前回のお話しの“あの場面”より数時間前―――

場所は、ロンドンサーバーにある、とある集落・・・

 

 

騎:いたぞ―――あそこだ!

騎:周囲を囲め! 油断するな―――!

 

 

一つの存在を囲み、数名の神聖な騎士が取り囲む・・・

そして―――

 

 

セ:対象視認―――これより、掃討を開始します!

  さあ―――覚悟しなさい!

 

 

 

#61;公爵ヘレナ

 

 

 

セシル達、異端審問庁の人間が、取り囲んでいた存在こそ、ヴァンパイアの「公爵」であり、種属内でNo,2の実力を誇る者・・・

しかしながら、同じ種属内には、「子爵」なる者も存在しており、その「子爵」なる者は、リリアや市子とも交友簡にある・・・

 

つまり、今彼らが取り囲んでいるのも、このゲームのプレイヤーのはず・・・

なのですが―――?

 

 

ヘ:〚フッ―――フッ―――フッ―――おやおやこれは騒々しい事・・・

   この私に、ご用がおありなのかい?〛

 

セ:黙りなさい! 公爵ヘレナ―――

  お前はこれより、我らが異端審問官が成敗をしてくれる!

 

ヘ:〚成敗・・・? フフフ―――おや、怖い怖いw

   だが、お前たち如きが、この私を罰する事が、出来ると言うのかい?

   フフ―――・・・面白い・・・では、お前達に見せてやろう・・・

   本当の―――ヴァンパイアの闘争と言うものを!

 

{裏面式弐号解放}―――{ダークネス・サーヴァント}

 

   さあ・・・私の影より出でし“従う者共”よ・・・あの無礼者たちと遊んでおやり―――

   そして、お前達は・・・この私を愚弄した事を、思い知るがいい―――ジュダース・ブリースト!!〛

 

 

その存在・・・妖しくも闇の霧に包まれたり―――

しかしながら、眼前の敵を見据えるべく、爛々と・・・煌々と輝ける、紅き光2つ―――

 

そして、その者自身が修得したる、不浄なる御業・・・「裏面式」なるものを解放し―――

自らの分身とも言える、「影にて従う者達(サーバント)」を招聘(しょうへい)した・・・

 

その数は、百や千は、言うに及ばず―――万とも、千万とも思えた・・・

 

取り囲まれる前は、1対10だったのが・・・

いつの間にか、数の暴力は覆され、今やセシル達の方が、危うくなりかけた・・・

 

―――と、その時・・・

 

 

プレ:(Fuu・・・)久しぶりだな―――公爵・・・

 

ヘ:〚フン・・・誰かと思ったら―――

   少しは、私を喜ばせるまでに、なったのかい?

   なあぁ・・・「坊や」―――〛

 

プレ:その減らず口―――利けなくしてやる・・・

   かあぁぁ―――『イクソシズム』!

 

 

その場にいた、公爵と同等の“覇気”を纏いし人物―――

彼の名を、彼を知りし者達は、こう呼ぶのです・・・「殺戮神父」―――と。

 

しかしながら、こうした・・・おおよそ、神職には相応しからぬ称号を持つようになった経緯は、

彼の職、『エクソシスト』に起因していた事でもありました。

 

現在に至るまで、実に数多の不浄の者達を「浄化」してきた・・・

と、同時に―――「異端審問官(インクィジター)」でもあった事から、次第にその手は「人間」達にも下されるようになった・・・

職務の遂行―――とは言え、その神父の、“神の衣”には、血が付着していない事などありませんでした。

 

彼は、敬虔な聖職者であると同時に、潔癖すぎたからこそ、あらゆる“悪”が許せなかった―――

 

だからこそ、振りかざされる聖剣―――

だからこそ、行使されるイクソシズム―――

 

そして今―――彼の術式を受け、吹き飛ばされる公爵ヘレナの片腕・・・

それと共に、切り払われる、闇の霧・・・そこに存在しえた者こそ―――

 

菫紫」の長髪を、後ろで一つに束ね―――

「蒼白」の肌に―――

鳩の血色(ピジョン・ブラッド)」の双眸―――

肌の露出が多目の、「漆黒」のカクテルドレスを着用していた―――

 

