元来“その行事”は、亡くなった先祖の霊を迎え、時期が来ればまた送り返す・・・
それが、この国ならではの“風習”―――「お盆」なのでした。
しかしながら、現在では、その意味はほぼ形骸化されており、古来よりは“イベント性”の高い催しと化していたのです。
それらを体現しているのが、若い彼ら―――
女性陣は、この日の為にと、新調させた、ある意味では“気合の入った”(?w)「浴衣」を着込み、
また老若男女を問わず、「夜店」にてお買い物を愉しむ・・・
ですが、今回のお話しは、そんなモノとは少し違うのです。
時間を少々遡り―――・・・
リリアや市子、プリンがヴァンパイア達の領域で行動していた頃、
トウキョウ・サーバーに遺された者達は・・・
「ふぅむ・・・いかがしたモノか―――」
意外かと思われたかもしれませんが、今回のお話しの“きっかけ”となった人物は、「秋定」・・・
このプレイヤーは、以前少しお話しに出てきたかもしれませんが、あの「千極厳三」なのです。
その秋定は今、ある思いに駆られていました・・・
それと言うのも、この“時”より更に遡る事、数十分前・・・
秋定の前に、フードを目深に被った“女性プレイヤー”が話しかけ・・・
誰:あなたを見込んで、少し話があるのだけれど、いいかしら?
秋:(うん?)そう言うあんたは誰だね?
誰:私の名は、今は明かせない・・・
けれど、呼ぶのに困るだろうから、そうね―――
弓:取り敢えずは、「さすらいの弓使い」とでも、しておこうかしら。
#70;さすらいの弓使い
「妙なことを言う女だ―――」と、秋定は思いましたが、その怪しさは外見上からも判っていたので、敢えて言いませんでした。
けれど、ここの処、正直を言うと何をするでもなかった―――暇を持て余し過ぎていた感もあった為、
いい退屈しのぎくらいにはなるだろうと思い、秋定は協力要請を受けることにしたのです。
そして、事情なりと聞いてみると―――
秋:それよりお前さん―――オレを誘ってどうするつもりなのかね?
弓:少し・・・古い付き合いの者が困っていてね。
その者を助ける為に人手を探しているの。
秋:人助け・・・か、それで、あと何人要り様なのだね?
弓:PT構成に必要なのは“4人”―――
つまり、あと2人ね。
秋:2人―――・・・
ふむ、当てがあるので、任せてもらえんかね。
「さすらいの弓使い」と名乗った女性プレイヤーが言うのには、
そのプレイヤー自身の、昔からの馴染みが困ったことになっているから、
それを相互扶助してもらいたい・・・のだと言うのです。
それに、PTを構成する最大人員は“4人”・・・と、言う事で、都合あと2人―――
すると秋定は、何を思ったのか、「当てがある」と言い、そして呼ばれてきた者こそ・・・
蓮:おい―――そろそろ事情を話してくんねえかな。
秋:まあそう言うなw
こやつが、先程言っていた「当て」だ。
弓:(2人とも「士」・・・)まあいいわ。
それよりあと一人ね、どうするの。
秋:ああすまんが、オレの「当て」は、こやつ一人だ。
蓮:お、おい―――ちょっと待てよ。
PTてのは、4人いないと機能しないんじゃないのか?
秋:うん?まあそれはそうだがな―――
ならばお前は、「当て」にしているのがいるのか。
蓮:ん〜〜・・・まあそんなには親しくしてないが、“1人”ならいる。
秋:誰だ?そやつは―――
蓮:まあ、待ってな、すぐ来るとよ。
秋定が「当て」にしていたのは、なんと蓮也なのでした。
それに、蓮也を誘う時も、強引もあったものではなかったらしく、
殆ど事情を知らせられないままに呼ばれてしまった・・・
しかしそこで、蓮也は蓮也なりに、今回この男が自分を誘ったのは、PT単位で何かを為す・・・その事が判った為、
基本中の基本である、PT構成の条件を充たす為に、自分の「当て」としている、あるプレイヤーを呼び出したのです。
そのプレイヤーも・・・
ヒ:蓮也に呼ばれて来たんだけど―――なに?
秋:ほう―――お前は・・・
蓮:こいつは「ヒイラギ」、少し前から交流があるヤツだ。
ヒ:ちょっと待って、蓮也―――
私は呼ばれて来ただけだけど、どう言う状況か、そろそろ話して・・・
弓:「士」が3人―――ね・・・判ったわ。
少しあなた達に「お願い」があってね、私の古い付き合いの者が、今困っているの。
それを助ける為、私に協力をしてもらえない?
蓮也の呼びかけで来たのは、あのヒイラギ・・・
それにこれで、PTの構成上としては、士3人に弓使い1人と言う、随分と偏った構成となりましたが・・・
しかしそれでも、この話しを持ちかけた弓使いは、何ら不満を漏らすことなく、このクエストの進行は進められていったのです。
そして“今”―――
秋定を除く、事情を全く知らない2人・・・蓮也にヒイラギは、「大」後悔をしているのでした。
それというのも―――・・・
蓮:ぶわっぷ?!
な・な・な・・・なんじゃこりゃあ〜〜!!
ヒ:辺り一面“砂”―――?
ここ、どう言う処なの??
と言うより、あなたはどうして、そんなに平然としていられるのぉ〜〜?!
秋:フ・・・いつになく変わった状況―――面白いな!
蓮:面白い訳あるかあ〜〜!
それより、あの女弓兵、どこ行きやがったんだよ〜!
