるプリンでしたが、

実はリリアの方でも、事の説明をするのに、かなり苦心していたのです。

 

そう―――プリンの情報・・・“だけ”なら、そう困難ではありませんでした。

けれど、彼女達は知っているのです。

 

ある意味では、「レイドボス」よりも手強い―――・・・

 

 

リ:(ん゛〜〜〜・・・)よし―――

  プリンさん、今から私が話す事を、よく聞いてくれ・・・

プリ:(キョトン)は―――はい・・・

 

リ:プリンさんが言ってくれた事“だけ”だったら、そんなには難しくないんだ。

  けれども―――・・・

プリ:けれども?

 

リ:ある意味では、非常に厄介な相手が、あのサーバーにいるんだ。

プリ:ああ・・・あのサーバーなら、確かに厄介な敵がいるよね。

   確か・・・ヴァンパイア―――

 

リ:あ゛〜〜〜いや・・・そのヴァンパイアも、厄介なんだろうけどさ・・・

  いるんだよ、そのヴァンパイアよりも、厄介なヤツが・・・

プリ:うぅう〜〜ん???

   けど、私が知っている以上の厄介な存在なんて、知らないよ?

 

リ:ナハハハ〜〜やっぱ上手く伝わんないやw

  なあ〜〜市子さん、あんたなら「コレ」、クエストに換算すると、どのくらいのレベル?

市:う〜〜〜ん・・・あのジョカリーヌ様を倒したのでも、「SSS」でしたが・・・

  比べようがありませんよね。

プリ:へっ? でも・・・ジョカリーヌ様―――「女媧」の討伐・・・って、最高難度だったよね?

  それよりも難しい・・・って、なんなの?

 

 

やはり、中々伝わらない、この危険性―――

「その存在」に知られることなく、また気取られることなく・・・

今回の対象者(ターゲット)づく―――うのは、まさしく至難えたでしょう

 

だからこそ、今回必要とされているのは、「隠密性」・・・

と、言うわけで、そう言う事に()けたプレイヤーを、PTに勧誘しよう・・・と、したのでした―――

 

 

リ:ナハハハ〜〜〜ンw

  断られちゃった―――

市:“それ”って―――

 

リ:うん・・・「サーバー名」伝えただけで、一方的に切られちゃったんだは・・・

市:どうするんですか?? 「団蔵」抜きでは、より難度が・・・

 

リ:そう思ってて、“連中”に持ち掛けようとしたら・・・向うのが、手回し早かったんだわ。

市:では・・・私達3人で―――?

 

 

やはりここは、隠密行動に長じた者達―――「忍」の協力を得ようとしたのでしたが・・・

向うのサーバーの事を口にした途端、唐突に切られた通話回線・・・

しかも、可能性を考慮して―――の、その後の「才蔵」や「小太郎」に持ち掛けようとはするも、

相手も()・・・「団蔵からの連絡網により、限定期間での、通話不能にされ、

ここにリリア唯一の望みも断たれてしまった・・・

 

とは言え、悩みを聞いてしまった以上、断り切れない性格の為、

なんとか、ここにいる者達だけで、乗り切ろうとしていたわけであり・・・

 

 

プリ:〜て、言うか・・・私・・・

 

リ:ああ―――ゴメン。

  悩みは解決してあげるよ、けどプリンさんにも来てもらう・・・

  だって、「セシル」って人、プリンさんにしか判らないからね。

  け〜〜どね〜〜―――

 

市:そうですよね、最悪の事態だけは、考えておかないと・・・

 

プリ:リリア―――に・・・市子さんまでも?ですか・・・

   そんなにまで危険なの?

 

 

すると、二人とも「うん」と、即座に返事をしてきた・・・

この二人が、意見を同じくするなんて、先行き不安―――

しかし、この時点でさえも、プリンの「ある存在」への、危機感は薄かった・・・

だから、この二人のリアクションも、大袈裟だとは感じていたのです。

 

けれど・・・この後、すぐに知ることになる―――

それに、リリアに市子も、ある意味では、「その存在」の事を、甘く見ていたきらいはあった―――

 

今回は、この「ある存在」に気取られることなく、標的(ターゲット)セシル」づき、

プリンと劇的和解をさせる―――またあるいは、和解までに至らないまでも、コンタクトを取れれば「上出来」・・・

 

果たして―――彼女達は、畏るべき“センサー”を兼ね備えた「ある存在」から、

逃れることが出来るのでありましょうか―――??

 

 

 

つづく