そして、たった今―――「殺戮神父(プレザンス)」が吹き飛ばしたはずの片腕を、

まるで事もなげに・・・自分が所持する『自動再生回復能力』によって、失われたモノを取り戻した―――

 

現実内・・・()してや、仮想内に於いても、我々人間の想像を、遥かに超える“化け物”―――

それがヴァンパイアなのです。

 

そして、今ここにいるのは、種属の実力No,2である、「ヘレナ」―――

 

その、肉感的にして、扇情的―――豊満な乳房を揺らし、

その場にいる女性キャラ・・・セシルよりも、細く(くび)れたウエスト、

魅惑のヒップをくねらせながら、近寄ってくる“美”と“淫”の象徴―――

 

 

ヘ:〚フフフ・・・ハハハ―――ハッハッハッハア!w

   大したものだ・・・プレザンス―――坊や・・・

   この私の、片腕を失わせてくれるまでに、成長してくれたものとは・・・

   これは少し、ご褒美をあげないと、いけないかねえ〜?〛

 

プレ:精々吠えてろ―――不浄なる者よ・・・

   今の私は、神罰の代行者―――

   嗚呼・・・我が神よ、あなたの御力(おちから)御業(みわざ)によりて、穢れし者を払いたまえ―――エイメン!!

 

 

一言で言えば、「因縁」―――

それも、この「殺戮神父」と「公爵」との間に発生したモノ―――

 

だからこそ、彼の者達は、互いに憎しみ・・・互いに傷付け合う・・・

 

エクソシストの浄化の剣が薙ぎ払われれば、公爵は防御などせずに、その刃を身体に食い込ませ、

その手刀を殺戮神父の身体深くに突き入れる・・・

 

互いに舞い散る血飛沫(しぶき)を避けようともせず、さながらに「鮮血の舞踏会」は催される・・・

 

それに、プレザンスも()る者―――

彼は彼で、生身の人間ではあるものの、ある特性を「OUS」として所持していました。

 

それが―――『再生者(リジェネレイター)』・・・

 

“彼”は、人間ではあるが、人間ではない・・・

普通の人間では、有り余る能力―――今、負った深い傷も、目の前のヴァンパイアよろしく、高速で回復再生させてしまう能力・・・

だからこそ、“彼”は、唯一の「ヴァンパイアに対抗出来得る者」でした。

 

それに―――・・・

 

 

セ:(やはり・・・)

  今日「も」魂は入っていないようですね―――

  プレザンス卿! このままでは無駄な消耗戦にしかなり得ません!

  ここは栄誉ある撤退を―――!

 

プレ:むぅ?! なんだと―――・・・?

 

ヘ:〚フン・・・私をここまで傷付けておいて、むざむざ帰すとでも、お思いかい?〛

{裏面式;陸珀陸拾陸号解放}―――{ワード・オブ・ペイン}

 

セ:させはしない―――!

≪ハイ・クリエイション≫―――≪祝福(ブレス)

 

 

どこか、真に迫る強力な術式をしようとも―――

互いに傷つけ合い、血みどろの格闘をしようとも―――

 

どこか“虚ろ”な―――空虚(むな)しさしか、感じさせてこない存在・・・

 

その表現を、セシルは、ある的確な表現で言い表せました、

それこそが―――「今日()魂が入っていない」・・・

 

“魂”・・・いわゆるプレイヤーは、「操作者」がいて、操作者自体が操作をするからこそ、

こうした“仮想内”の世界に於いても、その諸動作に「魂が籠る」・・・

これは、ちょっとしたネットのスラングのようにも取れ、非常に気の利いた言い回しとも言えました。

 

そう―――つまりヘレナは、以前インした状態から、そのまま回線には繋いでいるものの、言わば「操作者不在」の状態だった・・・

それなのに、「自律稼働」しているのは、()()()()()我々人間の想像を超越していた・・・

人間が、化け物を畏れる所以―――

常識を・・・外れている―――逸脱しているからこそ、「倒せない」ものだと、信じ畏れる・・・

 

言わば“暗示”―――

言わば“思い込み”―――

 

けれども、そんな「抜け殻」のような存在ですらも、上級騎士職は、倒せない・・・抵抗すらできない・・・

 

ですが、プレザンスとセシルの2人だけは、このヴァンパイアに対抗することが、出来ていた―――?