辺り一面が“砂”―――つまりは「砂漠」・・・
この惑星には、こうした「砂漠地帯」で有名な場所が、いくつかある・・・
しかも、この時蓮也たちがいた「エリア」は少々特殊で、
砂漠の内に見える「摩天楼」―――
そう、ここは、「アフリカ北部」でも、「中東」でも、「モンゴル」でも、ない・・・
現実内に於いては、犯罪大国であると同時に、軍事強国としても知られている、「あの国」・・・
そう―――この「サーバー・エリア」こそは、『アトランタ』・・・
それに、自分達を誘ったはずの女弓兵は、とうに姿を眩ませており、
実質そこに置き去りにされた、士が3人・・・
しかも、そんな“置き去り”を、容赦なく狙うエネミー・・・
そして、ようやく「砂漠の内に見える摩天楼」に、辿り着いた者達を待ち構えていたのは・・・
弓:ふむ・・・私の手を借りずに、5分―――
まずまずね。
蓮:あんだと?!くらあ〜〜!
オレ達を置き去りにしといて、何なんだあんたはよ!
秋:まあ待て―――どうやらオレ達は、試されたらしいな。
ヒ:えっ―――・・・
秋:よく考えてみろ、雇う側からすれば、オレ達の実力なんて判ろうはずがない。
だから、適当な戦闘で、そこら辺を見極めた―――違うかね?
「フフ・・・少しは見込みがあるのが、いたようね―――」
やはり、その女弓兵は、蓮也たちの実力を見極める為、わざとそうしていた・・・
それに、負傷した彼らを治癒したのも、その女弓兵が持っていた、「薬師」のスキルで、
手持ちの「薬」等を、“調合”“調剤”し、新たな「治療薬」を作るなどして、的確に治したのです。
確かに、このPT構成では、「アタッカー」が3人と、超アンバランスだったのですが、
女弓兵には、「弓兵」としてではなく、サポーターとしての能力を備えてもいたのです。
(ここで一つ注釈を・・・実は、この女弓兵の、このスキルは、単純に理解をすればそう見えてしまうモノなのですが、
今回は偶々そうなってしまっただけで、つまりは、そもそもそのスキルは、自分に対してのものだった・・・
もう少し、判りやすく言い換えるなら、このスキルは、「サバイバル」にも相当すると言う・・・)
それはそれとして、女弓兵は、目深に被っていたフードを、取り外すと・・・
蓮:(う・・・お―――)
ヒ:(綺麗―――けど・・・)
秋:あんた・・・目が視えんのかね?
弓:ああ・・・コレ―――?
心配なら無用よ、コレは、本来の私の能力を隠す為・・・
こうでもしないと、視え過ぎて困るからね。
“両”の眼を、塞ぐかのような「眼帯」―――
果てしてそれは、蓮也たちの様な“常人”ならば、不自由の何物でもなかった・・・
けれど、彼女からすれば、どちらかと言えば、そちらが不便を被っていた・・・
「視え過ぎる」―――つまり彼女の眼には、なにもかもが視えていた・・・
常人には、視えようはずもない、“霊的”なモノから、降り注ぐ太陽光の、不可視光線等々・・・
だから、彼女の所有する、ある特殊なスキルの解放―――
それ以外の時には、こうして視界を塞いでいたのです。
そして―――・・・
弓:あなた達の実力は判ったわ。
だから、これからは私も戦闘に参加します。
そして、ここからが本題・・・
本来の目的を遂行するため、このクエストをクリアするわ。
秋:(・・・)―――これは?
弓:ある組織に、私がよく利用している「情報屋」が囚われていてね。
その人を救い出すと言うのが、“初め”の目的よ。
その女弓兵の、特徴的な・・・特殊な物言い、「組織」に―――
女弓兵自身、よく利用していると言う、「情報屋」・・・
何かが違う―――
なにか・・・どこか・・・「弓兵」とは“違う”なにか―――
その指摘が出来ないでいるのは、自分達の経験が、決定的に足りていないから・・・
そして、薄々ながら勘付いてきた事―――
もしかしたら、この女弓兵は、自分達を囮にして、何かを為そうとしているのかもしれない・・・
それに秋定は、噂に聞いたことのある、「あるプロフェッショナル」の手口を、思い浮かべていました。
そう言えば、聞いたことがある―――・・・
“超一流”と呼ばれている、「あるプロフェッショナル」は、自分が請け負った依頼は、必ず遂行する・・・
それは、どんな手を使ってでも―――
この女は、行きずり上出会っただけだったが、謎な部分が多すぎる・・・
これは少し、気を引き締めてかからないといけないか―――
秋:{蓮也―――あとで話がある・・・}
蓮:{あ゛? なんだ・・・この忙しい時に―――}
秋:{だからこそ―――だ。}
{この件が終わり次第、リアルで会おう―――場所は・・・}
秋定は、今しがた自分が抱いた疑問を他人と共有するため、{ダイレクト・コール}を使用し、
蓮也にだけ、このあとリアルで会う約束を取り付けました。
その蓮也も、この立て込んでいる時に―――とは思いながらも、
この不審に感じている女弓兵に関して言えば、ほぼ秋定と同意見だったので、ここは彼に従ってみる事としたのです。
ただ―――・・・
彼らは見誤っていた・・・
否―――
見誤り“過ぎて”いた―――
そして、秋定はさながらにして思う―――
この、「さすらいの弓使い」と名乗った、女性プレイヤーと、
その余りによく似た手口を使う、ある「超一流のプロフェッショナル」の事を。
つづく