今にして、ようやく知れてきた「公爵」の危険性・・・
武術の達人であるリリアが、ヘレナに組まれても、中々抜け出すことが出来なかったことからも、
ヘレナがリリアより武術の達人であることが、知れてくるのです。
それでも尚、組みつかれていた状態から、解放されたと言うのは、それなりの理由があったようで・・・
サ:あ゛〜〜言っときますけど、そいつ、私のフレなんですわ。
ヘ:あら・・・そいつを早く言っとくれよ〜。
リ:(ハヒーハヒー)た・・・助かっ―――た?
ヘ:でぇ〜も♪ 組んだ時の感触、中々のもんだったねえ〜?
どうだい―――サヤちゃんとのお話し終わったら、おねいさんとイイコトしなぁ〜い?w
リ:お断りしておきますッ―――!
それに私、そっちに興味ありませんからッ!
ヘ:ン〜〜もう・・・
でぇ〜もっ♪ あなたの事、知っちゃったもんねえ〜ww
リ:ヒッ・・・(ぞわぞわ〜)
サ:公爵サン! いい加減にしとかないと―――
ヘ:はぁ〜いはいw 判ったよw
じゃね〜〜♪
「おいおいおい―――こりゃ、あいつ以上に厄介な人、作っちゃったあ〜?」
サヤからの一言により、ガッチリと組み固めていたリリアから離れるも、
熟しつつある旨味のある蕾に、興味津々の公爵ヘレナ。
しかも、お互いが認識し合ってしまったものだから、いくらリリアが拒絶しようが、
またそう言った“仕草”すらも、己の欲求を増幅させてしまえる手段として行使しようとする、
そうした淫靡な含み笑いに、悪寒を感じてしまうのも無理らしからぬ処があったようです。
それに―――・・・
リ:なんかさ・・・思うんだけど、サヤさんがこっちでフレ少ない・・・てのも―――
サ:判ってくれるかあ〜〜?
そうなのよ―――総てあの人がブチ壊してくれんの。
と、まあ・・・そう言ったのも、「厄ネタ」の一つでもあるんだけどな・・・。
リ:何かほかにあんの―――?
サ:ああ・・・―――
て、言うよりかさ、あの人、今ログインしたら、絶対ヤヴアイって!
サヤにしてみれば、ヘレナそのものが「厄ネタ」・・・
しかも直近には、ヘレナの“ゴースト”が起こしたことで、あるクランと微妙な関係にある・・・
それが今度は、「魂がなかった状態・・・ではない状態」で、ロンドンに赴いてしまった場合―――
サヤは、だからこそ知っているのです。
「公爵」としての、ヘレナの実力を―――・・・
そして今―――サヤが描いていた事態が、現実となってしまう・・・
今度は、存在を確定させ、虚ろわないままの、“実体”としての公爵が、ロンドンを闊歩する・・・
そして、その様子を、このサーバーに留まっている、市子達も視認してしまう・・・
市:(!)あれは―――!
ブ:(あれが・・・公爵ヘレナ―――)
プリ:・・・・・・・・・・。
市:(!)プリンさん、しっかりして―――!
プリ:(ハッ!)ご・・・ごめんなさい―――
私・・・あの人を見てたら・・・
ブ:あれが、ヴァンパイア―――それも、自分の意思で、「血」を「吸」う「鬼」・・・
またを―――「真祖」!
すみません・・・わたくしも、これから単独で動きます―――
そして、一刻でも早く、教皇庁へ報告に上げなければ!
プリ:そ―――そんな・・・では、私達のサポートは??
ブ:そうですわね―――・・・
取り敢えずは、ここから動かない様に―――いいですわね。
市:(・・・)判りました―――
まさに、「鬼気」を宿らせた存在が、そうしたモノを押し隠すでもなく、その強烈に過ぎる存在感を撒き散らす・・・
市子は、かつて単于と対峙した時のキリエを―――自分達が討ち倒した女媧を―――
竜の一族を相手としていた、「細剣使い」としてのジョカリーヌを知っていましたが・・・
その者達に匹敵するくらいの、強烈な存在感に中てられ、
まさに蛇に睨まれた蛙の状態となって、固まってしまったプリンを、気付けさせるのに精一杯でした。
しかも今は、今の自分達と同じ様に、「中身」の存在が、ちゃんといる―――!
では、なのだとしたら・・・
公爵の真実を知る為にと、単身ベルリンへと渡った、信友は―――??
市子は、ブラダマンテが、この緊急事態に際し、自らが所属するクランの「ある部署」に戻り、
報告―――並びに、何らかの使命を帯びる為に・・・と、現在組んでいるPTから抜ける事を承認しました。
・・・が―――
正直を言うと、とても心細かった・・・
あの存在を見て、未だに震えは止まらない・・・
膝が「ガクガク」と音を立て、立っている事さえ、儘ならない・・・
ここは自分がしっかりとしないと―――
そう自分に言い聞かせても、程なく精神の方が屈してしまおうとしているのが、判ってしまっているのです。
けれど―――・・・
不幸中の幸い―――とでも言うべきか・・・
公爵は、ただロンドンを闊歩していた―――だけ・・・
話しにある様に、このサーバーに、襲撃を仕掛けに来た・・・訳ではなかった?
ただ―――・・・
ただ・・・そう―――言うならば、ただこちらへと来て、自分が今、このサーバーにいる・・・と、言う事を、
どこの誰かに示しているかのようだった―――・・・?
とは言え、ヴァンパイアがいかに危険なのか―――身をもって知らしめられる、ある事実が・・・
それは今―――公爵と、偶然瞳が合ってしまった、一人の神殿騎士が・・・
神殿騎士:(!)あ・・・ア・・・ウ・・・ウ・・・ア゛―――
神殿騎士:お、おい!どうした!!
