“血塗れ”の接吻を交わし、またも公爵ヘレナは、高らかなる哄笑と共に消え去る・・・
が、しかし―――
またしても辱められた者は、行き場のない憤懣に、身を震わせる・・・
それこそが“必殺の場”と化してしまい、誰もが触れられずにいたのです。
そこへ―――ベルリンより来れる二人は・・・
サ:(・・・ん?)ちょっと待て―――
リ:ん?なに、どうしたの―――
サ:変だ・・・おかしい、そうは思わないか?
リ:え?
(!)そうだな―――やけに静かだ・・・静かすぎる。
サ:ああ、私らは公爵さんより、遅れてここに来た―――が、この静けさは不気味だ。
すでに公爵ヘレナが、こちらへと向かっていたことは知っていたため、
サヤ・リリアの二人も、準備を整えて、こちらへと足を向かわせたのですが、
こちらへと着いた途端、気付かされる“異常”・・・
それこそが、爆弾台風並みの破壊力を持つ者が、自分達よりも先んじてこちらへと来ているはずなのに・・・の、この「静けさ」。
本来ならば、公爵がこちらへと来た場合、もっと騒々しく、もっと戦々恐々としていなければならないはずなのに・・・
本来とは違う雰囲気に、急いで現場に駆け付けてみれば―――
幸いなから、“嵐”は去った・・・ながらも―――
またその場にて、萌芽しつつある「禍の種」・・・
権威・威厳のある者が辱められると、行き場のない―――やり場のない憤懣の渦を巻き起こす・・・
だからこそ、なってしまう―――“必殺の場”・・・
教皇庁に報告へ行ったっきりのブラダマンテより、今いる場より動かないように―――と、忠告を与えられていましたが、
正直を言うと、市子は・・・プリンは・・・非常に心細かった―――。
だから、友人の無事が判ると、安心したからなのか・・・
市:リ―――リリアさん!
プリ:あ・・・ダメ! 市子さん! まだ動いちゃ―――・・・
この“必殺の場”に於いて、不用意な動きは死を招く―――・・・
今、信友の無事を確認し、安心したからこそ、市子は・・・
「その場に留まる」よう、警告を与えられていた―――にも拘らず、
その場から出てきてしまった・・・
それを、憤懣に充ちた殺戮神父は、すぐさま感知し―――
己の標的がプレイヤーであろうが、不浄の者であろうが、誰彼構うことなく襲った―――
そして、殺戮神父の狂気の刃が、市子に振り下ろされようとしていた―――
まさにその時―――!
市:リリア―――さ・・・ん?
プリ:(そん・・・な、武器を持たずに―――?)
サ:(あいつ―――・・・)
セ:(プレザンス卿の、あの刃を―――“無手”で?)
その場に居合わせた者が、見た光景・・・
それは、必殺の刃を振り下ろそう―――と、しているのを、“神速”にて駆け寄り、
「徒手空拳」にて信友を救った、一人の勇気あるプレイヤーの姿でした。
しかして、その者こそ―――リリア・・・
現実内に於いては、ある武術を会得した者・・・
そしてその時、繰り出した「技」こそが―――
古廐薙流―――取奪の術・無刀取り
しかし、ここでリリアの動きは止むことなく―――
剣の自由を奪ったそこから、颯爽と身を翻し―――殺気を漲らせる者の背後を取り、
その華奢にも見える“腕”で、殺戮神父の“気道”“血道”を閉塞させる―――
まさしく、その「技」こそも―――
古廐薙流―――閉塞道止・蔦絡
人の“気道”“血道”を絞めるのに、最適有効な手段―――
それこそは、「神社の注連縄」や「横綱の“綱”」にも見られるような、「太い」ものではなく・・・むしろ、
「ロープ」や「ネクタイ」などの、「細い」モノの方が、即座に絞めて殺せるのです。
それが今・・・実践で示された―――
憤懣に身を震わせ、殺意を漲らせ、判断力を鈍らせた者を、
静やかに―――かつ、速やかに無効化させる手段・・・
それに、自身も武器を用いれば、互いが傷ついてしまうものとし、
そうした中で取られられた、応急的な措置―――・・・
とは言え、異端審問庁のトップを、絞め落としてしまった事実は拭いきれるでもなく、
事態はここに極まったか―――に、思われたのですが・・・
意外に、この事態を収束させたのは―――
ブ:さすがですわね―――お姉さま。
セ:ブラダマンテ卿―――
ブ:かかる事態は、既にわたくしが教皇庁に上げました。
それに、彼の存在も今はこの地にはいない・・・
で、あるのに、何ら罪なき者に、その刃を振り下ろす行為を、あなた方は“善し”―――と、されるのですか。
セ:・・・ありがとうございます―――
格別の配慮、このセシル・・・プレザンス卿に代わりまして、お礼を・・・
ブ:よろしいのですよ―――セシル卿・・・
主は、全てを見ているのですから・・・
意外に思われたのは、リリア達全員がイメージしている像とはかけ離れた、事態の収束能力を見せた“あの”ブラダマンテだったのです。
(だから・・・この子は、本当は「出来る子」なんですってw)
それに、セシルを含む異端審問の連中も、恭順の態度を示したところを見ると、
本当は、ブラダマンテは―――(以下略)
そんな意外性を見せられ、リリア達は―――
リ:は〜〜お前・・・意外と出来るんだなあ・・・。
ブ:イヤン〜♪
もっと褒めてください〜〜♪
わたくしッたら、赤面してしまふ〜〜〜♪♪
サ:(5秒くらい真面目になれって・・・)
つーか、またお前・・・とんでもないのを見せてくれたなあ―――
リ:へ?なにが??