 

つまりは、認められてしまっていたのです。

 

今も、公爵が扱う、強力無比の術式―――

その影響を受けてしまえば、公爵自身についた傷痕の―――“位置”“深さ”寸分違わず、対象に刻み込む・・・

まさしくもの“外法”―――

 

それを阻止するために、セシルが行使した神聖術により、どうにか事なきを得たのですが・・・

 

 

ヘ:〚フフフフ―――・・・よく出来た・・・お利巧さんだ、褒めてあげよう・・・〛

セ:(く・・・)おのれっ―――!

 

へ:〚だが、惜しかったねえ・・・丁度「お時間」だ。

   また、会おう・・・「坊や」に「フロイライン」―――〛

 

ハッハッハッハッハ―――

 

 

稼働時間の終了―――とでも言いたげに、高らかな哄笑を残し、不浄の王者は消えて行く・・・

 

そう―――()()()()()、虚無の存在を、討ち漏らしてしまった、異端審問官達・・・

 

つまり、前話でセシルを見かけた時の状況と言うのが、この出来事の直後だったのです。

 

 

そして―――今帰還したばかりのセシルに近づく、ブラダマンテは・・・

 

 

ブ:お疲れ様です―――セシル卿・・・

セ:ああ―――これは・・・

  教皇庁直轄の近衛団長、ブラダマンテ卿・・・

  あなた様が直々にお出迎えとは、また珍しい。

 

ブ:いえ、わたくしは来客のお相手をしておりましたので・・・。

  それに、どうやらそのご様子では―――

セ:お恥ずかしい限りですが、また取り逃がしてしまいました・・・。

 

ブ:そう・・・でしたか―――・・・

 

ん?   ん??        んん???

 

 

今が今までの事もあり、何とも常識的なやり取りを交わすブラダマンテに、

リリア達は不思議そ〜〜な顔をするのですが・・・

哀しいかな―――実際に於いてブラダマンテは、「出来る子」なのです。

 

が・・・残念なのは、「その性格」だけ―――

しかも、その「性格」も、リリア「だけ」に向けられる、“指向性”の高いものでしたから、

彼女の本性と言うのは、その現場を抑えない限り、バレたりはしないのです。

(更に言えば、その現場を直視してしまったからこそ、市子にプリンはブラダマンテの危険性が判り合えているのです)

 

とは言え・・・いくら“石を投げて”も、反応すらしてくれなかった、かつての仲間にプリンは―――

 

 

プリ:セシル―――!

 

セ:(え・・・)プリン――?

  あなた・・・一体どうしてこんなところに―――

 

プリ:私・・・あなたの“あれから”を知りたくて―――

  だから、私の仲間と一緒に、この地に捜しに来たの!

 

セ:(・・・)―――そう・・・。

  残念だけど、今、あなたに話す事なんて、何もないわ・・・。

 

プリ:(!)そ―――そんなあ!

 

 

折角、久しぶりに会えたと言うのに、連れない態度―――

やはり自分は、嫌われているんだ・・・と、悄気(しょげ)るプリン―――なのでしたが、

今回彼女は、一人でここ(ロンドン)を訪れているわけではない・・・

彼女と一緒のクランに所属し、リアルでの、彼女のフアンの一人でもある・・・

 

 

リ:おい―――ちょっと待ちな。

 

セ:なに?あなた―――・・・

 

リ:折角、昔の仲間が、あんたにわざわざ会いに来てやってんだ―――

  なのに、そんな連れない態度って、ないだろうによ。

 

セ:(・・・)関係―――ないでしょう・・・

  所詮あなたに、何が判るって言うの。

 

リ:(・・・)そうか―――判った・・・

  帰ろうぜ―――市子さんにプリンさん、こんなところにいたって、何にもなりやしない・・・

 

 

 

つづく