神殿騎士:団長と副長殿が来られるまで、陣形を乱すな!
神殿騎士:ア゛・・・あ゛・・・へ―――ヘレナ・・・様・・・バン・・・ザイ・・・・・・・・・
ヴァンパイアの特性の一つに―――
その瞳には、即座に『魅了』に陥る効果があるのだとか・・・
その・・・美しい―――
その、余りに美しすぎる、「鳩の血の色」をした、真紅の瞳に魅入られ―――
今・・・一人の、上級騎士職である神殿騎士が、ヘレナの膝下に傅く・・・
そう・・・これこそが、ヴァンパイアの真祖の危険性―――
この世の、全ての生きとし生ける者を、魅了し尽くせるだけの魔力を保有する存在・・・
だがしかし―――公爵は、そうした者すら無視をする・・・
まるでそれは、自分の嗜好には合わない者の血は、欲しくはない―――とでも、言いたげに・・・
そして―――
#64;愛しき故に憎しみ、愛しき故に殺し合う
ヘ:ようやく来たかい―――「坊や」に「フロイライン」・・・
セ:(!)公爵ヘレナ―――! お前は・・・っっ!!
ヘ:フ・フ・フ―――そう怯えなくってもいいさ・・・
今日は、私の“ゴースト”がやらかしてくれた、そのお詫びに来たのだから・・・
プレ:・・・ほう―――ならばオレに、その首を差し出す気にでもなったか・・・?
ヘ:はっはっはっ―――言う様になったじゃないか・・・
さすがだ―――プレザンス・・・「坊や」。
すっかりと見ない内に、この私に対し―――!
そんな口の利き方をするようになるなんて・・・
ああああ・・・・だから―――
今思えば・・・公爵と異端審問官達―――
それも、限って言うのならば、殺戮神父プレザンスの仲―――とは、「犬猿」以上に険悪であり、
皆誰しもが、“そう”思っていた・・・
なのに―――??
ならばなぜ、ヘレナはそうした危険を冒すのか・・・
ここは―――“敵地”・・・その只中・・・
かつての璃莉霞の様に、敵の大将首を獲りに来たワケでも―――
況してや、ロンドン・サーバーを壊滅させに来たのでも、ない・・・
ならば、物見遊山なのか―――と、そうとばかり思っていたら・・・
今、疑うとするならば、自分の耳に―――そして、公爵自身の言葉にある・・・
ヘ:だからこそ、お前が愛おしい・・・愛おしいよ―――「坊や」・・・
かつて、この私が育て―――私を殺せるように育てたお前こそが、私は愛おしい・・・
さあ―――その剣を手に取り、この私を殺して御覧・・・
愛しの、ドナルド=プレザンス
プレ:吐かせえぇ―――!
お前は、このオレの総てを壊した―――
このオレに、“偽り”で言い寄り、あんなにも愛し合ったと言うのに―――
お前を殺す為にだと・・・?!
ふざけるな!誰がお前の言う事など聞いてやるものか・・・
オレは―――オレ自身の矜持で、今!!お前を殺す―――
反目する者同士が、愛を語る・・・
しかしながら、その愛も―――我々が知り得るものとは、程遠い「愛」でした・・・。
かつてヴァンパイアは、その退屈しのぎに―――その気紛れに・・・と、一人の捨て子を拾い、
そしていつか、自分を殺せるまでに成長させるべく、知り合いの一人に、その捨て子を預けました。
けれど・・・いつかは知ってしまう“真実”―――
捨て子は少年になり、青年を経て成年になった・・・
そして知る―――“総て”を・・・
かつて、あんなにも温かく包み込み、あんなにも愛し合ったのは、
総ては愛する人を―――
公爵自身を殺す為に―――だと・・・
だからこそ、真実を知ってしまった捨て子は、自分をここまで育ててくれた存在を・・・
だからこそ―――愛し合った事と同じくらいに、強く・・・憎んだ。
愛し合う事と、憎しみ合う事は、違うようで同じ―――「表裏一体」なのです。
そして―――殺戮神父の狂気の刃が、公爵の身体を貫く・・・
まるで、噴水の様に血を吹き出しながらも―――滝の様に血を流しなからも・・・
公爵は、血みどろになりながらも―――立ち竦む・・・
口より一条の血を伝わらせながらも、公爵は人間のそれよりも、熱い接吻を―――
今まさに、自分を殺そうとしている、殺戮神父に施す・・・
その時の彼女は、まるで恋人がするように、目を細め―――憂いた表情となり・・・
人達にも負けないくらいの、情熱的な接吻を交わす・・・
ただし―――違えてはならない・・・
彼女こそは、危険な・・・一等に危険な、「魅惑の魔者」・・・
だからこそ、この接吻も、普通であるわけが・・・ない―――
プレ:(!)ぐ・・・っ! 貴様―――なにをした!!
ヘ:アッ―――ハハハ!
相も変わらず・・・初心で安心をしたよ―――プレザンス・・・
そうさ―――私の「接吻」の意味を教えてあげよう・・・
この、「魅惑の王者」と称えられた、この私の「接吻」の意味を!!
「魅惑の王者」は、だからこそ言う―――
自分の・・・ヴァンパイアの「接吻」の意味を・・・。
しかも、自らの血を含ませての、濃厚な接吻には、必要以上の「魅惑」の効果が付与され、
またしても殺戮神父は、公爵の事を考えざるを得なくなる―――
これこそが―――総ての事の発端・・・
公爵は、自らが「認めた存在」を、手放さない・・・
それもいつか、「自分達の為になれば」と―――
かつての故郷に想いを馳せて・・・
つづく