サ:「なにが」・・・って―――
お前・・・あの「殺戮神父」の剣、素手で止めてみせただろうによ。
リ:ああ〜〜あれ?
市子さん危ないと思っちゃったから、身体が反射的に動いちゃったw
市:(リリアさん・・・!)
プリ:と言うより、リリア凄いよね―――
もしかして、「最強の称号」とか、持ってるとか??
リ:おっ―――いい勘してるね〜〜。
けど今は、その称号“こいつ”が持ってるんだ。
プリンにしてみれば、またしてもの意外な告白―――
けれど、判ることもある・・・
あんなにも殺気立ったこの地を、その言葉一つで鎮めさせたのは、全員がこの人物の実力を認めているからこそ・・・であり、
多少、時折変な言動をするものの、それ以外では畏敬の念を払われている・・・
それは、かつて自分と一緒に、音楽活動をしていたメンバーも・・・
だから、プリンは当初の目的を忘れることなく―――・・・
プリ:セシル―――
セ:プリン・・・まだあなたいたの―――
プリ:うん―――・・・
私まだ、あなたに話していない事、あるから・・・
すると今度は、無下にもあしらう事はなく、自分の代理を立てて、残りの業務を代理の者に引き継がせたのです。
そう・・・セシルは、プリンを避けていたわけではなかった―――
私事と公務とを、混同しなかった―――ゆえにこそ、ああした“厳しい”・・・やもすれば、冷たくも見える態度に出ていたのです。
それにプリンは、セシルに話しておくべき事を、決して語らなかった・・・
彼女達は、彼女達の言語で、語るべきを―――語る・・・
そう・・・“想い”の籠った「唄」を・・・
その「唄」を聴いたセシルは―――
セ:その唄・・・
そう―――あなたは、あなたの唄を、完成させたのね・・・凛。
プリ:うん―――けど、あの子たちのお蔭じゃないよ?
この詞は、あなたの事を想って、書き上げた詞なんだよ・・・聖理那。
リ:え・・・今の唄って、セシルさんを想って作られたんだ・・・。
市:それを聞くと、また違って聞こえてきますね。
その唄そのものは、プリンのシークレット・ライブでも披露された事のある、
リリアも市子も聴いたことがあるモノでした。
が―――
今、その唄が出来た経緯を知り、解散して別れたとはしても、
仲間を・・・友人を想う、一人の「歌い手」としての“想い”が詰まっていたように聞こえたのです。
そして―――次に披露されたのも・・・
リ:(!)これ・・・確か、解散のライブ・コンサートで、〆の時に歌われた曲・・・
確かに“それ”は、「別離れの曲」――
ですが、微塵にも、寂しくも侘しくもなるような、そんな感じはしてこなかった・・・
その詞は、別れはするものの、またお会いした時に、笑顔で会いましょう―――そして、いつしかまた、一緒に・・・
そんな意味にも取られたモノ―――・・・
するとセシルも―――
自分が得意とし、またその“道”を極める為に、渡った地―――
その地はまさに、「その音楽」発祥の地―――にして、“聖地”・・・
有らん限りの声で、肚の底より出される声は、まさしくの『魂の叫び』でありました。
プリンの曲調と、セシルの曲調は、全く折り合わない―――相容れない・・・
けれど、彼女達は、互いが認め合っていた為に、「まさにその一点」に限り、ここに今夢のコラボレーションが成り立ったのです。
プリ:あ〜〜〜唄い切ったあ〜〜!♪
やっぱり聖理那と一緒に演る・・・って、気持ちいいよ!
セ:私もよ―――凛・・・
けれども、あなたは今この時まで、ずっと歌い続けてきた・・・
だけど私は、忙しいことを理由に、歌ってこなかった・・・
だから今、あなたとの“差”を、まざまざと感じさせられたわ。
互いに違う「音楽性」が、“闘う”―――
けれどそれは、嫌味な感じなど一つとなく、逆に競い合う「音楽性」が、幾重ものタペストリーを織成しているかのようにも思えた・・・
だからこそ―――言えた事・・・
プリ:やっぱいいよね―――だから、はっきりと言うよ・・・今まで言えなかったことを。
セシル―――もっと一杯喧嘩しよう。
セ:えっ―――
プリ:ちゃんと喧嘩をしよう。
それも、あなたとだけじゃなく、他の人とも・・・
あのね、私・・・今リリアのクランに所属してるんだ。
そして、そこのマスターに言われた事があるの。
#65;ぶつからなきゃ伝わらないことだってある
プリンは、リリア達のクランに所属し、ジョカリーヌと対面した際、自分が悩みとしている事を、一瞬にして見抜かれていました。
かつて、プリンが所属していた、アイドル・ユニット―――その崩壊の原因・・・
それこそが、意見の衝突など、全くなかった・・・
「人は、組織に所属した時、「調和」を大事にするあまりに、個々の主張をしなくなってしまう・・・」
「だからこそ、そこで生まれる軋轢―――」
「最初は、ほんの小さなモノでも、蓄積させてしまえば、修復不能の大きな傷となってしまう・・・」
「「争い」とは―――互いを認め合いながらも、ぶつかり合い、そこから判り合えることもある・・・」
「これは、「良い」意味での争いの定義であると同時に、君達には更なる“可能性”の為に、質の「良い」争いをすべきだと、私は思っている。」
「そうすることで、“進化”を遂げていくものなのだからね。」
プリンは、今にして、さながらに思う―――
その“言葉”を・・・
自分達を“導いて”くれる、「導師」の存在を―――
つづく